水口真寿美の発言 (厚生労働委員会)
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○水口参考人 薬害オンブズパースン会議の事務局長をしております弁護士の水口と申します。よろしくお願いいたします。
まず、薬害オンブズパースン会議というのは、一九九七年、その前年に薬害エイズの和解が成立したわけですけれども、その教訓をもとに発足した、薬害防止を目的とする民間の医薬品の監視組織です。弁護士、薬剤師、それから研究者、薬害被害者の皆さんなど、多様な立場の方が集まって、薬害防止のための活動を行っております。
新型コロナウイルスのワクチンの問題につきましては、本年の十月六日に今お手元の資料の三ページ以下にございます意見書を公表しております。本日は、この意見書を踏まえ、改正法案についての意見を述べさせていただきたいと思っております。
まず、結論的なことを申し上げますと、今回の改正法案についてなんですが、検疫法の期間延長の点については適切だと思っております。一方、予防接種法の改正については、接種勧奨と努力義務の設定、それから損失補償契約に関する規定に問題があるのではないかと考えております。また、法の適用との関係では、承認審査や情報の提供のあり方について課題があると考えております。
以下、少し詳しく述べさせていただきます。
まず指摘させていただきたいのは、医薬品の安全性確保の重要性です。医薬品は、言うまでもなく人類の健康を守る上で大きな役割を果たしてきましたけれども、その一方で、時に重篤な副作用も生じさせております。
ワクチンに関して社会問題化した例もありまして、その中には、予防接種禍訴訟、これは先ほど来から出ている予防接種法の改正の契機となったわけですけれども、こうした訴訟やMMR訴訟など、大規模な訴訟に発展して国の責任が認められた例もあります。
私は職業柄これまで医薬品の副作用の被害者に多く接してまいりましたけれども、医薬品の副作用被害というのは、疾病で苦しむ方々の苦しみとはまた異なった側面があると思います。それは、もちろん御本人の身体的な苦痛というのもあるんですけれども、やはりそこには、治療薬やワクチンを勧めた御家族とか、そういう関係もあるわけですね。ですので、そういった方々の苦しみも生まれるということです。
また、中には副反応や副作用との因果関係が明らかになるまで時間がかかって、そのために適切な治療が受けられないという事態が起きることもあるわけです。
一方、医薬品の副作用については事後の救済の制度がありますけれども、事後的に救済を受けたとて失われた人生や時間が戻るものではなく、また救済申請に医師の協力が思うように得られないケースや、あるいは判定不能、情報不足などによって不支給ということになるケースも少なくありません。
新型コロナウイルス感染症の感染の広がりに伴いましてワクチンへの期待が非常に高まっておりますけれども、国民が求めるのはあくまでも有効で安全なワクチンであるということは疑いがないと思います。したがって、やはり、国が承認審査においてその有効性と安全性を十分に審査した後に市場に出すという、このことがまずもって重要なことであるということを指摘させていただきたいと思います。
そこで、新型コロナウイルスワクチンの承認審査と安全確保のあり方なんですけれども、まず、ワクチンというのは、先ほど来から御指摘がありましたように、健康な方が接種するものですから、一般の治療薬に比べて、より一層高い安全性と有効性が必要であると考えられます。
この点、新型コロナウイルスのワクチンについてはまだわからないことがたくさんあるわけですけれども、しかし、このウイルス自体がRNAウイルスで非常に変異しやすいと指摘されていることや、再感染の報告があるということなどから、ワクチンができてもその効果の持続期間が限定的になる可能性があるのではないかという指摘がなされています。もし有効性に限界のあるワクチンによって深刻な健康被害を引き起こすようなことになった場合、それはワクチン全体の信頼を揺るがす結果となりかねません。そういう事態はぜひとも避けたいと考えております。
特に、ワクチンの副作用との関係で注意を喚起したいと思っておりますのは、自己免疫性の副作用なんですね。ワクチンがギラン・バレー症候群とかADEM、急性散在性脳脊髄炎と言われるんですが、こういった自己免疫性の疾患を発症させるということはよく知られたところで、厚生労働省の重篤副作用マニュアルにも記載されています。二〇〇五年には、この急性散在性脳脊髄炎の発症を理由に、当時の日本脳炎ワクチンの積極的な勧奨が差し控えられたという経過もありました。
この自己免疫性の副作用というのは、要するに、ワクチンの接種によって人体の免疫機能に異常が生じて、ワクチンによって生じた本来は体を守るべき抗体などがいわば自分を攻撃してしまうような事態になるということで、症状も非常に複雑ですし、治療も困難な例が少なくありません。また、症状が接種してすぐにあらわれるとは限らない。こういったことも起きる可能性があるということは十分に配慮する必要があると思います。
政府が供給の合意をしたと報じられていますアストラゼネカ社のワクチンですけれども、ことしの九月、開発中に重大な有害事象が生じたということで臨床試験を一時中止しておりますが、これは横断性の脊髄炎であるというふうに報じられておりまして、これも今申し上げた自己免疫性の疾患の一つであります。この点も十分に考慮に入れて審査をしてほしいと考えております。
