橋本英樹の発言 (内閣委員会)
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○橋本参考人 東京大学の橋本でございます。
私は、どちらかといいますと、医療政策とか公衆衛生の立場から発言をさせていただくことになろうかと思います。
また、先般、御承知おきかと思いますけれども、日本医学会連合、それから日本公衆衛生学会、疫学会などから、特に感染症法に限ってですが、罰則規定、特に刑事罰の導入に関しまして反対声明を出させていただいたんですが、その際の声明の取りまとめを、私、お手伝いさせていただいたということも、立場として申し上げておきたいと思います。
まず、今回の特措法の方は、私、存じ上げていないというか、不得意でございますので、感染症の方に関してのみお話しし、プラス検疫法に関してのみメンションさせていただきたいというふうに思っております。
まず、感染症の方に関しましてですけれども、先ほど御紹介いたしました声明の方は、元々、感染症法が人権に関してかなり配慮した法律として作られてきたということ、それから、特に刑事罰を導入した場合に、実効性若しくは現場への混乱というものを考えた場合、その影響を加味していただく必要があるということについて触れさせていただいたものでございます。
実は、私、四月の第一波、それから後、八月の第二波、大学でずっと象牙の塔で座っているのも申し訳ないと思いまして、四月は世田谷の保健所、それから八月は足立の保健所の方に学生とともに支援に入らせていただきました。
本当に、現場の医師並びに保健師の方々、住民の方々が非常に強い不安、場合によっては非常に強い感情や怒りをぶつけられる中、一人一人、懇切丁寧に説明をして、そして納得をしていただく。私も、相談電話などを取らせていただいて、本当に、二十分ぐらいかなり罵声を浴びせられたこともあったんですけれども、それでも、コロナとはこういうものです、保健所はこういうことをやっています、こういうふうな決まりで、こういう形で、皆さん方にこういうふうに行動を取ってもらいたいんですということを、お話を聞きながら懇々と御説明していくと、三十分ぐらいすると、最後は、保健所も大変だと思うけれども頑張ってくださいと言って電話を切ってくださる。
まさに、現場は、我々、医療、公衆衛生は、患者さんや地域住民の方に納得して協力していただくことをもって行動変容を図るということを、我々の、言ってみれば職務であり、かつプライドと思ってやっております。
その点から、今回のこの罰則に関してなんですが、もう先生方も御承知のとおり、既に現行の感染症法でも七十七条に、過料については書いてございます。そこに一項、入院が加わるだけじゃないかというふうに仰せかもしれません。ただ、実際には、調査などそれから報告などに対して不協力だった場合に、じゃ、罰金を取っているか。ほとんどが、あれはバイオテロリズム対策で書かれているもので、住民の方が何らかの理由で拒否されたといった場合に目くじら立ててあの罰則を適用しているというのは、実際にはほとんどございません。むしろ、今回必要なのは、どうやって住民の方々の不安を取り除いていくかということに関わるかと思います。
これは余り根拠なくお話しするのも申し訳ないと思いまして、実は、私、二〇一〇年から、首都圏で四市区、住民基本台帳で取ったランダムサンプルの住民調査をずっと続けているんですが、この十二月の二十四日からつい昨日までなんですけれども、千六百人の方からCOVID―19の影響調査というものに回答していただいていました。本当は資料として配付できればよかったんですが、昨日まで取っていて、今日の午前中、データの処理をやって分析してきたので、ちょっとまだ資料として配付するにはやや早いと思いまして、口頭での御報告になることをお許しください。
その結果を見てみると、まず、やはり、四割ぐらいの方が、自分がコロナにかかるんじゃないか、若しくは家族がかかってしまうんじゃないかということを非常に強く不安に思っていらっしゃる。そして、その不安に思っていらっしゃる方ほど、実は、自分や自分の家族がCOVID―19の影響で差別や偏見を受けるんじゃないかということを心配していらっしゃる。その両者の関係性は統計学的に見て有意な関係が見られました。
