大槻奈那の発言 (予算委員会公聴会)

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○大槻公述人 ありがとうございます。
 おはようございます。ただいま御紹介にあずかりました、マネックス証券でアナリストをしております大槻と申します。
 主な仕事といたしましては、金融システム、金融、金利等の分析及びそういった投資教育を大学でやらせていただいている次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日なんですけれども、主に三つのことをお話しさせていただければと考えております。
 一つ目に、世界の金融情勢、そしてその財政へのインプリケーションということであります。そして二番目に、今申し上げましたように、個人の方々にもいろいろな形で接しております。そういった個人の方々が財政及び景気に対してどういった見方をしているかということが二点目。そして最後に、僣越ではございますが、金融市場の関係者といたしまして、日本の課題、その中で今回の予算へのコメント等も少し触れさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 一つ目のテーマでございます。お手元の資料の三ページ目の方をごらんいただければと思います。
 こちらが、今私どもが最も気にしていることの一つでありまして、世界の債務残高、史上最多の二京円ということになっております。GDPに換算しますと二二〇%ということで、特に、右側にございますように、政府セクターでの上昇が目立っています。
 これは、足元ですと、新興国も政府セクターで増加をしておるんですけれども、特徴的なこととしては、右側は二〇〇八年のリーマン・ショック後をとっています。リーマン・ショックを一〇〇としているために、そこからの上昇で見ていただいているものなんですが、最初に増加をするのが、こういう金利ショックのときは政府セクターがさまざまな形で金融機関、そして企業を支援するために、こういった形で債務が増加するということであります。
 今は情勢が非常に安定しているために、こういった政府の債務の膨張ということは一部を除いて見られませんけれども、再びこういったことがあり得るのではないか、財政に対する負担ということを気にしている次第です。
 おめくりいただきまして、四ページ目が、金融市場の変化として、直近では、銀行が、マイナス金利の影響もありまして、余剰資金をため込んでいるということを書いています。日米合計で約六百兆円ということで試算をされています。
 そして、次のページからが、その六百兆円のいわば余剰資金、余剰資金の、ここで申し上げている定義といたしましては、預金をどれだけ集めて、それを銀行が貸出しに回せないでいるかということであります。
 これの中身として、五ページ目からがアネクドートでございます。今我々が懸念しているのは、そういった資金の偏在だということであります。ここに、利ざやがあるならどこまでも行くということで書いてありますが、一つ目、クレジットリスクでございます。
 ここにある左側のグラフをごらんいただきますと明らかなんですけれども、アメリカの国債利回りとギリシャの国債利回りを比較したものになっています。いずれも十年物です。ごらんいただきますと、普通で考えればギリシャの方がクレジットリスク的に非常に厳しいということで、上に行けば行くほどそのリスクが市場で意識されているということなので、ここでごらんいただきますと、ギリシャの方、オレンジの方が上にあるのが自然なんですが、去年以降はアメリカ国債よりも下に利回りが来ております。クレジットリスク、ギリシャのリスクということが、もちろんギリシャ自体も改善はしているのですが、それにしても、相当、投資家がこういったクレジットリスクに対して以前ほど意識していないということのあらわれだと思います。
 右側、これは今度はデュレーションリスク、期間のリスクを余り市場が意識しなくなっているということの証左としてお持ちしました。
 スウェーデンです。スウェーデンは、住宅の価格が、一九九〇年以降で見ますと、最も上昇した国のうちの一つなんですが、ここで、二年前ぐらいの法律でございますが、住宅ローンが余りにも長いものが発生したために、百五年までという規制を導入したということであります。長ければ長いほどもちろんリスクは高まるのですが、そういった形で、銀行がデュレーションリスクに対して甘くなっているということかと思います。
 もう一つだけ、アネクドートでございます。
 次のページをお開きいただきますと、今度はコーポレート、企業の方でございます。「利鞘があるならどこまでも…」という続きがございますが、クレジットリスクについてです。左側、レバレッジローン、これは投資適格でない企業に対するローンを指しますが、その中でも、コベナンツ、つまり、条件を緩くしているものの比率がじわじわじわじわと上昇して、七五%になっていると。
 右側は、BIS、国際決済銀行が出しているデータで、ごらんの方もいらっしゃるかもしれませんが、ゾンビ企業、つまり、返済をする元利金を利益では賄えないという企業がどんどんふえていて、史上最高になっているということであります。
 さて、そういったことの一つの要因がマイナス金利でございますが、七ページ目をごらんいただければと思います。今、欧州の一部では、日本ではないわけですが、いろいろな形でマイナス金利が民間に浸透しつつあります。
 一つは住宅ローンです。こちらでごらんいただいている、左側はデンマークの銀行、八月に初めて住宅ローンの絶対金利をマイナスにしております。つまり、一億円借りると、年間で三十万円とか四十万円のお小遣いが来るという形になっております。
