上園昌武の発言 (環境委員会)
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○上園参考人 おはようございます。北海学園大学の上園でございます。
お手元の資料を見ていただきたいと思います。
三枚目のスライドになります。
昨日、菅首相は、二〇三〇年の排出目標を二〇一三年比で四六%削減に引き上げるということを発表しました。非常に重要な政策決定をされたというふうに評価いたします。
しかしながら、三枚目のスライドにありますとおり、パリ協定の目標、すなわち脱炭素社会を達成するためのカーボンバジェット、これを推計しますと、一・五度あるいは二度の気温上昇にとどめるためには、日本は残り八年から十二年程度でこのバジェットを使い切ることになります。使い切ると気温上昇が進んでいき、気候危機に陥ります。
カーボンバジェットを過剰消費しないためには、二〇三〇年までに急速な排出削減を達成し、脱炭素社会の道筋をつけることが不可欠です。日本でも、政府が温対法など政策を強化し、排出量取引制度の導入や炭素税等で脱石炭、電力の脱化石、再エネ化を進めていくこと、さらには省エネ規制を進めていくことで全体の排出削減を確実に達成し、それを生かして自治体がカーボンニュートラルと地域経済の発展につなげる必要があります。
地域によって排出が大きく異なります。四枚目のスライドを見ていただきますと、大分県や山口県は、産業部門からの排出量が県全体の七割以上を占める工業県になります。一方、農業県や、東京等の大都市などの特徴があります。このように、地域の排出特性や再生可能エネルギーの普及可能性、省エネ対策の可能性を踏まえた脱炭素化の取組を進めていく必要があります。
脱炭素化社会を進めていくために再エネの大幅な普及が不可欠になりますが、スライドの五枚目を見ていただきますと、様々な課題があります。
日本では、再エネ普及は、地域での専門知識やノウハウの不足、資金調達の困難さ、さらには、スライドにありますように、表の課題などが要因で頓挫することが多く見られます。
一方、本日御紹介したいヨーロッパのオーストリアのエネルギー自立地域づくり、これは、省エネでエネルギー消費量を大幅に削減した上で、再生可能エネルギーを一〇〇%自給していく取組になります。このエネルギー自立地域づくりでは、中間支援組織が大きな役割を果たしています。特に小規模自治体では、どのような理念や目的を掲げて、誰がどのようにサポートし、誰がどのように事業を実施していくのかという点を見ていきたいと思います。
小規模自治体で不足している点は、スライドの六枚目にありますように、大きく三点書いております。第一が知恵や知見、ノウハウに関わるもの。第二が人材です。人に関しては、専門家や担い手、さらにはコーディネーターというところがあります。特に、地域内で事業を進めていく上で、住民や事業者、役所などと意見調整していくコーディネーターがいません。第三に資金調達となります。
それでは、オーストリアの事例を見ていきたいと思いますけれども、八枚目のスライドを見てください。
まず、日本の自治体支援の特徴が左のピラミッドの図に示しておりますけれども、日本の場合、トップランナー支援という特徴があると考えております。内閣府の環境モデル都市などの事業は、優れた計画や実績を持つ自治体に対して事業予算が配分されます。そして、事業運営や計画作りは外部の力に依存して、住民参加が弱い傾向にあると考えております。
このやり方の限界は、自治体に高い意欲と能力がなければ取組のレベルアップが困難であるということです。また、左のピラミッドの真ん中の空白部分がありますけれども、これらに位置する自治体がこの脱炭素の取組を始めようとしても、頼る先がないというところです。スタート地点に立つことさえ難しいということです。
それに対して、右側のオーストリアでは、レベル別の支援プログラムが用意されています。どの自治体でも、目的や能力などに応じてこの支援プログラムを選択できます。ニーダーエスターライヒ州を例にすると、ピラミッドの底に基盤となる州の政策があります。これは全ての自治体が取り組まなければいけない政策になります。そこから更にレベルアップしていくためには、外部の力をかりることになるんですけれども、地域主導で取り組むということが前提になっています。そのため、住民参加が強い取組の自治体が多くなり、地域協働が進んでいます。
