小畑雅子の発言 (予算委員会公聴会)

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○小畑公述人 全国労働組合総連合、全労連の小畑です。
 本日は、二〇二一年度政府予算に関わって、労働者の立場、労働組合の立場からの発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 さて、二〇二一年度の予算編成に当たっては、何よりもコロナ禍から命を守る政策に予算を重点配分すること、そして、国民経済の基盤である労働者の雇用と暮らしを支える予算を増やし、制度、政策を改善することが求められていると思います。
 この間、森前東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長の女性差別発言に端を発して、ジェンダーの視点から社会の在り方を見直す機運が高まっております。労働の分野を見たときにも、コロナ禍によって女性労働者、非正規労働者に最もその矛盾が集中しております。女性労働者、非正規労働者の実態を踏まえて改善に向けた実効ある施策を進めるなど、ジェンダーの視点から予算の在り方を見直すことが必要だというふうに考えております。そうした立場から幾つかの点について意見を述べさせていただきます。
 第一に、コロナ禍にあって、私たち国民の命と暮らしを守り、支える、いわゆるエッセンシャルワーカーと言われる労働者が劣悪な労働条件の下に置かれている問題です。その多くが女性労働者です。
 本日は、看護師、介護士、保育士など、医療、介護、保育、福祉の分野で働く女性労働者の賃金を資料としてお示ししておりますので、資料の二ページを御覧ください。
 看護師は、国家資格による専門職であるにもかかわらず、経験を積んでも賃金が上昇せず、現場では寝たきり賃金と言われる低い賃金水準となっています。介護に従事する労働者や保育士の賃金水準は更に低く、ホームヘルパーや施設の介護士、保育士はピーク時であっても三百万円台にとどまっています。
 それぞれ、資格を持ち、専門職として働いているにもかかわらず、非常に低い賃金水準に押し込められています。背景には、子育てや看護、介護、福祉などのケア労働に対して、家事労働的な仕事であるから賃金が低くてもよいというジェンダーバイアスのかかった考え方があるのではないかと考えております。そのことが今回のコロナ禍で明らかになりました。
 医療、介護、保育、福祉の分野で働く労働者は、新型コロナウイルス感染拡大の下で、感染の危険と隣り合わせとなる緊張感、感染拡大の収束が見通せない不安感の中で、必死で、患者や入所者、子供たちのために、長時間過重労働を強いられながら働いておりますが、それなのにこうした非常に低い賃金水準に置かれているということです。
 私どものところに寄せられた春闘アンケートから、職場の声を幾つか紹介いたします。
 奨学金や年金負担、税金、最低限の生活費で、手元に残るお金はほとんどありません。専門性の高い仕事で、病院の利益にも貢献しているはずなのに、賃金が少な過ぎると思います。若手のモチベーションは下がってしまい、この職業に悲観して、去っていく人も多数います。
 新型コロナを経験し、日本の医療の脆弱さが浮き彫りになったような気がします。もっと健康で生き続けられる社会をつくるためには、診療報酬を改善し、かかりやすい医療体制にしていく必要があると思います。命が何より大切です。
 介護職の仕事はきつい。仕事と賃金が見合わない。
 コロナウイルスにより緊急事態宣言が出ている中でも休園になることもなく、医療機関で働く保護者さんたちを必死で、ある意味命懸けで支えてきた。しかし、国からそれに対する支援金も慰労金も出ず、つくづく、保育の仕事は情熱や自分自身のやりがいのみでしかモチベーションを保てないのだと悲しくなった。コロナ禍の中、今後、働く親を支える保育は、今のまま、保障や年収が上がらないままだと、どんどん減っていくだろう。
 こうした切実な声を是非受け止めていただきたいと思っております。
 国民の命と暮らしを支えるエッセンシャルワーカーの賃金、労働条件を改善するための施策、予算を要望いたします。具体的には、医師や看護師、医療技術者、介護職、保育士などを大幅に増やすこと、そして、診療報酬や介護報酬の改善、非正規を含めた処遇改善手当、加算の改善などのための予算の確保が必要だと考えております。
 更に言えば、国民の命を守るためにも、コロナ禍で減収を余儀なくされている医療機関への減収補填は欠かせない課題です。
 この間、三次にわたる補正予算によって支援策が実施されてきたことは承知しておりますが、二〇二一年一月末時点でまだ交付は一兆二千億円止まりとなっており、支援が十分行き届いていない実態があります。早急な交付実施が求められていると思います。
 同時に、コロナ非対応の医療機関では、厳しい状況が続いております。ここに対する支援は、三次補正まで見ても、大変不十分なものでしかありません。地域医療はパッケージです。コロナ対応病院からリハビリのための患者さん、また、一般の患者さんを受け入れる体制の強化が非コロナ対応病院にも求められています。発熱外来、感染防止等支援金の増額、継続も含めて、二〇二一年度予算においても、地域住民の命を守るために、医療従事者の待遇の確保、改善につながる減収補填を強く求めたいと思います。
