染矢明日香の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(染矢明日香君) どうぞよろしくお願いいたします。(資料映写)
 NPO法人ピルコンの染矢明日香と申します。本日は大変貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、大学生のときに思い掛けない妊娠と中絶を経験したことをきっかけに、日本の性教育の問題に関心を持ちました。大学を卒業した後、民間企業の勤務を経て、二〇一三年に性の健康教育の普及啓発を行うNPO法人ピルコンを設立し、現在、年間約一万人の中高生や保護者の方を対象とした性教育講演ですとか、あとはウエブサイトでの情報発信、海外の性教育教材の翻訳等を行っております。
 本日は、性被害予防、性教育の必要性ということで、こういった構成で進めていけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 皆様、こちらの数字が意味するものは御存じでしょうか。十三歳になるんですけれども、こちらは日本の刑法で定められた性交同意年齢、つまり性行為の同意能力があるとみなされる年齢になります。多くの先進国では十六歳から十八歳に設定されていますが、日本では、こちら、明治時代に制定されたまま変わっていません。
 そもそも、この性行為に同意するかどうかという性的同意について学ぶ機会が子供たちにも大人にもありません。性的同意が取れている状態は、対等な関係性の中で言葉等によって明確に確認されるものです。沈黙や曖昧な返事は同意ではなく、不平等な力関係によって言わされた同意は真の同意とは言えません。
 今まさに日本の刑法の見直しが進んでいますが、性行為において暴行、脅迫や抵抗できる状態ではなかったことが証明できなければ犯罪と認められていないという課題があります。十三歳の子がレイプをされたとき、殴られたり脅されたり怖くて抵抗できなかったと証明できなければ、性行為に同意したとみなされてしまうのです。
 先日、中学校での講演で生徒さんから質問をいただきました。性暴力は性犯罪になりますか。この質問に対する答えは、同意のない性行為は全て性暴力に当たります。けれど、日本の刑法では全ての性暴力を性犯罪とすることはできないというふうになります。このような回答しかできない日本の現状が子供たちに申し訳ないと思います。
 性暴力の現状を見ていきますと、無理やり性交等された被害経験を持つ人は約二十人に一人の割合で、女性が多い傾向がありますが、男性にも被害者がいます。性被害に遭った時期を見ていくと二十代以下の若年層が多く、また、性被害に遭ったとき、警察、医療機関、支援機関への相談につながるのは僅かです。相談しないという回答が六割。相談できた人でも割合が最も多かったのは友人でした。けれど、若い世代の友人が必ずしも性暴力についての正しい知識を持っているとは限りません。若い人には限りませんが、周囲の無理解な言動でセカンドレイプ、つまり被害者の心の傷を更に深めてしまうという二次被害で苦しむ人もいます。
 SNSを通した子供の性被害は年々増加しています。こちらも事件化したものの数字なので、暗数を含めると膨大な数になるかと思います。
 そして、性被害に遭った子供たち自身が不用意で問題があるのでしょうか。是非その背景に目を向けていただきたいと思います。
 性と生殖に関わる様々な社会的リスクは連鎖し得るものです。子供たちの生きづらさの背景には家庭の不和や虐待があり、その背景にはDVや思い掛けない妊娠があるかもしれません。もし性被害から妊娠に至れば、産むにしても中絶にしても大きな負担が当事者に掛かります。生後間もない乳児遺棄の事件も後を絶ちません。
 性被害に限らずにはなりますが、日本の人工妊娠中絶件数は年間約十六万件、予定外妊娠の数は年間約六十一万件に及ぶと推計されています。中絶の罪悪感で苦しむ人は多く、ケアもまだ十分とは言えない状況です。このような負の連鎖を断ち切り、必要なケアや支援につなげていくことが必要です。
 性被害の予防策として、まずは性被害の発生を防ぐ一次予防として、何が性暴力に当たるのかという性的同意に関する知識普及が必要です。また、性的同意を学ぶことは子供たちを加害者にしないことにもつながります。さらに、万が一性被害が発生した場合、早期に発見し対応するための二次予防として、支援先、避妊の知識の普及、緊急避妊薬のアクセス改善、性感染症の検査、治療につなげること。そして、性被害による長期的影響を最小限に抑えるために、三次予防として、妊娠、性感染症やトラウマへの適切な治療、サポート、二次被害を生まない社会への啓発も重要だと考えております。
