神田秀樹の発言 (法務委員会)
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○神田参考人 おはようございます。神田と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、この委員会にお招きいただきまして、意見を述べさせていただく機会をいただき、まことにありがとうございます。
今回の会社法改正法案でございますけれども、法制審議会の会社法制部会において審議されたところに基づいて作成されているというふうに理解しております。
私は、御縁がありまして、その法制審議会の会社法制部会における審議に部会長として参加させていただいた者でございます。そういうこともありまして、今回の法案の内容に賛成をしており、この法案による会社法改正の成立を期待している者でございます。
今回の会社法改正ですけれども、会社法という法律は、平成の十七年に制定されまして、その後、平成二十六年にまとまった改正がされまして、それ以来、今回が二度目のある程度のまとまった改正ということになります。今回の改正も、平成二十六年の改正に続きまして、我が国の企業社会そして証券市場にとって重要な改正であると思います。
今回の会社法改正の理由ですけれども、これは法案の提出理由にあるのですけれども、会社をめぐる社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営及び取締役の職務の執行の一層の適正化等を図るということであります。
私の言葉で言いますと、我が国企業に対する信頼を高め、我が国企業の持続的な成長と繁栄を期待するために会社法を洗練化するというのが今回の改正の目的であると言っていいかと思います。会社法、どちらかというと地味な法律ですけれども、それをより洗練化することによって、日本の企業そして経済にプラスになるようにということではないかと思います。
平成二十六年に成立、公布されました会社法改正法の附則二十五条という規定がありまして、先生方既に御存じのことで、繰り返しになって恐縮ですけれども、次のような規定がございました。「政府は、この法律」、この法律というのは二十六年の改正なんですけれども、この「施行後二年を経過した場合において、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、企業統治に係る制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとする。」
そこで、この、見直し規定と言っているんですけれども、に基づきまして、政府としましては、平成二十九年の、一昨年の二月九日に開催されました法制審議会の第百七十八回会議におきまして、当時の法務大臣から法制審議会に対して、次のような諮問がされました。
近年における社会経済情勢の変化等に鑑み、株主総会に関する手続の合理化や、役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備、社債の管理のあり方の見直し、そして社外取締役を置くことの義務づけなど、企業統治等に関する規律の見直しの要否を検討の上、当該規律の見直しを要する場合にはその要綱を示されたいというものでありました。
この諮問を受けまして、法制審議会では、会社法制、これには(企業統治等関係)とついていますけれども、その部会を設置しまして、この部会は、平成二十九年四月二十六日に第一回会議を開催して調査審議を開始しましたけれども、平成三十年、昨年の二月十四日の第十回会議におきまして中間試案というのを取りまとめまして、それで、法務省の民事局参事官室において、意見募集手続と言っておりますけれども、いわゆるパブコメ、パブリックコメントの募集手続が行われました。
この意見募集をした結果、この募集期間中に六十五の団体と百二十名の個人の方々から意見を寄せていただきました。その後、法制審の部会は、これらの意見も踏まえて引き続き調査審議を行いまして、平成三十一年、ことしでございますけれども、一月十六日の第十九回会議において、部会として要綱案と附帯決議というものを決定いたしました。この部会の要綱案と附帯決議は、平成三十一年、ことしの二月十四日の法制審議会の第百八十三回会議に付議、報告されまして、法制審議会において、要綱案と附帯決議のとおりの内容で、要綱が取りまとめられ、また附帯決議がされ、これが法務大臣に答申されました。これに基づいて今回の法案が作成され、国会に提出されたものと理解しております。
今回の改正法案も、会社をめぐる社会経済情勢の変化と会社法のもとでの実務経験等を踏まえまして、その中で指摘されてきましたさまざまな課題に対処し、会社法を洗練化しようとするものであります。法制審議会の会社法制部会での審議におきましては、個々の問題について、あるべき法改正の姿をめぐって意見が対立することもありましたけれども、活発な審議を経て、今回の改正法案にありますような内容の法改正を提言するに至りました。
そこで、以下では、お手元に配付させていただきました資料に沿って、主要な改正事項について、ごく簡単に、一言ずつ述べさせていただきます。既に御存じのことばかりかもしれませんが、お許しをいただければと存じます。
今回の改正法案ですけれども、大きく言って三つの柱というか分野に分けられます。一つは株主総会関係です。二つ目は取締役関係です。三つ目をその他と便宜上分類させていただいております。
そこで、まず、株主総会関係です。二つの課題について述べさせていただきます。
株主総会関係の第一の課題は、株主総会資料の電子化ということです。
現在の会社法のもとでは、株主総会資料というのは株主総会の招集通知と一緒に郵送されてくるというのが通常でして、原則として、したがって郵送するということになっています。
