住江憲勇の発言 (厚生労働委員会)
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○住江参考人 全国保険医団体連合会と申しまして、地域の第一線の医療機関で働く医科、歯科の保険医の団体でございます。常日頃、地域で、国民、患者さんの命、健康に携わらせていただいております。本日、こういう陳述の機会を与えていただいたことに厚く感謝を申し上げます。
私どもとしては、今回の健保法一部改定案についての後期高齢者窓口負担二割化、この問題について反対の立場で意見陳述させていただきます。
まず、一国民として。
今、コロナ禍で生活困難にあえぐ国民に、ショックドクトリンとばかりに更なる負担増を強いることなんでしょうか。ショックドクトリンの本質は、新自由主義の狙う変革は危機状況によってのみ可能となるというフリードマンの言葉でありますけれども、であり、まさに更に大企業、富裕層に富を集積せんがための国民、働く人々への搾取、収奪そのものであると考えております。
こんな暴挙が、コロナ禍という未曽有の困難に瀕する国民に強いること自体、許されるものではありません。今こそ、このコロナ禍で露呈された日本の社会保障制度の脆弱さ、所得再分配機能の脆弱さを二一年度予算で一歩でも二歩でも取り返すことこそ求められるところではないでしょうか。
二ページに。
次に、医療者の立場から述べさせていただきます。高齢者負担増反対でございます。
一つ。四十年来の新自由主義政治、経済、財政運営による日本の社会保障制度、所得再分配機能の脆弱さがこのコロナ禍で一層あらわになりました。この脆弱性克服のために二〇二一年度予算で改善の道をつくることこそ求められているはずです。
そもそも所得再分配は、働く人々の長年の血のにじむような不屈の闘い、運動によってかち取ってきた人類史上の財産でございます。時の政府の都合によって改変されることがあってはなりません。脆弱さがあれば、更なる改悪をすることではなく、まず是正することこそが求められるところではないでしょうか。
二番目に、医療に求められているのは、常に早期発見、早期診断、早期治療による安全、安心でございます。負担増による受診抑制、治療中断はこれをことごとく困難にします。医療本来の在り方からすれば真逆の制度設計と言わざるを得ません。
三ページをお開きいただきたい。
今回のこの負担増について応能負担とも言われますけれども、応能負担は窓口負担に求めるのではなく、税金、保険料に求めるべしでございます。この税金、保険料が正しく、負担が公平なものになっているのかどうかというところが問題です。大企業や富裕層の税と社会保険料負担の是正こそが、何よりも求められるところではないでしょうか。
高齢者にとっては原則一割負担の今でも高い窓口負担となっております。年収に対する窓口負担が占める割合は現役世代の二から六倍に近い負担になっております。
この棒グラフ、見ていただくのは、左が一人当たり年間収入の棒グラフです。当然、高齢になっていくほど少なくなっていきます。右の棒グラフ、一人当たり年間収入に対する患者一部負担の比率を表した棒グラフです。ですから、高齢になるほど、複数科受診、そしてまた重症化、そして医療の高度化によって、やはり収入に対しての比率で見ますと現役世代の二から六倍の負担になっているということを表しております。
続きまして、四ページ。
既に年間三百八十三万以上は三割負担でございます。二割負担となるのは、中低所得となる年収二百万から三百八十三万未満の方々の三百七十万人でございます。
そもそも二百万以上とは法案には明記されておりません。対象は政令で決めるとなっております、国会審議はなく。ですから、対象年収の引下げは、やはり必至と考えざるを得ません。
この棒グラフです。七十五歳以上個人の年収額の分布です。平均値は百六十六万、中央値は百三十万、こういう実態なんです。能力に応じた負担というが、負担増の対象となるのは圧倒的多数を占める中低所得者ということを御理解いただきたい。
また、政府の言い分として、せんだって田村厚労大臣が述べられました。年収二百万の方々の家計調査によると、年間十二万円の余裕がある、だから今回の負担をお願いする。
