逢見直人の発言 (予算委員会公聴会)
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○逢見公述人 ただいま御指名いただきました連合の逢見でございます。
本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝申し上げます。
私ごとですが、私自身はこれまで予算委員会公聴会には衆議院で六回、参議院で一回お招きをいただきました。今回は八回目の発言となりますが、公述人としての発言は最後の機会となりますので、万感の思いを込めて意見陳述をさせていただきます。
私からは、コロナ禍で求められる各種施策や、ウィズ、アフターコロナの時代で目指すべき社会像を中心に、働く者の立場から見た我が国の経済社会における課題と取るべき政策について申し述べます。
私たち連合は、全ての働く仲間が将来に希望を持って働き、安心して暮らしていけるように、私たちの未来を、次の世代に続く持続可能な社会、互いに認め、支え合い、誰一人取り残されることのない包摂的な社会に変えていくことを目指しております。
お手元のスライドの二枚目を御覧ください。
これらの考え方をまとめた連合ビジョンについては昨年の公聴会でも御説明させていただきましたが、今回のコロナ禍は、連合ビジョンでも指摘してきた不安定雇用や格差、人口減少に伴う社会保障、財政、地域の持続可能性などの課題を顕在化させました。
まずは、全ての人の雇用と生活を守るための対策が急務であり、また、中小規模事業者への事業継続支援などが必要です。さらには、デジタルトランスフォーメーションを前提とした社会の構造変革を促すための対策を講じていく必要があります。
社会に蔓延する様々な不安を解消し、経済の自律的かつ持続的な成長を取り戻すためには、今まさに連合が目指す、セーフティーネットが組み込まれている活力あふれる参加型社会、誰一人取り残されることのない社会を実現することが不可欠であり、それはSDGsの理念そのものであります。
そのような社会の根底には、自由と民主主義の普遍的原理、そして人権の尊重が貫かれていなければなりません。しかし、国内外で憂慮すべき事態も起きています。
先日、ミャンマーで起きた軍事クーデターの暴挙に対しては、各国政府、労働組合からも多くの非難と抗議の声が寄せられています。政府には、ミャンマーにおける民主主義、人権、労働組合権を保護する対応を取っていただきたいと思います。
また、国内では、コロナ禍における様々な差別が問題となっています。
そうした中、オリンピック・パラリンピック組織委員会の森前会長による女性差別発言が世界に発信されました。この問題は森氏の辞任によって終わるものではなく、性差別を含むあらゆる差別をなくして多様性のある社会をつくる行動をオール・ジャパンとして起こしてこそ、信頼を回復する唯一の道であると思います。
スライド三枚目を御覧ください。
この左側がオリンピック憲章、そして右側にILO百十一号条約を記載してあります。一見して明らかなように、ほぼ同じ文章と言ってよく、これが国際社会における差別禁止のスタンダードと言えると思います。
ILO百十一号条約は一九五八年に採択されたもので、百七十五か国が既に批准しているにもかかわらず、いまだ日本は未批准であり、周回遅れのランナーと言える状況です。
加えて、スライド四枚目に記載のとおり、昨年十月に政府が取りまとめたビジネスと人権に関する国別行動計画を踏まえ、国際社会に日本が人権を重視しているということを示す観点から、ILO百五号条約についても早期の批准を求めたいと思います。
次に、コロナ禍における雇用対策について述べたいと思います。
スライド五枚目から七枚目を御覧ください。
雇用維持に向けた休業や在籍出向を担っている雇用調整助成金は雇用保険二事業から支出されていますが、その二事業の財源が底をつき、本来は失業保険の給付などのために労使折半で拠出した積立金から融通してしのいでいる状態です。
同様に、新たな在籍出向の枠組みである産業雇用安定助成金も雇用保険二事業を財源としており、この財源が確保できなければ、休業に代わって在籍出向させることも困難となる可能性があります。
既に、借入先である雇用安定資金及び積立金の残高は急激に減少しており、今後、仮に失業者が増加した場合に備えられるかどうかが問題になります。借入額は二〇二〇年末時点の試算で一兆七千億に達する見込みと聞いており、労使の積立金も二〇二一年に底をつく可能性も指摘されています。
