依田高典の発言 (消費者問題に関する特別委員会)

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○依田参考人 初めまして。京都大学大学院経済学研究科で研究科長をしております依田高典でございます。
 本日は、意見陳述の機会をいただき、どうもありがとうございます。
 それでは、私から、デジタルプラットフォーム消費者利益保護法の必要性について意見陳述をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、デジタル時代の社会の変化について、三点お話をさせていただきます。
 第一に、リアルからオンライン、アナログからデジタル、そうした移行が進んでいる世界でございます。
 そして、アメリカのGAFAと呼ばれる巨大なプラットフォーマー、具体的には、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどが台頭しており、世界経済を支配している状況にございます。
 そしてさらに、今般の一年以上続いている新型コロナウイルスの流行におけるデジタルトランスフォーメーションの必要性、これはもはや無視できるものではございません。
 次に、デジタル社会に必要な政策とは何かについて御説明いたします。
 第一に、先ほど述べたアメリカのGAFAと呼ばれるようなプラットフォーマーが市場の支配力を増して、その行使を抑制する競争政策が必要でございます。
 第二に、プラットフォーム上の取引のトラブルから国民、消費者を守る消費者の保護政策も必要でございます。
 第三として、競争政策と消費者保護政策がプラットフォーマー政策の両輪となることを認識する必要がございます。
 では、まず、デジタル時代の競争政策とは何か、これについても三点述べます。
 内閣官房のデジタル市場競争会議、具体的には、経済産業省等が共同で設置している内閣官房の中の会議体でございますが、そちらが検討したデジタルプラットフォーマーの市場支配力をコントロールする事前規制が求められております。予防する規制が求められております。
 私は、そのワーキンググループ座長として、オンラインモール、アプリストアの出店者、出品者、つまり中小企業いじめを監督する法律というものを検討して、まとめてまいりました。
 幸いなことに、そのプラットフォーマー取引透明化法は、二〇二〇年五月に制定され、二〇二一年二月、この二月に施行されるに至っております。
 他方で、車の両輪であるところのデジタル市場の消費者保護政策についても、三点述べさせていただきます。
 消費者庁のデジタルプラットフォーム消費者取引検討会というものを消費者庁が立ち上げ、合計十二回開催してまいりました。私は、そちらの座長としましても、毎回おおよそ三時間にも及ぶ議論を積み重ねてまいりました。
 第二に、日本のみならず、欧米、特にヨーロッパにおいて、EUデジタルサービス法というものを検討しており、日本同様、デジタル時代における消費者の保護政策が現在進んでいるところでもあります。
 そして第三に、そうした動きを受けて、デジタルプラットフォーマーの公的な責任を法制上明確に定め、危険商品の流通や消費者の泣き寝入りを予防する、消費者利益の保護を図る新法の制定を求める報告書をこの一月にまとめたところでございます。
 ここで、消費者の視点と企業の視点について若干述べさせていただきます。
 第一に、学者や弁護士や消費者団体は、概して言えば、デジタルの消費者トラブルの急増あるいはその悪質化というものを懸念し、消費者保護の法制化を強く求めてまいりました。
 他方で、企業であるプラットフォーマーは、自社ビジネスの便宜を主張し、場所貸しであると自らの立場を述べ、公的責任の免除を主張してきたものでございます。
 第三に、当初、両者の意見の隔たりはなかなか埋まるものではありませんでしたが、興味深いことに、NHKのようなテレビあるいはほかの日刊紙のような新聞がこうした消費者トラブルの実態を報道すること等を通じて、大変興味深いことに、市民、国民の問題意識や社会理解も進んでいく中で、先ほど述べた両者が歩み寄り、接点を見出すような努力も続けられてきたところでございます。
 ここで、一つ、話題を変えまして、私の専門である行動経済学的な視点の重要性について述べたいと思います。
