濱崎和也の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(濱崎和也君) 商船三井の濱崎と申します。
本日は、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
弊社の北極海航路関連事業の取組を御紹介させていただくとともに、北極海航路の展望について申し述べさせていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、弊社の概要について御説明させていただきます。(資料映写)
弊社は、一八八四年の設立以来、百三十年以上の長きにわたって事業を継続しております。現在では八百隻を超える船隊の規模を保有、運航しております。この規模は世界有数の規模でございまして、とりわけLNG船に関しては世界シェア一位となっております。
それでは、本題の北極海航路の概要について御説明申し上げます。
ここにありますように、北極海にはロシア側とカナダ側の二つの航路がございます。北東航路と呼ばれるロシア側の方では先行して利用が進んでおります。こちらが一般的に北極海航路と呼ばれているものでございます。カナダ側は北西航路と言われていますけど、氷海も厳しくて航路も入り組んでおるため、商業利用は進んでおりません。
この五ページの図を御覧いただくとイメージいただけると思うんですけど、北極海では、近年、温暖化の影響によって、特に夏、氷が急速に減っております。夏においては、ここで言うと右側ですね、北極海航路上、海氷が存在しない状態、これを完全開通と呼んでおりますけど、昨年はその完全開通状態が八月の初めから十月末まで三か月間続きました。
これが北極海航路を運航するための諸条件でございます。北極海は、海洋汚染防止のため、IMO、国際海事機関が定めたポーラーコードと呼んでいますけど、それを遵守した船舶のみが航行可能でございます。具体的には、アイスクラスと呼ばれる砕氷ですね、氷を砕く、耐氷、氷に耐えるですけど、仕様など、船舶のハード面の要件を規定しております。それに加えて、特別な乗務員の訓練履歴なども求められます。北極海航路は、沿岸国であるロシア当局が管理しておりまして、ポーラーコードを遵守していることの証明書の提出をもって船が運航できるということになっております。
先ほどもちょっと話ございましたけど、国連海洋法条約において、このような北極海のような氷に覆われた水域におきましては、沿岸国が領海内及び排他的経済水域というところを管轄するということが認められております。北極海航路に関しては、ロシア当局がそれに沿って管理をしていると言えます。弊社の運航船もロシア当局の許可を得た上で航行しております。これまでのところ、ロシアの当局からはスムーズかつ協力的な許可をいただいております。
北極海航路を通るに当たっては、パナマ運河とかスエズ運河とは違って、通航料というようなものは取られません。ただし、氷がある場合、ロシアの原子力砕氷船のエスコートが必要になりますので、そのエスコート料が別途徴収されるということになります。
なお、後で御紹介させていただきますけど、当社の保有する砕氷LNG船は、氷の厚さが二・一メーターまで割れるというところで、基本的には自律運航可能ということで、原子力砕氷船のエスコートなしの運航が可能となっております。
次に、北極海航路を利用することのメリットを述べさせていただきます。
北極海には豊富な天然資源が存在いたします。それで、北極海航路の利用によってそこへのアクセスが可能になります。日本のようなエネルギー資源に乏しい国にとって、北極海航路というのはエネルギー安全保障の観点から重要だと考えております。
例えば中東で地政学リスクが起こったとき、代替調達先として北極海の、北極圏のエネルギー資源というのは代替手段となり得ます。それで、北極海、北極海航路においてはソマリアのような海賊がいないというところで、そういうところも安全保障上のメリットの一つとして挙げられます。
ここの右、グラフがございますけど、日本の二〇二〇年のLNG輸入は七千四百万トンぐらいでございますけど、そのうち六百万トンをロシアからの輸入となっております。これは主にサハリンからの輸入なんですけど、サハリンの天然ガスというのは徐々に埋蔵量枯渇しておりまして、一方、北極圏からのガス埋蔵量は膨大というところでございます。
