大石久和の発言 (予算委員会公聴会)

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○大石公述人 おはようございます。御紹介いただきました大石でございます。
 私は、防災・減災、国土強靱化の視点から、強力なインフラ整備で防災力と我が国の競争力の強化を図っていただきたいというお話をさせていただきたいと思います。
 アフガニスタンで中村哲医師が亡くなりました。彼は、百の診療所よりも一つの用水路という発言をしています。医師としての使命を果たそうと思えば、診療所をつくるよりも、まず用水路をつくることによってよい水を供給する、そして農業を振興するということがなければアフガニスタンを救えない、このように感じたからであります。
 医師である彼がこのようなインフラについて言及したということでありますが、彼は、内村鑑三の「後世への最大遺物」というのを愛読していたと聞いています。
 内村鑑三は、この本の中で、人は生涯をかけて後世のために何を残していくのかということについて書いています。その中に、これは内村鑑三の言葉を使いますと、土木という言葉が出てくるんですが、土木を残していくことは後世のためにとってもいいことではないか、それをやろうではないか、だけれども、それはみんなができることではないねといったようなことを言っているんですけれども、これを参考にしながら中村先生はアフガニスタンで頑張っておられた。その志半ばでお亡くなりになった、こういうことでございます。
 これを前置きとさせていただきまして、インフラに関することを、まず、災害からお話をさせていただきたいと思います。
 もう先生方はよく御存じのとおり、近年、大きな災害が頻発いたしております。
 二〇一七年には九州北部豪雨、これは今までに記録がなかったような流木被害をもたらしました。こんなに流木が出てくるなんというようなことは想定されていませんでした。
 二〇一八年には、西日本豪雨で、岐阜県から鹿児島県に至る広域に総雨量が六百ミリという大変な豪雨がありまして、倉敷市の真備町など、各地で多くの死者を出す大災害となりました。
 昨年の、二〇一九年の十月の台風十九号では、本州の半分になるほどの超大型に発達した台風が東日本を襲い、広範囲に記録的な大雨を降らせて多くの命を奪うとともに、百四十カ所もの堤防が決壊し、水害を引き起こしました。
 しかし、幾ら大型とはいえ、一つの台風が豪雨をもたらしただけで百四十もの堤防が決壊したのは、これは、災害外力に対する防災インフラが不十分であったということを明確に示しています。長野県の千曲川や福島県の阿武隈川などでは、決壊が多発し、多数の死者を伴う大規模な洪水被害が発生してしまいました。
 しかし、南関東では、荒川や利根川はぎりぎり危ないところではありましたが、何とか持ちこたえることができました。それは、東京など首都圏を守るための防災インフラがその機能を発揮したからであります。
 例えば、神殿と言われた大空間の調圧水槽がロケ地などによく用いられて有名な首都圏外郭放水路は、中小河川からあふれ出した水を一時的に貯留し、江戸川に放水するものでありますが、完成後二度目のフル稼働により、下流での洪水を防止しました。これは、小学校の二十五メータープールの水をわずか一秒で放流することができるだけの能力を持っていますが、この能力がフルに発揮されたわけであります。
 また、八ツ場ダムは、本体が完成して試験湛水を行っているところでありましたが、七千五百万立米もの水をためて下流への流下を阻止しましたし、渡良瀬遊水地を始めとする遊水地群も大いに働き、合計二億五千万立米もの水を貯留いたしました。
 また、横浜の鶴見川の多目的遊水地も見事に機能し、何年かに一度の遊水地機能だけではもったいないということから多機能化していたのでありますが、昨年のラグビーワールドカップの日本対スコットランド戦は、ここが遊水地機能を発揮しているときに開催されたのであります。
 広域的に大豪雨をもたらした台風十九号でしたが、南関東、東京では、インフラ整備が洪水を防ぐ機能を発揮したのでありますが、残念ながら、千曲川や阿武隈川の流域では、それが不十分だったということであります。
 この十九号台風で留意したいことが一つございます。
 この台風が、一つには、狩野川台風コースを歩む、こう言われたように、現実に、伊豆半島の狩野川流域、例えば天城湯ケ島では総降雨七百十七・七ミリという、狩野川台風以上の豪雨を経験しました。
 ところが、沼津市などの下流部では、浸水はございましたが、死者が出るとか、大災害が出るというようなことはありませんでした。それは、当然ですけれども、狩野川放水路という放水路が機能して、本川下流への流量を大きくカットできたからであります。これは、昭和二十六年に着手したんだということをぜひ想起していただきたいと思います。
 昭和三十三年の狩野川台風には間に合わなかったのでありますが、多くの国民がまだ空腹を抱えている昭和二十六年に、後世のためにと大事業を始めたわけであります。今回の台風では、その機能を見事に発揮しました。これは、まさしく、内村鑑三の言うように、過去からの贈物であります。じゃ、我々は、後世への贈物をちゃんとやっているんだろうか、十分にやっているんだろうかとの反省があっていい、このように思います。
 なお、蛇足ですが、この狩野川台風の次の年、昭和三十四年の同じ九月二十一日に伊勢湾を襲う伊勢湾台風がやってきた、これは史上最大の台風被害をもたらした台風でありましたが、ということも想起しておきたいと思います。
 こうした、これは今、防災インフラの例を紹介いたしましたが、防災インフラが見事に機能したのですが、ここで申し上げるのもなんですが、残念なことに、日本の政治がインフラの重要性について語ることはほとんどありません。
 海外では、首脳がたびたびインフラ整備の重要性に言及しております。
 その一端を御紹介させていただきたいと思いますが、二〇一八年の一般教書演説で、トランプ大統領は、アメリカ経済には、安全で信頼性が高い近代的なインフラが必要であり、国民はそれを享受する権利がある、少なくとも一兆五千億ドルのインフラ投資法案を要請する、こういう演説をしています。
