熊野英生の発言 (予算委員会公聴会)

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○熊野公述人 第一生命経済研究所の熊野でございます。
 私の方から、日本経済の現状と課題についてお話をしたいと思います。
 今日御説明する資料は原稿をそのままお持ちしておりますので、後ほど詳しく御覧いただければと思いますが、大体、おおむね同じものをお話をしたいと思います。
 我が国の経済、景気は、緊急事態宣言の下で現在は非常に厳しい状況です。民間エコノミストが予測している平均的なもの、これはグラフ一に全体を掲示させていただきましたが、この一―三月はマイナス成長、マイナス五%の成長になるという見通しでございます。このマイナス自体は緊急事態宣言によるものなんですけれども、昨年の一回目の緊急事態宣言とは幾つか大きな違いがございます。
 まず、違いは、活動制限を飲食店に限定したこともありまして、経済への打撃が非常に小さくなっているという特徴があります。海外の需要、外需を除いて民間の内需だけでマイナスインパクトの大きさを比べますと、大体今回は三分の一に絞られているというのが現状です。また、海外、外需においては、前回、去年の四、五月は中国の経済が非常に悪かったので、アジア全体が貿易の足を引っ張っていたんですが、今回は中国がプラス成長に変わりまして、むしろ牽引役に変わっているという大きな違いがあります。
 ただ、全体で見まして、楽観してはいけないのは、前回も今回もそうなんですけれども、非常に深刻なダメージがサービス業に集中している。特に外食、宿泊、交通、この三つの業種については非常に厳しい、非常にひどい有様でございます。
 この後、緊急事態宣言が三月八日に明けると、恐らく経済は回復すると見ています。これは消費者が我慢していた消費活動を積極化させるということが主因なんですが、そこでは恐らく、今見えていないリスク、感染リスクが再燃するという可能性が非常に高いのではないかと思います。
 これは、去年の四、五月、緊急事態宣言が明けた五月二十六日から二か月後の八月の頭には第二波の山が到来した。今回も同じように、二か月後、三月八日から解除すると計算しますと、大体ゴールデンウィーク明けくらいには、もう一度感染の拡大のリスクが高まるのではないかと懸念しています。
 グラフ一に挙げています四―六月、マイナス成長の後の四―六月の見通しは大体五%で、落ち込んだ部分がそのままリバウンドするような形になっていますが、ここは、感染リスクの拡大、リバウンドリスクをまだ十分には織り込んではいないのではないかというふうに私は見ています。
 基本的には、経済の活発化と感染の防止というのはジレンマ、両立し得ないものだというふうに私は思っています。現時点で、感染リスクというのは、経済にブレーキを踏んでいるからこそ感染者がまだ減っているにすぎないのではないか。この図式というのは、図表の二番目に掲示させていただきましたけれども、経済を動かすとリスクが高まり、緊急事態宣言で経済を止めると感染者が減る、この循環がなかなか断ち切ることができないというのがまだ現状で、その悪い循環の中から、現状はまだ抜け出しているというふうには私は見ていません。
 今後の課題としては、やはり東京オリンピックを成功させるということが課題ではないかと思います。七月二十三日から東京オリンピックがありますが、これを成功させるためには徹底した感染制御、アンダーコントロールの下に置くということが非常に重要なのではないかというふうに私は見ています。
 数日前、大坂なおみさんが全豪オープンテニスで優勝しました。この全豪オープンテニスというのは、徹底した感染防止策の中で行われました。昨年は、六月にウィンブルドンが中止され、八月には全米テニス、そして今回の全豪オープンテニスとありましたが、全米と全豪については、感染拡大をコントロールしたということで、その行事の成功が世界中で称賛されています。
 具体的に言うと、観客数を絞り込み、ゾーニングをして、出場する選手に対しては何度もPCR検査を受けさせた。この成功は世界的に称賛されている。テニスの何倍もの選手が参加する東京オリンピックは、もっと大きな成功事例になるのではないかというふうに私は期待しております。