また、政府が供給合意したワクチンは、いずれも、ウイルスの遺伝情報を接種するという、これまでにない新しいタイプのワクチンであります。承認前の情報は大変そのため限られております。新しい機序のワクチンから新しいタイプの副作用が生じるという可能性も否定できないわけですね。
そして、申し上げたいのは、仮に新しいタイプの副作用が生じたときに、市販後のワクチンの安全監視のシステムというのは必ずしも十分に機能しないことがあるということです。
現在のワクチンの安全性の監視システムは、データベースを用いて統計的な手法で行われていますが、その仕組みから、副作用症状の定義について臨床上の一定のコンセンサスが形成されるに至っていないに等しい、そういう副作用に対しては十分に機能しない可能性があります。このことは、ワクチンの安全性のモニタリングをしている、ウプサラにそういうWHOの部署があるんですが、そこの専門家からも指摘されているところなんですね。
また、厚生労働省では、ワクチンの安全性について、副反応部会や安全対策調査会という審議会を設けまして、ここで協議をして、PMDAがまず監視をして、それを協議するわけですけれども、基本的には自発報告をもとにしたものなんですね。したがって限界があります。
自発報告というのは、その因果関係が否定できないというふうに判断された場合に、企業を経由し、あるいは直接に医師がPMDAに報告を上げるというものなんですけれども、一般にこの報告は氷山の一角であるというふうに指摘されています。特に新しいタイプの副作用が起きた場合には、患者も医師もそれがワクチンによるものだということについて十分に認識できないということが起こり得るわけで、そしてまた現在は報告された有害事象について追跡する十分なシステムもできておりません。
このように、ワクチンの副反応というものに対して私たちは非常に謙虚にならなければいけない。いろいろなことが起こり得る、解明されていないことはあるし、現在の安全監視のシステムの限界もあるんだということを考慮に入れる必要があります。だからこそ、承認審査において十分に吟味してほしいと考える次第です。
なお、海外で薬事承認を得た医薬品について、日本での承認審査を経ずに承認を与える特例承認という制度がございます。これは、ワクチンには適用するべきではないと考えております。それは、やはり、免疫に作用するワクチンというのは、免疫自体人種差が大きいというふうに言われておりますけれども、そういったものについてこれを適用するというのは、安全性確保や有効性の確認の点において非常に問題があるというふうに考えております。
この特例承認については、新型コロナウイルス感染症の治療薬のレムデシビルについて最近一度適用されていることは御存じだと思いますが、このレムデシビルは、特例承認を適用した段階では、EUAという、アメリカの未承認の薬で緊急的な使用を認める、そういうもとでの認可だったわけですね。正式な薬事承認ではなかったわけです。それを日本は正式に特例承認制度のもとで薬事承認をした結果、私の認識に間違いがなければ、結局、日本はレムデシビルを世界で一番最初に正式承認した国になったということです。
その後、レムデシビルは米国でも薬事承認されるに至っていますけれども、この特例承認制度というのは、いろいろな緊急の場合に、海外でしっかり有効性と安全性を確認されて承認されているということを前提にした制度です。
ですので、先ほど申し上げましたように、正式に承認されたものであっても、ワクチンについて、人種差のことを考えたら特例承認を適用することは適切でないと思いますし、ましてやそれが海外での正式の薬事承認でないということであれば、なおさら適用するべきではないということを申し上げておきたいと思います。
さて、以上、ちょっと審査に関して申し上げてまいりましたけれども、この審査をきちっと通って、有効性と安全性がしっかり確認されて市場に出るという場合に、それでは、接種を勧奨し努力義務を課すというのがこの新型コロナウイルスのワクチンについて適切なのか、そういう論点に移りたいと思います。まさにこれが今回の法案の問題点です。
先ほど来から御紹介がありましたように、予防接種禍訴訟の教訓を踏まえて、一九九四年から、予防接種法のもとでは、それまでの接種の強制、接種義務というのはなくなりまして、現在可能であるのは、接種の勧奨と、そして国民に接種の努力義務を課すということです。
しかし、やはりそれは、いかに努力義務といっても、政府が勧めて、そして国民に努力の義務を課すわけです。それをすれば、やはり国民は、ああ、国が勧めているんだということで信頼してそれを接種するわけですね。日本の定期接種の接種率は非常に高い状況にあります、全般に。
ですので、国は勧める以上は、それは勧奨だ、努力義務だといっても、やはり十分に責任を持った対応が必要で、国が勧めるためには、私は、公衆衛生上の必要性と、それから先ほどワクチンは治療薬よりも高い有効性と安全性が必要だと申し上げましたけれども、更に接種勧奨するにはより高い有効性と安全性が求められると考えております。
では、新型コロナウイルスワクチンが、このより高い有効性、より一層高い有効性と安全性、国が打ってくださいとお勧めするだけの要件を満たすのかどうか。この点は、現段階ではやはり明らかにはなっていない、それを満たすとは言える状況ではないのではないかと思います。
