高田創の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(高田創君) 初めまして。私、みずほ総合研究所の高田と申します。今回は、大変貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、こちらにございます格差から見た日本経済ということでお話をさせていただければと思います。(資料映写)
 一言で格差と申し上げますけれども、実は様々な視点があるのではないかというふうに我々感じている次第でございます。たまたまこちら、今御覧になっておられるところでございますけれども、ちょうど私、今手元に持っている本がございまして、ちょうど二年前に出した本なんですが、「データブック 格差で読む日本経済」という岩波書店から出したものがあるんですけれども、実はここで格差に関わる八つの通説を取り上げまして、なかなか実態と異なる部分があるんじゃないかというようなことをここに書かせていただいているということでございます。
 ここにございますような幾つかの論点、欧米とは違うんだということもございますし、また、不況になると格差が広がるかというような見方もありますが、実際、必ずしもそうではないのではないかという点、この辺のところの論点につきまして、今日は幾つか解きほぐさせていただければなというふうに思う次第でございます。
 それでは、まず最初に、まず全般的にグローバルな格差ということをちょっとお話をさせていただこうかなと思います。
 実は、この格差の問題は日本にとどまるわけではございませんで、今や世界に共通として流れる潮流と言ってもいいのかもしれません。この辺をちょっと見てみたいと思います。
 例えば、今から三年前でございますけれども、非常に、何というんでしょうかね、想定外といいましょうか、というようなことが起こりました。これがちょうど三年前、六月のブレグジットであり、またトランプ大統領が登場するということだったわけでありますけれども、実はこうしたものの背景にも格差というものが存在したんではないかということでございます。すなわち、世界各地で近年格差問題が非常に問題化しておりまして、政治、社会の不安定化、またその排外的な思潮の広がりというようなもの、こうしたものが、イギリスにおいてはブレグジットということでもございましたし、またアメリカでは事前の予想を覆してトランプ氏が大統領になるというようなこともあったわけであります。
 こうした潮流でございますけれども、ちょっと絵で示させていただきましたのがこちらのところということでございます。ちょうど国際的な格差問題、先進国においても新興国においても格差が拡大をしている、その構造をちょっと絵にしたのがこちらの絵ということになるわけであります。すなわち、冷戦の終結、また経済グローバル化、また新興国が台頭する中で、どうしても所得や資産が偏在が進行したということであります。
 上のところにあります先進国におきましては、一握りの富裕者層に富が集中するというような状況で、その結果として中間層の没落、縮小が起きた。トランプ現象なんというのはまさにそういったことだったわけですね。また一方で、この下のところにあります新興国といったところにつきましては、経済発展の影響が富裕層が出てくるということでありまして、中間層は拡大するわけでありますが、なかなか貧困から抜け出せない底辺層というものもできてしまうと。こういう二極化的なところが今動いているということであります。
 また、歴史的に考えたのが次の五ページ目ということになるわけでございますけれども、こちらにありますこの五十年間といいましょうか、七〇年代以降の金融の時代という中でやはり大きな格差が出たのではないかというのがここでの問題意識であります。
 中でも、七〇年代以降、変動相場制になる中で非常に市場化をしていくということ、そして八〇年代の後半にはベルリンの壁が崩れ、二〇〇〇年代以降、新興国も加わると。みんなが、いわゆる従来の東と言われたところも、また東西南北の南側と言われたところも市場化する中で、どんどんと世界的な格差が金融を中心とした潮流の中で拡大したというふうに考えることができるのではないかと思うわけであります。
 これをちょっと具体的に見たのが次のページということになるんですけれども、こちらは金融資産と世界全体の経済というものとを比較したものということなんですが、最近よく金融の世界で尻尾が犬を振り回してしまう時代というふうに言われることがございます。すなわち、金融資産が実物資産を大幅に超える世界が生じてしまったというふうに考えることもできるわけであります。
 先ほど、七〇年代以降、この五十年間と申しましたが、その起点となる八〇年代までというのは、ここにあります絵で見ていただきましても、金融資産と実物経済、ここではGDPにしておりますが、ほぼ一対一だったわけですね。これが二〇〇〇年代になってまいりますと、金融資産の方が実物資産よりも三倍多い一対三の状況になる。特に二〇〇〇年代の後半には一対三・五まで金融資産が大きくなるというような状況になったわけでありまして、こうした問題が十年前、百年に一度と言われたリーマン・ショック等につながったわけでもありますし、また、こうした中での世界的な格差問題というのが広がったというふうに考えることもできるわけであります。