 それと同時に、右側、これはドイツのマネー誌の表紙をとっています。ドイツでは、八百ぐらいの中小の金融機関の今や四十一の金融機関でマイナス金利を一般の個人の預金にも導入しているということで、それに対して、これは貯金箱が水面下に沈みかけていますが、どうやって自分の身を守るかと。日本のようなたんす預金も話題になっているんですが、向こうはたんすがないので、マットレス預金というのがはやっております。
 そういったひずみも出ている中で、じゃ、お金が実際どっちに行っているのかというのが、次のページでございます。お気づきのとおり、これは不動産に行っている。資産価値を上昇させているというのが典型例でございます。
 右側の方をごらんいただきますと、アメリカの主要都市、マンション価格の中央値が、一部の地域ではありますが、一億円超ということになっていまして、具体例を下に載せてございます。特にこの右下の例、これもアネクドートにすぎませんが、去年の今ごろ、実際に売買が成立したものの価値は、USドルで二百三十八ミリオン、円にすると二百六十億円ぐらいでございます。一戸です、棟ではなくて一戸。ということで、相当の資産効果を生んではいるものの、価格としては相当上昇しているというところです。
 中国について触れます。
 中国も同じように上昇していますが、少しボラティリティーが、変動が大きくなっており、かつ、問題として、空き家率というのを右側に書いてございます。日本もこれは御存じのとおり話題になっておりますが、中国の場合は、世界一かもしれないという二二%、戸数にすると五千万戸ということですので、この中国の空き家に日本の世帯がほとんど住めてしまうぐらいの空き家になっております。
 次のページ、ここからが少し、中国のリスク、それから足元の、皆さん御懸念と思います新型肺炎についての金融面のことについて述べたいと思います。
 中国の金融システム、実はここが、この件が起こる前から中小の金融機関については経営リスクが高まっておりました。左側にありますように、ストレステストを十一月に発表しておりますが、左側のグラフの八以上のところが高リスクの金融機関とされています。パーセントでは一三%で大したことはないように見えますが、数でいいますと五百八十七金融機関でございます。そして右側は、そういったところが取付けに遭ったりですとか、大きな金融機関の一部に吸収されたりといったことが起こっておるのが、既に新型肺炎以前の問題であります。
 そこへもってきまして、十一ページ目、これが直近の各種支援策でございます。左側が民間の金融機関の支援策、右側が公的な、主には金融政策でございます。
 左側をごらんいただきますと、こちらのデータは二月十一日の昼までです。その後も大きくさまざまな施策が打ち出されていると思いますが、二月一日からのわずか十日間ちょっとで、こちらでごらんいただきますように、円にしますと五・五兆円の金融支援が行われたというふうに報道されています。
 向こうのテレビでも、見ていますと、アプリベースで、わずか二時間で実際に実行されているようなローンがあるということも言われております。
 そして右側、金融政策の支援ですが、きのうも発表されましたとおり、さまざま、かなり迅速にやっているということの印象でございます。これらは、御存じのとおり、金融政策、財政政策ともに余裕を持っているからこその証左かもしれません。
 そして、金融情勢について、最後で、かつ最も重要なアメリカでございます。
 こちらのページにお示ししているのは、いかにアメリカの景気がいいかということのあらわれでございます。
 左側、御存じの方も多いと思いますが、過去最長の景気拡大期、月数でいうと百二十六カ月ということなんですが、より御注目いただきたいのは右側でございます。クレジットサイクルなんですが、企業のデフォルトが多ければ多いほど上にスパイクするという形になって、一時期はこれが十年に一度と言われておりました。それが、この赤い方の線をごらんいただきますと、順調に大体十年に一度、二〇〇八、九年のリーマン・ショックまでは発生しておりました。それ以降ということで、それとちょっと重なって〇五、六年以降のものをもう一つの線で書かせていただいています。赤い線になっているかと思います。
 こちらをごらんいただきますと、途中まではぴったり今までのサイクルどおりクレジットリスクが高まったり鎮静化したりしていたのですが、トランプ政権が発生して、その様相が大きく変わりました。御存じのとおり、税制それから金融政策等がきいているかと思います。
 ただ、十三ページ目の、次のページなんですが、もしここから何かあるとしたら、このショックは、過去も、ここのグラフでごらんいただきますように、これは世界の株価なんですが、緩やかに、サイクルというよりはショックが起こり、回復しということが何度も繰り返されているということに見えるかと思いますが、次に何かあるとしたら、前回以上のショックもあり得ると思っています。
 その理由が、次のページ、新興国でございます。
 新興国の債務は、御存じのとおりドル依存が進んでいて、新興国自体の借入れも、右側にございますように大きくなっております。ただ、十五ページ目に行きますと、それだけではクライシスが、危機が起こるとは思っておりません。危機というのは、必要条件として、十分にさまざまな要素が今申し上げたところから発生していると思うのですが、このページの下の方でございます、何か未体験のネガティブファクターがない限りは多分発生しないのではないかと思っています。そして、これが仮に起こった場合、何ができるのか、財政への影響はということを我々としては考えていかなければいけないのだと思います。
 そして、飛ばしながら、最後のところをやらせていただきます。
 一つ目、個人の不安感ということです。
 おめくりいただきまして、十八ページ目にございます。私どもの、個人のセンチメント調査でございます。