今回の改正法案ですけれども、ウエブサイトで株主総会資料を掲載すればいいということにします。これは、ITの時代なのである意味当然のことだと言えるのかもしれませんけれども、ただ、例外として、株主は、書面で下さいと言えば書面での提供を請求できることとしますので、そういう株主はそれを個別に請求すれば書面で受け取ることができるということになります。
今回の改正の趣旨ですけれども、このITの時代に、あるいはスマホの時代に当然のことかもしれませんけれども、時間の節約、そして費用、費用といっても社会的な意味での費用とお考えいただいた方がいいと思いますけれども、その節約、そして株主への情報提供の充実、これは、インターネットになれば、より多くの情報を提供することが可能になるし、容易になると考えられるからです。
株主総会関係の二つ目は、株主提案権です。
株主の提案権につきましては、現在の会社法は、いわゆる濫用的な行使に対処する規定として、数ですとか内容で制限するという規定は一切存在しておりません。
そこで、今回の改正法案ですけれども、数と内容の両方について濫用的な行使に対処する規定を設けるというものです。
趣旨ですけれども、これはこれまで、これまでといっても、若干、問題があったのが七年前とか八年前なので、やや冷めている感じはあるんですけれども、これまでの実務で過去に問題とされてきました株主提案権の濫用的な行使を防止するということになります。
次に、取締役関係です。取締役関係は五つ述べさせていただきます。
第一は、取締役の報酬等です。
現在の会社法では、取締役の報酬等を株主総会決議で定める場合の定め方など規律が非常に形式的になっておりまして、そこで、改正法案は、これを洗練化して、取締役の個人別の報酬等の決定方針というものを取締役会で定めることなどといたします。
趣旨は、抽象的に言いますと、取締役に対する適切な職務執行のインセンティブ付与ということになりますけれども、取締役の報酬等を決定する手続などの透明性を向上させるということ、そしてまた、会社が業績等に連動した報酬等をより適切かつ円滑に取締役に付与することができるようにするということであります。
二番目、会社補償制度です。
この言葉は日本語として非常にわかりにくくて、余り日本ではまだなじみがないのではないかと思います。補償という言葉なんですけれども、英語では、コンペンセーションではありませんで、インデムニフィケーションという英語です。これを日本語にすると同じ補償になるので、非常にわかりにくいです。一言で言えば、取締役が職務執行に関連して支出した費用などを一定の条件のもとで会社が支払うことを意味します。これは余り日本でなじみがありませんけれども、日本の現在の会社法には会社補償制度は存在しません。
そこで、会社法、今回の改正法案は、会社補償制度を新設することにしております。この制度は英米その他の諸外国では普通に利用されておりまして、こうした制度が整備されていないのは我が国ぐらいであります。この制度も、我が国の会社法を洗練化するものであると言っていいと思います。
三番目は、会社役員賠償責任保険です。
これはいわゆるDアンドO保険というので、DアンドO保険というのは、ディレクターズ・アンド・オフィサーズ・ライアビリティー・インシュアランスなどとも言われていますけれども、あるいは単にインシュアランスと英語で呼ばれているものです。この保険は日本でもかなり広く利用されておりますけれども、現在の会社法にはこれについての規定が存在しません。
そこで、改正法案は、手続等の規律を新設いたします。この改正も、我が国の会社法を洗練化するものと言えます。
四番目、社外取締役です。
平成二十六年改正の際にはさまざまな議論がございましたが、現在の会社法は、会社法としては社外取締役の設置を強制しておりません。
そこで、今回の改正法案は設置を強制いたします。これは、内外の投資家が社外取締役の設置を求めてきておりまして、我が国証券市場への信頼を高めるためにも、会社法としてこれに応えるというものでございます。
五番目、社外取締役への業務委託という項目がありますが、ちょっと時間の関係もあって省略させていただきます。
最後に、その他、二つ述べさせていただきます。
一つは、社債の管理です。
現在の会社法のもとでは、社債管理者を置かない社債については、社債権者がみずから権利の行使等をしなければならなくなっています。しかし、これは不便であります。
そこで、改正法案では、社債管理者を置かない社債について、社債管理者よりも裁量が限定された社債管理補助者という制度を新設いたします。改正の趣旨は、社債権者の保護と社債管理の充実ということになります。
もう一つ、株式交付制度と呼ばれている新しい名称の制度を新設いたします。
これは、私の配付資料でA社、B社と書いているんですけれども、Aという株式会社がBという株式会社をA社の子会社にするために、Bという会社の株主からB社株式を譲り受けて、対価としてA社の株式を交付する、こういう場面で、現在の会社法のもとでは、一〇〇%子会社にする場合には株式交換という手続があるんですけれども、その場合を除きますと、つまり、例えば五一%で子会社にする場合などは、B社株式を現物出資財産とする募集株式発行手続というのがA社側で必要になります。
今回の改正法案では、この場合に、A社側で組織再編手続をとることによって募集株式発行等の手続はしなくてよいということにし、それを株式交付と呼んで、新しい制度として新設するものです。改正の趣旨は、事業再編等の円滑化に資するというものです。
以上、今回の改正法案における主要な改正事項について述べさせていただきました。話が大変大ざっぱで申しわけございませんでしたけれども、以上で私の意見陳述を終えさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)