武石惠美子の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(武石惠美子君) おはようございます。法政大学の武石でございます。
 本日は、意見を述べる機会をいただき、大変ありがとうございます。
 私は、労働政策審議会雇用環境・均等分科会の公益委員としまして法案の審議に参加させていただきました。本日は、審議会での議論の経緯も踏まえまして、意見を述べさせていただきます。
 まず、女性活躍推進法に関して意見を申し上げます。
 この法律は、一九九七年改正の男女雇用機会均等法で新設されたポジティブアクションの取組を促進させるためのものでございます。実質的な男女平等の実現のために企業が積極的な是正策に取り組むと、ポジティブアクションを奨励することが均等法に盛り込まれました。しかしながら、女性の雇用環境の改善が進まず、女性活躍推進法が成立したということでございます。
 女性活躍推進法はポジティブアクションを促進する法律ということでございますので、まずは企業の自主的な取組というのが基本になります。企業の主体的な取組を進めていただく法的な枠組みと言えると思います。したがいまして、一律の義務を課すのではなく、各企業に自社の実情の把握、課題の分析、目標の設定、取組の実施といったPDCAサイクルを回していただくということにポイントがあります。
 自主的な取組が重要な背景としまして、女性の活躍の状況ですとか課題というのが企業によって様々であるということが言えます。例えば、女性が希望しないために女性の採用が難しいですとか、女性が少ないので女性の管理職を直ちに増やすことが難しいというような、企業のそれぞれの事情がございます。したがいまして、企業の状況に応じて必要な施策等が異なってくるということを踏まえますと、全ての企業に一律的な目標ですとかあるいは情報公表を義務付けるということに関しては、この法律の性格からいってなじまないのではないかというふうに考えております。
 一律的なことを義務付けることによって形式的に対応してしまいますと、施策がうまく回らない、あるいは場合によってはマイナスになってしまうということにもなりかねません。もちろん、現状追認型の低い数値目標の設定というのは問題がありますけれども、現状と乖離した目標設定ということで現場が混乱するという実態も現実ございました。
 また、同法では情報公開を企業に求めております。市場から評価されることによって企業の取組を進めるという効果が期待されているところでございます。この仕組みを求職者などに周知徹底するということ、これが非常に重要でございますが、特に、今回、情報公開の適正さを担保するために、問題がある企業名公表という手法が提案されているという点は妥当な内容かと思っております。
 一方で、公開する情報に男女間の賃金格差が必要ではないかという議論がございます。賃金格差は男女間の格差の大変重要な指標でございまして、その重要性についてはもちろん認識できるんですけれども、この賃金格差というのは、例えば勤続年数ですとか男女の職域ですとか、様々な前提条件の違いによって生じているということに注意が必要です。ですので、現時点では、その理解がないままに数値が独り歩きしてしまうことの懸念を私は持っております。
 女性活躍推進法の改正案の大きなポイントとして、百一人以上に拡大するという点がございます。この拡大の機を捉えまして、ポジティブアクションの本来の趣旨、それから企業の自主的な取組が更に進むような行政の取組というのを期待したいというふうに思っております。特に、中小企業には具体的なノウハウの蓄積も不十分な場合がございますので、支援策の充実を行政にお願いしたいところでございます。
 次に、ハラスメント防止対策に関して意見を申し上げます。
 法案の重要なポイントは三点だと考えています。
 まず、パワーハラスメントに関して、事業主にパワハラ防止のための雇用管理上の措置の義務付けが盛り込まれました。パワハラについての認識が高まっている社会的な状況を踏まえますと、パワハラに関して一定の防止策という枠組みができるということは不可欠なことであり、時宜を得たものというふうに考えております。
 第二に、セクハラ、マタハラ、パワハラに共通して、国、事業主、労働者の責務規定が置かれ、ハラスメントを行ってはならない旨が明確化されるという点は重要であるというふうに考えます。
 三点目として、事業主にハラスメントの相談をしたことによって不利益がないような不利益取扱いの禁止が設けられるということも、措置義務の実効性を担保するという観点から重要であるというふうに考えております。
 一方で、ハラスメント対策に関しては幾つかの問題も指摘されています。まず、ハラスメントを禁止すべきであるという意見がございます。私も、ハラスメントはあってはならないということは考えているところでございます。
