宮坂昌之の発言 (厚生労働委員会)

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○宮坂参考人 大阪大学の宮坂です。
 本日は、ワクチンの有効率、副反応、開発で注意すべき点などについてお話しさせていただきます。
 まず、最近、テレビ、新聞のニュースで、どこどこの会社のワクチンの有効率が九〇%だった、あるいは、きょうなんかでも、モデルナ社が九四%だったというニュースを聞きますと、ほとんどの方が、百人にワクチンを打つと九十人あるいは九十四人に効いたんだというふうに理解される方が多いと思います。私もワクチンのことを本当に勉強する前は、もしかするとそうかもしれないなと思っていたんですけれども、自分でよく調べてみると、そんなことはありません。
 そういうことを含めて、きょうはワクチンに関する誤解について説明させていただきたいと思います。
 まず、一ページ目の下のスライドですけれども、ファイザー社のワクチンの有効率が九〇%であるということが大きく報道されました。そうしますと、今もお話ししましたように、ほとんどの方は、百人にワクチンを接種したら九十人に効果があったと理解されるんですけれども、実際はそうではありません。
 これはどういうことかというと、ワクチンを打たなかった人、非接種者、その発病率を一としたときに、接種をするとその発病率が何%に、どのくらいの割合に下がるか。これが〇・一に下がると、一マイナス〇・一イコール〇・九、すなわち九割の人に有効性が認められたということになります。
 ですから、この対象というのは、ワクチンを打った人を一〇〇とするのではなくて、ワクチンを打たなかった人を一〇〇として考える。その発病率を一〇〇としたときに、発病率がもしも一〇%に下がれば、一〇〇から一〇を引いた九〇%、それが有効率であるということになります。
 そのことを示しましたのが次のページの上のスライドです。
 これは、ワクチンを打たない群、ワクチンを打った群、これは通常は同じ数でやりますので同じバーの長さとなります。そのときに、ワクチンを打たなかった人の発病率を一と仮定しますと、ワクチンを打ったときにこの一がどの程度に変わるか。今回のファイザー社の場合には、後でお話ししますけれども、実はこのパーセンテージを言うということはかなり問題のあることなんですけれども、これが〇・一に減った、したがってワクチンの有効率は九割だったということを言っているわけです。
 文章で書きますと、非接種者、ワクチンを打たなかった人と比較して、ワクチンを打った人の発病率あるいはリスクが相対的に九〇%減少した、これが現在の状況です。これを言いかえますと、打たなかった人、非接種で発病した人の九割はワクチン接種をしていたら発病しなかったとも言いかえることができます。このようなときにワクチンの有効率を九割、九〇%といいます。逆の言い方をしますと、相対的リスク、感染するリスクというのは〇・一、一〇%だということになります。
 下のスライドに移ります。
 今回の場合にはワクチンが九〇%の有効率を示したということが言われていて、現在公表されているのは、ファイザー社の例の場合には臨床試験対象が四万三千五百三十八人であった。ということは、恐らく、ワクチン群とプラセボ群半々ですから、その半分の数がそれぞれの群の被験者の数ということになります。
 そして、新型コロナの感染者が全体で九十四人いたということがわかっています。しかし、ここにもしも有効率が九割だったという数字を入れますと、唯一出てくる可能性は、この図に書いてありますように、プラセボ群二万一千七百六十九人、ワクチン群も二万一千七百六十九人、簡単に仮定するとこういうことになります。その中で、ワクチンを打たなかったいわゆるプラセボ接種群には八十六人の感染者がいた、ワクチン接種群には八人の感染者がいた。こうすると、コロナの感染率が九割減ったという計算になるわけです。
 したがって、本来はこの数というのは公表できない数なんですけれども、全体の被験者数、そして感染者数、有効率の答えを言えば、自動的にこれが出てきてしまう。すなわち、第三相試験の中身を公表したのと同じことになっているんですね。
 ここに書いてありますように、ワクチンの有効率の計算方法というのがありますけれども、それは、接種者の罹患率と非接種者の罹患率がわからないと出せない。でも、今お話ししたように、実際は、非接種者も、接種者中の罹患率が自動的に計算できてしまうわけですから、実は中身を全部出したのと一緒だということになるわけです。
