柳瀬房子の発言 (法務委員会)

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○柳瀬参考人 難民を助ける会の柳瀬でございます。柳瀬房子と申します。難民審査参与員も務めております。また、収容・送還に関する専門部会の委員でもございました。
 本日は、法務委員会での参考人としてお招きいただき、貴重な機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 初めに、私が会長の任にある難民を助ける会についてお話しいたします。
 この会は、一九七九年に、難民支援を目的としてつくられたもので、政治、宗教、思想に偏らない、人道的見地に立った市民団体です。インドシナ難民の定住や教育の支援からスタートし、現在、四十一年目の活動になります。私自身も創設当時から関わり、責任ある立場で会の企画や運営に携わりました。また、紛争や災害の現場に赴いて方針を出すなどしてまいりました。
 現在は、世界の紛争地や災害における緊急支援を始め、対人地雷や感染症、水対策、障害者の自立支援などの活動を継続しております。例えば、シリア難民、避難民が生活しているトルコにおいて、また、ロヒンギャ難民が避難しておりますバングラデシュや、ウガンダ、ケニアなどを始め、内外十五か国に拠点を置きまして、それは、個人個人の御寄附を始め、日本政府、国連や国際機関その他の内外の助成機関から資金を年間約二十億円いただいて、その予算で運営をしております。
 なお、難民条約、これは皆様御存じのように、一九五一年の難民の地位に関する条約と六七年の難民の地位に関する議定書のことですが、条約ができてから約三十年もの間、日本はこの条約に加盟していませんでした。七九年当時、会の創設当時ですが、私どもは政府に対して、早急な加入をと働きかけておりました。
 それでは、まず、日本の難民の手続についてお話しいたします。
 例えば、ある外国人が難民認定申請をした場合に、まず、入管の難民調査官が事情を調査し、そして認定するかどうかを判断します。ここまでを一次審、一回目の一次審と呼びます。
 この一次審で難民認定をしないという判断が出た場合、申請者は不服の申立てをすることができます。この不服の申立てを審査請求といいます。この審査請求に対して、難民の認定に関する意見を提出するのが難民審査参与員の役割です。
 つまり、専門的知識や豊かな経験を持つ第三者として意見を述べます。参与員は、元判事や検事、弁護士、また元外交官や、国連や難民支援のNGOの役員、また地域研究者、国際法や行政法、国際政治などを専門とする学者の先生、そしてジャーナリストなどから成り立っています。これは法務大臣が任命します。実際には、三人一組でこれまでの案件や記録を検討し、必要があれば証拠を求め、また、申請者本人の意見を聞き、質問して、その意見を踏まえて審査請求に対する判断がされます。
 審査請求から法務大臣の判断までを不服審査と呼びます。
 それでは、私が難民審査参与員として経験したことについてお話しいたします。
 参与員制度が始まったのは二〇〇五年からですので、私は既に十七年間、参与員の任にあります。その間に担当した案件は二千件以上になります。二千人の人と一対一で、一対一じゃなくて三対一ですね、そういう形で対面でお話ししております。一次審の難民調査官による結論を覆したい、難民と認定すべきと判断できたのは六件だけです。二千件に対して六件だけです。また、難民とは認められないものの、人道上の配慮が必要と考え、在留特別許可を出すべきと意見を出しましたのは十二件あります。
 皆様、いかがでしょうか。二千人に対して、在留を認めたのは全体として十八人という数字を聞いて、とても少ないとお感じになったのではないでしょうか。
 実は、私も、参与員になるまでは、入管はどのようにして難民認定を行っているのか、詳しく知りませんでした。入管は最初のインタビューを簡単に済ませてしまっているのではないかとか、難民と認定すべき人を認定しなかった、わざとではないでしょうけれども認定しなかったのではないかとさえ思っていました。日本政府はやはり難民に冷たいのではないかと考えていました。
 ですから、私は、申請者一人一人に丁寧に話を聞き、難民の蓋然性、いわば難民らしさですが、というものを尋ねて、何とか難民の蓋然性のある人を必ず見つけて救いたいという思いで参与員の職務に当たってまいりました。しかし、難民認定すべきという意見書が出せたのは、先ほど申し上げた僅かな数にとどまっています。
 まず、入管が行う一次の審査においてですが、調査官は、申請書を、それぞれに時間をかけて、しっかりと話を聞き、その膨大な内容を調査しています。数日にわたり話を聞いている案件も少なからずありますし、また、インタビューをするためには通訳の方が必要です。そのインタビューをした調書を通訳の方を介して申請人に読み聞かせ、内容に間違いないかを確認してもらって、サインをもらっています。時間と費用をかけた丁寧な審査という印象を持っております。
 さて、私どもの参与員による審査ですが、改めて、第三者として、申請者の意見を聞き、徹底的に聞き直します。しかし、実際には、入管が認定しなかった申請者の中から、新たに難民だと思える人はほとんど出会えないのが実態です。
 その人たちは、おおむね以下の五つに分類できるかと思います。
 まず一つ目。参与員の前で、一次審に言った主張と全く違う主張を繰り返す方です。
 調査官の審査では、迫害を受けた時期や場所、その状況に、ある特定の時期や地名を明確に主張していましたが、参与員の前では全く違う時期や場所を主張している、そんなケースがしばしば見られます。しかも、パスポートを確認しますと、もうその時期は日本に着いているという、時期的な矛盾も少なくありません。また、迫害の主体は母国や警察だと主張していたのに、参与員の審査では、その主体は元の仲間だとか、地元の暴力団であるとか、選挙で勝った候補者の相手の側だとか、その主体も変わっています。
 私は、入管の調査官の前では、一次審では、緊張していて本当の話ができなかったかもしれないとか、何か言いたくない事情があったのかもしれないと考え、違う主張になった理由を聞いてみますが、結局は、参与員の前でも、難民と思われるような話はしてもらえませんでした。
