片山和彦の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(片山和彦君) 私は、北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学の教授をしております片山と申します。よろしくお願いいたします。
 私の方からは、ワクチンの開発者及びワクチンの研究者としての立場から、現在報告されている新型コロナウイルスワクチンのうち代表的な四つのものについて、分かっていること、科学的に明らかにされていること、それから分かっていないことのまとめをしてみました。このまとめを御説明したいと思います。
 まず、皆さんよくニュース等で目に、耳にされると思いますけれども、ワクチンの効果の算出方法というのを一枚目のスライドにまとめています。
 ワクチンというのは、例えば接種対象者群が一万人だとします。そうしたら、その一万人を五千人ずつに二つに分けて、ワクチン接種群と、もう一つはワクチンと似たような薬、何の効果もないものですけれども、そのプラセボ接種群というのに分けます。そして、この接種、両方とも接種されたものですけれども、普通に生活していただく。その間、経過を観察します。
 プラセボ接種群には発症者が千人出たとします。それに対してワクチン接種群には発症者が百人出ましたという結果が得られたとすると、本来、何もしなければ千人の発症者が出たにもかかわらず、ワクチン接種群は九百人の減少を認めたということで、効果が九割ということになるわけです。つまり、発症予防効果が九〇%という数字はこの数字で出てきます。
 では、このラインを引くときに診断をどうするかという問題があるんですが、発症者と定義するのか、それとも入院患者と定義するのか、それとも重症者と定義するのかと、ボーダーの引き方によって効果の数字というのが前後に動くことになります。
 例えば、ロタウイルスワクチン、これは今年の十月に定期接種化されたものですけれども、重症入院症例の予防効果、この効果が九〇%以上という数字を出しています。しかし、このワクチンは感染を予防するワクチンではないんです。重症入院症例を予防するワクチン、その効果が九〇%というふうに理解していただきたいと思います。
 では、麻疹ワクチンを見てみます。この麻疹ワクチンの場合は、今度は発症の予防効果です。この予防効果としては、長年のワクチン接種のデータもございますし、九五%以上という数字が出されています。
 では、皆様毎年打たれているかと思いますけれども、インフルエンザのワクチンではどうかと。インフルエンザワクチンは発症予防効果が五〇%前後という曖昧な数字になっていますが、これ実は数字を出すのが非常に難しいからです。ボーダーを引くのが難しいということでこのような数字になっています。
 では、SARSコロナウイルス2に対するワクチンは、ニュースソース上では九〇%以上の発症阻止率を示しましたという報告がありますので、私としては、このデータはなかなかいい結果なんだなと思いました。
 さて、次のページをめくってください。
 四つのワクチンについて分かっていることの概略をまとめました。まず、一番上の行にワクチンの種類が書いてあります。左から御説明します。
 ファイザー、ビオンテック。このBNT162b2というのはワクチンの記号で、この記号でFDAの三相治験の結果を皆さんの手でも調べることができます。ネット上に公開されています。主成分は、S1―RBDというレセプターにくっつく領域のメッセンジャーRNA。RNAワクチンです。接種回数は二回、ゼロと二十一日の間隔を置いて二回目を接種します。第三相試験では四万四千人に接種がされまして、ほぼ終了しています。接種年齢層、これが大切なんですけれども、十二歳以上、この集団の中には五十六歳から八十五歳が四〇%含まれています。有効性の数字ですが、九十四人が発症した時点での計算値では九〇%、それから数週間たちまして百七十人が発症した時点での計算値は九五%という数字になっています。この計算の方法というのは同じ基準で計算したもので、人数の増加によってパーセンテージが増えたというふうに御理解ください。副反応については、軽微な副反応があるという大ざっぱな書き方ですけれども、中は細かく書かれているんですが、ここでは御説明させていただくことは省きます。温度管理ですが、マイナス七十度C保存では最大半年、二度から八度では五日間という保存条件になっています。
 もう一つ、モデルナのものです。次のカラムですね。メッセンジャーRNAの1273という記号で示されています。S2領域のメッセンジャーRNA、先ほどのファイザーとは違う部分のRNAを使っています。このワクチンは二回の接種、ゼロ、二十八日間の間隔を置いてもう一度。三万人の到達目標ですが、ほぼ達成している状況でデータが出ています。十八歳以上が接種対象者で、十二歳よりも六つ上ですね。六十五歳以上が七千人含まれています。九十五人発症時点での有効率が九四・五%という数字になっています。軽微な副反応については、このように報告されております。マイナス二十度Cで最大半年、二度から八度の温度で三十日間の保存が可能というワクチンです。
