森下丈二の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(森下丈二君) どうも質問ありがとうございました。
まず、北極海なり極域の海洋生物資源の利用あるいは将来的な展望ということだと思うんですけれど、北極の方、簡単に申しますと、ほとんどの科学者、日本の科学者も世界の科学者もそうなんですが、近い将来あそこで経済的に有望な漁業資源はまず出ないだろうというのが結論です。
実は、南極では漁業が成り立っておりまして、日本の船も、日本国籍が一つ、それから南アフリカを中心に動いている船があるんですけど、その理由は、メロ、マゼランアイナメという非常に高い値段でアメリカ、ヨーロッパなどで売れる魚が捕れるんですね。ですから、その単価が高いということで経済的に成り立つわけですけれど、北極では、それはなかなか起こらないだろうと。
それから、南極と北極の大きな違いは、北極にはたくさんの先住民の方々の沿岸での活動があります。彼らからのデータなり情報というのもあるんですけれど、そういうところでの漁業というものもちゃんと尊重していかないといけないということがありまして、新しくできた協定も、柱としては、将来的にもし漁業ができてくるんであればちゃんと管理をしましょうという考え方に立ちます。
もう一つの柱は、実は科学的な調査研究の国際的な協力になります。むしろ、今の、現時点の日本にとっては、これの方が国益上も、あるいは本当に貢献できる度合いという意味でも大きな部分があるのかなと。
北極は、遠い場所のようでありながら、昨今の気候変動あるいは災害も、北極でどういう寒気団があるかとかどこに下りてくるかとか、あるいは北極地震につながる大地での状況が日本にそのまま来るというようなこともありまして、そういう研究に日本がしっかりとリーダーシップを取って参画するということは、漁業のみならず非常に大事かなと思います。
その観点では、日本は科学に強いということで言うんですけど、科学の現場を見ていると、特に教育の現場を見ていると、いわゆる博士号、PhDですね、理系のPhDに進む学生さん、日本人の学生さんが非常に減っています。うちでもそうですけれど、留学生の人たちがそういう席を埋めていくということ、それも非常にいいことなんですけれど、例えば魚類資源学者、新しい漁業法改正の下では非常に大事なんですが、絶対数が足りません。若い人がなかなか入ってこない、そういう状況もあります。
こういうものに対して、例えば北極だとかの海洋研究、一つの起爆剤あるいは関心を持つものとして若い人が関心を持っていただければ、それはまた、派生効果かもしれませんけれど、新たな海洋のフロンティアという形で科学にもフィードバックが来るのかなというふうに見ている次第です。
もう一つの御質問、鯨の方は、これしゃべり出すと大変なことになるんですが、一分、二分でやりますと、いろいろな交渉に私も関わってまいりました。難しい国際交渉いっぱいあるんですね。科学的に難しい、法律的に難しい、あるいは各国の政策が難しいというのがあるんですが、本当に難しい交渉は、最終的にそれぞれの国がよって立つところの価値観、倫理観が圧倒的に違う場合です。鯨はこれに当たります。
ですから、科学的に、ある種の鯨はたくさんいて、それを持続可能な形で利用できるということを証明しても、あるいは法律の解釈から、商業捕鯨モラトリアムというのがありますけど、あれには、十年の間に科学的な知見を見直してゼロ以外の捕獲枠を検討すると書いてあるんですね。そういう読み方あるいは経済的な観点、この辺りを全部説得しても、最後には、いや、鯨を捕ることは悪ですという立場がある限り、交渉が最後には成り立たない、こういう交渉が国際交渉の中で一番大変です。それを三十年以上やって、残念ながら共通点がないということで国際捕鯨委員会からの脱退ということをやったわけですが、これで捕鯨問題が終わるわけではありません。
捕鯨問題について、あるいは国際捕鯨委員会に参加することについて、私は二つの柱がある、あったというふうな言い方をしているんですが、一つは、厳然として日本の各地域で捕鯨を再開したいという御希望があるわけですね。これが科学的にも法律的にも問題なければ政府としてはそれをサポートするという当然のことがあって、これは、脱退という形で一つの答えを出したわけです。大変な身を切った決定ではありましたけれど、そういう形で答えを出したわけです。
もう一つは、海洋の生物資源、鯨だけではなくて海洋の生物資源を科学的、倫理観とか道徳観とか価値観の違いを超えて、いかに世界で科学的に法律的に、それを橋として話をして出口を見付けていくかという交渉、これができるかどうかというのが大きな柱であると思います。これはまだ残っているわけです。日本が脱退しても残っている。
ですから、日本政府は脱退後もオブザーバーとしてIWCに加わる、加わり続けるというかオブザーバーとして参加し続ける、科学委員会にもデータを出す、海洋生物資源、鯨のみならずほかの海洋生物資源を持続的に利用するということを支持するほかの国々と意見交換、サポートのし合いをしていくと、こういう決定をしたわけです。
ですから、むしろ、これからはその理屈、価値観、こういうところについてどう折り合いを付けていくのがいいのかということに焦点を当てたような、国際的な観点からすればですね、課題ということが言えるんだと思います。
もちろん、国内で再開された商業捕鯨をどう進めていくかというまた大きな課題がありますが、今日は、そこは御質問の対象ではないということもありますし時間の関係もありますので、むしろ、国際的な観点から見ればその二つの柱があって、特に、まさにパラダイム、理屈、考え方の問題というのがIWCが象徴しているもの、それについて日本は引き続き取り組んでいかなければいけないと、こういう認識にあるかと思います。
以上です。どうもありがとうございました。