渡邊裕章の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

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○参考人(渡邊裕章君) 九州大学の渡邊でございます。
 本日は、お手元の資料にのっとりまして、日本近海に賦存する国産資源の開発、特にメタンプルームの開発についてお話をいたします。(資料映写)
 お話の内容でございますが、大きく五つございます。メタンプルームとは何かというお話、それから、なぜメタンプルームに注目すべきなのかということ、それから、近年のメタンプルームに関する研究動向を二、三御紹介した後に、これを回収する技術の検討事例についてお話をいたします。最後、これを国産資源とするために今後必要なことについて意見を述べさせていただきたいと思います。
 それでは、まず初めに、メタンプルームとは何かということなんでございますけれども、メタンプルームは、メタンガスが海底面から湧き出してできる気泡、それからメタンハイドレート粒子により形成される柱状のメタン濃集帯を指します。
 下に二つ図がございますが、左側、こちら、計量魚群探知機というもので計測されたメタンプルームでございまして、水深大体二百から三百メーターぐらいのところまで柱状に二本立ち上っているのが確認いただけると思います。右側の図は水中ロボットによって直接撮影されたメタンプルームでございますけれども、ぶくぶくとあぶくが海底面から立ち上っているのが確認できると思います。
 当初、このメタンプルームは、表層型メタンハイドレート、産総研で今調査研究がなされておりますけれども、表層型メタンハイドレートの付随するものとして目印的な役割として考えられていたんですけれども、近年ではこれそのものが研究対象とされているものでございます。
 次に、メタンプルーム、これ性質はどんなものかと申しますと、海底付近は低温高圧のメタンハイドレート安定領域にあります。これ、どういうことかといいますと、左下の方にグラフがございますが、これは温度と水深若しくは圧力の関係ですが、この左下の方に安定領域というのがありまして、低温高圧のところでメタンハイドレートができると。
 これに対しまして、水温が水面から、赤いラインで示しておりますように、徐々に海底面に向かって下がってまいります。大体三百メートルぐらいのところでこの両者の線が交わるんですけれども、ここから下がメタンハイドレートが安定してできるということでございまして、メタンハイドレートというのは、右上にサッカーボールのような形のしたものがございますが、水の分子の中にメタンの分子が取り込まれたような構造をしておりまして、安定領域では安定に存在いたします。
 海底から湧き出したメタンガスは、海水と反応して直ちにこのメタンハイドレートの被膜に覆われて安定な粒子となります。安定な粒子でございますので、右下の写真にありますように、三角形のフラスコのようなものをかざしますと、粒状のまま合体せずに捕集することができます。この粒子、水深三百メートル付近まで浮力で上ってまいりますと、被膜が分解してメタンガスが海水に溶解して、メタンプルームが消滅するというようなことが考えられております。
 次、このメタンプルームの由来でございますけれども、近年の表層型メタンハイドレート研究を通じまして明らかになったところによりますと、メタンプルームは、海底の下層から上昇してくるメタンガスの一部が海底面から湧き出してくるものだというふうなことが分かってまいりました。
 左下に、海底下の構造を音響調査した結果がございます。この白く抜けているところ、ガスチムニー構造と呼んでいますが、マウンドというところの下でございます。ここをセンサーを投入するなどして詳しく分析してまいりますと、右の模式図になりますが、このガスチムニー構造の中は、メタンハイドレートが層状に分布している、同時に、そのメタンハイドレート層と付随して硫化水素であるとか炭酸塩みたいなものもあるということが分かってまいっておりまして、このメタンプルームのガスの湧出量というのは、海底から上昇してくるメタンガスがメタンハイドレート化するもの、それから、この硫化水素ができる反応、嫌気的酸化反応と呼びますけれども、これで消費してしまうメタン量を除いたものが海底面から湧き出してくるメタンガス量であろうというふうなことが考えられるわけです。
 先行研究によって明らかにされたところによりますと、上越沖の海鷹海脚というエリアでは、現地調査によりまして、湧出量がメタンプルーム一つ当たり年間三千トン、大体四百二十万立方メートルであるというふうなことが調査研究で明らかになっております。