 また、ことしの予算教書では、トランプ大統領は、十年間で一兆ドルのインフラ投資を提案する、その内訳は、高速道路など陸上輸送プログラムへ八千百億ドル、高速通信などのインフラへ一千九百億ドルの投資をやる、こう言っているんですね。
 これは、先生方はよく御存じのとおり、ことしは一兆ドルを超える財政赤字が出ようとしているアメリカで、二十二兆ドルを超える累積債務があるアメリカが、しかし、強いアメリカをつくるためにはインフラ投資が必要だ、このような発言をしているということであります。
 前の大統領のオバマさんも、発言するたびにインフラに言及しておりましたし、ドイツのメルケル首相も、連立の三党合意文書の中でありますが、ドイツの競争力を保障するものは質の高い交通インフラであるということを言っています。カナダのトルドー首相も、イタリアの前首相のレンツィさんも、イギリスの元首相のキャメロンさんもインフラの重要性について述べ、キャメロンは、イギリスのインフラが二流になればイギリスが二流になるんだ、このような発言もしています。
 また、ごく最近でありますが、EUも、成長を後押しする分野への投資、つまり公共投資でありますが、これは赤字の算入基準の適用外とすべきだといったような議論を行っていて、財政投資、財政出動を催しております。
 我が国の財政制度等審議会は、着実な社会資本整備により我が国の社会インフラは概成しつつあるとの認識を繰り返し表明しています。しかし、我が国は着実な整備など行ってきておりません。また、この認識の方法が間違っていると私は思います。
 この二十五年間で、アメリカは公共投資を一・九倍に伸ばし、フランスは一・五倍、ドイツは一・四倍、韓国は二・五倍に伸ばしてきた中で、我が国は、何と、先進国の中で唯一下げ続け、〇・五七というレベルに落ちています。これは、防災インフラや交通インフラの整備の速度に大きな影響を与えています。
 例えば、道路、鉄道、港湾、空港などの交通インフラは一国の経済競争力と成長力を決定づけるものでありますが、これが概成したかどうかは、我が国が経済的に競争している先進国との間で比較優位を達成できたかどうかで判断できることなのであります。
 時速百三十キロで走ることができるアウトバーンを一万三千キロも持っているドイツと、一万二千キロ程度の高速道路、そのうち本当の意味での高速自動車国道は九千百キロでありますが、を持っており、正面衝突の危険がある対向二車線で時速七十キロしか走れない区間が供用延長の三七%にもなる国と比較して、我が国の高速道路が概成したなどと言えるはずがありません。
 また、世界最大級のコンテナ船が着岸できる十八メーター水深のコンテナバースは、横浜港にワンバースあるだけであります。これで、輸出大国だ、貿易立国だと言えるかどうかということであります。
 また、新幹線でいえば、ドイツ、フランス、中国では既にネットワークになっていますが、我が国では、いまだネットワークにすらなっておりません。
 こうやって見てみますと、陸上交通で、車による移動でドイツと比較してみますと、ドイツは一時間で行ける距離が九十五キロになります。九十五キロ先まで行くことができます。ところが、日本では六十キロ先までしか行けません。これを、百八十キロ先に行くという想定でいきますと、つまり、日本は三時間かかってしまうけれども、ドイツは二時間かからずに行けるということであります。
 労働者の労働時間がどちらの方が長くなるかは明らかでありまして、したがって、ドイツ人の年間労働時間は一千三百六十時間なのに、一人当たりGDPが四万四千七百ドル稼げているのに、日本人は一千七百時間も働いているのに、一人当たり名目GDPは三万八千四百ドルであります。国民の能力を発揮させるための環境整備ができていないと言ってもいいのではないか。
 防災インフラでいえば、凶暴化する豪雨などの自然災害に対抗できるインフラができているかどうかが概成基準であります。つまり、繰り返しですけれども、着実な社会資本整備から、これは実はやってきていないんですが、概成しつつあるという認識に至ることはできない。だけれども、このような認識を述べております。洪水などの自然災害の多発が、防災インフラが概成していないことの証明であります。
 我が国では、この三十年間に、一時間に百ミリという、先が見えないような、恐怖心を催すような雨でありますが、これの発生頻度が一・六倍にふえています。また、八十ミリという雨も一・七倍にふえていますが、何と、防災事業費は半減しているんです。防災事業費は、この間半減している。
 じゃ、もう達成できているからかというと、そうではありませんで、アメリカのミシシッピ川の下流域は、五百年に一度という低頻度の雨、低発生率の洪水に対して八〇%の堤防整備率なのに対して、我が国の荒川は、二百年に一度という頻発する洪水に対して、堤防整備率は七〇%であります。とてもじゃないが、概成しているということは言えない。
 インフラが概成しているかどうかは、我が国が競争している相手国との比較、あるいは我々が、自然災害インフラでいえば、自然災害に対する力をつけたかどうか、こういうことなのだと私は思っています。
 防災・減災、国土強靱化の事業は、三カ年で強化するということでしたから、この二〇二〇年までであります。三年で日本の国土が強靱化できるはずがないと考えています。また、首都直下地震や南海トラフ地震が迫っておりますし、東京湾での大高潮、荒川、淀川などでの巨大洪水の危険が増してきていると言えます。
 長期かつ大規模な強靱化のための交通、防災インフラなどの投資が不可欠だと私は考えております。それがまたデフレからの本格的な脱却につながるのではないか、このように考えているところでございます。
 先生方におかれましては、どうぞ事情を御賢察の上、御配慮くださるようお願い申し上げまして、私のプレゼンテーションとさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 120105262X00120200221_006

発言者: 大石久和

speaker_id: 31664

日付: 2020-02-21

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会