 ここに書いてありますように、本来は、ワクチンの有効率を算出するためには、接種者罹患率、非接種者罹患率を知る必要があります。ところが、第三相試験の場合には、通常は二重盲検法、すなわち、お医者さんも誰に何を上げているか知らない、受ける方も何を受けているかはわからないという状況の二重盲検でやるわけですけれども、この場合に、どちらかの群に感染者が起きたとしても、それはどちらの群で感染が起きているかはわからないわけです。でも、それは唯一、わかろうとすれば、いわゆる割りつけ情報、誰がどのグループにいるのかという割りつけ情報を情報公開する、これをキーオープンといいますけれども、キーオープンしない限り、どちらのグループに何人感染者がいたかというのはわからないはずなんです。しかし、キーオープンしますと、盲検性が失われますので、第三相試験としてはデータは使えなくなります。
 そういうことから、恐らくファイザー社としてはこういうデータの出し方をして、しかし、これはグレーゾーンといいますか、なかなか、出し方としては厳しい、私はよくない方法であろうというふうに考えています。
 ですから、恐らく、このことから考えますと、このワクチンはかなり効くんだとは思います。しかし、問題は、後でお話しするように、安全性であります。
 次に、これは岡部先生がもう既におっしゃいましたけれども、ワクチンの副反応と有害事象ということがありまして、これはもう皆さんよく御存じのことでありますけれども、有害事象というのは、ワクチンそのものに原因があるかどうかはわからないけれども、ワクチン接種後に起こった好ましくない現象の全てのことをいいます。
 その内側に、副反応。すなわち、これはワクチンそのものによって起こった反応、特に、局所の痛み、発熱、腫れ、全身の発熱、これは、実は免疫反応のために起こるものですから、副作用とは言わずに副反応という言葉を使います。免疫のためにやむを得ず起こった反応であるということであります。
 ただし、その中には、脳炎、神経麻痺、アナフィラキシーショックのような、しばしば不可逆的な、取り返しのつかないような重大な事故が起こることがあります。
 その下に重篤な副反応の例というのを、どのくらいの頻度で起こるのかということを挙げてあります。
 まず、アナフィラキシーショックというのは、急激に全身的に起こるアレルギー反応の一種であります。皮膚や粘膜のかゆみ、息苦しさ、吐き気、立ちくらみが起こって、だんだん血圧が下がって意識障害が起こって、ひどくなるとショックになって亡くなるというのがアナフィラキシーショックです。
 実は、この頻度というのはもう既にわかっていまして、これまで使われているワクチンは、アメリカでも日本でも共通で、大体百万回に一回以下の頻度でこのアナフィラキシーショックが起こる。極めてまれなことですけれども、重篤なことなので非常に大きく喧伝されます。
 ただし、このアナフィラキシーショックは学校では食べ物によってしばしば起こるということが既にわかっておりまして、例えば、小学生、中学生、高校生いずれを見ましても千人に数人ほど、例えばピーナツを食べた、特定の物を食べたときにショックを起こして倒れる。このアナフィラキシーショックの経験者というのは千人に数人いるんですね。ということは、ワクチンの方がずっとアナフィラキシーショックに関してはリスクが低いということになります。
 次に怖い脳炎、脳症。脳症というのは脳の病気全体、脳炎というのは明らかに炎症を起こしている状態を脳炎といいます。これを一くくりにして説明しますと、はしかのワクチンを打ちますと、百万回に十回程度、脳症が見られることがある。これは怖いなと思います。しかし、はしかそのもの、自然感染によっても脳炎というのは起こりまして、その頻度はワクチンを打つ十倍、百万回に百回も起こる。こういうことから、ワクチンを打った方がはしかの場合には安全ですよということになるわけです。
 インフルエンザワクチンに関しましては、脳炎の起こる確率は百万回に〇・一五程度、ギラン・バレー症候群、こういう麻痺が来る、これも百万回に一回程度という非常に低い頻度であります。
 それから、非常に恐れられていた乳幼児の突然死症候群、SIDSと呼ばれるものですけれども、日本でもアメリカでも報告されましたが、アメリカに関しましては、二〇一九年現在で、ワクチン接種とSIDSの間には因果関係はないということが示されています。しかし、日本に関してはまだこの答えが出ておりません。
 以上をまとめますと、ワクチン接種による重篤な副反応というのは百万回に一回から十回の間であるということであります。