しかし、考えていただきたい。十二万円の余裕なんか、一回入院でもしたらそれこそ吹っ飛んでしまう額なんです。この額でいうならば、後でも述べますけれども、本当に、やはり、日本の社会保障制度に対する、社会保障給付費に対する公費負担、そして企業負担の少なさ、そこらを是正していただくことが大事です。
また、高齢者は結構な資産を有しているとも言われます。これは、個人個人、その時々の政府の評価を受けての結果なんです。これに対して懲罰的に課税強化をレトロスペクティブに強めるということは、これは税制上あってはならないことだと思っております。
次、五ページ。
高齢者の生活に負担増を受け止める余裕は、もう既に、今までのデータでも明らかだと思うんですけれども、世帯主が七十五歳から七十九歳の無職の夫婦世帯、平均では、月収入二十三・三万円に対して月支出が二十五・五万円。既に二・二万円の赤字。これはどこから捻出されているかというと、貯蓄から切り崩されている。しかし、その貯蓄ゼロの高齢世帯、二割ございます。こういう厳しい中で本当に今の負担増がいいのか、本当に考えていただきたいと思っております。
次、六ページ。
最後になりますけれども、日本の今、社会保障費、対GDP比で見ますと二二%、約百二十兆円。しかし、フランスで見ますと三二%。一〇ポイント少ないんです。ということは、五十五兆円。その内訳は、国民負担はほとんど一緒です、フランスと。三%分少ないのは、公費負担、十六・五兆円。企業負担は七%少ない、三十八・五兆円。やはり、ここらを是正していただくことこそが喫緊の課題だと思います。
最後に、私どもの国会請願署名とか、そしてまたクイズキャンペーン、そういうところで、患者さんからの生の声をいただいております。ちょっと紹介させていただきます。
高齢者、当事者からです。
これ以上医療費が増えると安心して病院に行けなくなります。生活費も考えなくてはならなくなります。
年金は減っていく。消費税は上がる。医療と介護の負担は増える。年寄りは長生きするなと言われているようだ。
年金だけでは、これから先、体が弱り、ますます病院通いが増えるのに、生活できなくなります。国はもっと、年金生活者の心細さを知ってほしい。
年金収入のみで七十五歳からやっと医療費が一割になると期待していましたが、二割負担では年々減っていく年金収入に占める割合が大きくなります。まともに受診できなくなるばかりです。
そしてまた、現役世代からも声が寄せられております。
高齢の親がいるので医療負担が大きくなると、私の負担に不安が出てきます。
年齢を重ねるたびに医療費の負担が重くなっていくのに、更に負担を増やすことに不安しかありません。
給料が下がる中、高齢の親を持つ者として、医療費や介護保険利用料のアップは、大変な負担になります。いずれは私自身の受診も控えなくてはいけなくなるのでは。一割負担は維持の方向でお願いしたいです。
そして、このコロナ禍であえて負担増を強いられることについて。
この時期に医療費二割負担を宣言する政府の冷酷さに唖然とします。コロナの流行で国の方針が明確に見えたと思います。弱者を切り捨てる政府に対しては怒りが止まりません。
コロナの影響で、生活が苦しくなる一方で、窓口負担がこれ以上増えると、病気になっても、診療が受けられなくなる。コロナでも診療機関へ受診しづらいのにますます受けにくくなって、年金暮らしをしている方は、飢え死にする方も増えてくるのではないでしょうか。
国民の収入は減っているのに、医療費が高くなって、治療を受けたいけれども受けられない人々が多くなるのは反対です。まずは新型コロナ対策を早く行い、感染拡大を防ぐ。病気の人から多くの負担金をという考えは、弱い者いじめではないでしょうか。
以上、本当に国民の切なる願い、切実な声に是非とも寄り添っていただいて、何事も慎重な審議、そしてやはり、この今の時期に患者負担増、高齢者負担増ということはやってはならない、そういう立場で意見陳述させていただきました。
何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)