 皆さんもよく覚えておられますのは、五年前でございますけれども、ピケティという人の本が、こんな分厚い本だったんです、結構有名になった時期がございました。この本自体は、「二十一世紀の資本」という本だったわけでありますけれども、資本主義がその中で格差の拡大のメカニズムを内包するんだというような絵でございまして、こちらにあります絵はこのトーマス・ピケティのものから取ったものなのでありますけれども、ちょうどこの格差が拡大するのがトレンドとして描かれているんではないかと、そんなことが言われたわけであります。
 こうした状況の中で、このグローバル化、それから格差、貧困の拡大の中で、いわゆるポピュリズムでありますとか地政学リスクというものが生じたということであります。
 先ほど、ブレグジットであり、トランプ現象といったことも申し上げたわけでありますけれども、先ほどから一貫して言えるのは、このグローバル化、テクノロジーの発展の中で、先進国の中で中間層が担っていたところがなくなってしまう。また一方で、貧困を背景として、移民それから難民というもの、こうしたものと先進国の中間層の没落と重なりまして、政治、社会の不安定化、そしてポピュリズムな動きが出てきていますし、また地政学的なリスクというものも広がったんだということになるわけであります。
 こうした状況の中、低所得者層や貧困層にも恩恵が及ぶいわゆる包括的な成長、インクルーシブグロースというものへの関心が結構高まっておりまして、今年はちょうどG20が日本でも開かれるわけでありますけれども、こうした中でも重要なテーマになり得ることになるんではないかと私は思う次第でございます。
 そういう意味で申し上げますと、実は世界的にこの格差の問題は大きな潮流の中にあるんだと、そういう中で、じゃ、日本はどうかということを次に考えてみたいと思います。
 ここでは、データの意味で、日本はどんな状況になっているのかというのをちょっとフェアに確認してみたいなということでございます。
 まず、格差ということを考える上でよく使われる指標がございます。これがよくジニ係数というふうに言われるわけでございますけれども、こちらジニ係数で見た場合はどうなんだということでございます。日本の所得格差というのは、全体的に見ると先進国の中ではやや大きめというんでしょうか、ここの絵にございますように、OECDの二十六か国の平均よりもちょっと大きいというくらいの状況になっているということでございます。
 また、次の絵で、一人当たりの所得格差がどうなのかというのをちょっと見てみたいと思います。
 左側のところにありますように、一人当たりの所得格差、当初の所得格差は、実はここの、今から二十年ぐらいでも結構拡大をしているというのがお分かりいただけると思います。ただ、再配分をしたもの、例えば税でありますとか社会保障ということを考えますと、再配分後の格差というものは縮小しているというようなところにつながっているということでございまして、必ずしも大きな所得格差が出てきているというわけでは、少なくともこの絵からは見えないということでございます。
 ただ一方で、いろんな角度から見る必要があるわけでありまして、次の絵のところにございますように、年齢階級別に見ておりますと、高齢者の所得格差が大きいということが、例えば左側、年齢が上がると格差が拡大するということでお分かりいただけるのではないかと思うわけであります。また一方で、この二十年間で現役世代は格差が拡大をし、これ右側の絵になるわけでありますが、六十歳以上は逆に、この所得再配分効果がありますので、拡大から格差が縮小しているような状況になっているという部分があるわけであります。
 また一方で、この資産の格差、所得に比べてどうなのかということが次の絵ということになるわけでございますけれども、資産格差は所得格差よりも大きいということがお分かりいただけるのではないかと思います。これは、資産、いろんなものがあるわけでありますけれども、例えば住宅とか宅地の場合は、例えばバブル期辺りは実は随分格差と言われたわけでありますが、バブル崩壊とともにその部分は意外と縮小してまいりましたが、一方で、貯蓄格差の方は拡大をしてきておりまして、特に高齢者の世帯の割合の増加から、こうした貯蓄格差の拡大がよく出てきているということでございます。
 また一方、正社員と非正規のところの格差というものも見ておく必要があるわけであります。こちらの左の絵でございますけれども、非正規雇用の比率は高止まりをした状況でございます。足下やや拡大は止まったような状況になってまいりますが、一方で、右側のところでございますが、年齢の上昇とともに正社員とそれから非正規雇用の賃金格差が非常に大きくなっているということがお分かりいただけるわけでありまして、これ私は、やっぱり重要な論点ではないかと思うわけであります。特に、この非正規雇用の社会保険、退職金、賞与の適用率というのは、どうしても正社員よりも低くなっておりますので、賃金以外の格差も大きいんだということ、特にこの右側のところの、年が進めば進むほど格差が大きいというのは今後も重要な点として考えるべきところだと思います。
