高村静の発言 (厚生労働委員会)

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○高村参考人 ただいま御紹介いただきました、私、中央大学大学院戦略経営研究科の高村と申します。本日は、参考人としてお呼びいただきまして、誠にありがとうございます。
 私は、企業の職場における働き方ですとか、それからキャリア開発というような課題に取り組んでおります。中でも、ワーク・ライフ・バランスですとか女性の活躍という点に関心を持ちまして、調査研究に取り組んでおります。また、厚生労働省のイクメンプロジェクトの推進委員という立場から、男性の育児休業取得促進に取り組んでおります。
 イクメンプロジェクトということに関しましては、御存じの方も多くいらっしゃるかとは思うんですが、二〇一〇年にスタートしております。こちらのプロジェクトでは、イクメンのことを、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性というふうに定義をいたしまして、男性の育児、家事参加を進めるための企業ですとか職場の取組、また御本人の工夫などを広く掘り起こしまして、伝えることに取り組んでおります。
 そうした取組によりまして、男性の育児休業取得とその意義につきましての社会的認知を高め、国の男性の育児休業取得率の目標達成を目指した取組を行っております。現在、イクメンという言葉も広く認知されるようになってきたというふうに思っております。
 本日は、特にそうした、職場での働き方というような観点から、男性の育児休業取得を進める意味というようなことについて述べさせていただきたいと思っております。
 まず、男性の育児休業の取得を特に推進しようとすることの背景には、働く場における男女の非対称性という課題があるということを改めて指摘したいと思います。
 資料を御用意しておりますけれども、こちらの資料にございます、表紙をおめくりいただきまして、資料の一を御覧いただきたいと思います。こちらは、内閣府男女共同参画局が作成しまして、男女共同参画白書の方に掲出されたグラフでございますけれども、男女の生活時間、特に労働時間を抜き出した国際比較でございます。
 企業で働く時間の参考値といたしまして、有償労働を示すピンクの部分を見ていただきたいと思うのですが、日本は、男性が長いということとともに、男性と女性の比率が、イタリアと並びまして非常に差が大きいというような状況になっております。このような働き方の非対称性ということと育児休業取得の状況の男女の非対称性ということは、表裏一体であるというふうに考えております。
 つまり、育児休業制度というのは、一九九一年に、男女にひとしく請求権を認める内容として法制化されましたけれども、導入から三十年がたちまして、男女の取得率に大きな乖離が見られます。その背景には、こうした働き方の男女差がある。それが、男女で等しい制度としてスタートしたこの制度が今日異なる影響を男女にもたらす、そういった一因になっているというふうに考えております。
 私は、男性の育児休業取得の取組というのは、直接的には男性の休み方の問題になるわけですけれども、他方で、働き方を見直す取組であるというふうに考えています。
 これまで、男女の働く場での差の解消ということは、実質的には、女性の働き方を男性に合わせるという方向で取り組まれてまいりましたけれども、男性の育児休業取得促進ということを通じまして、男性を中心とする職場の働き方を見直すことで、男女共に、育児・介護休業法が目的とします、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進、それから職業生活と家庭生活の両立を目指す取組であるというふうに位置づけることができるのではないかというふうに考えております。これが私の基本的な考え方でございます。
 このような認識を基にしまして、男性の育児休業取得促進が重要であるというふうに考える理由、及び、法案御審議に当たりまして御考慮いただきたいというふうに考える点を三点ずつ述べさせていただきます。
 まず、男性の育児休業取得が重要であると考える理由ですけれども、まず第一は、ただいま述べましたとおり、それを進めることで、従来の休みにくく長時間になりやすい職場の働き方の見直しにつながるのではないか、このように考えるからでございます。
 毎年、厚生労働省が、イクメン企業アワード、それからイクボスアワードというふうなことを表彰しておりますけれども、これらの表彰制度では、審査項目に、仕事と育児を両立できる職場環境の整備、それから取組による定量的な効果が示されること、こういった項目を加えておりますことから、こういった職場環境の整備ですとか、よい効果を上げているということについて、様々な工夫を行う企業の事例というものが集まってまいります。
 特に昨年は、予期せぬ新型コロナウイルスの感染症拡大で、仕事の見直し若しくはオンラインへの移行ということで、仕事のプロセスを見直した企業も多かったというふうに思います。
 昨年のその表彰を受けた企業さんの中では、男性の育児休業取得を促進する中で取り組んできた取組が、そういった中で仕事ですとか仕事プロセスの見直しを進めてきたために、昨年のような緊急事態にもスムーズに対応できたというふうなことを話してくださる企業さんがございました。