 次に、他の人と全く同じ主張をする申請者です。
 通訳の方の都合で、同じ国の人を二人、審理を入れる場合があります。一人目の人が、例えば、同性愛者で、母国に戻ると迫害される、そういう話をします。私は、もしかしたら、それが迫害に当たるかもしれないと考えていましたところ、二人目の人も全く細部まで同じ主張をします。また、提出されている申請書がコピペではないかと思われるような、そういう文書が幾つも続くケースもあります。宗教上の迫害を主張するケースでも、同様な例がよくあるのです。
 こういう主張をすれば認定されるはずだという、ブローカーの誤解が申請者の間に出回っていることだと思わざるを得ません。
 三つ目の、本人の主張が真実なら、当然説明できることが説明できない申請者です。
 例えば、迫害を受けた自分の国からよその国に逃げ込んだと主張する申請者に対して、たどり着くまでの時間ですとか、それから、通過した都市や地名、そういったことを覚えている範囲でいいのでと聞きます。明らかに何日もかかる距離を数時間で着きましたと答えたり、その大都市や町を通過しなければ絶対にたどり着けないという場所に対しても、全く地名の一つも答えないなんという人はたくさんいます。
 私は、ある意味で、何とか、こうやって答えてほしい、この地名さえ言ってくれればとか、そういう思いがあってそういうふうに質問するんですが、なかなかそれを答えてもらえません。
 また、母国から逃げて難民キャンプにたどり着いたと主張している人がいましたが、その難民キャンプには私どもの事務所があり、申請者がいたと主張している時期にちょうど私も行ったことがある場所で、広大な敷地にあり、難民がひしめき合うような状況にもなかったにもかかわらず、狭い場所に多くの難民がごちゃごちゃいて地獄のようでしたと答えられたこともあります。
 また、キリスト教の改宗について、熱心に教会に通っていますというので、例えば、クリスマスはどういうときですかと聞きますと、サンタクロースの誕生日ですと答えられたり、本当に、イースターはと問いますと、ええっと、イースターとウエスターがありなどと返答されますと、本当に改宗を認めるべきか迷います。
 そして四番目は、条約上の迫害とは全く異なる内容で難民であると主張する申請者です。
 よくある主張としては、借金取りに殺されるという主張や、不倫をして、不倫の相手の夫や妻、また親から殺される、だから自分は難民だという方ですとか、お隣の家との敷地の争い、相続に関する家族間の争いという主張は大変多く見られます。
 また、単に日本で働きたいから難民を申請した、この難民申請を提出することが就労の手続と聞いていた、ですから、私は難民ではありませんと主張するケースさえもしばしば見られます。
 そして最後は、合理的な理由がなく難民認定申請を繰り返している申請者です。
 その主張の内容は、一次審で難民とは認定されず、また、私どもも、参与員も認定しないと判断して、再度、何度も、何も事情が変わっていないのに、同様の主張で新たに申請を繰り返して、何年も日本に残り続けるケースでございます。
 私自身、参与員が、入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません。先ほどの、難民で六件、在留特別許可が十二件と申しましたが、この中に複数回申請の申請者はおりませんでした。
 また、複数回申請の場合に、最初の、一回目の申請には弁護士先生がついています。二回目、三回目になるともうついていらっしゃらないというケースが多いということも申し上げます。
 私だけではなくて、ほかの参与員の方、約百名ぐらいおられますが、難民と認定できたという申請者がほとんどいないのが現状です。
 日本には航空機か船舶で来日するしかすべはありません。
 また、観光、留学、技能実習などの正規のビザで入ってきた後に、本来の目的から外れた段階で難民申請をするケースや、また、中には不法滞在や犯罪で退去強制手続に入ってから難民申請するケースも多く、その中から真の難民を見出すのには時間がかかってしまいます。
 また、UNHCRは、世界各地の難民は女性や子供が多いという統計を出していますが、我が国で難民を申請する人の多くは青年、壮年の男性であるということも事実です。
 したがって、難民の認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということを、皆様、是非御理解ください。
 私が参与員になったばかりの二〇〇〇年代後半の頃は、申請者は三百人ぐらいでした。しかし、申請者に対して一律の就労可能な在留資格を認める運用を始めた二〇一一年からは、申請者がぐっと増えました。
 これまで述べましたように、申請者の中に難民がほとんど見出せないのですが、それでも入管の調査官は一件一件時間をかけて丁寧に調査しています。そのために審査が大変時間がかかっています。待つ時間が長ければ長いほど、申請者は、もしかしたら認定されるのかもしれない、やはり二年ぐらい待たされます、申請して二年待っていたら、何も言ってこなければ、認定されるかもしれないと、やはり希望を抱くのは当然だと思います。
 さて、今回の改正法案では、難民認定申請中の送還を停止するといういわゆる送還停止効に例外を設け、まずは三回目以降の難民等の申請者、また外国人テロリスト等、暴力主義的破壊活動者、そして三年以上の実刑を受けた者は、難民認定の認定申請中であっても送還できることとしています。私は、この送還停止効の例外を設けることは必要なことだと考えております。
 以上、今回の改正法により、送還されるべき人が迅速に送還できるようになれば、審査期間の短縮にもつながり、真の難民の一刻も早い保護が可能になると思います。私は、今後も、丁寧な審理を続け、難民の蓋然性が認められる方を絶対見逃さないという気持ちで参与員の職務を行ってまいりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 柳瀬房子

speaker_id: 4370

日付: 2021-04-21

院: 衆議院

会議名: 法務委員会