 次に、現在の景気情勢について詳しく見てみたいと思います。
 現状では、非常に中小企業の経営が厳しいんですが、財政政策、政府の政策によって経営破綻が水面下に封印されている状況だと思います。失業率を見ましても、最近の十二月の失業率は二・九%と非常に低いです。しかし、今後、三月八日に緊急事態宣言が明けた後、このまま強い制限を続けると、もたなくなる中小企業も夏場にかけて非常に多く出てくるのではないかというふうに懸念しています。地域によって、声を具体的に聞いてみますと、二割の飲食店やホテルが消滅するのではないかという声も聞きます。
 私自身も、年初からいろいろな全国各地の地域を回ってみましたが、飲食店やホテルでは本当に気の毒になるくらい消毒、換気を行っていました。しかし、風評にさらされているカラオケボックスや夜の飲食店は、幾ら努力をしてみてもお客が来ないという嘆きを聞きます。これは大いなる矛盾ではないかというふうに思います。
 問題の本質を考えてみますと、これは店側に問題があるのではなくて、お客さんの側にあるのではないか。つまり、危険なのは、お客さんの中に無症状の感染者が紛れ込んでいるから、彼らをあぶり出さないことにはアウト・オブ・コントロールの状態はなかなか脱せられない、これが本質ではないのかなというふうに思います。
 本来どうすればいいかということを私なりに考えますと、お客さんの中身がブラックボックスであることを変えていく。例えばカラオケに行くにしても、PCR検査を受けた人が陰性の証明を持って行くような形になると、それが解消されるのではないか。解決法としては、PCR検査を国民が自主的にもっともっと受けて、水面下に隠れている無症状の感染者を見える化するということが大切ではないかと思います。
 こうしたPCR検査をたくさんやるという事例は、ドイツや台湾、シンガポールで既に実施されておりまして、その有効性が確認されています。これらの国々では、検査で隠れた感染者を洗い出し、陽性者をスマホのアプリなどで追跡するという形で感染制御をしています。
 そして、今後の焦点としては、やはりワクチンがあると思います。ワクチンがあるからもうPCR検査は要らないかというと、そういうわけではないと私は思っています。
 ワクチンの接種がこれから進むのは、夏までに高齢者など五千七百七十万人、これは大体国民の四六%、半数近くなんですが、これが終わってから、勤労者を主体とする十六歳から五十九歳、この人たちがワクチンを接種できるタイミングになるんですが、それで考えていくと、やはり年末までワクチンの接種がかかるのではないかというふうに思います。
 集団免疫まで仮に時間がかかるということであるならば、PCR検査の実施は必須だと思います。ワクチンの接種一本足打法ではなくて、攻めのPCR検査、市中の無症状の感染者をあぶり出す作戦をしなければ、なかなか感染の封じ込めは今後もできないのではないかというふうに考えています。
 今後のワクチン接種で非常に懸念されるのは、ワクチンについての不安感からワクチンの接種をちゅうちょする人が意外に多いのではないかということが懸念されます。そこへの対応をどうするかということも政策課題です。ここにつきましても、接種を促すような見える化の戦略が私は必要なのではないかと思います。
 具体的に、例えば事例を挙げると、私たちがしているこのマスクの前に、私は既にワクチンの接種をしました、そういうふうな表示をすることをやれば、これは無理に強要することがなくても、皆がそういう活動をすれば、多くの国民が自主的に接種を受けるように行動変容が起こるのではないかと思います。
 仕掛けをつくって民間の活動を誘導することを、これは行動経済学ではナッジ、強制しない社会介入といいますけれども、そういうことを一工夫してみるのも一つの手なのではないのかなというふうに私は思っています。
 こうしたワクチンの接種については、活動を企業単位、地区単位、学校単位に行う。また、定期的なPCR検査も行って、陰性のパスポート、ワクチン接種の場合はワクチン接種済パスポートを普及させるのがよいと思います。
 今回のコロナ感染対策に関しては、政府の中央集権的なルールで規制するだけではなくて、地区ごと、地域ごとに自治体と地場企業が協力しながら地域内の感染対策のルールを徹底させる、遵守させる、そういう分権的な活動も私は必要なのではないかと思います。
