高村ゆかりの発言 (環境委員会)
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○高村参考人 東京大学の高村でございます。
本日は、環境委員会で意見を述べる機会をいただきましたことをお礼申し上げます。
私の方、資料を事務局がお配りいただいておりますけれども、昨日、菅総理から、二〇三〇年の目標について表明がありました。五〇年カーボンニュートラルと整合的な三〇年の目標ということで、一三年度四六%削減、そして、更に五〇%の高みに向けて挑戦をするというものであります。
その中でも、再生可能エネルギーなど脱炭素電源の最大限の活用、地域の脱炭素化への支援といった点についても触れられております。
次の三枚目のスライドでございますけれども、先生方よく御存じのとおり、温暖化対策推進法の改正については大きく三つのポイントがございます。一つは、パリ協定、二〇五〇年カーボンニュートラル宣言等を踏まえた基本理念の規定、そして、地域の脱炭素化に貢献する事業を促進する計画・認定制度の創設、脱炭素経営の促進に向けた企業の排出量情報のデジタル化、オープンデータ化の推進でございます。
私は、こうした温暖化対策推進法改正の背景についてお話を申し上げた後に、改正の内容について意見を述べさせていただきます。
次のスライドにございますように、カーボンニュートラルに向けて、現在、世界が大きく動き出しております。これは、二〇一五年に合意をされ、一六年に日本も締結をいたしましたパリ協定の長期の目標の一・五度に気温上昇を抑えるという目標に整合をする、二〇五〇年カーボンニュートラルに向かう大きな動きでございます。
御存じのとおり、昨年の十月、二〇五〇年カーボンニュートラル、菅総理の演説は、国会でも大きな与野党超えた支持を得て、受け入れられたものと理解をしております。
次のスライド、五枚目でございますけれども、先ほど小田原市、守屋市長からもありましたように、現在、実に多くの自治体、人口でいきますと一億一千万を超える規模の自治体が、二〇五〇年二酸化炭素排出ゼロを宣言をするに至っております。
次のスライド以降は、日本企業の動きでございます。
サイエンス・ベースド・ターゲットという国際的なイニシアチブを御紹介をしておりますけれども、スライドの七枚目、こちらは、日本に本社を置く企業で、パリ協定の長期目標と整合的な目標、二〇五〇年カーボンニュートラルも含む、こうした長期的なパリ協定と同じ整合的な目標を掲げる企業が国際的に認められたものとしても既に九十七社、準備をしている企業も三十社に及んでいます。
スライドの八枚目では、こうした目標を達成するために、再生可能エネルギー電気一〇〇%で事業を行うことを明確に約束をする企業でございます。
スライドの九枚目と十枚目は、こうした国際的イニシアチブの外でも、既に、ガス会社、電力会社、JRあるいはJAL、こうしたエネルギーを供給する事業者や、エネルギーを多く使いながら自分たちでも発電、エネルギーの供給をしている事業者が、五〇年カーボンニュートラルに向けて大きく動いているということでございます。
冒頭に、五〇年の目標に整合的な三〇年目標ということをお話をいたしました。スライドの十一枚目は、既に、国に先駆けて、野心的な三〇年目標を掲げる企業が多数出てきているということでございます。
それでは、なぜ企業がこうしたカーボンニュートラルに動いているのかということでございますけれども、気候変動の影響、とりわけ昨今の気象災害などに感じられる気候変動の悪影響の現実化への懸念というのがまずございます。しかしながら、もう一つ非常に重要な点は、企業にとって気候変動問題にいかに取り組んでいるか、排出をしないで事業ができるかどうかということが、取引先からの企業の評価や株式市場における企業の評価を左右するに至っているという点でございます。
一つの例として、スライドの十三に、アサヒグループホールディングス、飲料食品メーカーのアサヒグループホールディングスの目標を御紹介をしております。
スコープ1、2と書いておりますが、こちらは、アサヒグループホールディングスが、自らの事業から直接排出をする排出量について、一九年比五〇%の削減を三〇年目標として掲げております。さらに、その下にスコープ3の排出量というのがございますけれども、これは、アサヒグループホールディングスが取引をしている企業の排出量についても削減目標を持っているということでございます。このことは、排出をしないで事業ができるということが取引先から選ばれる、そういう状況が現在生じているということであります。
この動きは世界的にも広まっておりまして、スライド十五、十六でマイクロソフトとアップルの取組を御紹介をしておりますけれども、マイクロソフト社は、今年の七月までに、取引先選定のプロセスにおいて、取引先候補の排出量がどうなっているかを見ながら取引先を選定する、そういうプロセスを開始をいたします。
アメリカ・アップル社は、アップル製品の製造について、排出をしないで、再生可能エネルギーを利用した製造をサプライヤーに対して求めております。日本企業でも、こちらに御紹介をしていますように、既に昨年の段階で八社が再生可能エネルギー一〇〇%でのアップル製品の製造ということを約束をしております。
スライドの十七枚目は、トヨタ自動車のケースでございます。
今、モビリティーの分野で電動化が大きく進んでおりますけれども、電動車への対応は、車製造全体のプロセスにおけるCO2の排出量を増やす可能性がある。それを減らすためにも、再生可能エネルギーの入手可能性やコストの低減ということが必要であり、これが自動車分野、モビリティーの分野における産業競争力に関わる問題であるという指摘をしています。
スライドの十八、十九枚目のところでは、日本に本社を置く企業が、こうした環境を重視をする、とりわけ再生可能エネルギーでの事業をする企業を選択をして、そのサプライチェーンをつくろうとしている、そういう動きを御紹介をしております。