また、北極海航路利用のメリットなんですけど、欧州と東アジアをつなぐ航路として、スエズ運河回り、南回りと比べて約三割距離が短いというのも特徴の一つです。そういうことで、距離が短いというところで、輸送コストの観点で経済的になります。また、航路距離が短いということは、必要な燃料消費を抑えられるということなので、CO2の削減にもつながります。
続きまして、弊社の北極海航路関連事業の取組について御紹介させていただきます。
これはヤマルLNGプロジェクトなんですけど、これはロシアの大手ガス会社であるノヴァテックが運営している世界初の砕氷LNG船を使った大型プロジェクトでございます。
これは、ここのロシアの中間の方にありますけど、ヤマル半島ですね、そこで生産されたLNGを、夏は東回り、ベーリング海峡経由で直接アジアまで運びます。冬は、北極海航路、東側の氷が厚くなりますので、砕氷LNG船単独では航行できないというところで、西に向けて運航されます。それで、欧州ですね、ヨーロッパで普通の在来型のLNG船に積み替えられて輸送されます。弊社はこの砕氷LNG船三隻に参画しております。
また、輸送の効率性を上げるため、欧州まで行かずにノルウェーで普通の船に積み替える、これを我々の業界の用語でシップ・ツー・シップと言っておりますけど、そういう荷役で揚げ荷をしたりしております。
言葉で説明していてもイメージしづらいかと思いますので、ここで弊社LNG船の実際の映像を御覧ください。
ノルウェーで揚げて、積み地に戻る映像でございます。これが先ほど申し上げたシップ・ツー・シップというもので、船から船に荷役を揚げているというところでございます。
それで、荷役を揚げ終えて、LNGを揚げて、航海を始めます。ノルウェー沖ですね、氷がありません。徐々に船は進んでまいります。徐々に氷が現れるというところでございます。だんだん厚くなっていますね、氷が。積み地のサベッタに向かって今航海しているというところでございます。夜になると、強力なサーチライトで氷を、氷の状況を確認しながら進んでいきます。数十センチという氷ですね、先ほどは。ここが積み地のサベッタでございます、タグボート先導されていますけど。で、積み荷役を行うと。で、積んで、船が出帆するというのが我々が行っている砕氷LNG船を使った輸送サービスでございます。
それで、先ほどはヤマルのプロジェクトを御説明させていただいたんですけど、第二のプロジェクトとして、ヤマル半島の対岸にございますギダン半島というところで今新しいプロジェクトが建設中でございます。これはアークティックLNG2プロジェクトと申すもので、本邦では三井物産殿、あとJOGMEC殿が上流に入っておりますので御存じの方もいらっしゃるかもしれませんけど、二〇二三年からスタートするというプロジェクトでございます。このプロジェクトは、生産するLNGの八割をアジア向けに輸出するということを検討しております。それで、ヤマルと異なるのは、これは、北極海航路を東回り、これは原子力砕氷船のエスコートをもって通年に近い形で運航させようというような構想で立ち上がったプロジェクトでございます。
それで、ここにカムチャツカ、ムルマンスクとありますけど、そこに浮体式のLNG積替え基地を設置して、そこから砕氷LNG船でそこまで運んで、そこで普通のLNG船に積み替えるというところで進んでおるプロジェクトでございます。弊社は、このプロジェクトに砕氷船三隻参画ということが決まっております。また、この積替え基地のプロジェクトに関しても参画すべく、今ロシア側と話をしているところでございます。
先ほど北極海航路の航行には特別な訓練が必要だと申し上げたんですけど、ここでこの点について補足申し上げます。
弊社が運航している砕氷LNG船、最大二・一メートルの氷を割れるというところで航行できる仕様となっているんですけど、厚い氷ですね、薄い氷は前進して割るんですけど、厚い氷になると後進する、後ろで割るという設計になっております。これは、船の後ろ側の方が重いというところで砕氷能力が高いというところで、こういう特殊な仕様の操船となっております。