今後いろいろ研究が進んだとしましても、この新型ウイルスの感染症自体が、先ほど来から御指摘がありますように、まだその対象の感染症自体が歴史が浅くて、わかっていることは非常に少ないわけです。そういう意味では、免疫に作用するワクチンについて、どんなに努力をしても未知の部分が残るということは避けがたいのではないかと思います。また、技術が進歩したといっても、本来は十年とかそのぐらいかかってきたものが非常に速いスピードで開発され、審査される。そういうことがワクチンの安全性と有効性に影響を与える可能性がないのかということであります。
ことしの十一月の十日、厚生科学審議会予防接種基本方針部会で、国立病院機構本部総合研究センター長である伊藤委員が、医療関係の人ほど本当に大丈夫なのかという不安があり、積極的に打ちたい人はそれほど多くないと発言したということが報じられています。
実は、私の周りにもそういう医療従事者は少なくないわけです。わかっている人ほど大丈夫なのかと思う、そういう状態にあるワクチンについて、接種を勧奨したり、接種義務、努力義務を設定するということが適切なのか。私は適切ではないのではないかと思います。
改正法では、臨時の予防接種の特例という位置づけで今回提案されています。臨時の予防接種というのは、要件が感染症の蔓延の予防の必要があると認めるときということになっておりまして、これはやはり、制度の成り立ちとしては集団予防に重点を置いた制度なんですね。それを前提に、臨時の接種というのは接種勧奨と努力義務を規定しているわけです。
ところが、新型コロナウイルスのワクチンというのは、現時点で、集団予防の効果がどのぐらいあるのか、それすらよくわかっていないということになります。そうすると、先ほど申し上げた、より高い有効性と安全性がはっきりしていないじゃないかということと、この集団予防、法のたてつけとの関係からいって、やはり、国が接種を勧奨し、接種義務を課すのは適当ではないということにならざるを得ないわけです。
では、無償とか厚い救済というのはどうなるのか。国が勧奨して努力義務を課すから、無償としたり救済を厚くすることが説明しやすいのだというのは確かにあるかもしれません。しかし、ワクチンは公衆衛生と深くかかわる医薬品ですので、感染症の拡大を前に、接種や努力義務を設定しない、だけれども、無償にする、そして救済も厚くする。そこを切り離して考えて、そういう設定にすることだってできるのではないかと思います。
現在提案されている改正法案は、臨時接種の特例と位置づけて、まず国民全体に接種義務をかけてしまう、その後対象を指定して解除していく、そういうたてつけになっているんですが、やはり、まず全体、国民に接種の努力義務の網をかけるということがいいのかどうか。それはやはり非常にリスクが高いし、科学的な根拠との関係で避けるべきことではないかというふうに思います。
先ほど来から臨床試験でわかることは限られているというお話がありましたけれども、ワクチンは、やはり、まず任意で接種して、それから様子を見て定期接種にするというのが王道だったわけです。ですので、新しいタイプでよくわからないことがたくさんあるワクチンを、承認してすぐに全国民に接種を勧めるというやり方というのは危険なのではないかと考えております。
方法としては、附則の四項において、予防接種法の八条と九条は適用しないと明記するなどして義務を外すということを考えるべきだと思います。
それから、情報提供の関係ですけれども、これはやはり、自己決定を十分に保障するための十分な情報提供、これが必要だと思います。ワクチンへの期待がバイアスを生むんだということも十分に考慮を入れる必要があると思います。
特に、接種をしないという選択をした方に不利益が及ばないようにする。これは非常に大変なことで、仮に努力義務が設定されるとすると、それは非常に難しいことになるのではないかというふうに思います。
高い順位を与えられている人が接種をしなければ、医療や福祉の現場で働く人が接種をしなければ業務に従事できないような立場に置かれる、そういう風潮が起きることを大変危惧いたします。
審議会で、先ほど、医師はそれほど打ちたいと思ってはいないんじゃないかという御指摘がありましたけれども、ある意味、医師は自分が打たない理由を説明できる人たちです。でも、そういう人たちばかりではないんですね。
例えば、中小の企業などで、小さなコミュニティーの中で、会社がみんな打ちましょうという方向性を出したときに本当にそれを拒否することができるのか、それは非常に難しい問題なのではないかと思います。ということで、この点も十分な配慮が、小さいコミュニティーの中で弱い立場にいる方たちの自己決定権をどう守るのか、これは本当に真剣に考える必要があると思います。
それから、損失補償契約、最後に申し上げますと、これは既にこの厚生労働委員会でも議論されていると思いますけれども、公共政策としての正当性にかかわる問題なので、やはり十分な説明が必要だと思います。
国会の承認が要らない理由、時限立法でない理由、そこのところは私にはよくわかりません。この点については、やはり、更に十分な吟味をして、情報開示と説明責任が可能な限り果たされるような仕組みをつくっていくということが必要なのではないかと思います。
以上で、私が述べたいことは一通り終わりました。ありがとうございました。(拍手)