 さらに、次に経済政策について見てみたいと思います。図表の方は図表の三番目です。
 今回、財政を通じた経営支援の施策はとても大きな効果を私は及ぼしていると思いますが、これがいつまでも続くわけではないと思います。
 例えば、持続化給付金と家賃支援については、その受付が二月十五日に既に終了しています。緊急事態宣言が終われば、現時点で一日六万円の協力金の給付や六十万円の一時支援金も終了します。そうなると、資金に頼り切った事業者の中には、需要が完全には戻らないので、破綻に追い込まれるような事例も多数出てくるのではないかというふうに予想します。
 緊急事態宣言の終了後は、恐らく飲食店の営業を緩やかに規制しながらやっていくようになるのではないかと思いますが、そのときには、業績が特に厳しいところに対しては追加的な支援を行うようなそういう枠組み、仕組みもあった方がいいのではないかと思います。
 また、既に、業績が厳しい外食、宿泊、交通などに対してはGoTo事業、GoToキャンペーンがあります。私は、このGoToキャンペーンは非常に去年も効果を上げたと思いますが、その反面、そのやり方についてはいろいろな問題点がありますので、適切なリフォームを行って業界支援をすることが望ましいというふうに思います。
 そのほかに、財政支援としては雇用調整助成金があります。しかし、それらもいずれなくなるので、最後に支援されるツールは何かというと、私は金融ではないか。最後には、実質無利子無担保、これはゼロゼロ融資とよく言われるんですが、ゼロゼロ融資などの公的金融支援が立て直しのための最後のツールになる、最後のとりでは金融になるのではないかというふうに思います。
 私は、遅かれ早かれ、補助金で支える政策というのはその効果を弱めていくので、景気全体を浮揚させるために内容のシフトが必要なのではないか。グラフの三番目で少し書きましたけれども、景気のダウンサイドリスクを今までは支えるような感染防止策や雇用調整助成金が主でしたけれども、今後はそれをGoTo事業や事業再構築補助金でどんどん上向きにしていく。さらには、成長戦略を加えて、人口対策も加える形で、守りの政策から攻めの方に政策を切り替えていくようなことが必要なのではないか。これまでの支える、守るという方針から、攻める、つくる、伸ばすという形への転換が必要ではないかと思います。
 中長期的な成長戦略としては、やはりデジタル化というのが有望なテーマではないかというふうに私は思っています。
 図表の四番目を御覧ください。
 デジタル化。民間企業の活動については、このコロナの下でもかなりしたたかにやっているのではないかということがいろいろ見て取れます。
 例えば電子商取引、これはECといいますが、このEC市場においては、ネットショッピングの伸びが非常に急拡大しています。図表四の左の上に、消費におけるネット取引、ネットショッピングの売上げの動向を書いていますが、去年の四月から十二月までで見ますと、大体前年比一・四、ですから、一・四倍に伸びが増えているということが見て取れます。
 このネットショッピング、EC市場につきましては、これは左の下のグラフですけれども、過去十年においてだんだんだんだん消費のデジタル化が進んできたのが、去年においてはぐっとそれが拡大したという形です。
 消費のデジタル化というと、物の消費だというふうに多くの人は見ますが、実はサービスの分野でもこうしたネット消費というのは非常に威力を出しています。
 図表四番目の右の上の図を御覧ください。
 成長市場としての公営ギャンブル。競輪、競馬、競艇、オートレース、こういう公営ギャンブルは、観客を入れてはいけない、無観客になったために、一気にネット投票、まあ電話もありなんですけれども、非接触型のネット取引にシフトしました。その結果どうだったかというと、去年の十二月段階では、競輪、競馬、競艇、いずれも前年比二割から三割の増加を見ているという形です。逆に、こういうネット化ができなかったパチンコというのはずっと低迷をしている。ですから、サービスのデジタル化というのも、非常に大きな効果を私は工夫次第では生むのではないかと思います。