 次、なぜこのメタンプルームに着目すべきかということなんでございますけれども、三つあると思います。
 一つは、自然の湧出物でありまして、数万年の単位で持続が可能であるということ。メタンハイドレート層の周辺の堆積物の分析から、日本海では少なくとも三十万から六十三万年前からメタンのガスの湧出は続いていると考えられます。
 相当な湧出量が見込まれるということ。二〇〇九年までに上越沖エリアだけで四十本を超えるメタンプルームが観測されております。また、近年の調査では、国内海域で二百八十五か所のメタンプルームが確認されたというものもございます。このメタンプルーム四十本分、先ほどの推定から考えますと、二〇一八年十一月現在の市場価格にして三十七億円程度ということでございまして、また、産総研の研究では、現在までに発見されているガスチムニー構造は千七百四十二か所ということでございまして、相当な湧出量が見込まれるのではないかと思われます。
 それから、地球温暖化への影響でございますが、メタンの地球温暖化係数は二酸化炭素の二十五倍ということでございまして、自然界に単純に放出されてしまうよりも、火力発電などでエネルギー利用を図る方が温室効果抑制の可能性があるのではないかというようなことを考えております。
 それでは、近年のこのメタンプルームに関する研究の動向について御紹介いたします。
 研究対象は二種類のメタンプルームというのが最近の流れでございまして、一つは、今お話しいたしました深海、メタンハイドレート安定領域のガスチムニー構造におけるメタンプルームです。日本近海では、上越沖とか隠岐トラフ、網走沖、十勝沖、日高沖などに存在します。それからもう一つは、大陸棚の外縁などの浅い海、メタンハイドレートの安定領域よりも浅い領域においてメタンプルームが発見されております。海外の例でいえば、アメリカのノースカロライナ、それからノルウェーのスピッツベルゲン島、日本近海では佐渡の北東沖や最上トラフなどでございます。
 環境への影響評価の観点が主として海外ではなされていたんですけれども、最近では資源として捉える研究が増加傾向にあります。アメリカのエネルギー省であるとかドイツの経済エネルギー省が資金を出しているということが分かっております。
 それから、賦存形態に関する研究は大きく増加傾向にありますけれども、まだまだ回収技術に関する研究はないというような状況でございます。
 では、二、三事例を紹介したいと思うんですけれども、まず初めは国内の事例でございまして、新潟沖のエリア、上越海丘、それから海鷹海脚、佐渡北東沖でございます。A、B、Cと地図の中にエリアを示しております。
 A地点、B地点、こちらは五年間の調査で四十か所以上のメタンプルームを確認しておりまして、左下の写真にありますように、三角形のフラスコのようなものにためて湧出量を測定いたしますと、年間三千トン、四百二十万立米というような量が出ているところを確認しております。
 C地点は私どもが二〇一五年に調査したところでございますが、三十七か所のメタンプルームを確認しておりまして、そのうち海面に到達するものも存在する、水深百七十八メートルから出ている、こうした安定領域よりも浅い海でもあり得るということが分かってまいりました。
 次は海外の事例でございますが、左側がノースカロライナでございます。こちらでは五百七十ものプルームが確認されておりまして、そのうち四百四十が安定領域よりも浅い海にあるということで、この存在確率を外挿いたしますと、大体この地域には数万のプルームがあるんじゃないかというようなことが報告されております。
 右側はノルウェーのスピッツベルゲンでございますけれども、この西岸エリアにメタンプルームが数百キロメートルにわたって帯状に存在しておりまして、多くは浅い海にありまして、場所によっては、この下の図にありますように、海面にまで到達しているものが多く存在するということでございました。
 こうした過去の既往の研究をまとめて、メタンプルームがどんな状態であるのかというのを模式的に書いたのが次の左側の図でございまして、メタンプルームの賦存する形態というのは二つ、深海におけるマウンドの中のガスチムニー構造から湧出しているものに加えまして、大陸棚外縁などの安定領域上限より浅い海からの湧出があるという、この二つであろうということです。