 第二に、コロナ禍によってますます広がる格差と貧困を根本的に解決するための国としての責任が問われていると思います。
 全労連を始めとする実行委員会は、昨年の十二月の十九日に、日比谷公園で、コロナ災害を乗り越える何でも相談会を開催いたしました。そして、十二月の二十九、三十日、一月の二日には、労働弁護団の皆さんのお呼びかけで、幅広い労働組合が協力をして、年越し支援・コロナ被害相談村を開催いたしました。相談に来られた方は、どちらの取組でも、二十代から五十代までの働き盛りの方がほぼ七割、女性が二割となりました。相談村に相談に来られた方のうち、約三割は所持金が千円未満の方でした。日比谷公園の相談会には、コロナ禍で仕事を失い、生活に困窮する切実な相談が寄せられました。幾つか紹介いたします。
 月二十万円の収入があったが、臨時で働いていたから揚げ屋を解雇された。仕事が見つからない。
 コロナで再び短期バイトがなくなり、今年の収入は、今月じゃなくて、今年の収入は三十万円。生活保護を勧められたが、仕事がしたい。
 日雇の建設業で二十年以上働いてきたが、今はコロナでほとんど求人がない。アパート代も支払えなくなった。
 こうした相談が寄せられたところです。
 また、NPO法人のしんぐるまざあず・ふぉーらむ、ここで実施したアンケートが公開されておりますけれども、それによりますと、半数近くが、勤務時間が減少したというふうに回答し、収入が減少した、収入がゼロになったと答えた人を合わせると、これは七割を超えております。
 記述欄には、自分は一日一食、子供はお休みの日は二食、自分は朝御飯はやめて、職場のウォーターサーバーのお湯を朝御飯にしている、四月から少ない貯金と国からの一時金の二十万円で生活しており、来月のお給料日まで残り八千円しかない、こうした訴えが書かれておりました。
 そもそも賃金が低く、蓄えなどないところに、勤務時間短縮、休業、学校休校措置後の復職の難しさなどが相まって、収入減や収入ゼロへと追い込まれていることが分かります。
 ふだんは貧困に暮らしているとは必ずしも思わない人たちまで含めて、アルバイトやパートがちょっと切れる、仕事が休業になることが一か月、二か月続くと、たちまち食べるものもなくなる、こういうレベルの貧困に陥るという、今までの日本の貧困や困窮のスケールと違う状況があることがコロナ禍で浮き彫りになっています。
 私は、この背景には二つの問題があると思っています。
 一つは、労働者の賃金がそもそも低過ぎるという問題です。
 コロナ禍の前から、賃金が上がらない、上がらないどころか実質賃金は下がり続けるという状態が長く続いておりました。さらに、非正規化が急速に進められてきた。正社員と同様な基幹的業務でも、低賃金、非正規雇用に行わせることができる状態が蔓延している、そのことが日本の労働市場を異常な事態に追い込んでいます。
 七ページの資料を御覧ください。
 物価動向を考慮した実質賃金の変動を指数によって見ていくと、日本の平均賃金は、一九九七年をピークにいたしまして一〇ポイントも低下をしております。二十年の長期で見ますと、どの国の実質賃金も二〇%から六〇%ほど上昇しているのがお分かりいただけると思いますが、マイナスになっているのは日本だけと言っても過言ではないような状況です。
 もう一つ、貯蓄の資料もお出ししていますが、この低賃金の下で、貯蓄ゼロの世帯は、単身世帯では四割に迫り、二人以上世帯でも二割強になっています。ふだんから余裕のないところで、仕事があればぎりぎり生活できていたが、実は一か月の収入の一部が減るだけで生活が成り立たなくなってしまう層が大きな固まりとしてできていた、そのことがお分かりいただけると思います。
 この低賃金構造の根底には、女性労働者が多くを占める非正規労働者を家計補助的で安価な労働力、雇用の調整弁としてきたことがあります。それがコロナ危機の下での矛盾と困難を広げています。普通に生活し、子育てできる賃金の保障という考え方が欠如しています。
 少し飛びますが、十二ページの資料を見てください。
 女性労働者全体の二二・五%、女性パート労働者を取り出すと四一%が最低賃金近傍で働く低賃金労働者であり、しかも、エッセンシャルワーカーに最賃近傍で働く労働者が多いことがお分かりいただけると思います。これが先ほど触れたような貧困の状況をつくり出しております。
 戻りますけれども、十ページの資料を見ていただきますと、女性労働者は、一九九七年と二〇一七年、比べてみても、どの年代であっても二百五十万円未満の層に五割から七割、赤いところですね、集中していることが分かります。女性労働者はずっと、一人の賃金では普通に暮らしていかれない賃金水準に置かれてきました。
 一方、男性労働者は、ほぼどの年代でも、一九九七年と二〇一七年を比べると二百五十万円未満の層が倍増しています。しかも、五百万円以上の割合が激減しています。つまり、女性非正規労働者の低賃金がそのまま男性非正規労働者にも適用されて全体の低賃金構造をつくり出しているということを示しているものです。
 十一ページの資料では、家計を支える層で非正規労働者が大幅に増大していることもお分かりいただけると思います。