この雇用保険財政については、政府として支出すべきである国庫負担率は本則二五%となっているところ、時限措置とはいえ、現在は二・五%にとどまっています。六ページの下の数字です。早期にこれを本則どおりに戻すとともに、非常事態であることから、雇用保険会計に対して一般会計の予備費を投入すべきと考えます。
今後、現下の新型コロナウイルス対策をどこまで継続することになるかは不透明でありますが、雇用の維持と、失業者を増やさないことについては、政府としても十分な予算措置をした上で取り組んでいただきたいと思います。
コロナ禍の中で、これ以上の保険料の負担増は労使共に対応できないことも申し添えておきます。
また、地域ごとの雇用者数を維持、拡充する観点から、地域における新たな雇用創出も不可欠です。仮に失業などになった場合、この地域で雇用が見つからなければ、転居を伴う移動を強いられる労働者も出ることになり、特定地域の過疎化が進みかねません。
もちろん、地域において新たな産業を興し労働者を雇用するまでにはそれなりの時間を要するため、例えばグリーン化や防災など、既に政府として取り組んでいる地域に必要な施策を一時的に強化する方向で雇用創出の検討を進めていく必要があります。
次に、コロナ禍における生活対策です。
新型コロナウイルス感染症の第三波は収束に向かいつつあるというふうに認識をしておりますが、ここで国として力点を置くべきことは、第一に、ワクチン接種体制の確保と国民に対する正確な情報提供、第二に、機動的な生活支援の提供、第三に、疲弊する医療、福祉、介護従事者に対する支援の実施と考えます。
まず、ワクチン接種ですが、更なる感染拡大を引き起こさず、人々が安心して暮らし、経済活動にも力を入れていくためには、感染拡大が落ち着いている状況で、できる限り広くワクチンが接種されることが重要と考えます。政府も尽力されていると理解していますが、引き続き、可能な限り早く、十分な量の確保に努めていただきたいと思います。
また、接種体制の整備について、接種会場までの移動が困難な住民を含めて、希望者が確実に接種を受けられるよう、国が責任を持って支援していただくことをお願いします。在宅サービスを含め、介護従事者に対する接種もできるだけ早く行われるよう求めます。
あわせて、副反応情報等が迅速かつ確実に収集され、国民に提供される体制を講じられるようお願いします。また、ワクチン非接種者等に対する差別や偏見を防止する対策を講じていただくことや、接種を希望しない労働者に対する不利益取扱いがないようにすることなど、丁寧な対応をお願いします。
二つ目に、生活支援ですが、生活に困窮する労働者は増加しており、雇用の確保とともに、生活支援の強化は不可欠です。生活困窮者自立支援制度における住宅確保給付金の再申請や、生活保護申請における親族照会の弾力的扱いなど、政府に対応いただいていることは極めて重要です。
こうした取扱いが各自治体に徹底され、確実に実施されるよう、十分な財源の確保を求めます。
三つ目の医療、福祉、介護従事者支援ですが、こうした従事者は、長期にわたる感染対策の強化、患者、利用者への対応、収入の低下、いわれなき誹謗中傷などにより積み重なる肉体的、精神的負担で疲弊しています。
連合が昨年八月に介護事業所の労働組合に行った調査結果では、人材確保への悪影響が出ています。診療報酬などの特例や、介護報酬、介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱い、医療従事者、介護・障害福祉従事者への慰労金の給付などを行っていることは、必要な政策と認識しています。
介護・障害報酬は二〇二一年度もプラス改定とされますが、人材確保に支障を来さぬよう、現場の従事者に報いるよう、確実に処遇改善を進めていくようお願いをいたします。
次に、財政の基盤となる税制について触れたいと思います。
今回の税制改革関連法案は、法人税の繰越欠損金控除上限の引上げなどコロナ禍への対応として必要となる措置や、次世代産業の育成支援に向けた新たな税制が盛り込まれる一方、喫緊の課題である、格差是正に向けた所得再分配機能の強化や、持続可能で包摂的な社会保障制度の構築に必要な安定財源の確保に向けた改革の全体像は示されていません。