 では、その次ですね、アストラゼネカのワクチンです。これは、S領域のDNAをアデノウイルスに組み換えて、そしてアデノウイルスにDNAを運ばせるというもので、ワクチンの形態としてはアデノウイルスそのものです。これは、投与方法ですけれども、二回投与します。投与方法一、投与方法二という治験が行われました。今朝ほどですけれども、ネイチャーに報告がありましたが、この投与方法一というのは間違えて半量を打ってしまったというものだそうです。その間違いがいい結果を生み出したという報告になっていて、ちょっとトピックとしては面白いトピックでした。三万人の目標ですが、今は到達まだしていません。十八歳以上に接種をしています。投与方法一、これが効果が九〇%、投与方法二、従来予定されていたものですが、これが六二%の効果でした。合わせてみますと七〇%の効果ということです。皆さん、このニュースはお聞きになったことがあると思いますけれども、重度の副反応者が一名出たため一時治験中止となりましたが、その副反応はワクチンに由来するものではないということが分かったために再開されています。保存方法は二度から八度、六か月以上という割と安定したワクチンです。
 最後に、ノババックスのワクチンについて御説明します。これは、リコンビナントたんぱく質、ほかの生物でつくらせて、そのSたんぱく質というものだけを大量につくって、そしてそれを打ち込もうというワクチンです。それにアジュバンドが入っていて、サポニンベースの新しいアジュバンドが使われています。接種目標が、英国で一万五千人、USAとメキシコ合わせて三万人の目標を立てていますが、まだ到達していません。十八歳以上。今走っている最中ですので、詳細な有効性のデータ、副反応データ、温度管理のデータは出ていません。これが分かっていることです。
 では、次のページを御覧ください。
 ワクチンについて分かっていないことをまとめました。
 重症化阻止効果について、特に重症化高リスク群への効果については、ファイザーがプラセボ、ワクチン接種群の比較をして重症化阻止率はかなり高いというふうに言っていますが、実際の数字がこれです。プラセボ群は百六十二例中九例が重症化している、ワクチン接種群は八例の発症例に対して一例重症化しているということですので、非常に数字が小さいので、まだ重症化阻止率についての正しい数字は出ていないものと考えられます。モデルナについても同じように九十分の十一、ワクチン接種群では五分のゼロということで、ワクチン接種群は完全に重症化を防いでいるというように見えますが、この数字の母数を注意して御覧いただきたいと思います。
 次に、ワクチンの効果ですね。持続期間ですが、ファイザー、モデルナ共にこの治験のデータというのは数か月の観察、二週間から三週間というような話もありますけれども、そのデータが交ざった状態での報告です。ですから、まだ長期間の有効期間というのは分からないということになります。SARS―CoV―2の第三相治験開始というのが七月スタートなんですね。ですから、まだ四か月、二回接種目からまだ最長で三か月。どれぐらい効果がもつのかというのはこの程度のデータしかないというわけです。再感染はあるのか、どの程度の頻度なのか、このデータについても報告はまだ取れていません。
 次、三番ですけれども、低年齢層、先ほどの一番低い年齢で十二歳というところでカットされてきましたので、十二歳以下の低年齢層への効果については治験対象に入っていないため分かりません。ですから、治験対象にも入っていませんので、安全性についても確認されていないということです。
 四番目、副反応については、四か月程度では接種の初期の副反応が観察されますが、これは、正しい副反応を把握するためには長期観察が必要ですので、まだ不十分だなというところです。
 一番懸念されているのはADEという現象なんですけれども、これは皆さんお聞きになったことがあるかと思いますが、アンタイボディー・ディペンデント・エンハンスメントという言葉で言われております。これは、不要な抗体をつくるためにその抗体が逆に感染を増強してしまうという現象です。SARSのワクチンでは実験動物で確認されている現象です。デングのワクチンでは上市後の副反応調査でADEが発覚しました。ADEの発覚までに少し長い時間が掛かっているということです。これは、長期間観察しなければADEは見付けられないと、長期にわたる副反応調査が重要であるということを意味しています。
 さて、このワクチンについていかに考えるかですが、ワクチンは感染を防ぐのではなく重症化をかなり防ぐというふうにこの四種のワクチンについては考えれば判断がしやすいのではないかなと思います。ですから、重症化症例をいかに防ぐか、その防ぐことによってどれだけの人々が救えるのかというような形で考えていくとよいのではないでしょうか。
 安全性にはまだ不安が実際はあると思います。なので、接種するしないというのは、これらの情報を吟味して、そして自分たちの意思で判断できるように個人の意思を重視したいところであると私は思います。
 以上です。

発言情報

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発言者: 片山和彦

speaker_id: 25895

日付: 2020-11-26

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会