鮫島正浩の発言 (農林水産委員会)
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○参考人(鮫島正浩君) ただいま御紹介をいただきました信州大学工学部特任教授の鮫島正浩でございます。
お手元に私の意見陳述の要旨が配付されているかと思いますので、それに従って陳述をさせていただきたいと思います。
まず最初に、簡単に自己紹介をさせていただきます。
私は、工学部の人がなぜここにと思われるかもしれませんが、今年の三月まで東京大学大学院農学生命科学研究科に在職しておりまして、三十六年間勤務いたしておりました。それで、教授、それから副研究科長、それから評議員等を歴任した後、退職して、現在は信州大学工学部の物質化学科というところで特任教授をしております。それからあと、日本学術会議の今連携会員をやっておりまして、林学分科会というのがございまして、そこを担当しております。
専門分野は林産学、基本的には木材とか、それから林産物、キノコ等に代表される特用林産ですね、そういうものを扱う分野でございます。ただ、だんだん領域も広がってきて、バイオマス全体を面倒見るということでバイオマス利用学、さらに、基礎学としては、森林生物化学と書いてありますが、バイオテクノロジーをベースにいろんなことをやろうと思っています。
学協会といたしましては、日本木材学会、これが私のベースの学会で、理事、会長を歴任して、現在は監事をしております。それから、日本エネルギー学会、これはバイオマス関係で、バイオマスエネルギーの関係をやっております。それから、協会としては、日本木材保存協会の会長を今やっております。この協会は、木材を長く安全に使っていくということで、木材の防腐、防蟻、それから耐候、そして耐火も最近含めるようになりましたが、木材利用において安心、安全を確保する、こういう役割を担っております。それから、バイオインダストリー協会ということで、これはバイオテクノロジーをいかに利用していくかと、そういう分野でございます。
それから、社会貢献といたしましては、林政審議会の委員を十年間担当させていただきまして、そのうち二〇一五年から一八年まで四年間会長を務めております。その中で、現在の森林・林業基本計画、これ二〇一六年に策定されたものですが、その取りまとめは林野庁様と一緒にやらせていただいた、そういう経緯がございます。それから、あと内閣府の環境未来都市推進委員会の委員も担当しております。
それで、ミッション、私の使命ということでございますが、木材及びバイオマスの需要拡大に向けたイノベーションの推進、それから木材及びバイオマス利用に基づく地域社会と地域経済の活性化、これがミッションでございます。そういうこともありまして、現在、農林水産技術会議の下に「知」の集積と活用に関する協議会がございまして、そこにこの関係のプラットホームを立ち上げて、推進を進めているという状況でございます。
前置きはそのくらいにさせていただきまして、次に陳述の内容ということでございますが、まず最初に我が国の森林・林業・木材産業の現状と課題ということでございます。
ここに書いてございますように、我が国の国土面積の七割は森林で覆われていて、これはフィンランドやスウェーデンとほぼ同じ森林率、それから面積的にもほぼ同程度ということでございます。それで、現在我が国は、森林蓄積、これは資源として利用可能な、木質資源として利用可能な蓄積量は五十億立方メートルを超えて、さらに年間八千万立方メートルが増加していると、こういう状況にございます。それで、この量というのは我が国の現在の一年間の木材総需要にほぼ匹敵するということで、それは大変な量でございます。
そして、一方で、平成二十九年度の国内での国産材の生産量というのは三千万立方メートル弱ということで、自給率大分上がってきたというものの三六%ちょっとを超えたぐらいということで、これは同じ森林国であるフィンランドやスウェーデンなどに比べるとかなり低くて、それぞれの国は、我が国よりも二倍ぐらいの、二倍以上の国産材生産を行っていると。こういうことを鑑みると、我が国というのは、更に国産材生産を増やすということと、それからその下流にある木材産業や木材需要というのにもまだまだ大きな展開性がある、発展性があるということが言えるかと思います。
それで、我が国の人工林の多くというのは、戦後の再造林や高度成長期における拡大造林によって形成されたというのは御存じのとおりかと思いますが、現在一千万ヘクタール程度ございます。そして、その面積の半分以上が樹齢五十年を超える樹木によって構成されている状況にありまして、まさに木材の収穫期、主伐期を迎えていると、そういう状況にございます。
ということから、主伐と再造林を適切に組み合わせて人工林の世代交代を行っていく、そういう段階に今なってきているわけですが、そのためには森林機能の維持とそれから国産材の安定供給ということを併せて考えていく、そういうことが重要な課題になっているということでございます。
これらを踏まえて、平成二十八年五月に改正された森林・林業基本計画においては、二〇二五年、令和七年でございますが、国産材供給量の目標を年間四千万立方メートルを定めて、木材総供給量に対する自給率を五〇%以上、これを目指している状況でございます。
一方、森林には、木材生産以外にも、国土保全、水源確保、地球環境の維持を始め、様々な多面的な機能というのがございます。また、森林の多くは振興山村地域等の過疎地域に分布しているということから、これらの地域に住む人々の生活基盤や地域の将来にとっても適切な森林経営管理というのが重要な課題と言えます。したがって、国産材生産の増大においては、森林資源の提供者である地域の理解を得て、地域の環境維持や地域の活性化とのバランスをよく考えていくということが必要になります。
