中村涼夏の発言 (環境委員会)

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○中村参考人 皆さん、おはようございます。早急な気候変動対策を求める若者の運動、Fridays For Future KagoshimaとJapanでオーガナイザーをしています鹿児島大学二年の中村涼夏です。
 今回は、参考人として、二〇三〇年NDC発表の翌日というタイミングに機会をいただけたこと、感謝いたします。
 私が環境問題を感じるときはいつでも、当たり前を失うことに気づくときです。鹿児島県の指宿市で生まれ、一時期種子島にも住んでいた私は、保育園帰りに母とエメラルドグリーン色の海に通うことが日課でした。しかし、親の転勤で名古屋に引っ越し、海を見たとき、信じられませんでした。そこには、鼻をつくような臭いと、黒く海底の見えない、工場が建ち並ぶ下に広がる海があったのです。私が知っている当たり前の海ではありませんでした。人の手でここまで自然環境を変えてしまうことができるんだ、身をもって実感したのです。そのような体験もあり、高校二年生から生物多様性保全に関わりましたが、当時は、気候変動に対し、生物多様性の一つの問題にすぎないと過小評価をしていました。
 しかし、二〇一九年、高校三年生の夏、スウェーデンの少女、グレタの言葉、あなたたち大人は、子供たちを愛していると言いながら、その目の前で子供たちの未来を奪っているのですや、私たちの家が燃えているを聞き、私たちの当たり前に存在するはずの未来は気候変動によって脅かされていることを知りました。
 そして、この気候変動という恐怖は、決して私たちの意見ではなく、科学者の声であり、現在実際に起こっている事実なのです。
 NASAは、世界平均気温が十九世紀後半から既に一・二度以上上昇したと報告しています。地球温暖化が現在の速度で進行すると、早ければ二〇三〇年に気温が一・五度に達する可能性が高いとIPCCは警鐘を鳴らしています。気候危機から国民を守るためには一・五度目標に整合する対策を実行することが政府の責務です。
 これを果たすためには国内の温室効果ガス排出を二〇三〇年までに二〇一三年比で六二%を削減する必要があるとクライメート・アクション・トラッカーは報告しています。これまで二酸化炭素を排出してきた歴史的経緯を考慮すると、それ以上の削減が求められます。地球温暖化や気候変動は、その被害の大きさから気候危機として認識され、取り組まなければいけない問題です。国連は、地球温暖化が生きる権利や食料、水、住宅、市民権や参政権など、あらゆる人権に影響を及ぼす可能性があると発表しています。
 昨日、菅首相から、二〇三〇年NDCを二〇一三年比四六%にするとの発表がありました。私は、この数値を聞いたとき、皆さん方大人に、あなたたちの未来と命はないと宣告されたように感じました。絶望しました。このNDC四六%という目標は、気候危機から国民の命を守るという責任を放棄したように思えます。結局は、海外からの圧力と内部の既得権益のみによって決められてしまったのです。若者の声を積極的に聞き入れたい、そんな表面だけの口約束はもう十分です。
 このような状況を踏まえて、私たちは皆、気候正義という考えを大切にしなければなりません。この正義とは、悪に対する正義ではなく、英語のジャスティスや公正、フェアな状態を表す概念です。正義の対義語は不正義です。世界の温室効果ガス排出量は、日本を含む裕福な一〇%の国々が四九%を排出し、最も貧しい五〇%の国々はたったの一〇%しか排出していません。世界は今、不正義にあふれ返っています。
 日本のCO2を一人当たり十八分の一しか排出していないバングラデシュでは、千九百万人以上の子供が気候変動によって命の危機にさらされています。そうした海面上昇や洪水、干ばつなどが深刻化する地域に住み続けることができなくなってしまった気候変動難民も、今後数百万人単位で増え続けます。国連によると、その中でも、世界全体で気候変動により移動を余儀なくされた人々の八〇%が女性だったと報告されています。また、アメリカなどでは、人種的なマイノリティーが特に大気汚染の深刻な地域に追いやられるという構造が起きています。これは、日本が環境基準の低い国々に低効率の石炭火力発電を設置し、現地の大気汚染、住民の健康被害を悪化させていることと通底しています。
