尾身茂の発言 (予算委員会公聴会)

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○公述人(尾身茂君) 御紹介にあずかりました尾身です。よろしくお願いいたします。
 本日は、まず六つの点について述べさせていただきたいと思います。
 一点目は、これからどんな戦略、基本戦略でやったらよいかという点であります。
 基本的には、私は、社会経済機能への影響を最小限にして、感染拡大の努力の効果を最大限にするというバランスの取れた方法でやることがよいと思っております。そういう中で、言わば三本柱というものが大事だと思います。
 第一の柱は、いわゆる、もう皆さん御承知だと思いますけど、クラスターサーベイランスによる早期発見、早期対応ということで、クラスターを早く見付けて、言葉は悪いですけど、クラスターを潰すということであります。それから、しっかりした医療供給体制を充実強化して、感染者の早期診断を通して重症化を防ぐという医療体制のことであります。三番目の柱が我々市民一般の行動変容という、この三本柱だと思います。
 日本の状況は、この戦略を強化することにより感染拡大のスピードを抑えられる可能性もあります。したがって、この三つの戦略については、これからも維持だけじゃなくて強化をしていくべきだと思います。
 二点目でございますが、現在の国内の感染状況をどう考えているかということであります。
 現時点においては、感染者の数は増加傾向にあります。また、もう既によくテレビなんかでも言われているように、狭い空間に多くの人が集まる、一定条件を満たす場所においてのクラスター感染が全国で相次いで報告されていることがあります。
 しかし、全体で見れば、三つの点が指摘できると思うんですけれども、まず一点目、これまで国内で感染が確認された方のうち、重症、軽症にかかわらず、約八〇%の人はほかの人に感染をさせていないということであります。それから、二番目は、実効再生産数ということで、感染の流行中に一人の人がどれだけの二次感染をさせるか、五人させるのか、一人かなどという実効再生産数は、もちろん日によって変動はありますが、今のところ、おおむね一程度で推移をしています。これが二点目であります。
 それから、三点目は、関係者のもうこれは夜に日を継いでの努力で、いわゆるクラスターの発生がどういう形で起きているかということをリンクが追えている例も出てきている。もちろんリンクが追えない例もあるんですけど、リンクの追えている、追えてきている例が出てきているということで、こういうことで、一応は諸外国と比べ、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べ、感染者の増加のスピードをある程度抑えることができているんだと思います。
 しかし、私ども、私自身も二月の二十四日に申し上げましたけれども、これからの一、二週間が急速に拡大に進むか終息できるかの瀬戸際というふうに申し上げましたけれども、以上の状況を踏まえると、本日、今日時点での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、もちろん感染の拡大はあるんですけど、一定程度持ちこたえているのではないかと考えます。しかし、感染者数はこれからも当面増加傾向が続くと予想されます。したがって、依然として警戒を緩めることはできない状況であると考えております。
 三点目でありますが、重症化についてであります。
 もう既に中国からの二月二十日の報告でもありますように、中国では、感染が確認された症状のある人の八〇%が軽症、一三・八%が重症、それから六・一%が重篤となっています。広東省からの報告では、重症者百二十五名のうち、軽快し退院した者が二六・四%、重症者百二十五名のうち、軽快し退院した者が二六・四%、状態が回復しつつある者が四六・四%ということになっています。
 さて、我が国の状況では、既に感染が確認された症状のある人三百六十六例のうち、既に五十五例、一五%は既に軽快し退院しております。しかし、これは三百六十六人の経過が全て分かっておるわけではありませんので、私自身は、この一五%という数はこれからも増加するものと思っております。今の段階で一五%ですけど、もっと多くのパーセントの人が軽快するのではないかと思います。
 日本では死亡者数は大きく増えていません。このことは、限られた医療資源の中であっても、日本の医師が、これは現場の医師が一生懸命努力していただいているおかげで、重症化しそうな患者さんの、全てではないですけれども、多くを検出し、適切な治療をできているという、日本の医療の質の高さをある意味では示唆していると考えられます。
 今後も死亡者数の増加を抑えるためには、先ほど冒頭で申し上げましたように、日本の医療の体制を更に、今のままでは感染拡大に備えられませんので、更に強化する必要があると思っております。
 四番目でありますけれども、二月の二十八日だったと思いますけれども、北海道が緊急事態宣言を知事のリーダーシップで出されたと思いますけど、そのことについてであります。
 このコロナ感染症は、感染から発病に要する潜伏期間の平均値が五日であり、さらに、発病から報告までに要する平均時間は約八日であることが知られており、我々が今日見ている、今日現在見ているデータはその約二週間前の新規の状況を捉えたものであるというタイムラグがございます。そのため、北海道の対策については、北海道での緊急事態宣言から少なくとも約二週間後からでなければその効果を判定することが、推定することが困難であります。
