川上資人の発言 (経済産業委員会)
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○川上参考人 弁護士の川上と申します。よろしくお願いします。
きょうは、重要な法案の審議にお招きいただいて、本当にどうもありがとうございます。
私は、弁護士として、主に労働の現場、それから中小企業の方の立場に立って仕事をしております。それから、ベンチャーですね、ベンチャースピリットを持って、人生をかけて会社を立ち上げた若いベンチャーの人たちとも一緒に仕事をしておりまして、きょうはそのような立場から、現場で何が起きているのかという問題について、その人たちの声をお伝えできればと思います。よろしくお願いします。
レジュメに沿ってお話しさせていただければと思うんですけれども、問題の所在。これは、大橋先生のお話等からも、今出ていましたように、例えば一方的な契約の変更であったり、そういった一方的な行為が広く行われているということがあります。それは、ひとえには、やはり交渉力格差が厳然としてある、そこに尽きるということです。
これは、今まで私たちがこの社会を百年、二百年築いてくる中でこの問題が顕著に起きた領域というのは既にあって、それに対してどのような手当てを我々社会は行ってきたのかという、そこから実証的に学ぶことが可能なわけですね。
それは何の領域かというと、もちろん労使関係なわけであります。交渉力格差が顕著な領域は労使関係であった。労働者と企業という、力の厳然とした状態において、ここに労働法が発展してきて、その是正を行ってきて、対等な交渉関係、対等関係を築いて、より健全な社会を築くということが行われてきたわけですね。
労働法の目的というのは、突き詰めれば、公正競争なわけです。一つの企業が、例えば社会保障を払わないとか、コストを削減するために、利益を上乗せするためにそういう違法な行為をしていけば、その会社は短期的には他の会社よりも強くなる、不公正競争によってその会社だけがぬきんでていくということがあり得るわけです。公正競争を確保することで、社会のイノベーションも生まれる、それから労働者の人たちの生活も安定する、そういうことが目的とされているわけです。
このような労働法等の規制のない部分、分野が、今あらわれてきているプラットフォームの問題なわけです。プラットフォーム対個、個人、ここにも圧倒的な交渉力格差が認められる。しかし、労働法とは全く異なって、この分野は、やはり非常に新しい問題ということもあって、法規制が全く存在しません。全く存在しないがゆえに、さまざまな不都合性が発現してきているわけです。
その一つとしては、不公正な競争によってイノベーションが阻害されている。これは、例えば今お話であったアプリストアの問題です。ここはアップルとグーグル、この二社によって完全に支配されていて、どの会社がどんなアプリを社会に提供するかということを彼らが判断しているわけですね。本来は、我々消費者が選び取っていくはずです。それにもかかわらず、彼らが独自の恣意的なルールをしいて、そこで事前に彼らに都合のいいアプリだけを世に出している。仮に、非常にこれは伸びそうだというアプリがあれば、彼らがそこを摘み取って、彼らのアプリとして出すということだってあり得るわけです、十分に。これは既に起こっている可能性だって十分あるわけですよね。
これは何をしているかというと、イノベーションの阻害であって、私たちの国からベンチャースピリットにあふれるベンチャー企業が誕生することを阻害している、こういうことが言えます。
それから、この不都合性のもう一つの問題として、社会的費用の負担者が今偏在してしまっている。この外部不経済によって、例えば労務提供型プラットフォームで事故に遭った労働者、この人の労災は誰が負担するのか。企業は全く負担しません。プラットフォーマーは社会的費用を全く負担しなくていいわけです。結局、国が払うんです。被害者の労働者が払うんです。国と個人に社会的費用のつけかえが起きてしまっている、これが現在のプラットフォームビジネスになります。
次に、具体的問題。
では、これはどんな細かな問題になっているのかというと、例えば契約の問題でいえば、一方的設定、変更、終了、それから取引も拒絶する。さらには、そういったことに声を上げる事業者がいれば、報復を行う、不当な扱いをする。それから、一方的な恣意的制度も可能になっています。