 ただし、禁止規定にするためには、違法となる行為要件を明確にする必要があること、事業主の責務を規定する労働法の体系の中で、労働者のハラスメント行為を禁止するというような規定をどのように置くのかということに関して検討すべき課題があるということも事実でございます。また、禁止する以上は行為が行われた場合の制裁ということも考えなくてはいけないわけですが、民法ですとか刑法といったほかの法令との関係も整理する必要がございます。
 特に、パワハラに関しては、業務上の指導との区別というのはグレーな部分も多いという現状があります。パワハラの認定が難しいという中で、そのパワハラと業務上の指導の区分、この共通認識が進んでいない中でパワハラを禁止することの問題ということも考えなくてはいけません。
 パワハラを禁止することによって、指導あるいは人材育成という部分で雇用管理が混乱し、結果として労働者のスキル形成が阻害されるようなことになると、これも問題ではないかというふうに考えます。
 また、セクハラに関しては、近年の状況に鑑みて、踏み込んだ規制が必要という御意見、これも大変理解できるところでございます。ただ、パワハラと同様に、ほかの法令との整理、それから刑法、民法等で一定の対応ができている中で、できているというか可能な中で、これらに該当しない言動のどこまでを労働法制として考えていくかという辺りの整理が必要になってまいります。
 こうした課題を踏まえまして、労政審では、パワハラと同様にセクハラに関しても禁止規定を見送って、今後の検討課題としたところでございます。
 また、パワハラについては、取引先、顧客からのハラスメント、いわゆるカスタマーハラスメントについても対象にすべきとの御意見がございます。これについても、労政審で議論をしてまいりましたが、顧客からの正当な要求と悪質な要求、これは区別が大変難しい面がございます。措置義務の対象とすることについては合意に至らなかったということで、これも今後の課題となっております。
 今回の法改正で措置義務の対象とはなっておりませんが、今後策定する指針の中で、カスタマーハラスメントを受けた場合の相談対応あるいは望ましい取組を示すということは大変重要なことではないかというふうに考えております。
 また、カスタマーハラスメントは、消費者庁による消費者教育ですとか、あるいは各業界における取組も重要になってまいりますので、今後の社会の状況を踏まえながら注視していく課題ではないかというふうに考えます。
 また、セクハラについて、措置の対象に就活生あるいはフリーランスの方を含めるべきとの御意見もございます。雇用関係のない人に保護規定をどのように規定していくかということは、今後のこれも重要な課題であります。
 ただ、今回、事業主それから労働者に対する責務規定というのが置かれますので、ハラスメントを行ってはならないという職場風土が醸成されていけば、社外の就活生等へのハラスメントということも抑止される効果が期待できるというふうに考えます。
 今回法律が成立することによって、パワハラ、セクハラ、マタハラ、いずれの場合も、雇用管理上の措置義務が事業主に求められることになります。ハラスメントは事後的な対応が大変難しいので、事前の予防が何よりも重要であります。事業主にハラスメントに関する措置義務を課すことで、予防、再発防止のための措置というものが期待できるというふうに考えております。
 また、ハラスメントが起こらないような職場風土ですとか職場慣行というものが醸成され、ハラスメントを受けるリスクが軽減されるということも期待できると思います。そのためには、法の履行確保に向けた内容の周知徹底、あるいは義務違反への適切な対応を行政には求めていきたいというふうに考えます。
 特に、法改正の施行に当たっては、指針でパワハラの定義、それから例示をできるだけ分かりやすく示していく、あるいは先ほどのカスタマーハラスメントへの対応などについても、望ましい取組というのを示していく必要があるというふうに思います。
 また、ハラスメントに対する正しい理解を促進するために、指針の周知はもちろんでございますが、企業の人事の担当あるいは相談の担当の方たちの対応が適切にできるようなマニュアル等の作成ということも必要になってくるのではないかと思っております。
 今回の法制化を契機に、ハラスメントを行ってはならないという機運が高まり、ハラスメント行為が減るということ、それから企業の取組が進むことを期待したいと思います。
 以上で私の意見陳述は終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

発言情報

speech_id: 119814260X01120190523_003

発言者: 武石惠美子

speaker_id: 6346

日付: 2019-05-23

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会