 その後、さらに、幾つかの指標ですね、インディケーターと申しますけど、を三つ、我々は今、私は考えております。それは、一つは新規の感染者の推移、それから二番目は先ほど申しました実効の再生産数、一人がどれだけ感染をさせるか、それから感染源、リンクですね、感染のリンクが明確になっている患者さんの数、この三つの指標を用いて約一週間程度を掛けてその対策の効果が判断できると思いまして、そうすると、大体私は三月の十九日ぐらいになると今までのいろんな対策の効果が判定できるというふうに思っています。
 さて、五番目ですけれども、五番目はこれからの見通しということであります。
 先週まで報告が少なかった諸外国において患者数が急増しています。皆さん御存じのとおりです。アジアにおいても感染が、数が増えている。ヨーロッパ、アメリカでも感染者数が急増しています。全ての感染源、あるいは感染状況、あるいはリンクが追えているわけではないので、感染の拡大が既に日本各地で起きている可能性もあると思います。
 よって、今回、国内での流行を一旦抑制できたとしても、しばらくはいつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれます。また、世界的な流行が進展していることから、国外、国外から感染が持ち込まれる事例も今後繰り返されるものと予想されます。
 さらに、中長期的な見通しということでは、国内に目を転じますと、各県、あるいは都道府県が一様に感染の拡大あるいは終息のレベルが行われるということはほとんどないと思いまして、各地域によって感染のレベルが少しずつ異なってくると思いますので、その状況によって各地域が適切な対応を取ることが求められると思います。
 これから、私が、これからその長期の見通しの中で我々オールジャパンとしてやるべきことは四つあると思います。四つあると思います。
 一つは、クラスターチーム、これはもう厚生省にクラスター班がありますし、それよりももっと多くの保健所関係の人、自治体の人が、これはクラスターサーベイランスというか、クラスターが起きたときのその接触者の追跡とか、これに対してかなりの能力とエネルギーを使って、ある意味では関係者は夜に日を継いでいるので疲弊をしている状況があります。これは間違いなく事実でありますので、私は、このクラスターチームの、これでクラスターを早期発見して、クラスター感染の輪、連鎖を早く摘むということですけれども、この対応が長期間にわたって持続できる体制の急務、人の補充あるいは財政的な補充、これが非常に必要だと思います。
 二番目は、保健所については、やはりもう保健所の職員は今もう目いっぱいになっておりますので、労務負担を軽減すべく、帰国者相談、帰国者・接触者相談センターの機能については保健所以外の担い手を求めるなど、早急に人的、財政的支援を講ずるべきだと思います。
 それから、三番目ですけれども、このコロナとの闘いの主要な戦力は現場であります。現場でありますので、地域公共団体や保健所の広域での連携ですね、広域、時には県の枠を超えての、あるいは市町村の枠を超えての広域での連携とそれから情報共有が極めて重要であります。どういうリンクがあったのか、追えなかったのかという情報をすぐに、今もやっていただいていますけど、更に迅速な情報共有が必要だと思います。
 四番目、最後ですけれども、これから感染の更なる拡大が起こる可能性が否定できないわけですから、それに準備するためには、医療提供体制、今のままではもう既に感染者でいっぱいになってしまいますので、この状況に対応するためには、一般に対応する一般医療機関や診療所を選定し、全ての診療所でやれば院内感染を起こして患者さんに感染がいくだけじゃなくて医療者に感染を起こすということもあり得るので、ここは私は、この感染の治療、診断に当たる医療機関や診療所を早く選定して、その選定したところにはいろんな支援、財政的、あるいは医療器具、マスク、そういうものをしっかりと供給する必要があると思います。
 最後になりますが、一般の我々市民そして事業者に対するお願いということであります。
 もう既に何度も私どもも申し上げているように、集団感染しやすい場所というのが大体分かってきまして、三つのことが、三つの条件が合うというか、三つの条件が全て満たされるところが感染のリスクが非常に強い。一つ目の条件というのは換気の悪い密閉空間であること、これが一つ目の条件、換気の悪い密閉空間、それから二番目、多くの人が密集しているということ、それから三番目は近距離、互いの手や腕を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる場所ということ、この三つが合ったところが非常に感染のリスクが高いので、そうした場所にできれば行かないでいただきたいというのが、私どもの、一般の我々へのメッセージであります。
 最後になりますが、事業者の方へのお願いということで、もう既に国からも、あるいは我々からも、リモートワーク、テレワーク、オンライン会議、あるいは時差出勤なんかをお願いしていますが、その上で、さらに、各事業者がどのような対策を取っておられるか、是非積極的に市民に情報共有をしていただければと思います。そのことが市民にとって施設や各種サービス等の利用しやすさの判断につながると考えていますので、どうぞよろしくお願いします。
 以上であります。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 120115262X00120200310_002

発言者: 尾身茂

speaker_id: 14872

日付: 2020-03-10

院: 参議院

会議名: 予算委員会公聴会