 続いて、コロナ禍において見えてきた諸課題についても触れさせていただきます。
 弊社では、性の健康に関する無料相談メールを助産師などと連携して実施しております。中高生向けの性教育講演のアフターフォロー的な位置付けで細々と始めた相談窓口ではありますが、二〇二〇年のコロナの休校措置が行われてから、十代の月当たりの相談件数がこれまでの約二倍に増加しました。特に多かったのは妊娠したかもしれないという相談で、十代の妊娠、避妊に関する相談に限ると、これまで約十件程度だった相談が月四十件ほどと約四倍に増えました。ほかの妊娠相談に関わる自治体であったりとかNPOの窓口でも十代の妊娠相談の増加の報道が相次ぎました。それも氷山の一角のように感じています。私たちが運営しているピルコンにんしんカモ相談というLINEの自動応答による相談サービスがあるんですが、こちらは月当たりの相談メッセージが一万件を超えるということもありました。
 若年女性のメール相談の典型的な相談事例としては、こちらのスライドにお示ししたとおりなんですが、一部組み合わせておりますが、生理が遅れて妊娠したか不安である、避妊が不十分であった、性被害を受けたなどの相談が相次ぎました。
 背景には、性に関する知識の不足、コロナによる不安増、休校による性交渉機会の増加などが推察されました。また、自粛期間中、ステイホームと言われる家が子供たちにとって安心、安全な居場所であるとは限りません。親との不和や同居している家族からの性暴力、またパートナーとの不平等な関係が見受けられる事例もありました。緊急避妊薬のハードルや、経済的困窮によって数百円程度で買える妊娠検査薬すら買えない、避妊具が買えないという声も見受けられました。
 私たちは、妊娠の不安に対し、緊急避妊薬が入手できないという声も多く聞いておりまして、二〇一八年から緊急避妊薬、いわゆるアフターピルのアクセス改善を求める活動をしてきました。そして、コロナ禍において、国際機関や他国では、家族計画はエッセンシャル、不可欠なものであり、緊急避妊薬はふだんの避妊の重要なバックアップとして、緊急避妊薬のアクセスを薬局での入手の検討を含め確実にというような勧告が出ている中、また若年層の予期せぬ妊娠不安の声が高まる中、今こそ声を届けたいと思い、産婦人科医や市民活動団体の代表者とともに、緊急避妊薬を薬局でプロジェクトというものを立ち上げました。
 こちらのプロジェクトでは、二十五の市民活動団体に御賛同いただいた要望書と約十一万筆の賛同者を得た署名を厚労相や橋本聖子男女共同参画担当大臣にお渡しさせていただきました。そして、昨年末、第五次男女共同参画基本計画の中で、緊急避妊薬を処方箋なしに薬剤師を介し薬局で得られるように検討する方針が盛り込まれました。市民の声が政治を動かしたと胸が熱くなるとともに、当事者の声や科学的根拠に基づき緊急避妊薬の市販化を具体的に早急に検討していくことが次の課題だと思っております。
 緊急避妊薬の国内外でのアクセスを比較すると、日本では医師の診療、処方箋が必要で、価格も自由診療で高額です。この年末年始には、緊急避妊薬の診療費として五万円を請求する医療機関もあったと聞いています。一方、世界の約九十か国では緊急避妊薬が薬局で販売されており、価格も安価で、若者には無料で提供する国もあります。
 高額過ぎて買えない、人目も気になり産婦人科には行きづらい、夜間や土日祝日は病院がやっていない。なぜこんなに日本では緊急避妊薬が手に入りづらいのかという声を多くいただいています。私たちが約千五百名に実施したアンケート調査では、緊急避妊薬の入手にハードルがあると答えた方は九六%でした。
 緊急避妊薬に関する厚労省の検討会の中で、若い女性は知識がない、日本では性教育が遅れていて適切な使用ができないという発言もありました。しかし、こちらのスライドでもお示ししているとおり、WHOでは、全ての女性及び少女には緊急避妊にアクセスする権利がある、そして、アクセス改善によって性的リスク行動は増加しないと結論付けています。また、妊娠は女性だけの問題なのでしょうか。妊娠には同じ数の男性が関わっており、男性とともに、そして社会全体で考えなくてはいけない問題です。
 もし緊急避妊薬が薬局で買えるようになったら、悪用や不適切な使用につながるのではという懸念の声をいただくこともあります。しかし、その一方で、既にSNS等を通して安全性の担保できない海外製の薬が売買されているという現状があります。先日も、当時十三歳の少女が、避妊薬を譲ることを条件に四十代の男性から児童買春をさせられたという事件が起きました。この容疑者はネットで避妊薬を入手したと言います。背景には、緊急避妊薬、避妊薬の海外との価格差、入手しづらさがあると感じています。
