西沢和彦の発言 (厚生労働委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(西沢和彦君) 日本総合研究所の西沢和彦です。
本日は、このような意見を述べる機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、資料はございませんので、口頭でお話をさせていただきたいと思います。
まず、総論としまして、こういった法案を見る際のポイントと申しますか、私は、書いてないことが何かを探すことが重要だと思うんですね、法案に。この法案の中をいじくっていくということも、後で申し上げますけれども、書いてない重要なことは、やはり年金財政の健全化の話であると思います。
前回、二〇一六年十二月にこの場に出させていただき、そのときの法案では、法律では、マクロ経済スライドにキャリーオーバーという仕組みが導入され、それは結構なことであったと思うんですが、やはり、そのときにも申し上げましたけれども、名目下限措置を外すということをやっておかないと、このコロナのあった後にインフレになるのかデフレになるのか分からないですけれども、デフレが仮に続いたとしたときに、名目下限措置があることがネックになってくると思います。
やはりこれは外しておくべきであって、二〇一四年財政検証のときには一旦その名目下限措置を外すということに行政の方もチャレンジしたと思うんですけれども、結局法案化に至らずに、その後提出になってしまいました。今回、その問題提起がなかなか見えなかったわけですけれども、今回の法案成立後の議論かもしれませんが、それが大きな議論になってくると思います。
と申し上げて、それと今度矛盾するような問題提起ですけれども、神野先生がおっしゃったように、マクロ経済スライドが二〇〇九年財政検証以来かなり変質しているわけですよね。厚生年金にはほとんど掛からずに、基礎年金だけに延々とマクロ経済が掛かる仕組みに変質してしまっているわけです。ですので、このジレンマに悩まないといけないわけです。
ですから、給付抑制を急いでせよと言いつつ、一方で基礎年金の給付水準の低下を食い止めろという矛盾したことを申し上げているようですけれども、これは本来、ビジョン型と申しますか、法案の中に余り入っていないですけれども、議論していかなければいけないところだと思っております。
そういった議論は今後続いていくものと期待しておりますので、この法案について、各論として四点ほど申し上げていきたいと思います。
一つが被用者保険の適用拡大であり、これは是非とも進めていただきたいと思っておりますし、従業員規模についても、今五十人で止まっていますが、これは企業負担、雇用の情勢を見極めながら順次引き下げていく、最終的にはゼロにすべきであると私は考えております。
改善すべき点としては、一旦百人、五十人になったときに、執行面の問題ですね。例えば法人分割をしてしまうと、二百人のところが例えば九十九人と百一みたいになってしまうと、法人分割が抜け道になってしまうと思うんです。ですから、本当は従業員規模という外形基準でなくて実質基準として従業員規模を見ていかないといけないと思いますし、提案としては、被用者保険の適用拡大というテーマはいいんですが、実際の働き方とか就労形態は社会保険制度の想定を何歩先も進んでいると思います。
健康機器メーカーでは、最近新聞でもさらば正社員というテーマで連載がありますけれども、正社員って一体何なんだというような課題が訪れているわけですね。副業、兼業も働き方改革の中で推奨されているわけです。ですので、複数のところから給与をもらうといった働き方が常態化してくる中で、今の社会保険制度の仕組みは、一つの事業所に正社員として勤めて朝晩働き、週五日通うというモデルが基本になっていますので、そうではなくて、複数の事業所から賃金をもらうといった働き方に対応させるべきであると思います。
そうしますと、今の年金制度の執行状態というのは名寄せがうまくできていないですから、名寄せをして、複数のところで働いていてもきちんと被用者保険が適用されるという仕組みに転換していくべきであると思います。これが一点です。
二点目は在老です。高齢者就労を促すという観点から、そのネックとなっている在老の見直しという方向性には私は賛成いたします。
ただ、財源ですね。年間千億円ちょっと。小さいという説明もなされていますけれども、私は小さくないと思いますね。やはり代替財源の確保あってこその在職老齢年金見直しですので、ここは本来であれば、よく言われていますように、公的年金等控除の見直しによる財源確保なども併せながら在老の見直しをしていくべきであると思います。ですので、税の話とセットであろうかと思います。
高在老についても今後議論が行われると思いますが、高在老につきましても、やはり税制とセットで、財源を確保しながらやっていくべきであると思います。
三番目に、受給開始時期を、七十歳、今上限ですけれども、七十五歳にするという話。これについては、選択肢の拡大という肯定的な評価の反面、改善すべき点もあると思います。
一つは、管理の難しさですね。年金機構の立場からしてみますと、六十八歳、六十九歳の方でまだ申請が来ていないと、いや、忘れているのかなと、あるいは繰延べしているのかなと気になるわけです。ほっておくと時効来てしまいますから、年金機構としても七十歳前の管理は難しいと思います。どうしても高齢になりますと認知機能も低下してくるというわけであって、忘れちゃうかもしれないんです。ですから、管理の難しさということが非常にある。
これをクリアしていくのが今後の課題の一つであり、また、今、後期高齢者の医療保険の窓口自己負担、これを一割から二割に上げようと、で、所得水準をどこにするかという話がありましたけれども、これと関連してくるのではないかと思います。衆議院の附帯決議で、税、社会保険料が年金上がると上がってしまうよねという話がありましたが、窓口負担にも影響してくると思いますので。高齢期になると、慢性疾患抱えて毎月医療費が掛かるという方がおられると思います。そうしたときに、一割が仮にその年金が上がったことによって二割になってしまうと医療費が倍になりますので、ここを整合的に設計していかないと、税金、社会保険料負担の増加、医療機関の窓口負担の増加といった話を整合的に設計していかないといけないかなと思います。
最後に、四つ目に、基礎年金の話です。ここはもう神野先生おっしゃったように、この給付水準の低下を何としても食い止めなければいけないと思います。思いますが、基礎年金は御案内のとおり半分税金ですので、税の話と一体でないとにっちもさっちもいきません。やはり、拠出期間延長の四十五年を提案しながらすぐにそれが後退してしまうのもやっぱり国庫負担が膨らむからであって、税金というととかく嫌われがちなんですけれども、社会保険料よりも税金の方が私は低所得者に優しいと思うんですね。所得税には課税最低限もありますし、消費税も的確な所得捕捉を行うことによって、例えばカナダ型のGSTクレジットのような形で逆進性対策を取ることもできます。
ですので、近年、税の話が低調ですけれども、税も併せて議論しませんと、やはり社会保険というのは負担と給付が連動した財源調達手段ですので、税も併せて議論していかないとなかなか低所得者対策というのは難しいかなと思います。
私の方からは以上です。御清聴ありがとうございました。