 それから、次の絵でございますけれども、こちらが地域別というようなことでございまして、こちらにありますように、大都市の集中、それから地方のところの減少といったところがお分かりいただけるわけでございます。
 それでは次に、日本における格差問題、何が問題かということをちょっと考えてみたいと思います。
 こちらにございますのが、まず見ていただきたいところが格差に関する一般的な認識ということでございまして、ここでは格差と格差感というものをちょっとキーワードに使わせていただいているわけであります。
 どうしてもやはり格差に関する認識と実態との差というものがあるのではないかというところ、それから、どうしてもやっぱり一面的な見方、例えば非正規の雇用はネガティブであるとか、一方で、ばらつきという中で地方の問題、それから変化のテンポが拡大する中での富の集中でありますとか、こうしたようなところというものは、やや現実のものとやや過大に見られている部分というものもあると。それだけに、先ほどから申し上げておりますような、多面的に様々なデータを見て、いろんな角度から見る必要があるんだということだろうと思います。
 そういう状況の中で、日本においてはどの部分が格差として重要なのか、次の十八ページのところで御覧いただきたいと思います。
 ここでのキーワードは何かといいますと、縮小する中間層、特に低所得世帯が増加をしているというところでございます。これ、左側で見ていただきましても、年収五百万未満の世帯、いわゆる低所得者世帯といったところが拡大しているわけでございまして、特にこの右側のところで、勤労者世帯で見ても、この辺のところがやはり大きくなっているということでございます。もちろん、現在、一億総中流と言われた意識というものがもう大きく変化しているわけではございませんが、この中流の基準がずり落ちている可能性はあるというのは重要な点ではないかと思います。
 それから、次のページでございますけれども、年齢階級別の、これ、ここでは男性正社員にしておりますけれども、四十歳代の男性正社員の賃金水準が低下をしている。特にこれは景気後退期に三十代を迎えたといった部分は大きかったかと思いますが、後ほど申します、これ非正規のところも実は非常に重要だというところでもございます。
 それから、次の絵でございますけれども、いわゆる貧困ラインという議論がございます。これは一人当たりの所得の中央値の半分ということなんでございますけれども、こちらがやはり共に低下をしているというような状況が出てきているということでございます。
 それから、次のところでございますけれども、高齢者の格差の問題でございますが、高齢者の世帯は所得格差が大きいといったところも一つの特徴になっているということでございます。ただ、再配分による改善度は大きいということではございますが、この右側にございますように、高齢者の世帯の場合は有業であるかどうか、要は職業があるかどうかでかなり収入差が大きいんだということも重要なところということでございます。
 それから、特に高齢者のところでございますけれども、次のページにございますように、高齢の単独世帯が貧困リスクが高いというのも特徴でございます。特にこの単独世帯は所得が低いということになるわけでありますが、特に女性の単独世帯の場合は貧困リスク、これ右側のところになっておりますが、五〇%超と極めて高い状況になっているわけであります。
 すなわち、今、非正規雇用の比率が上昇している中で、将来、高齢期に貧困に陥る人が増える可能性があるということでございまして、特に就職氷河期に増加した非正規雇用者、この世代の方々が四十代に差しかかっているわけでございまして、この部分が非常に重要なところになるのではないかと思います。
 それから、今申しました単独ということでございますけれども、その背景にあるのが次の二十三ページでございまして、こちらにありますように、左側、生涯未婚率という概念なんでございますけれども、特に就職氷河期と言われた九〇年代に男性のところが急速に増えているというのがお分かりいただけると思います。右側にありますように、様々な課題が起きやすいといった点は重要かと思います。
 それから、次の絵ということでございますが、子供の貧困の問題でございまして、こちらのところ、親の所得水準が子供の教育水準にも影響する。ここにもありますように、両親の年収が高いほど大学の進学率が高い、いわゆる貧困の世代継承が進むリスクというものがあるという点でございます。
 四番目に、こちらに、今後の課題というものを考えてみたいと思います。日本の課題の処方箋は何かというのをちょっと考えてまとめにしたいと思います。
 一般的に言われますのは、不況になると格差がと言われるんですが、実際には景気拡大期に高まる格差問題でございます。例えば、一つは八〇年代後半のバブル期、また十年前のミニバブル期ということでございますし、また、足下もアベノミクス推進以降の中で高まっているというのは、実はこうした拡大期、資産格差が拡大する期というところに当たっているということでございます。
