福井健策の発言 (文部科学委員会)

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○福井参考人 福井でございます。
 本日は、お招きいただきましてありがとうございます。
 海賊版の状況につきましては、さきのお二人が十分お話しいただきましたので、私の方からは、個別の、個社の対策、その現状と課題についてまずは御紹介いたしたいというふうに思います。
 確かに、この数年、海賊版に対する対策は急速に進化を遂げているということは言えようかと思います。まずは、お話にもありましたが、国内外での直接の削除通知や、あるいは弁護士名による強い警告、それでもきかない場合には、国内外で直接の法的手続、訴訟、これはかなり果断に行っていると思います。その結果、相当数の海賊版サイトは停止に追い込めているという実績もあります。
 また同時に、一昨年のブロッキングと言われる論争をきっかけに、通信界や広告業界と、それから出版社、この両者の間での協力体制を築こうという機運も高まりまして、私も加わって、定期的な協議をずっとこれらの業界関係者が行っています。
 その中でさまざまな協力の成果は上がってきていると思いますが、例えば、海賊版のサイトリスト、悪質と思われるものを共有化していこう、それによって通信界や広告界が早期に対策をとれるようにしようというような取組も進行中です。
 そして、こうした広告の出稿の抑制や、検索結果の上位に海賊版サイトが上がってくると、ユーザーというのはまずそこで海賊版に行きますので、これを下げてやるというような取組も進んでおりますし、また、今はSNSのアカウントで、海賊版というのは短期間でわあっと広まってしまいますので、このアカウントを早期に削除するというようなことも、SNS大手の協力で随分可能になってきました。
 警察との連携は既にお話しのとおり。
 さらに、こうした海賊版を中継するCDNと言われる中継サーバーに対しても、大手、代表格に対して裁判を行い、では一定の手続でキャッシュを削除しましょうというような協定も結ばれています。
 こんなふうに対策は進んでいるにもかかわらず、なお海賊版対策は多くの壁にぶつかっています。その最大のものは、やはり、所要時間、コスト、こうしたことです。特に、海外での法的手続、これは短期間で済むケースも中にはありますけれども、多くの場合は、やはり、数カ月の期間と、数百万円かそれ以上の経費を要します。そして、現在、産業財産権と異なりまして、こうした著作権侵害の海外での対策に対する直接の政府費用助成制度はありません。全て個社が負担して、これらを行わなければいけない。中小には不可能です。
 これを、特に最近の海賊版サイトは、匿名化の技術を最大限に活用し、サーバーとかドメイン名を次々と変えていってしまいます。本当に短いときには一日単位で変わります。それに対して法的手続をやっていれば、やっている間にもう対象が変わってしまう。こういうことが起きる。
 それを支えているのは、海外の、御紹介もあった悪質な事業者、アウトサイダーの活用です。オフショア、あるいは、もっとひどくて防弾ホスティングなどと言われる、削除要請を無視することを売りにしている、特定の国、地域に特に多く見られる確信犯的なサーバー事業者。
 また、特にきょう御紹介したいのは、確信犯的なレジストラーです。レジストラーとは何かというと、ドメインの登録事業者。このドメインの登録事業者がドメイン名を各サイトに割り振るわけですけれども、そういう悪質な海賊版サイトに対して、本来のルールからいえば、ドメインを適宜に削除する、契約違反ですからドメインを削除するというようなことをレジストラーがやるべきなんですが、これも対応しないことを売りにしている確信犯的なレジストラーがいます。ICANNと言われる国際的なドメイン管理団体のルールに明確に違反した行為のはずなんですが、現在のところはほぼ野放しになっているような状況があります。
 こうしたことの結果、海賊版対策はぎりぎりの攻防、これだけの対策を全て駆使しても横ばいというような状況が続いていると言えようかと思います。
 今回の改正案についてです。
 三番をごらんいただくと、リーチサイト規制、これは、従来から異論は少なく、待望論の大きい対策でした。抑止力はかなり期待できるかなと思います。御質問があれば詳しくお答えしたいと思いますが。