 こちらは年齢別になっておりまして、ちょっと見づらいのですが、一年前よりも家計を締めているか緩めているかということを尋ねてみますと、若年層は比較的、例えばですが、九月の時点は消費税増税のときに大きく家計を緩めており、その後また戻っているという感じでございますが、問題は高齢者の方の、ここでいうと緑色になっているかと思いますが、こちらの方々は、消費性向も上がりませんし、右側の、預金、貯金か投資ということでも、コンスタントに預金、保守的でございます。こういった年齢層がこれから増加していくことを考えると、ここのセンチメントマインドをどうやって高めていくかというのは大きな課題かと思っています。
 では、こういった状況になっていることはなぜかということで、理由を聞いているのが十九ページ目でございます。
 典型的なところとして、一つ目は、これは去年とことしなんですが、大きく数字が上がってしまっている、変化しているところがございます。
 一個目が、やはり二千万円問題といったこともあるのでしょうか、将来の年金不安というのが大きく拡大してしまっています。
 一方で、下から四つ目になります、消費税についてでございます。上がる前の去年の今ごろは、上がるから貯金にしておくということで、少し矛盾した形かもしれませんが、そういった声が聞かれたのに対して、その思い、不安感は鎮静化をしているということが注目をされると思います。
 つまり、長期的な不安である財政だったりとか年金、そういったことは長くセンチメントマインドに残るのですが、比較的短期的なところについてはマインドは変わりやすいということかなという仮説を持っておる次第です。
 そして、最後でございます。
 おめくりいただきまして、二十一ページ目になります。私の主に金融市場から見た中長期的な問題意識ということで、ここに書かせていただいています。
 一つ目は、今申し上げましたとおりの、社会全体のリスク回避志向ということでございます。個人の方は先ほど申し上げました。企業の方も、釈迦に説法ですが、どうしても内部留保にため込むということでありますが、今回取り入れていただきました税制の改正ということで、何らかの形でイノベーションに対しての投資が促進されることを期待したい次第でございます。
 それからもう一つ目、今の点にも絡むと思いますが、イノベーションの相対的なおくれと書かせていただいています。日本にもそれなりにあるということはさまざま聞いておりますが、一方で、アメリカとの格差が広がっているのではないかということを心配しています。
 ちょっと参考までに、次のページなんですけれども、マーケット的に拝見させていただきますと、イノベーションの市場活性化ということについて最近出たデータでございます。
 特に、ここの表題に書かせていただいていますが、過去九十年間、アメリカの市場ばかり上がって日本の市場がぱっとしないとよく言われますけれども、内訳を見ていますと、大抵のアメリカの銘柄は実は大したことがございません。むしろ、上位四%の銘柄が九十年間のダウの値上がりと配当分のほとんどを稼いでいます。つまり、GAFAですとかよく言われますが、そういったスター銘柄が稼いで上がってきていて活性化につながっているというのがアメリカということになります。
 だとしますと、二十一ページ目に一瞬、もう一度お戻りいただきますと、一つには、ひょっとしたら、ここにも書いてございます教育の課題ということがあるかもしれません。今回の予算でいただきました高等教育の一部無償化、こういったことは非常に効果を期待したいところでありますが、加えまして、ひょっとしたら、もっと早いうちからの教育の柔軟化、それには、予算ということに加えまして、何らかの制度の改革といったことも検討に値するのかなということを感じております。
 そして最後に、財政に対する個人のリスク認識の偏りと書かせていただいている点を述べさせていただいて、おしまいにしたいと思います。
 おめくりいただきまして、最後のページでございます。
 私も、個人にこういったお話をさせていただくときに、非常に悩ましい、難しいと思うのが、個人の正しい認識を促すことでございます。
 もちろん、先ほどごらんいただいたように、不安感といったお気持ちは持っているのだと思いますが、一方で、なかなか自分事として痛みを伴うようなことに対しては非常にネガティブに捉えられがちであると思っております。そして、時々、何年かに一度は、いや、財政についてはどんなに拡大しても結局大丈夫なんじゃないかといったような議論もいろいろなメディアで報じられるところであります。
 ということを踏まえまして、自分事としての理解ということ、そして、正確で、記憶に残りやすい数字ということを、我々もそうですし、心がけていかなければいけないのかと思っています。それが、拡散し広まっていくポイントになるかと思っています。
 そして最後に、エコーチェンバー現象、つまり、同じ人々の意見で凝り固まって増幅される、特にSNSなどの最近のメディアの特性もあり、こういった傾向を我々もよく感じるところでございます。
 それであれば、機会もあるということでありますが、一方で、そういったところに対しての発信ということを、さまざま健全化が必要であるということを訴えていく必要があるのではないかなということを感じております。
 いずれにいたしましても、これから先の日本の長い意味でのサステーナブルな将来の財政ということに関しまして、これからも期待をさせていただきたいと思っております。
 私の方からは以上にさせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 大槻奈那

speaker_id: 18626

日付: 2020-02-21

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会