時間の制約で詳細は割愛しますけれども、九枚目のスライド、これは支援プログラムの中で最もレベルの高いe5といいますけれども、このプログラムがあります。e5は、空間計画戦略や公共の建築物、施設等、六つの領域で自治体の取組を審査し、質保証をしています。
そして、次の十枚目のスライドになりますけれども、オーストリアの国の別のプログラムとして、スライドの十枚から十一、十二枚目に、小規模自治体向けの気候エネルギーモデル地域、以下KEMというふうに略しますけれども、このKEMというプログラムがあります。
この取組は、奇抜で斬新なものというのは余り見当たらなくて、日本でも工夫すれば実施できるものばかりがあります。十枚目にその例が書いておりますけれども、ポイントとしては、自治体や住民、事業者などと対話して、地域に合う形で事業が行われています。住民からの要望が多かった電気自動車のカーシェアリングとか市民参加型の太陽光発電などを、地域協働で事業を計画して運営しています。
十一枚目のスライドを見ていただきますと、KEMは、地域での気候エネルギー戦略、コンセプトづくりというものを進めていくボトムアップ型のプログラムになっています。オーストリアは、人口が数百人から二千人程度の非常に小さな村が多くあります。そこで、KEMでは、平均して九つの小さな町や村が連合体をつくって、モデル地域というものを形成しています。
各自治体は、気候エネルギーコンセプトというエネルギー計画を策定する必要があり、住民や地域主導で計画を決めていかなければなりません。このコンセプトの中にCO2排出削減目標を設定して、それに必要な対策も決めていくということになります。
しかし、人口が千人程度の小さな村には、こういった専門能力を持つ人がいませんし、どのように計画や事業を立てていけばよいか、そういったことが分かる人がいないということになります。そこで、このプログラムでは、KEMマネジャーという人が三年間雇用されて、計画や事業づくりを進めるということになっています。このKEMマネジャーという人は、地域に入って橋渡し役を務めます。日本の地域おこし協力隊などの制度がありますけれども、自ら現地で事業をつくっていくということはオーストリアの場合はしない、あくまでも黒子役のコーディネーターに徹して、自らは計画を主導して立てるということはしない、そういう仕組みになっています。
このKEMマネジャーは、コミュニケーション能力にたけているということが条件となっています。また、国や州、EUなどの補助金や助成システムを熟知しているということで、各当該の自治体の取組にふさわしい助成金のプログラムを申請し、獲得して資金を調達していくということをしております。
しかし、このKEMマネジャーという人は、必ずしもエネルギーや都市計画等の専門家ではありませんので、州の公的な第三者機関、エネルギーエージェンシーと呼びますけれども、ここから専門的な情報やノウハウなどを提供してもらう、それを政策立案として生かしていく、そういう支援があります。
このときに重要なのは情報の透明性や情報公開の原則ということになりますし、エネルギー自立ということを進めていくためにはあらゆる政策情報が必要となりますので、市民がその情報にアクセスできる、市民参加が可能となるような、オーフス条約の三つの権利ということが確立していることが大きいというふうに見ております。
このイメージとして、スライドの十二枚目にイラストがありますけれども、一番上の、自治体と住民や事業者が協働していくために、先ほど言いましたKEMマネジャーという人がコミュニケーションの橋渡し役を務めて、エネルギーエージェンシーが知恵や知見を提供していくという構図になっております。それと、国や州、EUが脱炭素の基本的な政策の枠組みを提示して資金を提供していくということになっていて、オーストリアでは、小さな自治体であっても、脱炭素の取組をどんどん進めていく、こういう中間支援組織が充実しているということを特徴として見ております。
続きまして、脱炭素の社会構造改革ということで話をしていきます。
十四枚目のスライドを見ていただきたいと思います。
