釜萢敏の発言 (厚生労働委員会)

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○釜萢参考人 日本医師会常任理事の釜萢と申します。
 日本医師会で感染症危機管理、それから予防接種の担当をしております。小児科医であります。
 きょう、このような機会にぜひ先生方に申し上げたいことは、私からは、実際に新型コロナのワクチンを接種することになった場合に、医療現場ではどういう準備をしなければならないか、そして現時点において課題はどういうところにあるのかということを中心に申し上げたいと思います。
 まず、国の方針として、新型コロナ感染症に対するワクチンを、来年の六月までに全国民分のワクチンを準備する、調達するという方針を打ち出されたことは大変心強く存じます。
 それで、一方、もう既にお話がありましたけれども、今回の新型コロナウイルス感染症というのは、これまで経験したことのないものでありまして全世界に広がっておるわけですから、日本の国民にだけワクチンが供給されればよいというものではなく、幅広く世界の多くの方々にワクチンが供給されるように、日本がその役割を担うという方針も出しておられるということはとても大事なことだろうというふうに思います。
 また、ワクチンの開発を特に国内でしっかり行う体制をとるために、いろいろな補助を行って、すぐれたワクチンが国内でつくれるようにするための対策を講じておられるということも非常に重要だろうというふうに感じます。
 その中で、もう既にお二人の先生からいろいろお話が出ましたが、仮にこのCOVID―19に対するワクチンが供給されるようになった場合に、国民の皆さんがそのワクチンの接種を希望されるかどうかというところをぜひ考えなければならない。
 このためには、ワクチンに対する信頼と、安全性もそうですし、効果が期待できる。この効果という点については、症状が発症しないような発症予防というのと、それから重症化を防ぐという要素が非常に大事であります。感染を防ぐというところができるかどうかについては、これはちょっと検討に時間もかかりますけれども、まずは発症予防効果、そして重症化の予防にどれだけ効果があるのかということが非常に大事であります。
 現時点では、断片的な情報は伝えられていますけれども、まだまだわからないことがたくさんあるので、それらの情報が、実際に接種を開始されるまでにはなるべく幅広く国民に情報が共有されて、その中で接種を、それぞれの方がしっかり判断をして接種をしていただくということが極めて大事だろうと思います。
 そして、既に宮坂先生からも御指摘がありましたけれども、今後この新型コロナのワクチンは薬事承認という手続を必要とします。この薬事承認に当たっては、やはりこれまで積み上げてきたしっかりした基準あるいは手順、そういうものをしっかり踏んで、今回のワクチンについて国民の皆さんが納得していただけるような手続が必要です。もちろん早く手に入れたいというお気持ちもよくわかりますけれども、しっかりした手続を経て、納得してワクチンが供給できるようにするということが極めて大事だろうと思います。
 それから、これももう既にお話が出ていますけれども、接種後の有害事象というのは必ず起こり得ることでありますので、その有害事象をいかに早く察知するのか。そして、なかなかワクチンとの因果関係がわからない段階のものもあるわけですけれども、それらの情報が速やかに公表されて、そして情報が共有されるということは大事だというふうに思います。
 この接種後のいろいろな事象を最も早く察知するのは接種に携わった医療従事者でありますので、これまでの経験から、ワクチンの接種後の重篤な反応というのは大体接種後三十分以内にいろいろ出てきます。ですから、それらの時間的な経緯をしっかり踏まえる必要があるし、それから、その後に、接種を受けられた方からのさまざまな訴えについては、医療従事者らがしっかりその情報を伺って、そして行政と速やかに情報を共有して必要な対策をとるということが極めて大事で、それは我々医療現場の役目であるというふうに感じております。
 それで、先ほど申し上げましたように、実際にこのワクチンの接種をどのように行っていくかということですが、実はまだわからないことがたくさんあって、ワクチンの提供がどのくらいの単位でというのは、一つの単位、何人分の接種、何接種分の単位で来るかというところについては、現在でも、ある程度伺っているところはありますが、通常のこれまで私どもが扱ってきたワクチンは、せいぜい一人用とか二人用の単位でワクチンが提供されるわけですけれども、はるかに大きい単位でないと提供できないものもあるやに伺っています。場合によっては千接種が一単位というようなものも予想されるということであります。それらをどういうふうに迅速な接種に結びつけていくかということの対応が、今後それぞれの地域で検討されなければならないと思います。
 平成六年に予防接種法は大きく改正が行われました。それで、平成六年の改正の背景は、予防接種に伴う副反応に関する訴訟の判決も踏まえて、どういう形で対応したらば最も国民の皆さんに納得していただけるかという検討の中で法律改正されたというふうに承知をしております。