 四番です、ダウンロードの違法化。これは一昨年の暮れから大きな論争になりました。というのは、懸念が寄せられました。例えば、スクリーンショットをする、あれもダウンロードである、そこに小さな違法アップロード物が写り込んでいて、それも違法か。あるいは、二次創作と言われるパロディー作品は、今、多く花開いているわけですけれども、形式的には違法アップロードである、原作に対するですね。それを、同時に作家は納得していても、ダウンロードすると原作に対する違法ダウンロードということになってしまうのか、ちょっと広範過ぎるんじゃないかというような指摘もありました。
 今回の現行法は、それらに対する対応を試みたものと言えようと思います。
 例えば、軽微性という要件が入りました。分量が少ない、画質が低いなど、鑑賞の用をなさない、そういうダウンロードは違法化の対象外にしよう、あるいは、二次創作、パロディー、これについてのダウンロードは対象外にしよう。
 そして、最も大きな議論になったのが、権利者の利益を不当に害する場合、これに対象を絞るべきかどうかです。
 この点では、先ほどの検討会議で私も後藤さんなどと大分やり合ったりいたしましたけれども、心配する声もある。それによって利用の萎縮が広がってしまう、適正な研究利用が阻まれてしまっては困るじゃないか。他方では、その要件を入れれば、特に悪質な人ほどこれを利用するのはもう目に見えているという、抜け穴に使われるという懸念もありました。
 結果、不当に害しない特段の事情がある場合というふうに、立証責任を利用者側に寄せることで妥結が図られた。いわば、海賊版防止と利用者の需要のぎりぎりの妥協が図られた案というふうに私自身は評価しております。
 あるいは、知りながら要件ですね。違法アップロードということが不明である、あるいはそれについて誤認したような場合は含まないというような、そういうセーフガードもとられている、そんな制度かなというふうに思います。
 さらに、御質問があればお答えしていくことにいたしまして、その他の改正案についてもお話をいたしたいと思います。
 海賊版をただ取り締まるだけでは、それは何の役にも立たないことです。それとあわせて、正規版が十分に流通し、人々に適正対価で届かなければ、本当の意味でのコンテンツ振興にはなりません。その意味でとても大きな改正が今回の著作権法案には含まれています。それはライセンシーの保護法制です。
 驚くことに、これまで著作権法には利用権という概念は直接的には規定されていませんでした。しかし、実際のコンテンツビジネスは、著作権者がみずからビジネスを行うということは余りなくて、そこから利用権の許諾を受けた多くのライセンシーがビジネスを行うわけですね。映画化だろうが、商品化だろうが、全てそうです。
 この利用権を設定されている存在、ライセンシーは、著作権者が例えば経済的に苦しくなって著作権を誰かに譲渡しちゃったとか、あるいは差押えを受けて著作権が流出しちゃったとか、管財人が登場したというと、実を言うと、この新所有者には利用権を対抗できない。つまり、利用権を否定されても何の文句も言えないというのが従来の通説でした。
 今回、初めて、これに対して、利用権は新所有者に、新著作権者に対抗できるという制度が入りました。大変期待しているところです。
 最後に、ポストコロナの著作権制度について少しだけお話をしたいと思います。
 今回、コロナ禍で人々が外出できなくなったとき、例えば欧米のオペラ劇場は過去の高画質の舞台映像を無料で配信するということを直ちに始めて、出かけられない人々に力を与えました。しかし、日本のライブイベント界はそれができなかった。なぜか。権利の壁、アーカイブが進んでいなかったから、配信するコンテンツが十分なかったからです。出版界はやりました。
 こうした権利の壁に阻まれることによって、過去のあるいは現在のクリエーターたちが生きたあかしである作品が人々に届かない、これは大変に悲劇的なことです。作品は人々に見られたがっています。作品が人々に見られ聞かれることで、そして適正な対価がクリエーターに還元される、それこそがポストコロナの本当の著作権制度だというふうに考えるのです。
 それについても幾つかここに項目を並べましたが、これについては御質問があればお答えしていきたいというふうに思っております。
 御清聴、どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 福井健策

speaker_id: 24676

日付: 2020-05-20

院: 衆議院

会議名: 文部科学委員会