藤田哲雄の発言 (経済産業委員会)

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○参考人(藤田哲雄君) それでは申し上げます。
 資料の一枚めくっていただきまして、我が国の企業のDXの取組が遅れているというところからお話し申し上げたいと思います。
 先ほど青山参考人から、DXがどのような意義があるかと、その中で、世界の中で日本がどのような状況に置かれているかということについては御説明いただきましたけれども、実態といたしまして、我が国の企業の取組は極めて遅れているというふうに言わざるを得ないかと思います。
 我が国政府は、先ほど御紹介ございましたように、ソサエティー五・〇というビジョンを掲げて、経済発展と社会的課題の解決の両立を図ろうとしてございます。このビジョン自体は、他国に比べましても非常に大きなものでございまして、全てを包括するようなすばらしい内容になっている反面、それが、全体が大き過ぎまして各企業に落とし込まれていないというその隙間がございまして、企業はなかなか、どこから取り組んだらいいのかということについて、そのビジョンだけではなかなか手掛かりを得られないというような状況にあるということかと思います。
 そうはいいましても、今そのDXがバズワードになってございまして、そのはやりに後れを取らまいということで、POC、概念実証という実験のようなものを盛んにやってございます。そういう取組は、年間、大企業ですと何十個も同時並行してやっているわけですけれども、それが実験に終わっていまして、それから新しい事業部を立ち上げて新しい産業が興ったということは、ほぼ寡聞にして聞かないというような状況になってございます。
 次でございますけれども、三ページでございます。
 じゃ、なぜこういうふうに日本でDXが進まないのかということでございますけれども、先ほども少しお話ございましたけれども、これは、経営者がこのDXに対する認識というものにつきまして余り深くまだ理解されていないということに加えまして、それに対応した企業の体制が整っていないということが一番大きな原因ではないかというふうに考えてございます。
 よく聞く例でございますと、ある企業の社長が、AIということが最近世間ではやっている、で、これが新しい競争の種になりそうだから、それを活用して当社でも何かやってみたらどうかということで、先ほど申し上げましたPOCということが取り組まれるわけでございますけれども、その一事業部にそれが下りてきますが、それがいろんな部署と本当は連携しなくてはいけないところ、その事業部の中だけで解決しようとして、それがうまく展開していけないということでございます。企業の中にもシステムを取り扱う人材、部署がございますけれども、大抵のそういう企業のそういうシステムを取り扱う部署では、その根本的な経営戦略に関わってこなかったということが多いかと思います。
 と申しますのは、これまでのシステムというのは、経営層で決めました経営戦略を、それをシステムとして鏡のように映していくというような作業をずっとしていたわけですけれども、最近のこのDXというのは、いろんな取組を進めながら、戦略を常に走りながら考えていくというようなアジャイルという開発方法が主体になってございまして、従来のそういう上から下りてくるウオーターフォール式のシステムの開発のやり方では、到底これでは対応できないということになってございます。
 それに加えまして、このDXが進まないということにつきましては、もう一つ、投資の判断の基準ということがございます。
 最近のデジタルの世界の価値創造といいますのは、データを中心に価値をつくっていくということなんでございますけれども、これがすぐさま金銭的な価値に転換されるということはなかなか難しく、一旦はこの知識の習得ですとか、それからユーザーの心理的な満足とか、そういったことにかなりその価値が分散されているということがございます。したがいまして、その従来の経済的価値だけで投資の是非を判断するには、ちょっとなかなかすぐうまくいかないということでございます。
 翻って考えてみますと、例えば、アメリカの大手のアマゾンとかそういった、こういうDXの最先端を行くような企業はどんどん投資をしているわけですけれども、すぐにもうかったということではなくて、長い間こういうこと、DXを推進していろんな知識を蓄積して初めてその成果が出てきているということを考え合わせますと、短期的な利益でDXを進めていくということはなかなか難しいということでございます。
 それから、日本のITの位置付けですね、これが非常に、企業におけるITの位置付けがアメリカとはかなり異なっているということが四ページにございます。
 対照的でございますので少し申し上げますと、アメリカでは戦略をITで具現化するという考え方から、ITを主軸として戦略を考えるパラダイムへ転換しております。経営層にはITに精通した担当役員、例えば、チーフ・デジタル・オフィサーですとかチーフ・イノベーション・オフィサー、チーフ・インフォメーション・オフィサー、あるいはチーフ・テクノロジー・オフィサーなどを置くことが多いということでございます。加えて、多くのアメリカのユーザー企業は自社内にそのITを自分で開発できる人材を多く抱えてございます。それゆえに、素早く戦略をITで実装できるという仕組み、構造になっているということでございます。
