橋本淳司の発言 (国土交通委員会)
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○橋本参考人 おはようございます。武蔵野大学、環境システム学をやっております橋本淳司と申します。
利水、治水といった水問題、それから、流域をフィールドとした環境教育を専門にしております。
本日は、この法案、賛成という立場ではございますが、法案の概要のこの四つにつきまして、それぞれについて追加で検討いただきたいという提案を持ってまいりました。
まず、流域治水の計画、体制の強化という一つ目の部分についてです。
流域水害対策協議会というものがつくられるという予定になっておりますけれども、これは、水循環基本法に定める健全な水循環が維持されるよう、国、流域自治体、企業、住民等が連携を深めていくべきだと考えます。
水循環基本法において健全な水循環というものが規定されておりまして、人の活動及び環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態というふうに明記されております。流域治水においてもこの精神が全く当てはまるものだというふうに理解しております。
そして、水循環基本法第三条には、流域に関わる水循環について、流域として総合的かつ一体的に管理されなければならない、第十四条には、雨水浸透能力又は水源涵養能力を有する森林、河川、農地、都市施設の整備その他必要な施策を講ずるというふうにありまして、今回の法案と密接に関係している部分があります。
今回の法案では利水ダムの活用ということも検討されておりまして、利水ダムの活用を円滑に進めるためにも、利水と治水といった両面から流域を意識した国土形成計画、国土形成計画の中には、災害に強い、しなやかな国土というものがありますけれども、そういったものが必要になっていくのではないかと考えます。
二ページ目を見てください。流域の水害対策計画に当たっては、流域全体における土地利用の影響を考慮する必要がある、特に山間地の土砂災害が及ぼす影響に十分配慮し、流域自治体相互の連携を深めるという提案をさせていただきました。
左側に野球場の絵がありますけれども、流域といったものはこんなようなイメージではないかということです。今回の法案では主にダイヤモンドの部分、内野の部分ですね、ここの部分の強化が非常に進んでいるなと思いますけれども、流域というのは水源から海までが流域です。そして、日本の流域の特徴として、水源から海までの距離が短い、それから水源から海までの距離が急峻であるという特徴があるので、この外野手のいる部分、ここの部分を連携して考えていくことが都市の防災を考える上でも非常に効果的であろうということです。ですから、内野、下流域ですね、の守りだけでなくて、外野、上流や中流域の守りも固める全員野球の流域治水というものが必要だと思います。
実際、山を歩いてみますと、豪雨後にメガソーラー発電が崩れていたり、砂防ダムが豪雨が降る前にもう既に埋まっていたりといったことがあります。そういったことを、どうしてそのようなことが起きてしまうのかということを解明していくということが必要だと思います。
次のページです。土砂災害の原因を、開発及び開発手法、土質、地質、地表・地下水などの流れから総合的に検証していく必要があるだろうということです。何か災害が起きたときに、これが悪いんだと一つのものだけが決められることが多いんですけれども、実際にはいろいろなものが複雑に絡み合って災害が起きているということですので、そういったことを解明していくということが必要だと思います。
左側のマップなんですが、林業における皆伐や施業方法と土砂災害の関連性について示したものです。地図の中で赤く塗られているものが皆伐された場所、そして青く塗られているところが土砂災害が発生した場所です。平成二十八年の台風十号で、岩手県岩泉において、土砂災害の発生箇所と皆伐地を自伐型林業協会が作成したマップとなっております。
森林の洪水流量の低減効果というのはよく知られるところであります。この右側の黄色く塗られている部分、樹冠の遮断量であるとか蒸発散量であるとか土壌層の厚さ、土壌の団粒構造、土砂災害の防止、こういったものが主な森林の洪水流量の低減効果があるものとされておりますけれども、皆伐などが行われるとこれが低減してしまうということですね。それが、豪雨が降る前に砂防ダムを埋めてしまったり、下流域の河床への影響といったものもあります。
右側の写真は、平成二十七年七月の九州北部豪雨の、福岡県朝倉での皆伐地が斜面崩壊したというものです。これは一度皆伐してしまうとこの被害が連続的に起きるというのが特徴でして、発災から四年たった写真が右側なんですけれども、谷筋が埋まってしまっているということなんですね。再造林しても、森林の洪水の流量の低減効果を発揮するには、やはり、小さな木ですと森林の役目を果たさないという部分がありますので、そこの部分には長い時間がかかってしまうということです。
次のページに行きます。ここでは、林業の施業方法と土砂災害の関連性について示しております。林業施業を行う場合に、大規模林業、大規模な皆伐を行う場合、作業道が非常に幅広く造られています。こういった林業作業と土砂災害との関連性というものも解明していく必要があるだろうということです。
これは、作業道が崩壊してしまった例が左側に載っております。これは、下側にある模式図の赤い部分を削って、この土を黄色い部分に移動をさせて広い作業道を造ったというケースです。こうしますと、山の中を降ってくる雨ではなくて、山の中を流れてくる水というものがこの新たに施工された黄色と茶色の間に入り込んで、そして斜面の崩壊を起こしているというケースがあります。
