逢見直人の発言 (予算委員会公聴会)

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○逢見公述人 ただいま御指名をいただきました連合の逢見でございます。
 本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、ありがとうございます。
 私からは、働く者の立場から見た我が国の経済、社会における課題を踏まえ、目指すべき社会像ととるべき政策について申し述べます。
 まず、新型コロナウイルスにつきましては、各地で感染例が相次いでおり、一日も早い終息に向けた取組が必要です。連合では、感染予防の徹底や就業上の措置に関する労使協議など、労働者保護の観点に立って職場対応を呼びかけているところです。国会、政府におかれましても、働く者を始め国民生活の安全、安心確保に向けた万全の対応をお願いしたいと思います。
 さて、私たち連合は、全ての働く仲間が将来に希望を持って働き、安心して暮らしていけるよう、私たちの未来を、次の世代に続く持続可能な社会、互いに認め支え合い誰一人取り残されることのない包摂的な社会に変えていくことを目指しております。
 お手持ちの、スライドの二枚目をごらんください。
 人口減少、超少子高齢化の進行、グローバル化やAI、IoTなど技術革新のさらなる進展など、社会経済の変化の速度が増しております。
 その一方で、パートタイム、有期契約、派遣労働などで働く人は雇用労働者の約四割を占め、年収二百万円以下の労働者も一千百万人を超えるなど、雇用の流動化と不安定化、中間所得層の地盤沈下、貧困の固定化と格差の深刻化が進行しています。その中で、私たちは、社会保障制度の持続可能性の確保や地域コミュニティー維持と、そのための国、地方の財政健全化、あるいは技術革新に対応した人材育成、能力開発、生み出される付加価値の公正な分配といった課題に直面しております。
 こうした社会の持続可能性にかかわる課題を克服し、将来に希望と安心を持てる社会としていくためには、連合が提起している社会像、連合ビジョン、働くことを軸とする安心社会、守る、つなぐ、つくり出すであります。
 守るということでいきますと、ワークルールとセーフティーネットを整備して、働く仲間一人一人を守る。つなぐということでいきますと、労働組合を結節点として、働く仲間、地域社会をつないでいく。そして、つくり出すは、一人一人の働きがい、生きがいをつくり出し、社会経済の活力を生み出すということであります。
 それらの実現のためには、雇用、労働にかかわる政策の実現はもとより、社会保障制度や教育制度、それを支える財源について、国民的な合意を積極的に形成しながら、持続可能で包摂的な仕組みとして再構築していくとともに、必要な負担を分かち合い、社会の分断を生まない再配分を進めていくことが求められております。
 また、特に経済社会の支え手となる現役世代、特に低所得層におきまして、自身のキャリア形成や子供の教育などの人的投資を十分に行えるように支援することを重視した取組が必要です。
 スライド三枚目にありますが、これは、ILOが二〇一九年の報告書で、人間中心のアジェンダを発表したものであります。このように、人間と仕事を経済社会政策及びビジネス慣行の中心に位置づけ、人間中心の成長と公平、持続可能性を推進していく必要があると考えます。
 足元の経済情勢に目を転じますと、海外経済の減速や相次ぐ自然災害、直近では感染症流行などの影響を受け、景気は停滞色を強めております。雇用情勢は数字の上では回復が続いていますが、労働分配率は低水準にとどまり、個人消費は伸び悩んでおります。その背景には、今後の景気減速の懸念に加え、超少子高齢化による社会保障制度の持続可能性への不安、所得格差の是正が進まないことが挙げられます。
 次に、国民生活の基盤である社会保障について述べたいと思います。
 社会保障は、一般会計歳出の三四・九%を占める最大の支出であり、国民生活にとって極めて重要なものです。私たちは全世代支援型社会保障の実現を求めており、その観点で幾つか述べたいと思います。
 まず、子ども・子育て支援です。
 保育所と放課後児童クラブ等の待機児童数が依然多い中で、保育士の一斉退職が各地で起きており、利用者にも影響が及んでいます。急増している企業主導型保育施設は、制度上、質の担保に課題があるほか、助成金の不正受給等が各地で報告されています。質が確保された保育所等の整備と継続的な処遇改善による保育人材確保に必要な一兆円超を早期に確保すべきと考えます。
 また、児童虐待の対応策として、子育て世代包括支援センターや子ども家庭総合支援拠点の全市区町村整備を促進すべきと考えます。
 男性の育休取得についても指摘をしたいと思います。
 依然として約五割の女性が、第一子出産を機に仕事をやめています。連合が二〇一九年に全国の有職男性一千名を対象に実施した育休取得調査では、取得割合は七・二%で、半数以上が一週間以下でした。固定的性別役割意識も根強く、育児は女性に大きく偏っています。しかし、連合調査では、取得しなかった男性の約三割が、取得したかったと答えています。
 女性の就業継続率の向上や、誰もが仕事と両立できる社会の実現に向けて、男性の育休取得促進は必要であり、そのための両立支援制度の拡充と、長時間労働の是正など職場環境の改善が課題となっております。
 二番目は、介護の問題です。