 それに対しまして、我が国では、システムの開発の主な目的が業務効率化の追求に置かれていたということがございましたので、システムの企画に経営層が直接関与することが少ない、ユーザー企業の既存業務部門が中心となって行うということが長く行われてきました。そこでは、既定の経営戦略や既存サービスを前提として、それを実現する手段としてITが位置付けられて利便性、効率性が追求されてきたという、この流れをずっと今も引きずっているということでございます。
 次に、五ページめくっていただきまして、このDXを進めるためには、やっぱり経営層によるデジタル戦略の策定が必要だということでございます。
 既存の業務を前提として自動化とか省力化を推進する従来のIT化ではなくて、新たに価値創造を行うデジタル戦略が必要になっているということでございます。その価値創造の源泉がデータへと移行しつつある中、データを中心に企業の価値創造の仕組みを再構築する必要があるということでございます。
 こういう価値創造の仕組みを再構築するためには、一部署だけではこれは解決できませんで、社長以下、その企業全体がそういうことに取り組まなければいけないということでございます。したがって、経営戦略とデジタル戦略を一体として考える必要があるということかと思います。
 それを図式的に六ページに示しましたけれども、これ、従来の日本の企業のITのつくり方、発想の仕方というのは上の方でございます。
 企業は、経営層から何かその経営戦略を指示をして、システム部門に何かこれをシステムで実装してくれというふうに指令が出ると、そうすると、そのシステム企画の部署がその中で企画を考えて、それを外部のシステム開発業者に委託して開発をするということで、ここには三つのその部門がそれぞれ分かれてしまっているということでございます。これでは経営層が、最後のつくっているところということの現場が非常に遠くて、何が起こっているのか、どういうことができるのかということについてはほとんど関知していないという、こういう状況になっております。
 ところが、最近のそういう新しいデジタルトランスフォーメーションの現場で成功しているところはどうなっているかというのがこの下の方でございます。
 ユーザー企業におきましては、CDOと言われるそのデジタル戦略を所管する役員等が、システム開発人材と密に連絡を取りながら、そこで併せてその戦略とシステムの企画を練っていると。それから、システム開発の方につきましても、ITベンダーがそのユーザー企業と対話をしながらその実装をしていくと、こういった形になってございます。やはりデジタルトランスフォーメーションを進めていくためには、こういった形にしていきませんとなかなかうまくいかないということでございます。
 七ページでございますけれども、こういった経営者のデジタル戦略を担保するためには、やはりこのデジタルガバナンスということが重要かと思います。
 企業の成長に向けたそのビジョンの構築それから共有、それから、先ほど申し上げましたように、新しい価値創造の仕組みを実現するような体制の構築、それから経営資源の適正配分、それからリスクコントロール等ですね、このデジタル化に対応した観点からガバナンスを確立して普及させていくことが有効かと思います。
 ただ、この戦略の中身は個々の企業の経営的判断に委ねなければいけないと思いますけれども、何を整備しなければいけないかと、何をしなければいけないかということについて多くの企業はまだよく分かっていないというような状況でございますので、そのガイダンスとして指針を示すということには大きな意味があるかと思います。
 さらに、そういう情報が公開されることによって、市場の力を活用する、あるいはそのステークホルダーとの対話が活性化するという意味におきまして、これは企業のDXの推進に向けて強く後押しする力になり得るものと理解してございます。
 それから最後に、アーキテクチャーについて一言申し上げます。
 本法案では、もう一つの柱といたしまして、このアーキテクチャーという共通の設計仕様につきまして、IPAを中心にこれを広めていこうというような観点が盛り込まれてございます。
 先ほどのDXの話でございますけれども、DXはデータの組織横断的活用が重要であるというにしても、既存のシステムはそのような連携を想定してこなかったということが実態としてございます。個々のシステムを都度接続する方法もありますけれども、それはずっとやり続けるとシステムが複雑化するというような弊害がございます。
 ここで、共通の技術仕様は公共財として利用する方がよいということなんですけれども、我が国はそれの担い手になる機関がなかなかなかったということでありまして、これがIPAとしてそういう役割を持たせるということが適切かと思います。
 九ページでございますけれども、IPAをプラットフォームとして、専門家、業界関係者の意見を集約して、分野ごとにアーキテクチャーを設計するということは、これは非常に、その協調領域を早く固めることによって無駄なそういうアーキテクチャーの争いというようなことがなくなって、DXが社会全体として早く前に進むという意味で有益かと思います。
 ただし、その設計をするときに様々な意見が反映されるような仕組み、あるいは事後的にどのような議論があったのか検証できる仕組みが必要かと思います。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 藤田哲雄

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日付: 2019-11-26

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会