上昌広の発言 (予算委員会公聴会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○公述人(上昌広君) 私は、上といいます。内科の医者です。
 元々は、血液内科、白血病の治療をしていました。二〇〇一年から五年まで国立がんセンターでやっておりました。その後、御縁があって、二〇〇五年から二〇一六年まで東京大学の医科学研究所で研究と診療をしておりました。現在も診療しております。
 今日、先生方にお話しするのは、この問題に様々な見方があると。私は医師で研究者でもあります。様々な見方を、皆様に様々な視点を御提供して政治判断にお役立ていただけたらと考えています。
 今日、資料を配付いたしました。一ページ目です。
 現在、渡航禁止が世界各地でやられています。是非お考えいただきたいのは、この問題、ウイルスって世界中蔓延するんですね。日本だけエイエイオーってやっても、海外で様々なやり方があり、様々な形でコンセンサスが簡単にできるんです。
 例えば、これは最近、サイエンスという雑誌があります。アメリカの科学誌です。今回の場合、医学誌、アメリカのニューイングランドという医学誌、イギリスのランセットという医学誌、科学誌はアメリカのサイエンス、イギリスのネイチャー、この四つの影響力というのは絶大なんですね。実は、WHOより、我々研究者にしてみればここがコンセンサスなんです。ここのエディターというのが最も影響力がある一人なんですね。
 サイエンスの三月号にどう載せたか。アメリカのボストンの大学からです。武漢の閉鎖、彼らはシミュレーションの結果、発表したんですね。まあ余り効果なかったよと、三日から五日遅らせただけだと、なぜなら周辺に伝播していたから。一方、ヨーロッパなどはすごく患者さん減ったよと、八〇%も減った、なぜなら伝播していなかったから。
 そうしましたら、現在、日本が取るべき対策は、日本をヨーロッパとみなすのか、中国の都市とみなすのか。これはいろんなお立場あります。
 もう一つ、彼らは、効果を持続させるためには、九〇%の移動制限を続けて、さらに、コミュニティーの中で、要するに地域の中で感染者を半分以下に減らし続けろと、これをずっとやれば効果は持続できますよと報告しているんですね。恐らく、これ、アメリカだろうが日本だろうが一緒でしょう。これが科学的な現在のコンセンサスです。
 私たちは科学的な事実を申し上げます、先生方は、政治判断、トータルの判断をなさいますから、これが一つの世界のコンセンサスとお考えください。
 渡航禁止というのは有効性はある程度証明されています。余談なんですが、どういうのをエビデンスと言うかと。九・一一のテロの後にアメリカではインフルエンザがはやらなかったんですよ。あれ、渡航禁止が起こったのと同じなんですね。この渡航禁止というのは状況によって大いに変わるんだと。臨機応変に対応をしなければいけなくなります。
 二ページ目です。
 私は、渡航禁止に少し戻りますと、ここまで日本が厳しくしてこなかったのは、医学的な判断としては極めて妥当だったと考えています。経済的判断や政治的にはまた別です。
 イベントの自粛、これ、私、大分調べたんですが、医学的なエビデンスはございませんでした。そもそも論文がなかったです。学級閉鎖はもう山ほどありました。学級閉鎖をすることで感染症の蔓延を抑制する、何割か下げるというのはもう山ほどあって、これはコンセンサスです。今、相撲をやめている、野球をやめているということについては医学的なエビデンスはありません。だからやるなと言っているわけでは毛頭ありません。先生方の政治的な御判断です。
 三ページ目へ参りますと、ここが実は難しいんですね。この病気は、怖いと思う人と大したことない、意見が真っ二つです。恐らく、両方の御意見をお聞きになっていると思います。よって立つデータはどこにあるのか。実は、死亡者の大部分が中国なんです。さらに湖北省、さらに武漢市なんです。
 中国は、今回、かなり徹底的にデータを出しています。ネイチャーや、ニューイングランドの医学誌、ランセットのような、英米のメディア、医学誌に発表しています。これ大したものなんですよ。なぜなら、プロとプロが見て、おまえおかしいだろうと言われる、それに堪えるデータなので私は信頼しています。
 この図は、中国のCDCが作った年齢別の死亡率です。すごいですね、八十歳代以上は感染したら一〇%以上亡くなるんです。私も医師となって約三十年弱ですが、こんな病気は診察したことがありません。怖いです。多分、世界では、エボラ出血熱とかそういう類いのちょっと弱いぐらいだと思います。
 でも、我々の感覚とずれるんですね。我々は、研究者として様々なデータを様々な形で分析し直します。私は、湖北省とそれ以外を分けて解析してみました。実は、湖北省以外の死亡率は〇・八%なんです。豊かな地域、北京、上海、まあ浙江省なんかもそうですね。浙江省を見たら、〇・一%なんです。致死率が四%と言われるのと〇・一%、皆さん、受ける印象が違いますよね。
 ここからは私の考察です。
 なぜ湖北省が駄目だったのか。私は、地域が壊れたからだと考えています。
 流行前、この地域は千四百万人の方がおられました。現在、九百万とされています。五百万人減ったんですね。二つの要因があります。春節のときに出かけて戻れなかった人。もう一つは、戒厳令がしかれる前に、午前二時に漏れたと言われているんですが、午前十時までにたしか三十万人が避難しています。
 この結果、どうなったか。出ていった人の多くは若い方なんですね。高齢者が孤立するんです。高齢者が孤立すると、容易に健康を害します。この状況を先生方見たことありますね。二〇一一年の福島です。