日本の企業は、こうした再生可能エネルギーを調達をして事業してほしいというふうに要請する大きなグローバル企業の下で、取引先として選ばれているケースが多くございます。もしそれができないということになりますと、実に八兆円を超えるような規模の事業機会の損失につながる可能性があるということでございます。
それはスライドの二十に御紹介をしておりますが、残念ながら、日本は、電力一単位当たりのCO2排出量が先進国の中でも最も高い国の一つでございます。
もう一つ、企業が二〇五〇年カーボンニュートラルに先駆けて動いている理由の一つが金融投資家の動きでございます。
スライドの二十一に御紹介をしておりますけれども、ESG投資、環境や社会、企業の統治を考慮をした投資の動きが強まっておりますが、とりわけその中でも、気候変動に対して大きな関心が寄せられております。
企業は、投資家から、経営において気候変動をどれだけ考慮をしているかということが問われ、情報を公開、開示をすることが求められるようになっております。その情報に基づいて、投資家、金融機関が投融資を行うという動きでございます。
こうした動きを踏まえて、スライドの二十三でございますけれども、需要家、エネルギーの需要家でございます事業会社や、あるいは、その立地となっております地域から、再生可能エネルギーの二〇三〇年目標の引上げ、温暖化目標の引上げについて強い意見が出てきております。
スライドの二十四枚目から、今回の温暖化対策推進法改正について意見を申し上げたいと思います。
まず一点目の、パリ協定、二〇五〇年カーボンニュートラル宣言等を踏まえた基本理念の規定の追加というのは極めて重要だというふうに考えております。
それは、国、国民、地方公共団体、事業者、あらゆる主体がその実現を共通のものとして目指すビジョンを明確にし、そこに向けて取組を進めるというためであります。それが各主体の行動を促すとともに、非常に重要な点だと思いますが、脱炭素社会に必要なインフラ、社会の在り方を支えるお金の流れ、投資の予見可能性をとりわけ事業者に対してつけていくという点であります。
日本の場合、エネルギー起源の、エネルギーの利用に伴うCO2の排出量が、温室効果ガス排出量の八五%ございます。エネルギーインフラ、発電の設備も含めたエネルギーインフラといった、立地をし、それを建て、運用していく時間の長いものについて、長期的な政策の見通しをつけていくということが、こうしたインフラの転換を進めていく大きな動機になってまいります。法にこれを定めるということが、国の政策の安定性と予見可能性を高めるものと考えます。
スライドの二十五枚目に、地域の脱炭素化に貢献する事業を促進する計画・認定制度についてでございますが、こちらは、再生可能エネルギー導入の現在の課題の一つが土地の制約の問題であり、社会において再生可能エネルギー事業が受け入れられるかという社会的受容性の問題、課題があるという観点から、非常に重要な制度の創設だというふうに考えます。
本来、再生可能エネルギーの導入は、先ほどの小田原市からの意見陳述にもありましたように、導入の仕方によって、地域にとって大きなメリットをもたらします。
スライドの二十七の例を御覧いただきたいと思います。千葉県の匝瑳市、これは地域の住民が主導したものでありますけれども、再生可能エネルギーの買取り制度を利用して、荒廃農地に発電事業を行い、そこで得られた収益を、若い農業従事者が有機農法で農業をしていくための支援をする、そして、荒廃農地に放棄されたごみの撤去などの地域の環境改善に使われている例でございます。
スライドの二十八枚目は千葉県の睦沢の例でございますけれども、こちらは、環境省、経産省の支援を得て、地域の天然ガスを使いながら太陽光などを組み合わせた再生可能エネルギー、地域での再生可能エネルギー事業でございます。二〇一九年の台風十五号時に停電をしたときに、電力インフラの地域の重要な防災拠点として、ここで提供される電力、エネルギーというのが住民の停電期間中の生活を支えたという例でございます。
そして、スライドの二十九が、環境省の支援事業だと理解をしておりますが、京セラのゼロエミッションデータセンターを北海道と石狩市が誘致をしている例であります。これは、再生可能エネルギーが豊かな地域において、電力多消費型のデータセンターを誘致をすることで地域に雇用を生み出す、そうした取組でもございます。
こうした制度が、こうした区域の指定を通じて促進事業が認定をされ優遇される仕組みというのが、地域主導で地域の再生可能エネルギーを導入をしていく上で大きな役割を果たすことを期待をしております。
スライドの三十枚目でございますけれども、企業の排出量データのデジタル化、オープンデータ化についてはもちろん、先ほど御紹介しましたように、企業のこうしたデータが開示をされることが、企業の評価を投資家、金融機関、取引先に対して明らかにしていく上でも役に立っていくというふうに考えます。
最後、スライドの三十一枚目でございます。
今回の法改正に当たって、是非先生方に、この法改正の後に、その実施に当たって御検討いただきたいという要望を込めております。
改正案そのものは非常に重要だと思いますけれども、やはり、基本理念と整合的な施策の導入が引き続きなされるかどうかについて、是非その点について確保をいただきたいという点でございます。これは、対策全体としての効果とともに、それぞれの対策がこうした二〇五〇年カーボンニュートラルに整合しているかどうかという点です。
もう一つは、地方自治体の支援でございます。とりわけ市町村に対して、情報と人材と資金の支援というのをお願いしたいと思います。
最後は、促進事業を促すインセンティブとして、温対法上も様々なインセンティブを用意をされておりますけれども、再生可能エネルギー事業に関して言いますと、送配電網へのアクセスですとか再エネの買取り制度での優遇なども省庁を超えて御検討いただきたいというふうに思います。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)