じゃ、これに対してどういうふうに対応していったらいいのか。一方で、そういう強い罰則などがなければ実効性が伴わないのではないかという見方もあろうかと思います。それは確かに仰せのとおりだと思います。実際、悪意を持って妨害する、若しくは抜け出すといったことをやる方もいらっしゃるとは思うんですが、ただ、そういう場合には、明らかに悪意に満ちていますので、現行法でも、例えば、人に対してわざとうつそうみたいなことをする人であれば、現行法でも傷害罪若しくは暴行罪、若しくは、我々、医療、保健所の活動を邪魔しようとするものであれば、威力業務妨害などを使うことで十分対応できますし、かつ、我々、医療、保健所は人を羽交い締めにする権利は持っておりませんので、むしろそういう形で、刑法の枠でやっていただいた方が、警察のお力などもかりて有効に対処していけるのではないかなというふうに考えております。
では、具体的にどうやって人々に動いてもらったらいいのか。先ほど、また皆様方も御存じのように、どうやって人々の行動を変えていくのかといったところが問題だということはそのとおりでございます。
実際、今回のこの調査、まちと家族の健康調査というのをやっているんですが、この調査で見てみたところ、マスク、ちゃんとやっていますか、ソーシャルディスタンシング、取っていますかというと、やはり九割五分ぐらいの方はやっていますと答えてくれます。まあ、本当かどうかは見ていないので分からないんですが、九割五分の方はやっていますというふうに言ってくれています。
ただ、実際にそれをやろうとして、ふだんどれぐらいの頻度でやっていますかというと、マスクと手洗いはちゃんとやっているんですけれども、ソーシャルディスタンシングとか公共交通機関の利用は、それよりは少し比率が下がります。これはやはり、どうしてもお仕事の関係であるとか生活上の必要性の関係などでそういったことが起こっているのではないかなというふうに思います。
つまり、何が申し上げたいかといいますと、人々の意識はあるので、それをどうやって行動変容につなげるかというふうに考えた場合、そのための環境整備というものを重点にしていただく必要があるだろうというふうに思うところでございます。
その点では、既に我が国は、他国に比べても、例えば雇用の確保のための給付金であるとか、これはもう諸外国に比べて日本はかなりがっちりとやっていて、その効果は私は表れているというふうに信じております。
ただ、一方で、プラスアルファ必要なものとしては、先ほど申し上げたような、例えば差別に対する対応であるとか。私、不勉強なので、ちょっとよく覚えていなかったんですが、昨年のたしか臨時国会で、高鳥議員の議員立法で、差別解消法案が提出されたかと思うんですが、あれがその後どうなったか、私ちょっと存じ上げませんで、例えば、ああいうふうなものの展開ということも今回考えに入れていただくことはあったのかなというふうに考えております。
さらに、そういう差別だけの問題ではございません。人々の不安を取るということ。実際、今回の調査でも、心理的な不安の程度というのが、やはりこれまでの平時に比べると少しパーセントが上がっていました。じゃ、どういう方がそういう不安を抱えていらっしゃるんだろうというふうに見てみると、もちろん自分がかかるんじゃないかと考えている人もそうなんですけれども、一番関係性が強かったものは何かといいますと、自粛の、外に出られないとかそういうものも有意だったんですけれども、それ以上に強かったのが、生活の見通しが立ちにくい、これが一番相関が高い項目になっておりました。
まさに、そういう見通しをつけられるような形で情報を提供していただくということが、一人一人の国民の方々に賢く動いていただくのに必要なのではないか。その点で、今回の改正上、国と都道府県とそして市区町村で情報の共有を図るようにしていただくような改正がなされたのは、これは大変ありがたいというふうに思っております。
さらに、これを、情報を、調査などを活用するという部分についても今回改正で入れていただいているのは、これも非常に重要なポイントではないか。これを、単に調査の結果だけではなく、その調査の基になったデータなどについても、例えば匿名性などを担保した上で様々な活用を許すことをやれば、例えば接触アプリのもっとよいものの開発であるとか、人々に時々アラートを出してあげて、賢く動くことをアドバイスしてくれるようなアプリとか、そういったものの開発などにもつながるのではないかというふうに期待しているところでございます。
そして、やはり何よりも人々にとって重要なのは、そういう形で自分たちがこれを克服していけるという自信を持つことにつながるのではないか。その自信をつけるための、今回、特措法並びに感染症法の改正という形で先生方にお取り組みいただいているということについて、深く感謝申し上げたいと思いますし、その成果が上がることを我々としても期待しているところでございます。
以上、私の方からの発言はこれだけにさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)