国民の暮らしと将来の希望を確かなものにし、社会の安定と持続的成長を確保するため、税制の抜本改革に向けた議論を一刻も早く行うことを求めます。
具体的に三点申し上げます。スライドの八枚目を御覧ください。
一点目は、所得再分配機能の強化についてです。
コロナ禍により貧困の固定化と格差の拡大が一層進み、所得構造が二極化しています。その解消に向け、他の先進国との比較において決して高いとは言えない税の所得再分配機能を強化すべきであります。特に、金融所得課税の強化については、近年の税制改正大綱で毎年検討課題とされながらも、改革は見送られています。所得再分配機能の強化に向けた重要課題であり、早期に結論を出すべきです。
二点目は、将来に向けた安定財源確保についてです。
現行制度を前提とした場合、社会保障給付費は二〇四〇年時点で約百九十兆円必要になると言われています。安心社会の実現に向け、各種制度を維持、充実させていくためには、この推計を上回る費用がより早い時点で必要になります。社会保障の安定財源と位置づけられている消費税の在り方を含め、財源調達機能の強化を念頭に置いた税制全体の抜本解決は不可避であり、与党、野党にかかわらず、国会全体での徹底した論議を望みます。
三点目は、中長期的な財政運営についてです。
コロナ対策として各分野において積極的な財政措置が取られていますが、これらの影響や検証も含め、今後、政府の計画の監視、評価、税財政のバランスを含めた中長期的な財政運営の客観的評価と分析を行う内閣から独立した機関、独立財政機関の設置は、これを機に検討すべきであり、将来世代に対する責任でもあると考えます。
次に、目下社会的要請であるデジタル変革への対応とグリーンリカバリーの推進について述べたいと思います。
今回のコロナ危機では、オンラインによる行政、診療、学校授業など、我が国のデジタル活用の遅れが明白になり、事業再建、生活再建に多大な影響を及ぼしました。経済社会のデジタル化のための環境整備を積極的に支援することで、生産性や利用者の利便性を高めることはもとより、非常時にも対応可能なインフラを構築し、経済産業構造の変革と持続可能な社会へとつなげていく必要があります。
同時に、デジタル化の加速は、年齢、性別、障害の有無、雇用形態、所得の大小などにかかわらず、あらゆる層が暮らしの質の向上などの恩恵を受けられるよう、デジタルデバイドをなくすことが重要です。
コロナ禍は、テレワークの増加を始め、新たな日常に対応するための事業環境、就業環境の変化を私たちに迫りました。分散型オフィスやワーケーションなど東京一極集中の解消や地方創生の視点も併せ持ち、適切な労働時間管理の下、多様な人が働きやすい環境づくりを継続的に支援していくことが求められています。
また、コロナ禍で困窮した世帯へ迅速に支援金を届けることができなかった反省を踏まえ、感染症拡大などの緊急事態においてマイナンバーを利用できるよう利用範囲の拡大を法制化するなど、国民生活を守るセーフティーネットの仕組みを構築していくことが喫緊の課題です。
また、欧米諸国において給付つき税額控除のインフラがコロナ禍対策として迅速な給付、所得に応じた給付に有用であったことを踏まえ、日本でも、マイナンバー制度を活用した税情報と社会保障給付を連携させ一体的に運営するプッシュ型の支援制度として、給付つき税額控除の制度設計を加速させることが必要です。
その実現の前提として、マイナンバーと全ての預貯金口座のひもつけが求められ、それにより、正確な所得捕捉と、真に必要とする者に的を絞った支援につなげる必要があります。
さらに、デジタル行政の実現に向けては、公的個人認証に必要であるマイナンバーカードの一層の普及促進に向けた取組が重要です。カードを活用した納税手続の簡素化等とともに、災害時において被災者の避難状況を正確に把握できることから、自治体に避難所の入退所管理での利用を促すなど、活用の取組を進めていただきたいと思います。
世界に目を転じると、コロナ禍を契機に脱炭素社会に向けた動きが加速しています。政府が掲げる二〇五〇年を目標としたカーボンニュートラルの実現に向けては、SDGsの理念に基づいたグリーンリカバリーを官民一体で推進することが重要となります。同時に、エネルギー移行による産業構造の転換に伴う経済社会、雇用への負のインパクトを最小化するため、労働者を含む関係当事者との積極的な社会対話を行い、公正な移行を確保することを忘れてはなりません。