 世界で五番目に多くCO2を排出している日本が、さきに述べたような気候変動難民の増加に寄与していることは自明です。日本は、こうした理由で住みかを放逐された人々を保護する責任があるにもかかわらず、彼らを送還するような仕組みづくりがされています。気候危機は、最近改正された入管法など、関連がないように思える問題にも大きく関わっているのです。
 気候危機は、既に日本を襲っています。二〇一八年のグローバル気候リスク指標で、台風や熱波などの災害から最も影響を受けた国として日本が挙げられました。これは、日本が既に気候危機の渦中にあることを表しています。
 それを裏づけるかのごとく、二〇一九年の台風十九号は、死者九十名、住居の全半壊や浸水を合わせて七万四千件を超える甚大な被害をもたらしました。また、この被害の数字の奥には、その人に関わる家族や友人、大切な人々が存在するのです。私たちが気候変動対策を早急に行うのは、全ての人の平等な人権を保障し、全ての生き物の平等な命を犠牲にしないためだということを決して忘れてはいけません。
 そして、気候危機は、日本国内においても至る所の不正義を顕在化させてきました。
 皆さんは、二〇一九年の台風十九号の際、三名のホームレスの方々が避難所への受入れを拒否されたことを御存じでしょうか。これは、災害時に社会的に排除されてきた人々が差別を受ける構造を浮き彫りにしたと言えます。また、防災の観点も、災害に強い住居、災害保険や防災グッズの用意ができるのも経済力があることが大前提です。また、気候危機は、既に、ジェンダー格差を更に広げてしまいます。例えば、女性は災害時、家事などで他人の世話を強いられることが少なくありません。これは世界においても共通です。
 そして、気候危機の時代を生き抜くのは、紛れもなく私たち将来世代です。私たちは、既にコロナ対策で発行された国債がのしかかっているにもかかわらず、今後増え続ける気候災害の経済損失も被ります。少子化対策など必要だと言われていますが、そんな経済や気候変動の状況の中で子供を産みたいと思う人はどれほどいるでしょうか。皆さんの年金を払う将来世代が生きられないかもしれないという世界をつくり出しているのです。
 しかし、こうした格差は国政の場にもはびこっています。
 中でも、エネルギー政策に関する審議会では、偏った人選の委員により一面的な判断が行われていることに不信感を抱かざるを得ません。中でも、委員会は高齢の方が多く、将来世代である私たち若者の視点を持つには非合理的です。
 私たちが求めているのは、格差構造にはびこる不正義を認識し、それを正すような政策です。そのために、若者だけでなく、気候変動の被害を受けやすい人々など、多様な層からの意見を受けることが必要です。世界でも日本でも気候市民会議が行われ、公的でなくてもそういった事例は幾つもあります。意見箱の設置やパブリックコメントなど形式的な制度ではなく、ステークホルダーに知識を与え、その上で公正な形で意見を反映させる制度が必要です。気候変動政策という複雑で多くの側面を持つ問題は、一部の人の意見ではなく、対話を重視した議論によってつくられるべきです。
 これは、国や地方における議員の皆さんの真剣な議論と対策を広く国民に伝え、新たな視点を得ることだけでなく、政策を正しく評価し、更に国民の意識を高めるための鍵となります。
 現在、エネルギー政策は、火力や原子力、実用的でない技術に依存しています。それらは、大気や海洋、環境の汚染など様々な問題をはらみ、地域や世代などの格差構造に深く依存しています。
 しかし、審議会では、倫理的観点を単なる感情論として拒絶し議論をする余り、現地の環境汚染や将来世代に果てしのないツケを残してしまっています。
