松本加代の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(松本加代君) 私は、港区みなと保健所長の松本加代と申します。このような貴重な発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 保健所は、地域の健康危機管理対応のほか、母子保健、精神保健、医療連携など幅広い業務を行い、地域の公衆衛生行政を担っています。どれも住民の生活に不可欠なものであり、この平時の業務を守りつつ、新型コロナウイルス流行への対応を長期に続けているのが現状です。
 しかし、新型コロナウイルスの対応の混乱の中で、従来のサービスを中止や延期せざるを得ないことが各地で起きました。例えば乳幼児健診、エイズ検査などが中止になったりもしました。もちろん、これは苦渋の決断です。止めざるを得なかったわけです。
 それはなぜかといいますと、混乱の中で既に限界にぶつかっていたからです。ここまでの新型コロナウイルスへの対応業務を支えてきたのは、夜間や休日においても自分や家族との時間を削って業務に当たった職員の使命感や意識の高さです。全国の保健所関係者、そしてそれを支えてくださっている医療関係者、住民の皆様の協力によるものです。しかし、このような中で、自ら体調不良となり職場から離れざるを得ない人、復帰できずにいる人たちがいるのも事実です。個々の使命感への依存や非常時のような緊張を長期に続けていくのはもう無理です。
 感染症を広げない、命を落としたり健康を害する人が一人でも減るよう、そして混乱を最小限にして経済や社会の機能を維持するために保健所が貢献する四つの課題について話させていただきます。
 初めに、感染症医療体制のオペレーションの確立と責任の明確化です。
 通常、一般の病気における入院患者の調整は、患者を実際に診察している医師らによる病診及び病病連携の仕組みの中で行います。しかし、新型コロナでは、直接患者に会っていない保健所が間に入り、患者や都道府県等の調整担当、医療機関に連絡をする構造となっています。御本人と医療機関、時には救急隊を挟み、伝言ゲームのようなこともあり、大変時間が掛かります。特に、夜間と土日はそこの調整が現場の大きな負担となっています。
 入院が必要な方や急変した方への対応の遅れは命に関わる問題になります。感染症医療体制の整備は、病床数の確保だけではなく、病院や宿泊への搬送車の手配を含めた全体のオペレーションが機能するよう、具体的な整備を急いでいただけますようお願いいたします。また、その体制は、今後、他の感染症が出現したときにも活用できるものであってほしいと思います。
 二つ目に、これも至急でございますが、先ほど木村参考人からも述べられて重なる部分もございますが、介護、福祉の現場への感染症予防支援をお願いいたします。これは病床確保や医療逼迫の問題に大きく影響いたします。
 港区では、高齢者施設で感染者が把握されたら、迅速に調査や訪問指導、オンライン会議を開いて、これ以上感染症を広げないような介入をしています。しかし、この中で困難と感じることは、マスクや手洗いが困難な認知症の方の感染予防や入退院調整がとても大変なことです。
 PCR検査への補助金などで現在検査そのものはとても受けやすくなっていますが、それだけでは感染予防になりません。介護・福祉現場での環境整備など、感染予防への支援は不可欠です。医療には慰労金なども含め予算対応を進めていただいておりますが、介護、福祉の分野においても支援を進めることで、その結果、医療に掛かる負荷を減らすことが可能ですので、保健所の立場からも支援をお願いしたいと思います。
 三つ目は、ワクチン接種体制の支援についてです。
 イギリスやイスラエルのように短期間でより多くの人にワクチン接種を進めることは、この感染症との闘いを大きく変えます。医療従事者と高齢者のワクチン確保の見通しが立ったと聞いています。今後、ワクチンを最大限のスピードで接種が進められるよう、従来のやり方にとらわれず柔軟な現場対応ができるよう、是非国としての支援をお願いいたします。
 また、ワクチン接種記録の入力や予約管理などで運用上のミスを防ぐためにも、安定した行政手続基盤の整備を期待しています。
 また、今後はワクチン接種記録やPCR検査の結果をスマートフォン等で提示できるデジタル証明が社会活動、また留学、旅行、ビジネスなど国境を越えて活動をする人たちには重要になってきます。これを自治体単独で実現するのはとても難しいことです。
 また、自治体ごとにばらつきがあるのでは国際的な信頼が得られません。マイナンバー制度の情報提供ネットワークシステムを活用し、国として情報の管理化、一元化、国際標準化を急ぎ進めていただけますようお願いいたします。そうした情報提供体制や安全管理体制が整うことが国民の信頼につながり、ワクチン接種希望者が増え、接種率の向上につながると思います。
 第四に、オリンピック、パラリンピックなど国際的なイベントへの対応と短期滞在外国者への医療費負担についてです。
 開催が迫っているオリンピック、パラリンピックについて、アスリートとその関係者、大会運営に関わる人たちが来日します。アスリートの方々は厳しい感染対策を含めた体調管理をされていますが、それ以外の関係者の中にはそこまで厳密な管理をされていない人もいます。日本国内で新型コロナウイルスに暴露、感染する人もいるかもしれません。
 現在、都内では感染者が増加傾向にありますので、保健所で住民の支援を行いながら対応、追加の対応をすることはとても難しい状況です。国を挙げてこのイベントを安全に遂行するために、イベント関係者専用の対応スキームや施設をつくっていただき、住民の医療に負荷が掛からないようにお願いいたします。
 また、短期滞在外国人が受診した場合、日本人とは異なる支払の問題が生じます。これは、全額自己負担だからです。未収金などが発生しないよう、来日する外国人には旅行保険など医療費がカバーされる保険加入を義務付けてください。これは、他の国では既に導入されている仕組みです。
 また、新型コロナウイルス感染症では、勧告入院した場合の医療費は個人負担がありません。健康保険を利用して自己負担分を公費でカバーされています。しかし、保険証をお持ちでない外国人は、加入している保険会社が支払可能でも全額公費で処理されています。つまり、外国人が滞在しているホテルのある自治体や国が一〇〇%負担をしているという状況です。これは、法律などを変えなくても運用で対応できるとのことですので、保険会社への支払で処理できるよう、早急に通知の発出などの対応をお願いいたします。
 最後に、オリンピック、パラリンピック開催期間中、海外からの入国者や国内から集まる人たち、つまり住民以外の短期滞在者への医療については、国や東京都が独自に臨時の施設や医療者を確保するなど御準備をお願いします。保健所には現在、管轄内の住民サービス以外の対応をする余裕はございません。
 私からは四つのお願いを申し上げさせていただきました。
 以上になります。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 120414260X01320210506_009

発言者: 松本加代

speaker_id: 20268

日付: 2021-05-06

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会