次に、国有林野の管理経営の課題ということで、国有林野というのは、面積は七百五十八万ヘクタールで、国土の二割、そして森林面積全体の三割を占めておりますが、その九〇%の面積は保安林に指定されておりまして、これは水源の確保だとか山地災害の防止、それから生物多様性の保全、良質な社会空間や人の健康、レクリエーション等への貢献などの公益的な価値が非常に高いということになります。
その中にあっても、国有林の面積の三割、つまり二百二十一万ヘクタールは人工林であって、この面積というのは実は我が国の人工林面積の二割を占めております。そして、平成二十九年には年間四百四十万立方メートルの木材が国有林から供給されて、これは国産材供給量全体の二割近くに相当するということでございます。そういうことから、国産材の安定供給のために国有林野の人工林を活用してこれを推進していくということは、それから、そのために必要な法的な整備を進めていくということは大変重要な課題ということになります。
一方、国有林の成立の経緯、それからその機能、それから地域特性というのは極めて多様で、それで、国有林をめぐる歴史をたどりますと、そもそもその事業は企業的に運営するための独立採算制を前提とする特別会計によって経理されてきたという経緯がございます。ただ、御存じのように、木材の素材の価格が下落して経営状態が悪化し、国有林野の事業の抜本的な改革というのを一九九八年、平成十年に公益的機能の維持増進ということを旨に方針が打ち立てられたということがございます。その後、平成二十五年、二〇一三年に国有林の一般会計化に至って、その公益的な位置付けというのが明確になったと言えます。
以上を踏まえますと、今般の法律改正においても、国有林事業の公益的な位置付けは、これは担保しなければいけないし、その価値の維持向上に資するものでなければならないと言えます。
第四番目といたしまして、今般の法案の意味付けと課題ということでございますが、まず、そもそも現在の森林・林業の改革というのは、民主党政権時代の平成二十一年十二月に我が国の森林・林業の早急な再生を指針とした森林・林業再生プランというものが策定されて、さらに、翌年に同プランの実現に向けた改革内容を森林・林業再生に向けた改革の姿として取りまとめた、この辺りがスタートになっているわけです。
そして、これに同調するように、木材の需要拡大を目指して、平成二十二年、二〇一〇年の五月には公共建物等における木材利用の促進に関する法律が制定され、そして、これらを踏まえて、平成二十三年、二〇一一年の七月に森林・林業基本計画が策定されて、そこでは、二〇二〇年の目標値として、国産材の供給量の目標値として三千九百万立方メートル、そして二〇三〇年の、これはあくまで参考値ですが、目標として五千万立方メートルを国産材で賄っていくという、そういう目標を掲げております。
さらに、二〇一一年の八月には電力事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法が制定されて、その後、各地で木質バイオマス発電所の建設や運用が始められるようになったということで、この十年間に木材の需要というのは千九百万立方メートルくらいから二千九百万立方メートル以上、一千万立方メートルも増加するに至ったわけです。
それで、このような木材供給量の増加というのを支えるためには森林資源の持続的な安定確保というのが求められるわけですが、その中で、森林整備の推進と主伐後の再造林の徹底というのを図っていく必要がございます。その必要性を受けて、平成二十八年に策定された森林・林業基本計画では、このさきの基本計画を五年間先送りする形で、二〇二五年の目標値を四千万立方メートルにするとともに、主伐と再造林を一体化し、これを推進していく方針が打ち立てられたということになります。
それで、民有林につきましては、既に新たな森林管理システムの構築というもので森林経営管理法が昨年策定されて本年から施行されているということであり、それから、御存じのように、森林環境税、森林環境譲与税の導入も行われております。
これに対して、国有林については、森林・林業基本計画の中では、林業の成長産業化への推進への貢献の役割を積極的に果たすと記載されているにもかかわらず、これを推進するための制度、それから動かすための法整備がまだなされていないという状況にあります。その意味におきまして、今般の国有林野の中長期的な管理経営ビジョンに基づいた上での国有林からの木材安定供給を推進する、この法律の制定は必要であると言えます。
ちょっと時間超過しちゃったんですが、課題としては、ここに書いてあるとおり、国有林野の多面的な公益的な機能を担保するということが前提にございますので、これを重視して慎重にこれは対応していく運用面での配慮が大事ということになります。そのためには、無理のない範囲で、規模で試行的に事業を始めて、綿密な制度設計を行い、さらに、実効性のあるルール作りやチェックを行った上で事業展開を図るべきであるというふうに思っております。そして、各地域の持っている国有林のキャパシティーと特性を考慮しつつ、事業の成果が地域の森林整備や地域の活性化につながっているかどうか、地域の民有林事業との協調関係が取れているかどうかについて、持続的な検証を行っていく必要があると思っております。
ちょっと時間超過で申し訳ございませんでした。