 性教育が先という声もありますが、性教育の充実を待っていてはいつまでも救われない人がいます。知識を持っていても、入手できる環境がなければ知識は生かされません。安全に入手できる正規ルートを増やすこと、そして、性教育や適切な情報の啓発によって正しい認知を広めることを両輪で進めていくことが必要です。緊急避妊薬のアクセスを適切な支援や情報を得られる機会として広げていくことも重要だと思っています。
 そして、性教育についても現状と課題についてお話しさせていただきます。
 元々、日本では、戦後、女子の貞操を守るとの観点から、純潔教育として性に関する教育が始まりました。八〇年代、エイズ患者が確認されたこともあり、九〇年代に性教育の関心が高まりました。しかし、二〇〇〇年代になると、そのバックラッシュが起こります。
 有名な一例として、知的障害のある子供に人形を使って体の仕組みなどを教えていた東京都立七生養護学校での事例があります。この学校で行われた指導が不適切だという都議会での批判があり、メディアでも性教育バッシングが巻き起こりました。東京都教育委員会は教員の停職や減給などの処分を下しました。その後、訴訟になり、この都議会議員や東京都教育委員会の対応は不当な政治介入であったと判決が出たものの、その影響が今も尾を引いている現状があります。
 二〇一八年に再び都議会において公立中学校で行われた性教育を問題視することがありましたが、このときは時代が少し変わっていました。様々な性情報が氾濫していることを背景に性教育は必要という声が多く上がり、私たちも二万名ほどの署名を教育委員会に届けました。翌年、東京都の性教育の手引が改訂されましたが、保護者の理解等の要件の下、学習指導要領を超えた内容も指導を容認するというような記載が加えられました。
 今まさに性教育は過渡期にあると感じています。
 現在の保健体育の指導内容は、小学校から始まって、このようにまとめられています。文部科学省が最低限の学習基準として定めている学習指導要領では、いわゆる歯止め規定と言われる記載があります。例えば、小学校五年の理科、人間が母体内で成長して生まれることを取り上げる際、人の受精に至る過程は取り扱わないとの記述があります。また、中学校の保健体育では、思春期における生殖機能の成熟を扱う際に妊娠の経過は取り扱わないとされています。これは一読して意味が取りづらいですが、要するに性交を教えないと解釈され、現場の教員からは性交や性行為はNGワード、どこまで具体的に教えていいか分からないと戸惑う声も聞いています。
 中学校では性感染症が出てきますが、性的接触により感染するという分かりづらい説明になり、避妊、中絶が扱われません。高校になっても性行為や性的同意の扱いはなく、教科書には中絶をしないためにも確実に避妊が必要と記載がありますが、避妊具の入手方法や適切な使用に当たっての具体的な解説は十分にありません。
 また、思春期になると異性への関心が芽生えるという記載があり、いわゆるLGBT、性の多様性についての解説はありません。性的マイノリティーの当事者からも、自分は存在してはいけないように思え、つらかったという声も多くいただいていることを申し添えておきます。
 私たちが高校生に行ったアンケート調査では、性や妊娠に関する知識が十分に定着していない現状があります。こちらの表でもお示ししているとおり、分からないを選ぶ子が非常に多いです。
 こういった中、性情報の主な情報源になっているのは、友人や先輩、インターネット、またアダルト動画、漫画といった不確かな情報源になっています。
 性教育の国際スタンダードと比較しても、日本の性教育が質、量共に不十分なことが明らかです。世界の多くの国では、性に関する教育が生物や健康の科目を中心にカリキュラム化され、毎年十二時間から二十時間程度、幼い年齢から人権教育として性に関することを幅広く、詳しく学ぶことになっています。国際スタンダードでは五歳から学習目標が設定されており、先進的なオランダの性教育では国の定める学習のカリキュラムはゼロ歳から始まります。