 高齢化に伴い介護需要が急増する中で、人材不足でサービス提供に支障を来す事業所も出てきております。人材確保には継続的な処遇改善が不可欠です。
 二〇一九年十月に介護職員等特定処遇改善加算が創設されました。二〇二一年度介護報酬改定に向け、更に強力な措置を導入すべきです。家族等、介護者への支援も強化して、政府方針である介護離職ゼロ社会を着実に実現していただきたいと思います。
 医療につきましては、二〇二〇年度診療報酬改定の答申で、医師の働き方改革を支援するための地域医療体制確保加算が新設され、救急や周産期を始めとする病院勤務医について、過重労働の緩和が期待されています。今後、この加算を含む診療報酬が、医療従事者の負担軽減や処遇改善などへ確実に反映されることを求めます。
 次に、年金です。
 公的年金は、老後を始め生活保障の大きな柱です。しかし、多くの、パート、有期等で働く者が社会保険に適用されていません。特に、雇用機会に恵まれなかった団塊ジュニア世代の高齢化を見据えた制度改正が急務です。
 そのような中、全世代型社会保障検討会議を始め政府・与党の検討は、社会保険の適用拡大を小規模にとどめるなど、踏み込み不足が否めません。連合は、曖昧な雇用を含む全ての働く者への社会保険の適用と、基礎年金の給付水準の底支えが緊要と考えております。まずは、事業所と労働者の確実な適用に向け、日本年金機構の体制強化を行い、適用促進を加速すべきです。
 次に、将来社会の担い手を育成する教育について述べます。
 四月から、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の子供を対象に、大学などの入学金や授業料の減免、給付型奨学金の拡充により、教育の機会均等の観点から、これらは一歩前進と考えます。
 一方、スライドで四枚目のとおり、連合の調査、二〇一五年の十月調査ですが、そこでは、対象とならない年収四百万円から八百万円未満のいわゆる中間層であっても、八割以上が、大学などの教育費が重い負担であると回答しています。社会分断を招くことなく、希望する誰もがちゅうちょせずに学びたいことを学べる社会を実現すべきです。引き続き、中間層を含めた全ての子供を対象に拡充していくようお願いをいたします。
 今般の予算措置で、小中学校の全ての子供がパソコン端末を活用できる環境が整備されることになりました。学校のICT化を進めるためには、ハード面のみならず、ICT支援員や事務職員の果たすべき役割が大きいと思われます。
 一方、タイムカードによる客観的な勤務時間管理が、都道府県では六六%、政令市で七五%、市区町村では四七・四%にとどまっています。学校の働き方改革を進め、教員が授業などの本来業務に専念し、子供の学びの質を確保できるよう、全ての学校で客観的な勤務時間管理を行い、業務の削減、教職員定数の改善、給特法の抜本的な見直しを三つの柱として、着実に取組を進めていく必要があります。
 また、社会人の学び直しについても指摘をしたいと思います。
 スライド五枚目をごらんください。
 日本の労働者への教育訓練への公的支出、対GDP比は、二〇一一年のデータですが、OECD諸国平均の五分の一と低位となっています。また、右側は企業が支出する教育訓練費ですが、これについても、一九九一年以降減少傾向となり、リーマン・ショック後に更に大きく落ち込んだままで、その水準は戻っていません。
 AIやIoTの進展を踏まえれば、リカレント教育の一環として、全ての労働者に今後の安定的な雇用につながる能力開発の機会提供が必要であり、労働者が有給で訓練を受けられる教育訓練休暇制度などへの政府の支援が重要です。
 さらに、高齢期においても新しい機械、技術への対応も必要となるため、定年前の早い段階から長期の教育訓練、職業能力開発の充実が必要です。
 次に、財政の基盤である税制について触れたいと思います。
 今回の税制改革関連法案は、総じて申し上げますと、喫緊の課題である、格差是正に向けた所得再分配機能の強化や、持続可能で包摂的な社会保障制度の構築に必要な安定財源の確保に向けた改革の全体像は示されておらず、こうした課題に正面から取り組む姿勢がうかがえません。
 国民の暮らしと将来の希望を確かなものにするためには、社会保障制度や教育制度の充実とあわせ、税制の抜本改革に向けた議論を一刻も早く行うことを求めます。
 その上で、二点申し上げたいと思います。
 一点目は、税による所得再分配機能の強化と財源調達機能の回復についてです。
 我が国では、所得構造が二極化し、貧困に苦しむ国民が増加しています。所得格差の解消に向けては、税制が本来持つ所得再分配機能を有効に活用すべきですが、スライド六枚目のとおり、我が国の税制、社会保障による所得再分配効果は、先進国の中では最低レベルにあり、所得税や相続税の累進性強化、金融所得課税の強化など、抜本的な見直しが求められます。
 また、今後、社会保障給付費が増大を続ける見込みであることを踏まえ、安定財源の確保に向け、所得税の改革に加え、企業の社会的責任に見合った法人税制のあり方、社会保障の充実、機能強化に向けた安定財源としての消費税のあり方など、与党、野党にかかわらず、国会全体での徹底した論議を求めます。
 二点目は、軽減税率制度についてです。
 導入決定以降、小売業、流通業を始め、懸命に準備、対応を重ねてきたわけですが、導入以降、制度の複雑さ、煩雑さを問題視する声が多数聞こえてきております。
