山田正の発言 (国土交通委員会)
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○山田参考人 中央大学の山田と申します。
今日のお配りしております、「流域治水で国民の命と資産を守り美しい山河の保全と創造をはかる」という資料に基づいて、私の意見を述べさせていただきます。
まず初めに、こういう場をいただきまして、日頃感じていることを陳述できる機会を与えていただきましたことに感謝しております。
一ページ目に私の経歴を書いておりますので、学生時代から、今、ちょうど一月で七十歳になったんですけれども、今日が私、退職の日でして、ちょうど最後の退職の日にこういう機会を与えられたことをありがたく感じております。
ずっと一貫して、洪水災害であるとか、川のいろいろな水質、ウォーターフロントの創造とか保全とか、そういうことに関わってきました。
二ページ目なんですけれども、これは公にされている資料なんですけれども、戦後の洪水による資産の被害額、及び、折れ線グラフが死者数になっております。
それで、戦後のある時期、一九四〇年代後半から五〇年代にかけては、毎年のように千人以上、伊勢湾台風では五千人以上の方が亡くなっておられたのに対して、どんどんどんどん、治水事業を展開することで、このグラフのように、これは縦軸は対数グラフですので御注意ください、折れ線は対数グラフです。それで、この図から、どんどん死者数は減ってきたとは分かるんですけれども、この十年ぐらいは数十人から百人を超す水害被害の方が出ております。
この数十人から百人を超すオーダーというのは、実は、面積が二十五倍もあるアメリカ合衆国における、この同じ図を描くと同じオーダーになります。つまり、日本は、アメリカの二十五分の一の面積であるにもかかわらず、死者数はこれだけ多いんだということを理解できると思います。
次に、三ページ目に、これは我々の研究室で調べた、常総市の、縦軸が避難した人の割合です。常総市は、数年前に大きな洪水が起きまして、縦軸二十キロぐらい、約二十キロぐらいの区間が氾濫しております。
じゃ、このぐらいの氾濫に対して大勢の人が逃げてくれたのか。その場合には、水平に逃げるというのと鉛直に逃げるというのと、両方持っていますけれども、これを見ていただくと、もうあふれているにもかかわらず、なかなか逃げてくれません。
これは、一常総市じゃなくて、洪水災害が起きるたびに、私の研究室は、学生諸君が一緒になって現地に行って、九州の方まで行って調査したりしますけれども、大なり小なりこういう傾向を持っております。これがなぜ、避難すればいいじゃないかというんだけれども、なぜ避難しないんだろうか、そこが一つのキーポイントになります。
一つは、小さいときからの防災教育なんかをもっと充実すべきかなとか、あるいはコミュニティー間で過去の洪水の歴史を学び合うとか、そういうものがだんだんだんだん都市化とともに薄れてきているんじゃないかとか、幾つか考えられます。
さらに、洪水は、普通は、死者、亡くなる方とか、あるいは家とかがなくなる、あるいは中小企業なんかの工場が水浸しになってしまうということはありますけれども、それを受けて、四ページ目の右を見ていただくと、これも常総市かと思いましたけれども、若者が、十五歳から六十四歳ぐらいまで、これはもっと若い世代なんですけれども、若い人がどこか町を離れていってしまう。だから、亡くなる、あるいは資産がダメージを受ける以外に、若い人がその町からいなくなってしまうということになります。
次の五ページ目ですけれども、流域って何だろうか。これは国土交通省の研究所がまとめてくれたような資料から取ってきておりますけれども、流域というのはなかなか分かりにくいものです。
六ページ、見てください。利根川の流域です。ここには、六都県、百五十二市町村、人口が千三百万人という膨大な流域を持っています。片や、県内を流れる十数キロの川とか二十キロの川とかいうのもあります。だから、小さい川からこんな大きな川まで、流域といっても様々です。この中で流域治水という概念をどうやって醸成すればいいのか、これは非常に厄介なことです。