 認知限界という言葉があります。人間の認知には限界があって、万能、完全な存在ではなくて、弱い生き物である。つまり、分かっていてもやめられない、理想と現実の乖離、それをバイアスと呼びますが、バイアスを回避できないのが生身の人間でございます。
 第二に、二〇一七年に、そうした弱い、限定合理的な人間を優しく言葉や情報提供を通じて誘導する、ナッジという英語がございますが、ナッジを解明してノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー・シカゴ大学教授がつとに有名でございます。
 セイラー教授は、来日されたときに、東京駅の近くにございます相田みつを美術館を訪ねまして、なぜかというと、セイラー教授は相田みつをさんのファンでございまして、だって人間だものという色紙を買って帰られた、そういう逸話もございます。
 そうした中において、決してデジタル社会から、人間の弱みにつけ込む悪質業者というのは、悲しいことではありますが、なくなりません。
 なぜかといいますと、デジタル社会の特徴は、誰でも低費用で気軽にデジタルの取引に参入できることが魅力だからです。
 デジタルの魅力が悪質業者の惹起をしてしまう、これは皮肉なことではありますが、残念ながら、全ての出店者、出品者が善意の存在ではありません。
 しかも、そうした企業は日本企業だけとは限りません。外国からそうした悪質業者が入ってくることもなかなか避けられません。巨大なプラットフォーマーの公的な責任は、そうした意味において無視できないものではありますが、従前の消費者関連法の中でプラットフォーマーの公的責任というのを明示的、明確に定めた規定というものも弱いところがございました。
 プラットフォーマーのそうした自助努力に対する配慮も、一方で私は大変重要であると考えております。
 第一に、プラットフォーマー、GAFAは現代のイノベーションの牽引者であり、彼らの新しいビジネスが消費者便益を大きく改善するところもございます。
 そうした中において、お上である政府がしもべとしての民間事業者の行為をあれこれ縛るのは、ある意味で時代遅れであると言わざるを得ません。
 企業の創意工夫を尊重した官民の共同規制と言われる新しい規制の在り方が求められるところでございます。
 できるところから始めることが現実的な船出となります。
 第一に、プラットフォーマーが出店者、出品者と消費者の紛争解決に取り組む努力義務、第二に、政府が危険商品の出品を停止させたり、消費者が悪質業者の情報開示を求めたりする権利、第三に、官民協議会を設置し、官民が不断にコミュニケーションをしながら、そして消費者が救済を申し出る制度の創設、そうしたものが新しい法案の中に盛り込められるべきであると考えております。
 しかしながら、今後検討すべき幾つかの課題も残っております。
 第一に、今回、BツーC取引に対する規律は定められることになろうかと思いますが、CツーC取引の規律は今なお今後の検討課題でございます。
 第二に、発展著しいデジタル広告のターゲティング広告や、あるいは一人一人に異なった値段をつけるパーソナルプライシングというものがありますが、今なおそちらに関してはもう少し静観することも必要かと考えております。
 そして三番目、消費者保護政策というものは消費者教育政策というものがあってこそ機能するものでございます。
 最後になりますが、日本のデジタル社会を目指して大切なことは何か。
 一番、日本のデジタルトランスフォーメーションはもはや待ったなしでございます。デジタル社会に多大の危険、リスクが存在するからといって、従来どおりのアナログにとどまることはもはや許されません。そうした中において、デジタルトランスフォーメーションは待ったなしで進めていかないといけない。
 第二に、そのデジタルトランスフォーメーションの前提として、消費者の安全、安心があってこそ成立するものでございます。
 第三に、そうしたデジタル市場上の取引環境を整備して、世界のデジタル化の中でもっともっと日本企業のプレゼンスを高めていくような視点も重要でございます。
 以上、まとめて結論となりますが、私は、デジタルプラットフォーム消費者利益保護法の制定を求めるものでございます。
 以上であります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 依田高典

speaker_id: 841

日付: 2021-04-09

院: 衆議院

会議名: 消費者問題に関する特別委員会