伊藤元重の発言 (外務委員会)

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○伊藤参考人 学習院大学の伊藤でございます。よろしくお願いします。
 十分ということでございますので、お手元に、今日お話をする簡単なポイントだけまとめてございます。私、専門が元々国際経済学でございますから、その視点から主にお話をさせていただきたいと思います。
 最初に書いてあることは、通商政策とか、あるいは通商戦略もそうなんでしょうけれども、これは行き当たりばったりでやることではなくて、当たり前の話なんですけれども、十年、二十年、場合によっては五十年という大きな体系の中でやはり進めていかなきゃいけないという問題でございまして、したがいまして、一方では、現実の経済がどう動いているかということに対応するためにいろいろなことが必要でありますし、他方で、こういういろいろな政策を進めることによって経済を動かしていくという面もあるんだろうと思います。
 ここに四つのアプローチと書いてございます。皆さん、釈迦に説法でございますけれども、WTOのようなマルチの場と、それから、今回話題になっているようないわゆるリージョナル、地域の場と、それから、日米だとかあるいは日・シンガポールだとか、二国間のいろいろな取組と、それから、日本が独自に、ユニラテラルに自由化するということもいろいろな分野であると思いますけれども、この四つが組み合わされてきて、そのどれも恐らく欠かすことができない駒だろうと思います。
 ただ、難しいのは、時代によって、非常に機能が低下する面と、機能が非常に期待される部分の濃淡が出てくる。例えば、日米貿易摩擦で何十年と日本は苦しんできたわけですけれども、この時期には、どちらかというと現実に対する対応という面があるんですけれども、二国間の協定が非常に重要になってきているわけですし、あるいは、もう少し前の、いわゆるガットの全盛期であれば、マルチだろうと思うんです。
 御案内のように、残念ながら、この二十年ぐらい、WTOを通じたマルチの部分が、機能が非常に弱まっている。もちろん、これをしっかり強化するということは非常に重要なんですけれども、それと同時に、それを補完するという役割がいわゆる経済連携協定に期待されてきているわけです。
 ただ、御案内のように、これも、経済連携協定、日本はシンガポールと今世紀初めぐらいに結んだわけですけれども、ほとんどが二国間の協定でございまして、しかも、ちょっと言葉を選ばなくてはいけないのかもしれませんけれども、難しい相手とはやってこなかった。例えば、そこに書いてあるように、アメリカとかカナダとか豪州とかニュージーランド、こういうところは農業が非常に強い生産国で、これはなかなか日本にとってみるとハードルが高いですし、それから、中国と韓国は、近隣にあるということもあるものですから、貿易額、投資は非常に多いにもかかわらず、やらなかった。
 ただ、ここに来て、特にTPPに日本が交渉を決めてからは、今並べた国の前半の方の国々と結ぶような結果になりましたし、今回のRCEPの場合には中国、韓国が入ってきているというところが非常に大きな特徴なのかもしれません。そこが、当然、賛成、反対、いろいろな議論があるんだろうと思います。
 TPPとかあるいはRCEPとか、経済連携協定というのはWTOと少し違うのは、WTOというのは上から全体で交渉して仕組みを提供する枠、まさに多国間協定なんですけれども、経済協定というのは下から積み上げていくわけです。
 日本は、御案内のように、最初は日本・シンガポールとか日本・メキシコとかいうところから積み上げてきたわけで、そのときに非常に重要なのは、ビルディングブロックという考え方、つまり、これはその次のステージに行くためにも重要なステップであるという視点が重要で、今回、TPPを結んだ上でなぜRCEPをやらなきゃいけないのかというような議論も当然あるだろうと思いますけれども、これは長い目で見たときに、こういう形でいわゆる経済連携の輪を広げていくということは非常に重要な話になると思います。今日この話はしませんけれども、TPPの交渉がまとまった後、EUとの経済連携協定にも弾みがついたように、個々の交渉というのはそういう連関があるということだと思います。
 そういう中で、RCEPの特徴は、いわゆるスーパーリージョナルな協定である、非常に多くの国が出てくる。
 御存じのように、ASEANの人たちと話すと、自分たちはアジアの経済連携協定のドライビングシートに乗っているんだ、つまり、自分たちがリーダーシップを取ってアジアの経済連携協定を結んでいきたいということを、よく学者の仲間では、もう十年も二十年も前から話を聞いたわけですけれども。
 そういう中で、スーパーリージョナルになることの重要性は何かというと、やはり国際取引あるいは国際関係というのが、二国では完結しないようなケースになってきている。いろいろな国の間を部品が動くということもありますし、あるいは、企業自身が多数のアジアの国の中に拠点をそれぞれ持って、我々の言葉を使うと、国境を越えた分業が進んできている。
 しかも、その分業というのは、単に物が取引されているだけではなくて、企業が拠点をあちこちに設けて、同時に、人が動く、これは単に日本の人が行くというだけではなくて、現地の人も日本との間でいろいろな形で技術等のインタラクションがある、そして投資も進むという形になってくると、人、物、金、あるいは投資、そういうものを統合的にしたときに、どういう形でその地域のフレームワークをつくっていったらいいだろうかということになってくると、このスーパーリージョナルの枠組みというのが非常に重要になってくるだろうというふうに思います。
 もう一つ、是非申し上げたいのは、WTOというのは非常に大事な仕組みで、これは是非しっかり強化しなきゃいけないんですけれども、ただ、多様なバックグラウンド、例えば先進国と途上国とか、農業国と工業国とか、あるいは人口の大きい国とそうではない国とか、いろいろな国が集まって、あれだけの大きな参加者の中で合意を得るのは非常に難しい部分があると思います。
 そういう意味で、WTOとかその前身のガットというのは、比較的、多国間で合意がしやすいテーマに絞って議論をしてきた面があるわけですね。非常に乱暴に言ってしまえば、関税の引下げというところに非常にウェートが多かった。
 それはそれで非常に大事だと思うんですけれども、現実の経済の場合には、国境を越えていろいろなものが関連しているわけで、我々の世界では、それはディーパーインテグレーション、より深い統合というふうに申し上げるんですけれども、単に物が取引されるだけではなくて、例えばサービスですとか、あるいは競争政策ですとか、あるいは金融ですとか、あるいは知的財産だとか、あるいはデジタルだとか、いろいろな問題が出てきていて、残念ながら、これはなかなか今の段階では十分な解決というのはないわけですけれども、しかし、そういうものに取り組んでいくという中で考えたときに、このスーパーリージョナル、先ほどのTPPとかRCEPとかEUとの経済連携協定とか、こういうものを足がかりにしていくということが非常に重要なんだろうと思います。
 そういう意味では、御案内のように、このRCEPも随分昔からずっと議論をされてきたんですけれども、今ここで国会の審議のところまで来たということでは非常に重要なタイミングだと思いますので、是非慎重な議論をしていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 伊藤元重

speaker_id: 24102

日付: 2021-04-14

院: 衆議院

会議名: 外務委員会