 この消費のデジタル化という分野では、中国のデジタル化が非常に進んでいます。ネット経由の消費という意味では、中国では大体三五%、日本では大体消費の七%がネット経由の消費なんですが、中国は全体でいうと三五%を占めている。中国が何でコロナ禍でこれほど早く経済が立ち上がったかというと、一つの要因としては、消費がネットシフトしていたということがあると思います。
 この中国のEC市場というのは非常に大きくて、これは図表四のグラフの右の下にございますけれども、各国のEC市場の、これは消費者向けの市場の規模でいうと二百一兆円、大体、世界の三分の二のEC市場を中国が占めています。
 実は、この中国のEC市場において一番人気のある海外製品、ですから、中国から見て海外の製品をネットで買う、そのときに一番人気はどこの国だというと、これは日本なんですね。具体的に言うと何か。首位は化粧品です。次が食品、そして日用品。つまり、インバウンドで日本に来た人が、中国人が日本に来て、これはいいと思ったものを中国に帰ってからもネットで買い続けているということがあるんだと思います。
 中国でEC市場、日本から輸入する、輸入というか持ってくる日本製品の販売額は、大体、経産省の計算でいくと一・七兆円あります。これは実はすごい数字で、中国人のインバウンド、コロナ前の二〇一九年は中国人のインバウンドは一・八兆円でしたから、中国の越境ECというのはインバウンドと匹敵するぐらいの規模になっている。
 また、インバウンド消費全体で見ても、コロナ前の二〇一九年は四・八兆でしたから、越境ECというのは、ばかでかいインバウンド消費の三分の一ぐらいを占めているということです。去年、二〇二〇年のインバウンド消費というのは非常に低迷したと思いますが、恐らく、統計データが出てくると、中国との越境ECはそれを肩代わりするぐらいの規模の拡大が見込まれるのではないかというふうに予想します。
 つまり、日本の消費産業にとって、海外向けのECビジネスというのは消費の未来を開くようなデジタルの成長分野になるのではないのかなというふうに私は見ています。
 最後に、成長戦略、デジタル化よりももっと足の長い分野の成長戦略として見逃してはいけないのは、少子化対策だと思います。
 このコロナ禍では、若い夫婦が感染を不安視して妊娠や出産を控えているというデータがいろいろもう既に出ています。私の推計では、来年、二〇二一年の出生数は七十六・九万人まで減るのではないか。出生数が百万人を割ったのが二〇一六年なんですけれども、僅か五年で、七十六・九万人、七十七万人近くまで激減する。これは非常に恐ろしいことだと思います。
 更に怖いのは、若い人たちがコロナによって出会いの場を、フェース・トゥー・フェースの出会いができなくなっていることによって婚姻数が更に減ってしまうということが懸念されます。地方の疲弊は人口減少によって更に加速する。そういう意味では、非常に、結婚が少なくなって少子化が進むというようなことが懸念されます。
 この出生数が減るというインパクトというのは、日本だけではなくて海外全般でも恐れられています。例えば、アメリカでは、民間のシンクタンクが、二〇二一年の出生数は三十万人から五十万人減るのではないかというふうに見ています。台湾については、二〇二〇年の出生数は十六・七万人、韓国については二十七・六万人と、非常に少なくなっています。
 この韓国と台湾の出生数に八十年、人生八十年を掛けて計算すると、現状の人口が、韓国では五七%減る、台湾では四四%減る。日本も、七十六・九万人という二〇二一年の出生数に八十を掛けて今の人口で割ると、五〇%人口が減るという恐ろしい数字になります。そういう意味では、結婚を促進するという形で少子化に歯止めをかけるという政策にも、より力を入れるべきではないかと思います。
 最後にまとめますと、今後の経済政策については、四段ロケット、感染対策、企業の経営支援、成長戦略、人口対策、そうした四段構えの政策推進をすることが、今後布石を打つ上では肝要ではないかというふうに思います。
 私の御説明はこの辺で終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 熊野英生

speaker_id: 26994

日付: 2021-02-24

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会