 国際スタンダードである国際セクシュアリティ教育ガイダンス、ガイダンスとも略されますが、ユネスコらが国際機関と連携し、世界中の性教育実践や研究調査を基にまとめられています。ジェンダー平等を基盤に幅広い内容をカリキュラムに基づき体系的に学ぶ点、科学的に正確な情報、多様な考え方に触れながら主体的、対話的に学ぶ点が重視されています。これは、他者を尊重しながら、自分で考えて自分でどう行動するかを選択できる力、性的自己決定力を育むことに注力されているためです。知識を身に付けるだけではなく、健康な選択のためのライフスキルを獲得し、健康と幸せの実現につなげていくことが目標として位置付けられています。
 こちらはガイダンスの内容の一部抜粋ですが、生殖だけではなく、ジェンダーに基づく差別や偏見の問題、性交渉における相手との同意といったコミュニケーションなども習うべき項目として取り上げられています。九歳から十二歳の学習目標で、性交、妊娠の確認方法、避妊が出てきますし、十二歳から十五歳で、性と生殖に関する健康に影響する権利や法律について議論する、また責任という言葉も出てきます。十五歳から十八歳で、意図しない妊娠は起こるもので、全ての若い人は必要なサービスや保護を受けられるべきであると出てきます。日本の学習指導要領は、このようなガイダンスに基づくものにはなっていません。
 では、家庭で性教育が十分にされているかというと、二〇〇七年の内閣府の調査では、家庭で性教育を行っている割合は二三%となっています。ガイダンスでは、全ての子供たちに性の学習機会が保障されるためには学校の役割は極めて重要とされています。家庭、地域とも連携し、学校を中心とする性教育の基盤づくりが求められます。
 包括的性教育によって、性的なリスクを減らし、自己肯定感を高めるという結論が出ています。性に関することを教え過ぎると関心を高めてしまうというような、いわゆる寝た子を起こすという神話から、科学と人権に基づく性教育が必要です。
 国内でも、例えば自治体単位での成功事例として、秋田県で医師会と教育委員会が連携し、中高生向けに性教育講座事業を実施しているという事例があります。元々、十代の中絶率が全国平均より高いものでしたが、事業を開始してから約三分の一に減少しました。このような自治体単位での成功事例を全国的に広げていくこともできるのではないでしょうか。
 また、最近の性犯罪・性暴力対策強化に関する政府の動きとして、令和二年度から四年度までの三年間を教育、啓発の強化を含めた性犯罪・性暴力対策の集中強化期間と決定されました。
 命の安全教育という名称で、性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、各段階に応じた取組が明示されたのは大きな一歩だと感じています。また、その一方で、指導する教員の十分な研修機会もどのようにしていくのかという課題もあります。実績のある民間団体と連携するなど、学習効果を高めていくための施策の必要性を感じています。
 これまでの課題整理と今後求められる取組をまとめさせていただきます。
 学校、家庭、地域での性教育の質、量共に不足している課題に対する施策として、包括的性教育を実現する学習指導要領の見直し、教員の研修機会の充実化、地域におけるPTAや多職種連携の強化が挙げられます。
 また、緊急避妊薬の入手のハードルに対して、薬局で販売するなど更なる入手の改善、避妊に関する周知の強化が求められます。
 最後に、性に関するトラブルを抱える子供の支援として、北欧や欧米で普及するユースクリニックのような若者に寄り添う相談機関、支援の充実、またその周知が求められます。
 子供は性について無知のままでいい、若しくは性被害や妊娠を女の子の自己責任とする社会の風潮を、私たち大人が変え、社会を変えていく必要があります。私は、日本の教育や医療の水準は非常に高いと思っていました。しかし、事性と生殖に関する健康と権利、セクシュアル・リプロダクティブヘルス・アンド・ライツの分野では非常に遅れていると言わざるを得ない状況があると感じています。女性たちの声を軽視してきた社会の責任は重いです。バイアグラは半年で承認されたにもかかわらず、低用量ピルの認可には日本は世界で最も遅いと言われる四十四年の年月が掛かりました。声を上げて変わっていくのが十年、二十年、四十年先では遅過ぎます。
 今の子供たちに、日本に生まれたから仕方ないよねではなく、私たちの声で社会をもっと良く変えていけると言える社会にできるよう、一人の母親としても、これから皆さんと考えていけたらと思っております。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 染矢明日香

speaker_id: 21474

日付: 2021-02-10

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会