大山力の発言 (経済産業委員会)

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○参考人(大山力君) ありがとうございます。横浜国立大学の大山と申します。よろしくお願いいたします。
 私の専門分野は、電気工学、特に電力システム工学といったものになっております。私、電力広域的運営推進機関、いわゆる広域機関の電力レジリエンス等に関する小委員会の委員長、それから、先ほど崎田委員からも御紹介ありましたけれども、国の電力レジリエンスワーキンググループの座長を務めておりましたので、その関係でこちらに呼ばれたものと考えております。そういった経緯がありますので、私としては安定供給に焦点を当ててお話ししたいというふうに考えております。
 最近起きた大きな停電、いろいろ起きておりますけれども、大きく二つに分類できると思っております。一つはブラックアウト、もう一つは主として配電系の、配電系というのは電圧の低い方の系統ですけれども、主として配電系の設備損傷による停電というふうに分類できると思います。
 まず、ブラックアウトですけれども、ブラックアウトというのは大きな地域が停電することということですけれども、じゃ、どこまで大きければいいんだとか、そういうところについてはちょっと定義的にはっきりしないところがあるかと思いますけれども、北海道は一応ブラックアウトになるだろうということには皆さん異議がないと思いますし、北米のブラックアウトなんかもあったかと思います。
 この停電、ブラックアウトというのは、突き詰めていけば需要と供給、供給というのは発電のことですけれども、そのバランスが取れなくなることによって起きる停電である、バランスが取れなくなったときに、ほかの手当てがうまくいかなかったときに起きる停電というふうに思っていただければいいかと思います。
 北海道のブラックアウト、記憶に新しいかと思いますけれども、設備損傷もありましたが、非常に多くの設備が損傷を受けたというわけではなくて、損傷の後に需給バランスが取れなくなることによって一気に全県が停電したという事象でございます。
 ブラックアウトについてよく分析されているケースとしては、二〇〇三年八月十四日の北米大停電などがございます。北米大停電は、電力自由化の後だったものですから、その影響というのがよくいろいろ話題になっておりますけれども、自由化によってメンテナンスにお金を掛けなくなって、樹木の管理が適切に行われなくなった、伸び放題になってしまった。そのために、電線が温度上昇して少し垂れたときに樹木に接触してしまってというのが直接の原因というふうに言われています。ただ、復旧したときには、隣接した健全系統から電力を供給されるということによって発電所を復旧させていきました。
 北海道の場合は、樹木接触ではなくて、地震によって発電所が損害を受けたことが原因でございますけれども、本州とは直流送電という特殊な設備で連系されていたために、復旧しようとしたときには全くほかから助けが得られないで、ブラックスタートということをした珍しいケースでございます。
 ブラックスタートというのは、ほかからの電力の供給を受けずに、自分だけで発電所が起動できることをいいます。自動車なんかはセルモーターを持っているかと思いますけれども、普通の発電所はセルモーターを持っていませんで、ほかから電気を受けることによって初めて自分を動かすことができると。限られた発電所のみがそのブラックスタート機能を持っているという状況です。
 ある程度以上の大きさの系統がブラックスタートしたというのは、広域機関の調べではハワイのオアフ島、ジャマイカに次いで三例目だということで、非常に珍しいことが起きてしまったということかと思います。
 なお、電力系統の運用者は、北海道は以前からブラックアウトだけは起こしてはいけないという教育を受けてきていて、系統運用者は皆さん非常にショックを受けたという状況だったかと思います。
 もう一つの、主として配電系の設備損傷による停電ですけれども、次のような特徴を持っているかと思います。
 まず初めに申し上げなきゃいけないことは、配電線の亘長、線路の長さですけれども、それは送電に比べて桁違いに長いということになります。したがって、全ての配電線を強靱に造ることは現実的ではありません。ということで、設備損傷をゼロに持っていくというのは難しいというか、できませんということになります。経済合理的な範囲でどうやって設備損傷を減らすかというのはもちろん考えなきゃいけませんけれども、いかに早く復旧するかということを考えることが重要になってきます。
 なお、昨年の台風十五号、配電設備だけではなくて送電鉄塔も倒壊しましたけれども、こちらについては設備の強度を上げる必要があるというふうに思いますし、その検討は別途行われているものと承知しております。
 ということで、ブラックアウトという起こしてはならないと教育されてきたことが起きてしまったこと、それから、気象激甚化によって設備損傷による停電が今後増加すると、既に増えてきていると思いますけれども、今後更に増加することが予想されるということから、今回の電気事業法の改正は必要だと思っております。