 こうした格差の固定化というのは確かに経済にマイナス部分というのはもちろんあるわけであります。やはり固定化というものは、消費の減退、それから少子化、また社会の活力の低下を通じて経済にマイナスが起こるわけでございますが、一方で、完全にフラット化するといいのかということになりますと、これもまた様々な勤労意欲というところにもなるわけでありまして、この均衡若しくはバランス、許容範囲がどこかというのを探るということもやっぱり今後重要な課題になるんだろうと思います。
 そういう意味では、ここ何年間につきましても様々な部分で対応が実施されてきたということでございまして、その部分を簡単に具体的に見てみたいと思います。
 まず一つは、こちらの二十九ページにございますような賃金のところでございまして、政策的に一つは最低賃金の引上げ幅というものもやはり重要なところになってきているということでございます。確かに賃金こうやって上がってきているわけでございますけれども、やはり一つターゲットに置く千円というにはまだまだ先という部分もあるわけでございます。
 また、国際比較で見たものが次のところということになるわけでございますけれども、最低賃金を設けている国と比べてやはり日本は低いというのがこの左側でございますし、また一方で、フルタイム労働者に対するパートの賃金というものは、日本の場合、この右側にありますように六割程度と非常に低いわけでありますね。ですから、引上げとともに、また非正規の方々の能力開発、また正社員への移行というものも重要だということでございます。
 また、こうした状況の中で最近話題になってまいりましたのがベーシックインカムという議論でございます。先ほどの議論の中の関連でもあるわけでありますけれども、低所得者を支える普遍的な社会の仕組みをどうするのかということで、グローバルにもこうした最低限の対応をしていこうではないかという議論が出てきている。また一方で、こうしたものを余りに平準化し過ぎるのがどうなんだという見方もあるということで、ただ、この辺はグローバルにもいろんな見方が出てきているというところは注目すべき点ではないかと思う次第でございます。
 それから次に、教育の問題でございますけれども、こちらの絵にございますように、日本は教育費は高いんですけど支援のところは意外と脆弱だというのがこのグラフのところに表れるわけであります。そういう意味では、高等教育に進学するまでの経済的な負担の軽減をどうしていくのかというのも重要な点ということになろうかと思います。
 今申し上げた点が幾つかの論点をいろいろな角度から議論させていただいたということになるんですけれども、最後に若干幾つかの提言みたいなところをさせていただいて、まとめにしたいなと思います。
 一つは、ここにございます、家族類型が随分変わってきたという論点ではないかと思うわけであります。
 よく、標準世帯という概念は、夫婦と子供、若しくは夫婦と子供二人と言われております。ここにありますように、ちょうど真ん中のところに夫婦と子供というところがあるんですけれども、従来はこれが一番多く、左側のところでは四二%であるわけでありますが、現在は三割を割り、いずれ二割、そして、いずれ単独世帯が最大になってしまうと。もう既にそういう状況になっているということになるわけでありますけれども。
 となってまいりますと、この単独世帯に、増加した、様々な対応というものが重要になってくるのではないかという点でございます。もちろん、ここにございますような住宅の問題、様々な対応ということもあるわけでありますが、これに関連いたしまして、この単独に対応した対応というものもグローバルにも出てきたということでございます。
 たまたま、ちょうど一年前でございますが、イギリスでは、ここに左側にありますように孤独問題担当大臣というようなものもできてきたというような状況でございまして、私は、日本においてもこうしたシングル社会担当大臣的なものも必要になってくるのではないかと。いわゆる家族というものが非常にベースとなる支えであったわけでありますけれども、こうしたものを社会としてどう対応していくかというようなものも一つこの格差の中では非常に重要な点なのではないかという点。
 最後の論点になりますが、最後の三十五ページでございますが、日本の場合、この格差の問題というのは、ここにもございますように、中間格差が拡大するだけではなく、中間層がずり落ち、また全階層がシフトダウンするような、ここでいうA、B、Cが合成的に進行している可能性が高いと。
 というふうになってまいりますと、日本においては所得の底上げをどのような形で対応していくのかというようなこともやっぱり重要なわけでございまして、こうした日本における特定の、特有の問題というようなところも含めた様々な議論、またそのベースとなるような把握というものも私は必要なのではないかという問題提起をさせていただいた上でまとめさせていただければと思います。
 今回は大変に貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございました。今後とも御指導のほどよろしくお願いいたします。
 失礼いたしました。

発言情報

speech_id: 119814324X00320190403_003

発言者: 高田創

speaker_id: 12537

日付: 2019-04-03

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会