 アメリカの環境正義を専門とした部署の設置や化石燃料産業からの公正な移行への積極的投資など、各国のグリーンニューディール政策からも見て取れるように、気候変動対策において倫理観の重みは増しています。こうした倫理的観点を受け止め重んじることは、日本が気候リーダーシップを取り、世界を牽引する上でも欠かせないものとなります。
 世界の気候変動対策に大きな後れを取る今の日本において、大きな変化をもたらすために果たすべき重要な役割があります。それは、民主的な政策決定プロセスを再構築し、カーボンニュートラル達成に向けたビジョンを市民とともに描くことで、国民の求める未来像をつくり出すことです。倫理的、経済的、科学的にも整合性のあるNDCや再エネ導入目標をバックキャストで策定することによって、エネルギー政策及び気候変動対策の議論をより前進させることができます。これは、私たちの目指す、格差からの逃避という静かな暴力も気候危機もない社会への大きな一歩です。
 こうした未来のために温暖化対策推進法の果たす役割は非常に大きいと考えています。その上で、温暖化対策推進法改正案に対する私たちの問題意識を主に四点、述べさせていただきます。
 一点目は、二〇五〇年までの脱炭素社会実現を目標ではなく基本理念に位置づけたにもかかわらず、NDCが四六%と、明らかにこの改正案に整合性のある数字ではないことです。首相官邸主導だからといって、省庁横断的な取組がなされていないことは、これからの脱炭素化に暗雲が差します。
 二点目は、計画の再評価と見直しの必要性が述べられていないことです。改正案では計画の制定や事業の推進を進めていますが、これが再評価、見直しされていなければ、目まぐるしく変わる社会情景や科学の進歩、気候危機に対応した計画になり得ません。現に、計画の見直しをする予定がないと言っている自治体は少なくありません。こうした計画的手法にも再評価し、見直すシステムを温暖化対策推進法の中で位置づけるべきです。
 三点目は、現在の改正案では、自治体の協議会にて市町村が必要とする者のみが参加できるとしていることです。しかし、私たちに影響する問題だからこそ、私たちができる限り政策決定に関わるべきだと思います。その点から、先ほど述べた国の審議会の問題解決案と同様に、ステークホルダーに知識を与え、その上で公正な形で意見を反映させることがこの法案では必要です。基本理念に、地球温暖化対策の推進の主体として国民が先頭に掲げられるとしているならなおさらでしょう。
 四点目は、事業計画の認定と円滑化と題した関係法案のワンストップサービス化によって、適切な科学的な評価がなくなり、気候変動の解決以前に、人や生物、環境に悪影響を及ぼす可能性が十分に高まっている点です。保全区域の設定だけでなく、現在ある国立公園やその他地域の生物多様性の観点から、適正な評価、また、設置する地域の市民の理解と安全の確保、将来世代を見据えた再生可能エネルギーの設置が必要です。果たして、これを法として自治体に任せておくべきでしょうか。気候変動を解決する手段で、見えない誰か、生物に対し、格差構造から成る静かな暴力を振るうことは決して許されません。
 気候危機は、見えづらい格差に立ち向かう問題です。頭では分かっていても、緊急性を実感することはなかなか難しいかもしれません。だからこそ、私たちの想像力が必要です。今までの社会システムを疑い、想像力を働かせるために、当事者の声が不可欠です。社会的弱者や静かな暴力の被害になっている人々の声を聞き、市民を巻き込んだ政治を行うことで、解決の第一歩となります。
 一・五度目標の実現は、皆さんを含む私たち全員にとって、大切な人と自分自身、その命が懸かっている問題、安定した年金が懸かっている問題、人生設計を大きく揺るがす問題です。今だからこそ、まだ間に合うのです。
 気候危機も静かな暴力もない社会へ、一緒に変化になりましょう。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 中村涼夏

speaker_id: 27236

日付: 2021-04-23

院: 衆議院

会議名: 環境委員会