元々利根川というのは、御存じのように、徳川家康が今の形に持っていったわけですから、千葉県の東の方の人たちは歴史的に利根川という意識はないんですね。今やっとこうなったものですから、上から下まで同じ利根川ですよと言っても、歴史的にそんな感性がなかなかない中で、流域という概念をどうやってこれから若い人に伝えていけばいいか。
七ページ目。かといって、国、文科省なんかでも、防災教育というのもだんだんだんだん増えてはきております。しかし、私の目から見ると、まだまだ防災教育というのは足りないんでしょうか、足りないと思います。
例えば、私の娘婿は、ある土木系コンサルタントで防災教育の出前講座みたいにして小学校や中学校に行っていますけれども、これはほとんどボランティアなんです。仕事の合間にしかボランティア的な活動ができない。もうちょっとちゃんとした、専門家の話を聞けるような防災教育にならないかと思っております。
ところで、八ページ、流域治水というと、国土交通省が社会資本整備審議会の中でこういうものを打ち出し始めた頃、しっかりとそれを見て、私も専門家ですから、それをある人なんかに話すと、ああ、ハードをやめてソフトに転換したのねと言うから、いやいや、そんな簡単なことではないと。ハードとソフトのベストミックスを考えるんですよ。ハードでやらなきゃいけないところはハード、だけれども、ハードじゃなくてソフトでやれるところはソフト、そこを流域の人たちと一緒に真剣に、国及び流域、県、市町村あるいは関係ステークホルダーの間でしっかりと学ぼうというのがこの趣旨かと思っております。
九ページ、これは一級河川の、それぞれ河川整備計画というのを作ります。ところが、これを見ていただくと、関東、北陸、東北で、計画降雨というのがありますけれども、二日で三百ミリとか四百ミリとなっていますけれども、令和元年東日本台風時には、二日じゃなくて一日で、二十四時間でこの雨を超えてしまっております。
つまり、最近の雨は非常に短期間にとんでもない大雨、計画していたような雨を超えるような雨がもう至る所で降っているんだということで、地球温暖化に伴う気候変動のせいではないかということで、コンピューターシミュレーション、どんどん今進んでいまして、やっています。その結果、十ページ目にありますように、大体、二度C上昇したときには一・一倍、あるいは、北海道なんかは一・一五倍が降るとシミュレーションされております。
ところで、この数字はかなり信頼できる、今の最も進んだコンピューターシミュレーションだと思っておりますけれども、これは実は統計学で言う平均値です、期待値です。
十一ページを見てください。これは、ちょっと説明し出すと長くなりますから、もう結論的に言いますと、二度C上昇で日本全体が一・一倍とか一・一五倍降ると言っていますけれども、これは期待値、平均値ですから、そこから外れる雨だって当然起きます。じゃ、そのときにどうすればいいのかということになります。
最後に十三ページを見ていただくと、繰り返しますけれども、ハード対策とソフト対策のベストミックス、さらに、それを、国なら国、県なら県とか、市なら市が、それぞれ独立にいろいろなことを考えるんじゃなくて、被害最小化であるとか人命最優先するだとか、そこのところをしっかり議論する法的根拠を出すのが、今度の特定都市河川法改正とか、それ以外の水防法の改正とかに含まれているものかと私は理解しております。そのためには、グリーンインフラももう最大限使うとか、あるいは、ハザードマップを全国津々浦々の川にまで見せて、どんな小さい川でもちゃんとハザードマップを整備するんだとか、そういうことが重要なことかと思っています。
さらに、これは、治水というと、すぐ洪水対策ですかと言われるんですけれども、私は、そうじゃなくて、平常時の、ふだんの川とのつき合い方も大いに含まれていて、それが都市計画であったり地域計画であったり、平常時の計画、その平常時の計画が洪水時にも大いに役に立つ。道路一本造るにしても、それを二線堤として使えないかとか、そういうふうな都市計画と川とのもっと深い連携、それを担保するのが今度の改正かと私は理解しております。
また御質問があれば、そのときに細かい説明をさせていただきたいと思います。
以上です。(拍手)