 じゃ、ほかのリスクというのは高いのか低いのか。我々が飛行機に乗って死亡事故に遭う確率というのは百万回に九回程度なんですよ。ワクチンより高いか、どっこいぐらいですね。あるいは、交通事故。免許証保有者百万人に対して死亡事故を起こす人が八十二人ですから、これはワクチンのリスクよりもずっと高いです。しかし、我々は、それでも自動車に乗らないとは言いません。飛行機に乗らないとは言いません。必要な場合にはやむを得ないということになるわけです。ですから、現在使われているワクチンに関しては、ゼロリスクでないことは確かでありますけれども、そのリスクは非常に低いというふうに言ってよろしいかと思います。
 次のページに移ります。
 こういうワクチンのリスクがどれだけあるのかということを調べるのが臨床試験で、通常は参加者が二十歳以上六十五歳以下でやります。ここに書いてありますように、第一相、第二相、第三相。通常、第一相で百人以下、第二相で数百人、第三相で数千人、こういう数の人たちにワクチンの安全性と有効性を調べるわけですけれども、この場合には厳格なグッド・クリニカル・プラクティス、GCPに従って行われるわけです。しかし、通常、数千人やっても答えが出ない場合、その場合には、その下に書いてある第四相、これは製造販売後に試験を行うということも現在行われています。
 ただし、臨床試験のポイントは、第三相試験でも数千人、あるいはアメリカで現在数万人までやりつつありますけれども、それでもワクチンの副作用が言えるのかどうなのかということが問題になります。
 といいますのは、その下にありますように、現在の感染者の頻度を考えますと、東京の直近一週間の人口十万人当たりの感染者の数は二十人程度であります。ということは、もしも検査が不足していて我々が九割見落としていたとしても、人口十万人当たりの患者数は二百人程度。ということは、患者の頻度は千人に二人ぐらいということになります。もし人にうつす確率をここに掛けますと、それの一割から二割ですから、実際我々が感染者に出会う確率というのは非常に実は低いんだということがおわかりになるかと思います。
 日本でもしも臨床第三相試験を総勢一万人でやったとします。そうすると、プラセボ群、ワクチン群に五千人ずつということになります。ただし、上の頻度で感染者が出たとしますと、プラセボ群でも十人程度しか感染者が出ませんので、ワクチン接種群と比較するには余りにも小さな数字である。ということは、もっともっと大規模な調査をしないとわからない、あるいは、日本では第三相試験を成立させるのは難しいんだということになります。時間もかかります。
 たとえ十万人の第三相試験をやったとしましても、その下に書いてあるように、ワクチンで見られる重篤な副反応の頻度は百万回に数回程度ですから、十万人の試験でもわからないんですね、本当の頻度は。
 あるいは、HPVワクチン、子宮頸がんワクチン、先ほど岡部先生がおっしゃいましたけれども、この場合には、有害事象、直接原因かわからないけれども、ともかく起こった健康被害の頻度というのは、百万回に百回以下。百万回に百とすると、一万回に一回ですね。一方、今も申しましたように、我々が感染する確率というのは、それとどっこい、余り変わらないぐらいのことになってしまうんですね。そうすると、若い人に本当にワクチンを強制的に接種すべきかということが問題になります。
 この問題を解決するために、実は、この右側のページに移りますけれども、PMDAは条件付早期承認制度というものを持っていまして、四つの条件を満たせば日本で第三相試験を飛ばせる可能性があるということになっています。
 一番目は、適応疾患が重篤である。これはなかなかこの病気の場合には解釈が難しいですね。重篤になる方もいらっしゃいます。
 二番目、医療上の有用性が高い。これはそうだと思います。
 三番目、検証的臨床試験の実施が困難。この場合の検証的臨床試験というのは第三相試験を指していると思っていただいて結構です。第三相試験の実施が困難、又は実施可能でも相当の時間がかかる。ここに星印をつけて赤字で書いていますけれども、コロナの発生率は千人に数人なので、実際は、第三相試験を成立させるのは、例えば日本のような感染者の少ない国では難しいということになります。
 四番目、第三相試験以外の臨床試験などにより一定の有効性、安全性が示される。ファイザー社の場合には現在百六十人のボランティアに日本でも打っているそうですので、恐らくそういうデータをつけて出してこられる。でも、百六十人では、今お話しして、おわかりいただけますけれども、感染者は出ないと思います。ですから、安全性、予防効果の判定はともかくできないのではないかと思います。