今までのお話から明らかなように、プラットフォームというのは一つの社会というか国のようなものを既に築いているわけですが、その法律を一つの企業がつくれてしまう、そのような一方的な制度が生まれています。例えば、ペナルティー制度を設けてみたり、罰金制度を設けてみたり、それから今申し上げたアプリの審査制度が一方的であったり、このような問題が起きている。それに対して、次ですけれども、事業者それから労働者が団結して組織化をして、少しでも交渉力をかさ上げして団体交渉を求めても、団体交渉は拒否する、そういった問題が生じております。
今回、そういった問題点に着目してこのような法律が議論されていることは非常にすばらしいことで、国民の一人としては感謝を申し上げたいというふうに強く思っております。ただ、批判にはなってしまうかもしれないんですが、この法案をかなりしっかり読ませていただきまして、少し問題点の提起というものをさせていただければと思います。その中で、この問題点、書かせていただいたものは、つまり、それに対して不在なものを設ければ解決策になるということで、問題点の三のところは解決策の記載ということも言えるかもしれません。
一番大きい問題点としては、やはり、契約の一方的な設定、変更、終了についての規律がありません。そうすると、いろいろな条文があって、例えば五条では開示が定められたり、六条では勧告があったり、そういった透明性を高めるデザインは非常に充実しているんですけれども、この法案の目的のもう一つの目的である公正性については担保できないんじゃないかという危惧をしております。
公正性というのは何かというと、契約が真に当事者の合意であることによって担保される。その手段としては二つありまして、契約に合理性を求める手法と、契約当事者の対等性を確保する方法があります。それは、現在では、改正民法五百四十八条の二に入った定型約款の規制、後者については、団体交渉を保障していくという労働組合法のようなものが考えられます。
本法律は両者を欠いていて、公正性についてどのように担保していくのかという問題点が考えられると思います。
しかし、ここで問題なのが、この二つの手法について、一つ目、改正民法五百四十八条の二、ここで定型約款の規制があるんだから、別にこのプラットフォーム法案になくても、民法の方で対処できるようになったんだから大丈夫じゃないかという気もするんですが、やはり現場の声を聞いていると、全くそうではないんですね。
なぜかというと、民法で、定型約款は合理性がないといけない、合理性のない定型約款は無効だというふうに書いてくれた。でも、じゃ、その民法を使って声を上げられるかといったら、そんなことはできない。そんなことをすれば、アプリのそこからはじき出されて、会社は倒産してしまう。だから、合理性のない契約だ、それはだめだと民法に書いてくれても、じゃ、実際にそれを使って何か是正していくことが中小企業にできるかというと、それはできない。なので、やはりこういう法律の中にそこを書き込んで、プラットフォーマーに対しては、そこを遵守しないといけないということを確認させることが重要なんだと思います。
それから、二点目の、じゃ、対等交渉力をつけて、団体交渉によって対等な交渉を実現して公正なものを実現していく手法というのがどうかと考えると、労務提供型のプラットフォームで働いている労働者に対してはこれは有効なんですけれども、例えばオンラインモールで、事業者の人たちがたくさんいます。この中小企業の事業者さんたちが団結して団体交渉できるようにすればいいのかというと、それは私は非現実的だと思います。やはり、全国に散らばる、それから事業者性の強い、独立性の強いそういう人たちが団結して一つのオンラインモールに団体交渉して、それによって公正な競争環境が生まれるかというと、それははっきり言って絵に描いた餅だと思います。
そこは、今現在、中小企業等協同組合法によって、協同組合をつくれば団体交渉ができる、そういうふうになっています。私がアドバイスさせていただいている楽天ユニオンも、その手法をとって今頑張っています。しかし、それで解決するかというと、そういう問題ではないと思っています。なので、やはり重要なのは、契約の合理性というものを追求する中身にしていく必要があるんじゃないかと思います。
二点目としては、不当行為禁止規定がない。声を上げた人に対する報復的行為をどのように抑止するのか。
それから、論点のペーパーに書いてあったのが、適用対象が当面はオンラインモールとアプリストアに限定される、ここは非常に重要な問題、不都合な問題点だと思います。今、労務提供系のプラットフォームがふえてきています。そこを除外するというようなたてつけでは、なかなか大きな不都合が生じてしまうんじゃないかと思います。同じように特定デジタルプラットフォームにすべきだと考えます。