次に、国民生活の基盤である社会保障について述べたいと思います。
今回のコロナ禍で、医療、福祉、介護などの社会保障が私たちの暮らしにとって安心の基盤であることが改めて確認されました。生活困窮者支援や生活保護といった社会的セーフティーネットの重要性も広く理解されるに至ったと思います。
しかし、今後、コロナの収束が実現すれば、社会保障に対する財政的な締めつけが厳しくなっていくことを心配します。社会保障は、家族や地域、職域のセーフティーネットが弱体化する中で、今後一層重要な役割を果たすことになります。しかし、人口減少、少子高齢化の流れは感染拡大以前と変わらず続いており、社会保障制度を将来にわたって持続させていく努力も必要です。
政府は全世代型社会保障制度を進めていますが、連合も、年齢から負担能力に応じた負担への転換が進められるべきと考えています。年齢にかかわらず必要な支援が行われるべきですし、雇用機会に恵まれず生活不安にさいなまれる人々への支援は急務です。また、こうした人が多い世代が高齢期を迎える前に、社会保険の適用拡大を強力に進めておくことも極めて重要です。
また、出生者数の減少が各国で見られ、これらがコロナの影響との見方もされています。社会保障制度の持続可能性の確保という観点からは、次世代育成支援対策の強化が重要です。
そのような中、児童手当の特例給付の一部廃止を含む子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案が国会に提出されています。施行は令和四年十月支給分からということで、来年度予算には関係ないところではありますが、この間、希望出生率一・八を目標に政策を進めてきたところであり、特例給付の廃止はこうした政策にも逆行しかねず、再考を求めたいと思います。
他方で、今回の予算案において、公立小学校の学級定員を三十五人以下に段階的に引き下げる措置が盛り込まれたことは評価したいと思います。その上で、教員が一人一人の子供と向き合う時間を確保し、きめ細かな教育を行うためには、部活動の学校から地域への移行、ICT支援員の配置、専科教員を始めとする学級担任外教員やスクールスタッフなどの拡充の推進を求めたいと思います。
次に、雇用の安定と公正労働条件の確保について述べます。
昨年来のコロナ禍においては、業務委託や請負といった、雇用契約ではない契約形態で働く人々のセーフティーネットの脆弱性が明らかになりました。特に近年は、IT化等の推進により、雇用労働に近い働き方をしているにもかかわらず、いわゆる雇用契約ではないということから、労働関係法令の保護を受けられない事態が深刻化しています。
政府においては、フリーランスとして働く人々への相談窓口を弁護士会の協力を得て設置しておりますが、相談体制を一層充実していただくとともに、労働者概念の見直しについても喫緊の課題として早急に取り組んでいただきたいと思います。
外国人労働者の就労支援に関しては、新型コロナウイルス感染症により解雇等された外国人労働者に対する在留資格、特定活動の付与など、政府において積極的に御対応いただいているものと認識しております。
一方、日本語及び労働関係法令の理解が十分でないために、突然の解雇や技能実習の中止等の場合において、本来守られるべき権利が十分に守られていない実態があります。連合でも、先般、外国人労働者を対象とした集中労働相談を実施したところですが、コロナ禍における雇用不安や、事業主の不適切対応、ハラスメントや差別などに関する相談が寄せられており、更なる対策の強化が求められます。総合支援のための窓口の周知、地方における相談体制の充実、そして労働法令違反に対しての厳正な対処をお願いします。
最後になりますが、今回のコロナ禍を通じて、個人の力ではヘッジし切れない生活上のリスクが多く存在することが明らかになりました。これは自助努力ではいかんともし難いものであり、この問題を放置すると、社会の不安を増大させ、分断を招くことになりかねません。社会の安定か分断か、私たちはその岐路にあると言えます。
我が国が正しい道を選択されることを切に願って、私の発言とします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)