 こういうことを考えますと、海外の第三相試験だけにのっとって日本がこのワクチンを打つというのはなかなか難しいことだということがわかります。
 特に、ワクチンというのは健常人に打つものであるということ。そして、ワクチンの副反応は極めて重篤。脳炎、神経症状は。その頻度は非常に低いので、千人、数千人、数万人、十万人程度の試験ではその効果は見えないということ、リスクは見えないということ。
 ワクチンの場合には、私は、ウサギと亀の競争みたいなもので、亀でもいいですから、日本のワクチンは今おくれていますけれども、しかし、安全な予防効果の高いものをつくれば、後からでもこれが使われるようになるわけです。ですから、最初にできたものが本当にいいとは限らないということであります。
 その点をもう一度強調するために下のスライドをつくっていますけれども、臨床試験というのは、ここに書いてありますように、基礎研究から始まって、臨床試験、第一相、第二相、第三相を経て承認申請に行くんですけれども、通常は十年以上かかる。これを、岡部先生もおっしゃったように、今、一年でやろうとしている。それぞれの試験の中で明らかにしなければいけないこと、実際に抗体ができるか、感染予防ができるか、病気を悪くしないか、副反応ができるか、これを動物で調べるとともに、人でも調べる、これが臨床試験です。
 今回の場合には、第三相試験を海外のデータに依存しようとしていますけれども、この一番右に書いてあるように、第三相試験というのは、最終的な安全試験であり、予防試験の確認であります。
 過去に日本は、海外のデータのみにのっとって第三相試験を飛ばしてお薬を認可して、痛い目に遭ったことがあります。それが抗リウマチ薬のアラバというものでありますけれども、海外のデータを信用して認可したところ、五千人超使ったところで二十五人の方が間質性肺炎で亡くなった。何でそうなったのかと思って海外のデータを見ると、海外ではほぼ死んでいない。わかったことは、使用量が日本人は海外と同じ量を使うとこういうことが起こる、もっとずっと低い量でないといけないということが後からわかってきた。ということから、ワクチンの使用というのはリスクがあるということであります。
 下に書いてありますように、ワクチンが前臨床から第一相、第二相、第三相を超えて認可に至るのは五%以下。そして、最も早くできたワクチンでもこれまで四年かかっています。ということから、自国の第三相試験を飛ばして条件付早期承認をするのがよいのかどうなのかというのは考えなければいけないと思います。
 私の結論は、新型コロナワクチン、今回のものは有効性はかなり高い、それは間違いないと思います。ただし、安全性に関してはまだ全く担保されていない。その中では、やはり私は、新型コロナに対するワクチンは、もしも使うとすれば極めて慎重に使わなければいけないであろう。
 その具体的なことを言いますと、恐らく、希望者から接種する、ここが大事なポイントではないかと思います。努力義務ということをしますと、リスクがわからないものを努力義務を与えることになるわけですから、ここはなかなか倫理的にも問題が出てくる可能性があります。
 もしも打つとすれば、それはやはりリスクの多い集団から。例えば高齢者、持病持ち。実際、昨日イギリス政府が、このワクチンを国民に打つ仮の優先順位というのが出ましたけれども、一位は八十歳、二位、七十歳、三位、六十歳、四位、五十歳。若い人は一番下です。医療従事者はその中に入っていません。
 私は、医療従事者から優先接種するのは、このワクチンに関しては極めて疑問であろうというふうに考えています。なぜかといいますと、万が一医療従事者から先に倒れることがあったらば、何をしているかわからない。ワクチンは健康な人に投与するものであるということであります。
 岡部先生がおっしゃいましたけれども、大事なのは何よりも安全を確認することであり、そして個人の意思が尊重されるべきであるというふうに考えます。
 私の発表は以上であります。(拍手)

発言情報

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発言者: 宮坂昌之

speaker_id: 10812

日付: 2020-11-17

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会