このような船の運航には特別な訓練が必要でございます。そこで、氷海航行を行うための経験が必要というところで、弊社の乗組員が、サンクトペテルブルクにあるナビゲーションシステムですね、そこでシミュレーターで訓練をした上で、また、これもロシアの協力を得まして、原子力砕氷船に乗せていただいて訓練して運航に備えたという経緯がございます。現在は、今、弊社の船、三隻動いておりますので、そこで訓練をすると。自社船での訓練が可能になっております。
また、弊社は、ロシア政府が主催する北極海航路評議会のメンバーとして、今まで三回評議会行われておりますけど、そこで北極海航路における安全運航担保又は北極海航路の発展に向けた取組などをテーマにディスカッションをしております。
弊社の今後の取組なんですけど、まず、こういうふうなLNG輸送で実績を上げてきたわけですけど、今後は、ほかの貨物に関しても、我々、自動車を運んだり、ドライバルク、石炭とか鉄鉱石を運んだりしておりますけど、そういうほかの貨物についても夏の氷がない期間に北極海航路を利用しようかなというふうに考えております。また、資源輸送、LNGは既に始まっているんですけど、将来的には水素やアンモニアという脱炭素燃料の輸送にも取り組んでいきたいと考えております。
また、先ほどもちょっとお話が出ましたけど、JAMSTECさんですね、海洋研究開発機構さんが推進しておられる北極海研究船プロジェクトの準備段階へ、北極海経験がある海運会社として参加させていただいております。
最後に、北極海航路の今後の展望について申し上げます。
ロシア経済は、天然ガス、石油の海外輸出の依存度が高いということでございますが、欧州への、ヨーロッパへの輸出は頭打ちでございます。そういう状況の中で、アジアへの輸出強化ということがロシアが重点的に取り組んでいるところでございます。そういう状況の中で、ロシアが天然ガスをLNGという形で輸出、また、将来的にはCO2を排出しない水素、アンモニアという形で海上輸送によってアジアに輸出しようということを計画しております。
このように、北極海航路の開発はロシアが国を挙げて進めておりまして、今、ロシアの国家予算でエスコート用の砕氷船を整備、増強が進められております。今後の北極海の氷が減少して、原子力砕氷船も整備されれば、冬期を含めた通年あるいは通年に近い北極海航路の輸送ができるんじゃないかというふうに見込まれております。ロシアはそれを二〇二四年にやりたいと言っておりますが、弊社といたしましても、それはある程度現実的だろうなというふうに考えております。
最後になりましたけど、北極海航路の更なる発展のために幾つかコメントさせていただきたいと思います。
まず、アイスクラスの船の拡充でございます。北極海航路の更なる発展のためには、北極海航路を航行できるアイスクラスと呼ばれる砕氷船、耐氷型の商船船隊の整備が必要です。現在も、氷がない時期については、それ、アイスクラスを持っていない普通の船通れるんですけど、アイスクラスを持つことで北極海航路を通る期間が長くなるというようなことが可能になります。
二番目といたしましては、北極海航路のインフラ整備が必要になります。北極海航路が発展すると、地理的に日本は玄関口に位置しておりますので、大きな可能性が出てまいります。例えば北極海航路、航路上、燃料を入れるところがありません。そういう意味で、玄関口である日本で燃料補給を行うことは非常に合理的。燃料といいましても、今後、環境に優しいLNGとか、あるいは、将来的に水素、アンモニアを日本で補給するというような可能性は広がるんじゃないかなと考えております。また、今、北極海航路上に海難救助拠点が四か所あるんですけど、それの更なる拡充が求められます。
また、最後のところですね、北極海航路においては、海氷の厚さの予測とか航海に必要な技術の発展、そういうようなところを更に研究しなければなりません。そういうような意味で、今進められている北極海の研究船の活躍も大いに期待しております。
これで終わりになりますけど、北極海航路を通じて我々更に貢献していきたいと思っていますので、引き続きの御支援をお願いいたしたく、結びの言葉とさせていただきます。
本日はありがとうございました。