 まず、設備損傷に起因する停電に対する対策ですが、先ほども申し上げましたけれども、配電設備を合理的な範囲で強化することはもちろん必要ですけれども、設備損傷はゼロにはできないので、いかに早く復旧するかが重要でございます。
 今回の法律の改正案というのは、台風被害時の教訓があって、電力会社間、電力会社と自治体や自衛隊の間の連携強化が提案されているものと思っております。
 今回盛り込まれていることですけれども、一般送配電事業者が災害時にこれまでよりスムーズに連携すること。先ほど崎田委員から仕様の異なる工具だとかそういう話がありましたけれども、そういったことも含めて、そういう連携をうまく取っていく必要があるんだと。
 それから、仮復旧ということを導入して復旧を早くする相互扶助制度、応援要請や仮復旧がしやすくなるためにそういう制度が必要であると。
 それから、平時も含むデータの活用、そして発電用燃料の調達といったことが盛り込まれておりますけれども、これらは全て、先ほど申し上げましたとおり、最近の台風災害時の教訓からきているものというふうに思っております。
 次に、ブラックアウトに対する対策ですけれども、ブラックアウトからの復旧、まず原因ですけれども、先ほども申し上げましたとおり、需要と供給のアンバランスというのが最終的な原因になると。ただし、どこのエリアでアンバランスになるかと考えていきますと、エリアが広い方がアンバランスが起きにくくなりますので、ネットワークの脆弱性、どこかで容量がいっぱいになってしまうというようなボトルネックの存在も問題となってまいります。
 ネットワークがより強靱になれば、周囲の系統から電力の融通を受けることができ、需給のバランスが取りやすくなり、また復旧もしやすくなってきます。そこで、必要な設備投資を着実に実施することができる制度が重要になってまいります。どこに発電所が造られるか分からない状況でも対応できるマスタープランに基づいた広域系統整備、それから設備投資がしやすくなる制度といったことが今回の改正案に盛り込まれております。
 なお、小分けされた地域ごとに需要と供給がほぼバランスしていれば、非常時に系統を分離することによって一部の系統が生き残り、ブラックアウトは避けることができるということが電力システム工学の分野では昔から言われております。ただ、それをやるためには、常に系統分離あるいはアイランディング、島となって生き残るという意味ですけれども、アイランディングができるように発電電力を調整していくことが必要になります。地域ごとにほぼ需要と供給がバランスしていれば切り離せるということでございます。
 そのためには、発電が足りない地域にある発電所は、もし燃料費が高くてもたくさん発電する必要があって、これは経済運用とはちょっと異なってきまして、燃料費の増加を招いてきてしまいます。この費用をどのように負担するかということも重要になるかと思いますけれども、今回の法律案、改正案では余り明示的には含まれていないかと思いますけれども、今後検討する必要があろうかと思います。大橋委員の方から送配電に対するインセンティブのお話がありましたけれども、これもそのうちの一つになるかと思います。
 もう一つの対策としては、初めから系統分離、アイランディングができるように、まとまりの良い分散型電力システムを構築しておくことです。
 今回の改正案では、配電事業者の創設、それから遠隔地における配電網の独立化といったことも取り上げてあります。遠隔地の配電網の独立化は平常時のコスト面からもメリットが期待できると思いますが、配電事業者の創設、これは直接的なコストメリットはないかもしれません。でも、非常時に備える手段を多様化するのは評価できるというふうに考えております。
 以上で私が申し上げたいことはほぼ終わりですけれども、配電線地中化あるいは無電柱化について一言だけ補足しておきたいと思います。
 配電線を地中化しますと、大ざっぱに言うと、費用は倍から、経産省の資料によれば十倍ぐらいというデータもありますけれども、故障は起きにくくなります。ただ、一旦故障すると復旧時間が長くなります。それから、台風、風には強いと思いますけれども、水害には弱いです。
 というわけで、実は台風十五号のときは、一部の地域が停電しているけど長く停電したというのが非常に問題だったわけで、そういうことから考えると、コストを掛けて本当にその停電確率は減るけど一旦起きたら長くなることを求めるのがいいかというと、それが効く場所もあると思いますけれども、全体的な話とすれば、レジリエンスだけでは配電線の地中化ということを正当化するのはちょっと難しいかなと思っております。
 ただ、配電線の地中化には美観を良くするという効果がありますので、そちらを狙っていくというのはもちろん必要だと思っておりますので、今回の改正案に含まれている無電柱化の推進を含め、計画的な更新を求める制度というのはもちろん意義があるものだとは思っております。
 ちょっとレジリエンスだけからは難しいところはあるかということを一言だけ補足いたしました。
 以上でございます。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 大山力

speaker_id: 33038

日付: 2020-06-04

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会