奥山眞紀子の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(奥山眞紀子君) よろしくお願いいたします。
今年、日本が子どもの権利条約を批准して二十五周年になりますが、その年に詩梨ちゃん事件が起きてしまったということに非常に胸を痛めております。
私は、二十五年ぐらいですか、医療の場に身を置きながらこの分野について関わってきた者でございます。医療の分野との違いとして、やっぱりイノベーションがなかなかこの分野は起きない、スピードが遅いというのをずっと感じておりました。その一つは、もちろん市場原理が働かないというのが一つでしょうし、もう一つはプロ意識の問題、この二つがあるんではないかなというふうに思っております。
市場原理が働かないということは、やはり当然の必要なことですから、制度が先読みして、新しい制度にどんどん変えていかないと追い付かないということになると思うんですね。
例えば、今回、詩梨ちゃんの事件が起きました。私の資料の一番最後に、ちょっと無理を言って、まだ確定数字じゃないのに、無理言って某政令市の過去五年間の通告数を出していただきました。見ていただくと、二十七年に比べたらもう三倍近くになっています。これに対応、全部に例えば四十八時間ルールをやろうと思ったら、これはもう無理です。この増えているのは何かといえば、近隣からの泣き声通告とかDVの通告とかが増えているわけですね。通告がない方がいいわけではありません、当然、あった方がいいんです。ですから、百例ある中でどのぐらいの力を入れなきゃいけないかというのは多様化しているということなんですね。
恐らく、百例の中ですぐ行かなきゃならないのは数例でしょうし、四十八時間でやらなきゃいけないのは三〇%ぐらいかなというふうに感じておりますが、そういう数字はまだ出ていませんので分かりませんけれども、それを四十八時間ルールを全部徹底せよというのは、これは無理です。何が起きているかといえば、児童相談所に負荷が掛かって、正常な働きができなくなっているのが現状です。
だとしたら、どうしたらいいか。このことについては、二十八年改正の基礎となった、新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会という委員会が報告書を出していますけれども、その中で、やっぱりまず通告を受けた人がきちんと通告者から聞く能力を持って聞き出して、そして、ある情報と照らし合わせながら、すぐ行かなきゃならないのか、四十八時間でいいのか、それとも支援ベースで入った方がいいのか。先ほど、百人の通告があったらと言いましたけど、恐らく九十人ぐらいは支援を必要としている人たちです。だから、支援ベースに入った方がいい人たちもいるわけですよね。そういう判断を、トリアージをしていく。これは何もここで初めて言っているんではなくて、ほかの国ではやられ始めていることです。スクリーナーのトレーニングというのがあって、スクリーナーがそれをトリアージして皆さんに振り分けていくということが行われているわけです。やはりそういうことをすべきだというのを三年前に報告書は述べているわけですけれども、このスピードが遅い。ですから、今回の北海道の札幌市の方々も、もう忙しくて手が回らなかったというふうにおっしゃっていますけど、確かにその面はあったのではないかというふうに思います。
そのほかですけれども、システムがやっぱり変わるスピードがすごく遅かったということが大きな問題で、例えば、相談機能は恐らく市町村が今後担っていくべきだろうというふうに思います、寄り添い型の支援として。その基盤をきちんと整備すること、これが今急務だろうと思います。
詩梨ちゃん事件でも、一歳六か月健診で四、五か月の身長、体重しかなかった。これはもう私たちからすればとんでもないことです。一か月そのままで置いたら脳がダメージをどのぐらい受けるかというのを考えてほしいと思います。そのような状態でありながら、地域での寄り添い型支援がうまくできなかった。だとしたら、どう介入も併せて一緒にやっていくんだろうかということを考えなきゃいけなかった。
しかも、それが、児童相談所が一歳九か月のときに通告を受けました、情報が伝わっていない、同じ政令市なのになぜと思いました。札幌市は一か所しか児童相談所がなくて、二百万を管轄しています。そして、十か所の保健センターがあると。この中でのコミュニケーションの不足というのがあったのかもしれないというふうにも思います。同じ政令市であったら、本来もっとコミュニケーションがあってもいい。これが同じ政令市じゃない県と市になったら、もっとコミュニケーション悪いです。そこのところを考えたら、できるだけ児童相談所も市町村レベルに落としていく必要があるということが言えるだろうというふうに思います。
そして、もう一つ大きなことは、今回、警察も入りました。でも、警察の方も、あの小ささを見ても危機感を持てなかった、傷がないというだけで終わってしまった。警察の中にやっぱり虐待対応をちゃんとできるチームを持ってほしいというふうに思います。
そして、司法関与も日本は非常に薄いです。以前から司法関与が必要だということはみんな声を上げていたんですけれども、司法も余り関与していただけない。やっと、二十九年、皆さんのおかげで改正されて、治療命令に近いものもできました。でも、十年遅れています。ですから、結愛ちゃんや心愛ちゃんのお父さんが自分から、治療してくださいって行くはずないんですね。そうすると、治療命令が必要なんです。二十九年にやっとできて、今、そういう方々を治療できる場所って数か所しかないんですよ。十年遅れたから技術が向上しないんですね。
やっぱりスピード感とても大切だと思いますし、今、もうここまで来たら、児相だけでやる時代ではない。児童相談所に権限を与え権限を与えしてきました。でも、資格もない一般の方々と、少し、もちろんいろんな、何というんですか、要件はありますけど、その要件に合った方々ならいいという形で、公務員という形でやってきている中で、プロ意識が育っていないということがやっぱり次の問題ではないかと思います。ですから、プロとして対応しなければイノベーションができるはずがない。恐らく、ここにいらっしゃる方々はみんなプロ意識が高い方々なんですけれども、一般の児相の中ではやはりまだまだだろうというふうに思いますし、そういう意味では、きちんとした資格、そして資格を持っている人に対しての優遇ということをやっていかなければいけないんではないかというふうに思います。
そして、例えば、本当に質を上げなきゃ駄目なんです、マニュアルだけでは。なぜかといったら、やっぱり一歳九か月で四、五か月の子供を見て、あるいは、警察は二歳過ぎている子供を見て、四、五か月の身長体重の子供を見て危機感を持てないとしたら、これはプロじゃないというふうに私は思います。やはりそこのところを担保していく必要があるんではないか。
そして、もう一つイノベーションを進めるためには、やはりこういう制度を変えなきゃならないような分野でのイノベーションをやるためには、透明化ということが一番大きいんではないかと思います。
今回、児童相談所の第三者評価というのを法案では入れていただきました。重要だと思います。ただ、一時保護所、児童相談所は各県に一か所から数か所しかありません。それを県が主導でやっていくことには限界があると思います。やはり評価機構のようなものをつくって、しっかりとして透明化をしていくということをしなきゃいけないんではないか。このことに関しては、モデルとしてはイギリスのOFSTEDというのもございます。そういうところを参考にしながらでも、もう少ししっかりとした評価制度というのをつくっていかなきゃいけないというふうに思います。
以上です。