それから、恣意的制度を監視する第三者機関が不在であるということです。ここに対して、ペナルティー制度、罰金制度、例えばオンラインモールが行っています。そこで、一方的な制裁的行為がなされる。そのときに、意見を述べる機会もなかったり、公正な処罰になっているのかという担保がない。その点については第三者機関を設けるべきだと思います。
それから、紛争解決機関の不在。ここについても、やはり行政が中に入って、労働委員会のようなものであったり、何かちゃんとした中立機関が入る必要があると思います。
各論として、条文の問題点として一つ指摘させていただきたいのは、法案の第二条なんです。
第二条に、非常に重要な「商品等」という略語が出てくるんですが、「(以下「商品等」という。)」というのが第二条で入っていて、その商品等の中に役務が含まれているんですね。そうすると、この法律においては、商品、役務又は権利、これを取引することをずっと商品等と呼んでいくことになっているんですが、ILO憲章のフィラデルフィア宣言で一番最初、冒頭で書かれているように、労働は商品ではない。ですから、役務を商品等として商品と同一に扱うことは少し改善していただきたいと思いまして、ここは、商品等ではなく、商品役務等という記述で以下やっていただければと思います。
同様に、第二条の三項には商品等提供利用者という定義がありますが、ここも商品役務等提供利用者とすべきと考えます。
それから、第四条に、売上額の総額によってデジタルプラットフォーム提供者を指定していくということがありますが、例えば、今、ウーバーイーツを提供しているウーバー社でいうと、会社はオランダのアムステルダムにあります。そこに売上げを計上していると思われますので、日本のウーバー・ジャパン等に売上額が計上されていないということになると、売上額の総額によってというところをどのようにして把握していくのかという問題がありますので、そのような租税回避行為を行っているデジタルプラットフォーマーに対する捕捉、ここについても緊急に何か手当てをする必要があるのではないかと思います。
それから、第十条の二項について、不利益な取扱いはしてはならないと書いてはあるのですが、特に、例えば労働組合法で定められている不当労働行為の禁止規定とかそういったことがないので、これをどのように担保するのかというのが問題だと思います。
最後なんですけれども、中小企業等協同組合法と労働組合法というものがあって、これによって団体交渉が保障され、対等な交渉というのを実現しようとはしているんですけれども、問題点がありますので、このデジタルプラットフォームの法案の議論に少し示唆になればと思うんですが、まず、中小企業等協同組合法には、不当労働行為と労働委員会がありません。なので、報復行為の抑止とエンフォースメントに課題があります。
労働組合法の問題点としては、プラットフォーマーが、商品役務等提供利用者が労組法上の労働者に当たらないとして団体交渉を拒否した場合には、労働者の方が出訴して立証して、何年も何年もかけてやらないといけません。つまり、プラットフォーマーの方は、団体交渉を拒否するという違法行為をするだけで、後はずっとあぐらをかいていることができるわけですね。
その点で、例えばフランスでは二〇一六年の八月にエルコムリ法という法律ができて、プラットフォームで役務提供をして働いている労働者に団体交渉権が保障されました。この立法で彼らには団体交渉権があると書かれたことで、プラットフォームが、現在、日本のウーバー・ジャパンがやっているような、彼らは労組法上の労働者じゃないから団体交渉に応じなくていいんだという理屈が通用しないことになります。なので、例えば役務提供型プラットフォーマーには労組法上の団体交渉応諾義務があるんだというような明記、これはフランスのアプローチですが、こういった法律も必要なのではないかと思います。
最後に、この法律とは少し外れるんですけれども、役務提供をしている側からすれば、まず、彼らの、当事者の権利を保障するようなプラットフォームワーカー保護法を国会においては創設していただきたいと思います。それによって、健全な労働環境が確保されて、健全な社会が生まれ、公正な競争、ベンチャー精神にあふれる社会になっていくんじゃないかと思います。
きょうはどうもありがとうございました。(拍手)