 我々は、二〇一一年三月から現在に至るまで、我々のチームで現地で診療を続けています。飯舘村に、二〇一一年五月、健診をしたときには、高血圧、糖尿病、うつ傾向、顕著に上がっていました。その年は福島県浜通りで脳卒中等の死亡率が激増しています。高齢者が独居になって一人で閉じこもる、容易に健康を害するんですね。同じようなことが恐らく湖北省で起こったと考えています。
 ですから、町の機能を維持することは極めて重要なんです。先生方の御両親、恐らく、家で一人でおられて外に出るなと言われて、簡単に持病悪化するの想像に難くありませんよね。日本をこうさせてはならないんです。これは私たちの福島の活動を通じた実感です。武漢のことと、とてもよく合います。
 次のページ、御覧ください。
 私が先生方にアドバイスできるとすれば、あまたあるデータの中で何を信頼すべきか。この病気のキャラクターを把握するためには、一番頼りになるのがクルーズ船のデータだと思います。なぜなら、軽症の患者さんから重症まで、かなり広い範囲にわたって遺伝子検査を行ったからなんです。こんなことをやったのは恐らく世界でここだけです。
 この結果、私、やっぱりびっくりしました。乗員乗客三千七百十一人中、六百十九人が感染しました。一七%です。非常に感染力が高いですね。一番驚いたのは、三百十八人が遺伝子診断陽性のときに症状がなかったんです。いや、これですと、今までの患者さんといった人と、それ以外、氷山の一角で、大部分が分からないんですね。感染者数は恐らく科学的には把握できません。この事態を考えますと、偶然見付かった患者さんに対して、余り過度な解釈をなすべきじゃないんですね。
 もう一つは、やっぱり日本なんです。死者は七人出ています。このうち、年齢が公開されているのが五人です。全員七十歳代以上、四人が八十代以上、お一人七十代。仮に未公開の二人も七十以上としましても、致死率は最高で二・四%なんです。中国は七十代以上の致死率が一〇%を超えましたね。日本の致死率は、恐らく中国のデータをそのまま使ってはならないんです。幾つか要因があります。もちろん、日本の医療機関が中国と比べて勝っているのかもしれません。それはもう分かりません。一つ確実に言えるのは、栄養状態がとてもいいんだと思います。昔の七十代と今の七十代、違いますよね。体力が付いているんです。
 このデータは、科学的には私が知る限り一番客観的です。致死率二〇%と言うのか、クルーズ船の中でも二%強だったと言うのかは、これは社会に与える影響が全く違ってきます。
 最後、このグラフは、世界各国に、横軸に感染者数、縦軸に致死率です。
 先ほど御説明しましたように、感染を確定するには遺伝子検査が要ります。PCRという方法を使います。ウイルスの感染の診断は遺伝子検査をしなければできないんです。感染数は、基本的にはPCRをどれだけやったかにかなり依存します。
 日本を見ていただきますと、感染者も少なく、致死率も低くもなく高くもなくですね。アメリカは、感染者が極めて少なく、致死率が高いです。これは、重症者だけをやっているということです。現在、アメリカのメディアを見ておりますと、PCRの体制をつくれ、つくれ、つくれ、新しい検査体制をつくれというのがもう毎日出てきています。急速に増やしていくと思います。オーストラリアも同じですね。
 一方、コリアを御覧になってください。もう感染者むちゃくちゃ多いんですが、致死率は余り高くないんですね。ここは、世界の中で一か国だけ特別です。極めてたくさんの遺伝子検査をやっておられます。ドライブインなんかでやっておられますね。この仕組みはアメリカも導入を検討していて、シアトルで既に始まりつつあるようです。
 日本のデータは、致死率もある程度高く、一方、感染者が少ない。先ほど申し上げましたように、クルーズ船の中での高齢者の致死率は中国の十分の一です。私は、恐らくもっと低いと思います。なぜ下がらないのか。遺伝子検査が十分なされていないからなんです。
 どうやってこの病気のエグジットをしていくか。病気の姿を正直に社会と共有することなんですね。一部の方はお亡くなりになりますが、多くは恐らく軽い感染症なんでしょう。無症状の方、軽い方、こういう方まできっちり診断をしていかないと、この病気の本当の姿は見えないんです。
 今日、先生方に御提示したいデータは以上です。
 最後に、これは医学、科学の問題でもあります。
 この点に関しては、様々な見方があります。私のところに最近、海外のメディアがたくさんやってきます。何で皆さんいらっしゃるんですかと聞くと、独自の意見を言う研究者、医者というのはほとんどこの国にいないんですと、先生たちの評判が伝わってくると。
 科学者は、ノーベル賞学者だろうが大学院生だろうが対等なんです。どの意見が正しいかどうか分かりません。私が申し上げたのも間違っている場合は十分あります。ですけど、議論を積み上げて、やがてコンセンサスになるんですね。ランセットやサイエンスは、世界においてコンセンサスです。こういうものとそれぞれの意見とを区別する必要があると思います。
 これは、あくまで医学、科学の話。最終的に政治の話。エビデンスがないのをやるべきではない、毛頭思いません。それは先生方のお仕事。ただ、エビデンスがある場合にはその部分を十分御配慮いただければと考えています。
 以上です。どうもありがとうございました。

発言情報

speech_id: 120115262X00120200310_004

発言者: 上昌広

speaker_id: 32944

日付: 2020-03-10

院: 参議院

会議名: 予算委員会公聴会