 資料二にお示ししておりますように、育児休業取得というのはこうした仕事ですとか手順の見直しなどにつながるというふうに考えておりますので、二でも、こちらの資料の方でも、チームで仕事を共有するですとか、手順、手続を簡略化する、不要なミーティングを減らすようにしていたなど、仕事上の工夫というものをする人の比率が高いというような報告がありますのも、そういったことに結びついているというふうに考えております。
 二点目ですけれども、育児休業の期間に男性が幅広い育児や家事に取り組むこと、長い間取り組むということが、育児休業が終了した後も家事や育児への参画の継続につながる可能性があるというふうな観点から、重要であるというふうに考えています。
 例えば、資料三でございますけれども、ちょっと専門的な内容になっているかもしれませんが、こうした可能性を指摘しているというふうに考えております。
 夫婦共に家事ですとか育児のできる範囲が広まる、守備範囲というふうに考えられると思うんですが、育児休業終了後も夫婦で連携する、あるいは調整するということがしやすくなるというふうに思います。子育てや家庭管理及び働き方の男女非対称性の緩和につながり、夫婦で子育てをするというスタイルが広まる可能性があるのではないかというふうに考えております。
 重要と考える三点目ですけれども、こうした育児休業取得をきっかけにして、会社と個人の関係性が強まるという可能性もあるというふうに考えられます。
 こちらは資料四になりますけれども、育児休業を取得した男性というのは、同時期に子供が生まれまして育児休業を取得しなかった男性に比べて、会社への好感度が高まった、会社への帰属意識が高まったなどと回答する人の比率が高いということが示されております。
 男性の育児休業取得を推進することには、以上のような効果、影響があるというふうに考えますが、そのために考慮すべき点もあるというふうに考えております。今回の法改正に関わる点として、三点申し上げたいと思います。
 一点目は、周知についてです。
 今回新設される個別周知と、従来からの周知の努力義務というのがあるわけですが、双方を組み合わせて、個別に加え幅広い層に対して充実した内容が伝わるようにお願いしたいと考えます。
 男性本人が育児休業制度を正しく認識するということは育児休業取得の大前提になりますが、様々な調査が示すとおり、上司、同僚が支持的だったとか職場に取りやすい雰囲気があったということが、育児休業取得を希望する男性が実際に取得できたかどうかに大きく影響するということが言われております。職場全体に、男女共に育児休業取得についてひとしく請求権があるということについての周知を一層お願いしたいと思います。
 また、男性が育児休業を取得しなかった理由に、妻が育児休業を取得したためということが指摘されるわけですが、これは二〇〇九年の育児・介護休業法改正以前、労働者の配偶者が専業主婦等であって子供を養育できる場合には、企業は労使協定によって当該労働者の育児休業取得を認めないとすることができたという扱いであったことが、改正後も、その制度が廃止された後も職場風土として存続している可能性があるのではないかと考えております。こうした除外規定というのが廃止されていること、それから、むしろ、パパ・ママ育休プラスなど夫婦での子育てを進めようとする象徴的な制度があることなどについて、広範囲への積極的な周知をお願いしたいと考えます。
 二点目は、男性の育児休業取得意向の確認についてです。
 育児休業の取得時期というのはある程度見通すことができますので、本人から取得の意向が示されましたらば、意向確認と併せまして、仕事の内容ですとか配分、スケジュール等を職場で話し合う機会というふうにしていただきたいと思っております。そのことで仕事や働き方の見直しにつながることになると思いますし、また、休みの間に仕事を託す相手の方を育成する機会として利用している企業さんのケースもございます。
 三点目ですけれども、育児休業中の行動についてということです。
 産後八週の間に新設が検討されている仕組みでは、労使協定を前提に、一部就業も認められることとなっております。このような柔軟性を取り入れることで、これまで、職場に迷惑がかかるからということで、取得を希望しながらも二の足を踏んでいたであろう一定数の男性の育児休業の取得が促進されるということが考えられますが、一方で、就業を強要されることのないよう、十分な仕組みの検討をいただきたいというふうに考えています。
 また、就労を可とするという新たな仕組みに目が行きがちですけれども、新制度は、育児休業とその後に続く長い夫婦での子育てのスタートの期間というふうに位置づけまして、その後の夫婦の子育ての協業や連携が進むような過ごし方、これについても幾つかの事例を基に伝えていただきたいというふうに思います。
 最後に、個別の内容というよりも、今般、労政審からの建議に、男性に対するポジティブアクションに沿ってと記載されている点について意見を申し述べたいと思います。
 冒頭申しましたとおり、男女が置かれている社会的な状況の違いによりまして、育児休業取得状況に大きな差が出ているというふうに考えられるわけでして、一定期間のポジティブアクションは必要であるというふうに考えます。ただし、そうであるならば、これは一定期間経過後に見直される必要というものがあるかと思いますので、その点を最後に申し述べたいと思います。
 私からの意見は以上でございます。どうもありがとうございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 高村静

speaker_id: 21081

日付: 2021-05-28

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会