 世帯単位で考えれば女性の働き方は家計補助的なものなのだから低賃金に置かれたままでいい、この考え方を放置してきたことが全体の低賃金構造をつくり出してきました。女性も男性も、一人一人の労働者が一人の賃金で八時間働けば普通に暮らせる構造をつくり出していかなければならないと思っております。
 全労連は、最低賃金千五百円、全国一律最低賃金制度の確立を求めています。この間、全国二十六の都道府県で最低生計費試算調査を進めてまいりましたが、全国どこでも若者一人が人間らしく暮らしていくために必要な最低の生計費は、月百五十時間労働で換算をすると、時間額千五百円から千六百円だ、全国どこでもです、ということが明らかになっています。
 二〇二〇年度の最低賃金は、全国加重平均で時間額九百二円となり、一円の引上げにとどまりました。コロナ禍だからといって労働者にしわ寄せするのはもうやめて、二〇二一年度は最低賃金の大幅引上げ、地域間格差の解消に踏み出すべきです。低賃金状態をこのまま続ければ、リーマン・ショック後の失われた二十年を繰り返すことになってしまいます。
 そして、この最低賃金の引上げを実現させるためには中小企業支援も欠かせません。コロナ禍で苦しむ中小企業への支援を強めることが、労働者の雇用の確保、賃金の底上げを可能にし、地域経済を豊かにすることにつながります。中小企業対策費を大きく増額し、使えるものに施策を充実すること、中小企業が経営を継続できるための施策を強めること、社会保険料率を応能負担による累進方式として大企業に相応の負担を求めるものとすること、消費税を五%に減税し免税点の引上げを行うこと、インボイス制度を導入しないこと、一度目の持続化給付金が必要な全ての人に行き渡るように申請、給付を続けるとともに、持続化給付金の事業規模に合わせた二度目の支給、家賃給付の二度目の支給を行うことなどが必要だと考えています。
 二つは、雇用確保の問題です。はっきり見える形での解雇、雇い止めの問題とともに、雇用を維持されているのに事実上失業状態に追い込まれている労働者が大量におり、そこへの対応が求められています。
 総務省の労働力調査によれば、二〇二〇年非正規労働者は前年比で七十五万人減少しました。その内訳は、男性二十五万人に対して女性五十万人です。野村総合研究所は、女性のパート、アルバイト労働者など、勤務シフトが大幅に減り、受け取れるはずの休業手当を受け取ることができずに実質的な失業状態にある人、これは九十万人いるというふうに試算しています。
 この間、飲食店や宿泊、観光、流通小売業などを中心に、使用者が一方的に勤務シフトを入れず、それを休業ではないとして非正規労働者に休業手当を支払っていない、こういう問題が明らかになっています。時短営業、シフト減が非正規労働者、女性労働者を直撃しています。
 企業が、休業させた労働者に休業手当を正当に支払い、雇用を維持すること、そのためにも雇用調整助成金の特例措置の継続が求められています。
 また、緊急的な措置として行われている休業支援金については、中小企業で働く非正規労働者だけではなく、大企業で働く非正規労働者にも同じように支払う制度を確立するべきです。現在示されている内容は部分的、限定的であり、中小企業の非正規労働者に適用した制度を全面的に適用することを強く求めます。
 加えて、本来企業が支払うべき休業手当をきちんと企業に支払わせる、使用者責任を果たさせるために、このシフト制契約の在り方や休業手当制度についての規制の強化、制度改善が必要だと考えます。
 コロナ禍で明らかになった格差の広がりを是正し、公正な社会に転換していくことが求められております。そのために国の果たす役割は大きいと思います。
 私たちは、以上述べてきた施策を進めていくためには、税の集め方、税の使い方を変えれば十分に可能であると考えております。
 二〇一九年には、最後のページのグラフですけれども、資本金十億円以上の大企業は、内部留保を新たに十兆円も積み増しし、その額は四百五十九兆円に膨れ上がっています。
 コロナ禍にあっても株価は三万円台になっており、二〇二〇年十月から十二月期のGDPは年率一二・七%増と、二期連続で大幅な伸びとなりました。内部留保が非常事態への備えというのであれば、今こそそのときであり、ためた内部留保を、下請中小零細企業への支援や生活できないほど下げられてしまった労働者の賃上げにこそ使うべきだと考えます。
 同時に、内部留保への課税や累進課税によって税収を増やすことは可能です。
 さらに、世界的なコロナパンデミックの中で、何よりも一人一人の命を守ることが最優先のときに、軍事費を増やす必要はありません。軍事費を削って、コロナ対策、医療、公衆衛生への抜本支援、生活困窮者への支援に回すことを求めます。
 ジェンダーの視点に立って、最低賃金の引上げも含め、今の低賃金構造を見直し、雇用の安定……

発言情報

speech_id: 120405262X00120210224_010

発言者: 小畑雅子

speaker_id: 14567

日付: 2021-02-24

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会