 加えて、スライド七枚目に記載のとおり、飲食料品の支出額は家計収入が高くなるにつれて増加することから、低所得者対策となるどころか、高所得者ほど恩恵を受ける構造となっています。これらの問題点は複数税率を導入している諸外国では以前から指摘されており、連合としても一貫して導入に反対してきました。軽減税率制度については、その政策効果や、働く現場、消費者の受けとめなどに関して不断の検証を行った上で、スライド記載の給付つき税額控除など、低所得者対策として真に効果的、効率的な制度の導入に向けた議論が必要と考えます。
 最後に、労働者の保護ルールに関しても述べたいと思います。
 働き方改革関連法は、施行から一年がたとうとしています。働き方全般にわたる指標によって達成度と課題を検証し、一層の徹底を図ることが大切です。また、中小企業においては、本年四月から時間外労働の上限規制の適用が始まります。
 一般的には中小企業の方が長時間労働になっていますが、その改善に向けては、スライド八枚目のとおり、短納期発注等の取引慣行の適正化が必要です。大企業の働き方改革によって中小企業の労働者がしわ寄せをこうむることのないよう、しわ寄せ防止のための総合対策の着実な実施をお願いするとともに、中小企業の経営環境改善に向け、下請代金支払遅延等防止法の周知徹底と、来年三月に期限を迎える消費税転嫁対策特別措置法の期限延長についても検討いただきたいと思います。
 次に、高齢者雇用の推進についてです。
 七十歳までの雇用・就業機会の確保には、希望者全員が六十五歳まで健康で安全、やりがいを持って働くことのできる環境整備が不可欠です。また、六十五歳以降の雇用によらない措置のみを選択する場合、要件となる労使合意の確実な担保が求められます。さらに、雇用によらない働き方は労働安全衛生法などによる保護が及ばないため、六十五歳以上に限らず、就業者保護の観点から広くセーフティーネットの構築を図るべきです。
 次に、就職氷河期世代への支援についてです。
 これまで支援が届かず置き去りにされてきた就職氷河期世代が、地域社会とつながりを持ったり、働きながら暮らしたり、それぞれのゴールに向かえるよう個々に寄り添った長期かつ丁寧な支援が必要です。具体的には、これからでも十分なキャリア構築ができる公的支援が必要です。また、高齢期に入っても継続して就労可能な資格の取得支援、安定就労に向けた定着支援、そして支援する側の体制の専門性の確保をお願いいたします。
 次に、外国人労働者の権利保護についてです。
 昨年四月に改正入管法が施行され、在留資格、特定技能が創設されました。日本で働く外国人労働者は過去最高を記録し続け、現在約百六十六万人の方々が日本で働いています。労働者ということで、当然、日本の労働関係法令が全て適用になるのですが、実際は、人権や労働に関する権利が十分に守られていない実態があります。百六十六万人という数字は、派遣で働く人よりも多い数字です。外国人労働者保護のために、法令遵守を徹底するとともに、現行の外国人雇用管理指針の内容を充実させ、外国人労働者のための法律を制定すべきです。
 また、外国人労働者は、仕事を離れれば地域で生活する生活者でもあります。昨年十二月に改定された外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策における共生施策を着実に実行していく必要があります。
 次に、ハラスメント対策に関してです。
 二〇一九年五月末に成立した法により、事業主には新たにパワハラの防止措置が義務づけられますが、セクハラの防止措置も徹底されていないのが現状です。今回望ましい取組とされた、就活生に対するハラスメント、顧客等からのハラスメントを含め、相談体制の整備等の対策を徹底する必要があります。
 国際労働機関、ILOは、昨年六月に、仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶に関する条約を採択しました。それを受けて、ILO加盟国は、条約採択から一年以内に国会に報告し、国会の承認があれば、条約批准をILO事務局長に通知することになっておりますが、現段階では、日本政府は国会への報告を行っておらず、批准に向けての消極的な状況と言わざるを得ません。あらゆるハラスメントの根絶に向けて、国会審議の場において批准を目指した議論を行っていただくことを強く希望します。
 また、昨年六月二十六日に衆参両院におきまして、全会一致で、ILO創設百周年に当たり、ILOに対する我が国の一層の貢献に関する決議が採択されました。
 その中で、中核的労働基準として世界の大多数の国が批准している八つの基本条約のうち、未批准の案件については、引き続きその批准について努力を行うことが盛り込まれています。
 特に日本が未批准の第百五号条約と第百十一号条約は、それぞれ批准、未批准の国は異なっていますが、双方ともILO加盟百八十七カ国のうち百七十五カ国が既に批准しており、批准していないのは日本を含めてたった十二カ国であります。関係省庁による課題の洗い出しはおおむね終わっております。この決議にあるとおり、一刻も早い二条約の批准に向け、取組の推進をお願いいたします。
 以上で私の発言を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 120105262X00120200221_076

発言者: 逢見直人

speaker_id: 24513

日付: 2020-02-21

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会