次のページに行きます。こちらは土質、地質との関係性です。近年の土砂災害というのは非常に強い雨といったものに注目が集まっていますけれども、もう一つ、どういう地盤に雨が降ったかということも非常に大きなポイントとなっています。
近年の土砂災害で崩れている場所を調べてみますと、多量の降雨、これはもちろんなんですけれども、それと同時に、花崗岩が風化して真砂土が形成されている部分、こういった部分が非常に崩れやすい。ですから、同じ雨が降っても崩れやすい場所と崩れにくい場所がある、開発しても崩れやすい場所と崩れにくい場所があるということが一つのポイントになるであろうと思います。
それから、真砂土に覆われている土地であっても、上が別の地層で覆われている場合、降った雨では直接真砂土に当たらないので、崩れない。しかし、山の中に徐々に徐々に地下水が蓄積されてくることによって、真砂土が水をいっぱいに含みまして、その真砂土が一気に上の地盤ごと押し流してしまう。こういう、粒子と粒子との間に水が入り込むために摩擦が弱くなって、コアストーンだけでなくて、上に乗っている地質とか岩盤もろとも崩れてしまうという現象が起きます。
この崩れている箇所の写真なんですけれども、令和元年の東日本台風、台風十九号において、宮城県の丸森町、ここで崩れている場面の写真です。ここは典型的な今申し上げたような地盤でして、ここで、真砂土に含まれた水が、一定期間は保たれていたんですけれども、それがたまりにたまって上の地盤ごと大きく流してしまう、こういった地盤の弱い地域で皆伐などが重なってくると、非常に被害が大きくなってしまうということです。
六ページ目を見てください。ここでは、法案の概要の二項目めであります氾濫をできるだけ防ぐための対策です。
今回の法案において、雨水貯留浸透施設の整備、これが都市部で進んでいくというのは非常にいいことだと考えます。ですが、この雨水貯留浸透施設の造り方というのはいろいろなパターンがありますし、それがどういうところに設置されるかによって水の動きが変わるという部分があります。ですから、地形や地質、土質、地下水位、周辺環境、こういったものを考慮していくということが必要で、ですから、一度敷設したものがどれだけの期間、どのぐらいの効果を発揮していくかというモニタリングが、この施策を続けていくに当たって非常に重要なポイントとなると考えます。
七ページ目を御覧ください。今回の法案の中で、河川法についての部分なんですけれども、基本高水の議論が必要になってくるのではないかということです。なかなかこの基本高水の議論というのはいろいろな意見があって、進まない部分があるんですけれども、これの考え方というのをこれからどうしていくかというのが非常に大きなポイントになるのではないかと思います。気候変動によって、雨がたくさん降るようになるということですね。そういうことが予測されている中で、この基本高水を超える洪水が発生しやすくなるのではないか、そうすると、相対的に、現在目標としている計画規模、安全度ですね、これが低下してしまうのではないかということです。
では、どうするかということなんですけれども、論点は三つあります。
気候変動によって変化する基本高水を治水計画の中でどうやって位置づけていくのか。例えば、今の計画規模はそのままに、基本高水流量を変更する。まあ、変更するといっても、設定するのは非常に難しい、そして、予算、時間の関係があって、計画した事業ができるのにやはり数年かかってしまうというところが1の問題点です。2の問題点は、基本高水流量はそのままにして、増加分は超過洪水対策で対処する。
では、この超過洪水対策というものをどうやっていくのか、どのように人命を守るのかということ。
そして三番目が、やはり気候変動というのは不確実なために、治水計画というのを継続的に見直していく必要もあるだろうということです。
最後のページです。やはり人の命を守るということが一番重要なんじゃないかということです。
四番目の、被害の軽減、早期復旧復興のための対策という中で、超過洪水に当たって避難が大事、この避難というものを、どういうところに自分たちが住んでいるか、そして、きちんと逃げていくかということが今回の法案の中できちんとまとめられるべきだというふうに考えています。そして、そのためには、流域治水への主体性を育む学校教育、社会教育というものが必要だというふうに思います。ですが、教育を幾らやっても行き届かない部分というのが出てくるんじゃないか。
令和二年七月豪雨のときの球磨川流域で死者数が六十五人出ています。このときというのは、七月四日の未明、午前一時くらいですね、線状降水帯が発生して、午前三時半に球磨村に避難指示が出ています、真夜中ですね。そして、午前五時五十五分に球磨川が氾濫して、恐らく七時ぐらいに人々が亡くなっているんじゃないかということなんですね。そのときに亡くなっている人、平屋に住んでいる人が三十人溺死している。それから、高齢者、要介護者、移動、誘導の困難者、介護施設で十四名が溺死している。
今、この介護施設などに訓練というものが求められていますけれども、このときも訓練を事前にしていた。訓練をした上で、この施設の担当者の方がお年寄りたちをシーツで搬送しているんですね、一階から二階に。それでも間に合わなかったという現実があります。そうなってきたときに、やはり地域での協力体制といったものをどうやって図っていくかということがとても重要になってくるだろうと思います。
結びに。自治体、企業、住民が、自身の所属流域というものとその特徴というものを把握すること。さっき野球場で示しましたけれども、自分が東京ドームにいるのか神宮球場にいるか分からない状態で流域治水をやろうと言われても、よく分からない。なので、自分の所属流域というものをはっきりさせる。そして、利水、治水の両面から流域の整備に貢献して、災害時には連携して被害を最小限に抑えていくことが大事だと考えます。
以上になります。ありがとうございました。(拍手)