 この図の中に黒い点線がございますが、メタンハイドレートの先ほど御説明いたしました安定領域の上限に加えまして、地中には下限というものが存在します。これは、地熱があるために深くなればなるほど温かくなっていくからでございます。この点線より内側であればメタンハイドレートができるわけなんですけれども、恐らく、この点線に沿ってメタンガスが移動して、その浅い領域のところで、安定領域の上限を超えた辺りで湧き出しているというのがこの浅い海のメカニズムではないかということが今考えられております。
 右側の地図は、国内の海域においてメタンプルームが確認されている地点でございまして、この中でガスチムニー構造を伴うものと伴わないものと混在しているような状態でございまして、ガスチムニーがなくても、例えば最上トラフであるとか佐渡北東沖、それから潮岬、こういったところはメタンプルームが確認されております。
 では、このメタンプルーム、どうやって資源化していこうかというような観点から回収技術の検討を行った事例についてお話をいたします。
 システムでございますけれども、まず膜状のもので捕集して陸まで運べばいいんじゃないかというような観点で考えますと、膜構造物、それから揚収管、揚収ポンプ、洋上のプラットフォーム、それからプラットフォーム上に置く洋上のガス精製の設備、それからパイプラインとか船の輸送とか、そういったものを考えるということになります。
 右上の写真二つありますが、私どもが、小型の膜構造物を使ってプルームの捕集実験であるとか、海底で展開できるのかというような実験を試みた例でございますが、こういった膜構造物のメーカー、それから海洋土木の会社、それからガスのプラント、化学品メーカーなどの協力を得まして、基礎データを集めまして試算した例でございます。
 何を評価するかといいますと、次のページにありますとおり、エネルギー収支分析と経済性評価でございまして、エネルギー収支といいますのはEPR、エナジー・プロフィット・レシオといいますが、投入エネルギーに対して生産エネルギーがどれぐらい出るかということでございまして、一を超えなければそもそも意味がないというような数値でございます。
 投入エネルギーというのは設備を造るエネルギーとそれから運用するエネルギーに分けられますが、設備のエネルギーというのは、素材を用意して、その素材から機械を造って、現場まで運んでそこで組み立てるという一連の作業でございます。運用については、取り出したガスを陸まで運ぶエネルギーと、それから設備を保守、修繕するエネルギー、これが含まれます。
 経済性評価につきましては、コストを単位熱量当たりの円で評価いたしますけれども、資本費、運転維持費、燃料費といったものが考慮されてコストに反映されるということでございまして、これライフサイクルといいまして、このプラントを造って運用して廃棄するまでの一連の全てを考慮いたしますので、三十年とか四十年とかの運営で考えるために、割引率、今回は三%と仮定いたします。それから、コストにつきましては、二〇一八年十一月時点の天然ガス価格、一・二二円パー・メガジュールというのを参考までにここに挙げております。
 計算条件でございますけれども、例えば回収サイト、上越沖の海鷹海脚エリア、水深一千メートル、離岸距離五十キロとしまして、メタンの湧出量、先ほどの推定値三千トン・パー年、一つのプルーム当たりでございます。アンカー付きの膜構造物、直径二十メーターのものを用意いたしまして、その膜構造物を一から五基、一つ当たりの膜が一個から十個ぐらいのメタンプルームをカバーするような運用をしてみたいと。産出プラントは三十年間稼働すると。ベースケースをパイプラインで輸送といたしまして、例えばそのパイプライン輸送をCNG、圧縮天然ガスの船で輸送した場合であるとか、これ近くに岩船沖の油ガス田のプラットフォームがございますので、そこの洋上設備を流用することで設備に係る費用を低減したらどうなるかとか、様々な検討をいたしました。
 検討結果の一例を御紹介いたしますと、パイプライン輸送の基本ケースでございますが、膜構造物の設置数であるとか膜一つ当たりがカバーできるプルームの数に比例いたしましてEPRという値は増加してまいります。検討範囲のEPRの最大値は二八・五、得られるエネルギーは投入エネルギーの二十八倍強というようなものでございました。EPR最小値は〇・六、一以下でございまして、こういった条件は成り立たないというような検討結果でございます。
 この投入エネルギー、内訳を見てまいりますと、最も大きいのは運用エネルギーでありまして、その中でも輸送エネルギー、すなわち洋上設備の運転エネルギーが最もエネルギーが掛かるというようなものでございました。