このグラフには、二〇一五年に実施されました、世界の市民一万人を対象にした意識調査が行われました。その中の一つに、あなたにとって気候変動対策はどのようなものかという設問があります。これに対して、世界の六六%の人は、気候変動対策は生活の質を高めるというふうに回答しています。しかし、日本の市民の一七%が生活の質を高めるというふうに答えているんですが、六〇%が生活の質を脅かすというふうに回答しております。
なぜ世界と日本の意識が真逆の結果になったのかということを考えないといけないわけですが、最大の理由は、我慢の省エネに原因があるんじゃないかというふうに考えられます。最近まで暖房を使っていたわけですけれども、我慢の冷暖房の設定温度というのは非常につらくて、生活の質を下げてしまいます。こういった不快で生活の質を引き下げる取組というのは、長く続かないのは当たり前ではないかということです。
国や地域によって家庭のエネルギー消費に違いがあって、それは十五枚目のスライドにグラフがあります。冬が寒いドイツや北米諸国あるいはヨーロッパ諸国では、家庭でのエネルギー消費量の七割が暖房という特徴があります。これは私が今住んでいます北海道も同じ傾向にあります。
ゼロエネルギー住宅というのは生活の質を向上させるわけですけれども、ドイツなどでは標準装備となっているトリプルガラス、三重窓、それと保温性の非常に高い壁や断熱材によって熱を逃がさないので、暖房消費を大きく減らしても室内が暖かくて快適になっています。
それと、欧州では、低所得者や社会的弱者のエネルギー貧困、燃料貧困とも呼ばれますけれども、これが大きな政治課題になっています。
十七枚目のスライドを見ていただきますと、欧州では、ドイツでは、低所得者層の世帯収入に占めるエネルギーコストの割合が五%から七%を占めて、家計を圧迫しているという調査結果が出ています。
EUは、二〇〇九年にこのエネルギー貧困の緩和に向けて様々な政策等を出してきています。十八枚目のスライドを見ていただきますと、二〇一二年のエネルギー効率指令、これは省エネの政策になりますけれども、エネルギー貧困世帯を優先して省エネ対策を実施していくということが盛り込まれています。これはSDGsの第一目標の貧困の解消にもつながるものであり、誰も取り残さないという理念とも一致するというふうに考えております。イギリスでは、冬の推奨室温というのは、居間だと二十一度とか寝室が十八度というふうにされていますけれども、日本の我慢の省エネでは、イギリスに行けば基本的人権を侵害するというふうにも見られるわけです。
こういった、断熱性能を向上させる、そういった省エネ取組というのは非常に重要になってきているわけです。
最後に、まとめさせていただきますけれども、十九枚目と二十枚目のスライドを御覧ください。
三点、簡潔に述べますけれども、一つは、都市や地域再生の手段として気候変動対策に取り組んでいくということがまさに必要になっています。多くの地域では、少子高齢化や人口減少など、大きな社会課題に直面しているわけですけれども、脱炭素社会への移行は、社会構造変革という理念、そこには持続可能性や生活の質の向上、それと公平性、気候正義に基づいた取組として行う必要があると思います。
第二に、脱炭素社会への取組というのは生活の質を向上させるという点で、この脱炭素社会というのは安全で豊かな暮らしを実現するということ、このことを念頭に置いて取り組む必要があります。
とりわけ、エネルギー貧困の解消のためには、社会的弱者の省エネ対策の推進が基本的人権の観点からも必要不可欠ではないかと思います。ですから、日本ではエネルギー貧困の実態ということをまず明らかにしなければいけないんですが、実はほとんど分かっておりませんので、まずは実態調査から始まっていく必要があります。
最後、第三点ですが、中間支援組織を生かして、住民参加で地域の脱炭素社会を構築するということが必要になっていると思います。先ほど述べましたように、オーストリアの事例というのは、そういう点では日本でも非常に参考になるんではないかと思いますので、この後の温対法の改正をめぐって、是非御検討をお願いしたいと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)