 それで、そのときの大きな変更点は、接種を受ける方、あるいは小児の場合などは保護者の方が、予防接種に対する情報をしっかり御理解をいただいて、そして同意をして、接種を受けたいということをしっかり表明をした上で接種をしていただくということ。それから、接種を受ける方の体調について、できれば日ごろからよく、接種を受ける方の体の背景について理解している医師が、個別で、最も接種に適した時期を選んで接種をするという、個別接種を推奨するという方向が、大きく変わりました。
 岡部先生がお示しになられた、以前の集団接種のスライドがありましたけれども、以前はあのように行われていたわけですが、現状、平成六年の改正以降は大分やり方が変わりまして、しっかり、まずは集団の接種においても予診といって本日の体調などがしっかり把握できて、そして接種のラインに乗っていって、そして適切に医療従事者が接種を行うという体制になりました。
 今回のコロナの流行のある中でワクチンを接種しなければならない場合の、仮に集団で接種をした場合の留意点としては、もちろん動線をしっかり分離することは当然でありますけれども、あのような写真のように混んでいてはとてもだめでありますから、しっかり間隔がとれて、そして人と人との接触の距離が保たれた形で十分配慮しながら接種をするという体制をとらなければなりません。
 もちろん、個別接種としての、医療機関において十分な条件のもとで接種する体制が望ましいわけですけれども、先ほど申し上げましたように、大量に、例えば千接種分の供給が行われるということになると、なかなかこれは個別接種だけでの対応というのは難しいだろうというふうに感じます。
 一方、先ほど申し上げたように、平成六年の法律改正以降は、各自治体では集団接種の経験がほとんどなくなってしまいました。それ以前は、それぞれの自治体に集団予防接種に精通した職員、保健師もそうですし、あるいは事務の方々の中でも非常に精通した方々がそれぞれおられたのですけれども、現状ではもう集団接種の経験が全然なくなってしまったので、そういう経験を踏まえた方はほとんどおられなくなってしまいました。
 その中で、今回のコロナに対してそのような体制を急速に整えるということは、なかなかこれは容易ではないので、今回の接種は臨時接種として、実施主体は、国の方針のもとに都道府県知事が協力をして市町村が実施するという枠組みでありますので、そのあたりのところを市町村がどういうふうに準備できるのかなということについては今後大きな検討課題であろうと思います。
 接種を担いますのは、接種を行える医療従事者が突然湧いてくるわけでは決してなくて、その地域で医療に携わっている医療従事者が、その時間、予防接種に従事しなければ絶対に不可能ですから、診療、医療行為もやりながら予防接種もしっかり担うということをやらなければならない。ここについても十分な検討が必要だろうというふうに思います。
 先ほど申し上げましたように、このワクチンに関する情報はまだまだわからないところがあって、それはやむを得ないのですけれども、接種までの間にわかる情報をしっかり分析、評価して、それぞれの地域で体制を整えていくという作業が必要で、いつからワクチンの接種が可能になるかまだ今の段階では全く予測できませんけれども、それぞれ準備をしなければいけないというふうに感じております。
 それから、あと、ぜひ申し上げたいことは、既にお話が出ていますけれども、接種に対する勧奨ですね、接種をぜひ受けてほしいという勧奨の接種ということと、それから接種の努力義務についてどういうふうに考えるかということであります。
 今回国会に提出されております内容を伺いますと、ワクチンについてまだいろいろよくわからないところもあるので、接種勧奨とそれから努力義務については、でき上がったワクチンのことをよく評価した上で柔軟に対応できるような取組になっておられると伺っていますが、そのことはすごく大事なことだと思います。ぜひそれは今後しっかり検討して、どういうふうにしたらばよいのかということを決めていくという作業が必要で、そのことが国民の皆さんのワクチンに対する信頼に大きくつながってくるというふうに思います。
 最後になりますけれども、やはり、今回のワクチンの特にわからない点は、接種後の副反応の、有害事象の頻度がどうか、そしてそれらが重篤なものでないかどうかということであります。そのことと関連して、接種の対象者をどういうふうに選んでいくか。高齢者あるいは基礎疾患を有する方、そしてCOVID―19の診療に直接携わる医療従事者というのが優先順位を高く設定して、今検討がされているわけですけれども、そのあたりについては、接種後の有害事象の頻度や内容をよく見きわめながら、接種開始までに十分議論、検討する必要があるというふうに考えております。
 それらをしっかり準備を整えながら、なるべく希望される国民の皆さんに早くワクチンを提供して、接種に備えるということが大事になってくるだろうと思います。
 今回、まだまだ課題が山積しているというふうに感じておりますところから、実際の接種の現場における問題点について申し上げました。
 私からは以上であります。(拍手)

発言情報

speech_id: 120304260X00420201117_006

発言者: 釜萢敏

speaker_id: 3191

日付: 2020-11-17

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会