 では、これ、コストはどうなるかと申しますと、次のページでございますが、膜構造物の設置数であるとか膜一つ当たりがカバーするプルームの数が大きくなるに従いましてコストは安くなりますけれども、次第に数のメリットが低下するというような状況でございまして、どこかに収束していくような傾向が見られました。この検討範囲のコスト最小値は〇・六円パー・メガジュールという値でございました。コスト最大値は二十七・二円パー・メガジュールでございました。コストの内訳を細かく分析いたしますと、最も寄与が大きいのは資本費のうちの初期投資、すなわち設備に係る費用であるというようなことがこれから分かります。
 次に、では、この基本ケースに対しまして、船で輸送した場合と岩船沖プラットフォームを経由した場合でどういうような結果になるかというのが次のページでございます。
 左上、EPRにつきましては、パイプライン、岩船沖プラットフォーム経由、それからCNG船の順に高くなるというような傾向、コストにつきましては、岩船沖プラットフォーム経由、CNG、それからパイプラインの順に低いというような傾向が出ました。コストの内訳を分析いたしますと、岩船沖プラットフォーム経由であるとかCNG船のコストが安いのは、初期投資の抑制が大きく寄与しているということが分析できます。
 以上、これはあくまで現時点で得られる各要素のデータを積み上げて試算した結果でございまして、今後更に詳細に分析していく必要があると考えております。
 次に、今の試算に基づきまして、ちょっとエネルギー安全保障とそれから地球温暖化の抑制の観点から考察してみたいと思います。
 メタンの燃焼の式が一番上に出てまいりまして、メタン一グラムを燃やしますとCO2が二・七五グラムできるというようなものでございます。メタンの地球温暖化係数は二五でございますので、例えばこれ、火力発電のエネルギーで利用することを考えてメタンを燃やしますと、質量ベースで考えますと、温暖化の効果を約九分の一程度に抑制することが可能であると考えられます。
 今回のこの検討範囲のEPR最大ケースに対しまして最新鋭の天然ガスだきのコンバインドサイクルを適用した場合どのようなことになるのかと試算いたしますと、発電電力容量が百十メガワットのプラントに対しまして、ライフサイクルCO2排出量原単位といたしましてこれはマイナス二百十・一グラムCO2パー・キロワットアワーということ、それから、温室効果ガス排出削減効果といたしましては年間約二百六十万トンのCO2の削減が可能であるというような試算になります。この米印のところ、メタンプルームの利用によるネガティブエミッションの効果、温暖化効果を九分の一程度に抑えられるという効果と、それから輸入するLNGを削減できる効果、この二つを加味しております。
 最後でございますが、これらメタンプルーム、検討してまいりましたが、国産資源として今後利用するために必要なことについて述べさせていただきたいと思います。
 メタンハイドレート由来の産出国になることの利点を分析したいと。エネルギー安全保障の観点からエネルギー自給率の向上を図るというような議論であるとか、温室効果ガス排出量削減につきまして、先ほどのネガティブエミッション効果に加えて、LNGの輸入量が減るであるとか石炭火力の割合が減るであるとか様々なことが考えられるので、そういった議論を進めていく必要があるということ。
 それから、産出プラントを建設する視点からのポテンシャルを調査する必要があるということ。定点観測によって年間湧出量の正確な把握であるとか工学的視点からの現地調査、それから、これも大事な観点だと思いますが、漁業との共存、それから陸上インフラ、パイプラインを引くのか、そういったもう発電所に直結するのかといったことも含めまして立地点を考えていく必要があると思います。
 それから、回収技術の確立に向けまして様々な試験をしないといけないと考えておりまして、要素試験のデータを積み上げましてEPRそれからコスト予測の精度を上げていく必要があるということと、実証試験によって早期の国産資源化を図る道筋をつくりたいというふうなことを考えております。
 私からは以上です。

発言情報

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発言者: 渡邊裕章

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日付: 2019-02-27

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会