末冨芳の発言 (内閣委員会)

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○参考人(末冨芳君) 皆さん、おはようございます。日本大学の末冨でございます。
 本日は、全ての子供を大切にする子供・家族対策、子供の貧困対策について意見を申し述べさせていただきます。
 私は元々、教育学、特に教育行財政を専門としておりますが、二〇一四年より内閣府の子供の貧困対策に関する有識者会議委員も務める中で、子供政策全般への専門的知見も深めてまいりました。また、参議院の文教科学調査室の客員研究員でございますので、このように参議院での参考人の機会を与えていただきましたこと、大変感慨深うございます。
 また、ヤフーオーサーとして記事も執筆しておりまして、相当数の国会議員や官僚の皆様にも児童手当の特例給付廃止に関する記事は御参照していただいていると仄聞しております。このテーマにつきましては、夏までに光文社新書より本を上梓する予定でございますので、いましばらくお待ちください。
 なお、本日は、この件はごく一部の内容にすぎず、前半では子供・家族対策、後半で子供の貧困対策についてお話をさせていただくことにいたします。
 資料は駆け足で説明してまいりますので、御確認なさりたいことは御質問いただけますと幸甚に存じます。
 それでは、スライドの二番に参ります。
 なぜ全ての子供を大切にすると銘打ったのかと申しますと、それは、日本の子供、家族への支援が低所得層に限定され過ぎており、所得にかかわらず困難を抱える子供や保護者たちに開かれづらいという課題があるためです。私が理事を務めております子どもの貧困対策センター、公益財団法人あすのばの貧困の当事者の若者たちは、貧困とは貧と困で成り立っており、困り事を抱える全ての子供、若者に貧困対策が開かれてほしいという願いを持っております。
 スライドの三番に参ります。
 言い換えれば、全ての子供を大切にする普遍主義、ユニバーサルアプローチが大事だということであり、その根底には、子供の権利を大切にし、実現をしていく日本への進化が急がれるという現状がございます。児童の権利条約には、所得により支援に違いを生じさせてよいとはどこにも書いてありません。むしろ、子供の権利が奪われている子供を一人もいないようにすることが児童の権利条約批准国である我が国におきましても当然重要なことであるはずです。
 スライドの五に飛びます。
 それでは、スライドの五以降は、本次の改正について意見を申し述べてまいります。
 まず、ゼロから二歳への保育ニーズの対応において、事業者拠出金の引上げと保育機会を拡充することは大変重要です。ただし、それのみでは出生数増への効果に限界があることも既に国内研究では判明をしております。また、子育て関係機関の連携協力の推進も、先ほど奥山参考人がおっしゃられましたように、特に重要だと思われます。
 じゃ、それでは、スライドの六に参りたいと思います。
 事業主の助成制度につきましては良い制度であろうと存じますが、効果は限定的かと存じます。子育てする女性の賃金、昇進、雇用機会差別という意味での本来の子育て罰、チャイルドペナルティーの改善のためには、女性を冷たく差別する悪質事業者を減らすことの方が重要だからです。国土交通省におきます自動車事業者のネガティブ情報の公開、検索システムのように、子育て罰企業の公開、検索ができれば、速やかな改善が可能になると判断いたします。
 スライドの七に参ります。
 児童手当の特例給付廃止につきましては、この場におられる議員の皆様で、これはすばらしい政策だ、是非実現すべきだとおっしゃられる方は誰もおられないのだと信じております。排除される子供と親への説明責任、不公平性、恐怖喚起など、多くの課題がございます。
 スライドの八に参ります。
 今次改正の問題点であります、特に子供の生まれ年や世帯間の不公平性の回避のためには、まず、児童手当の特例給付廃止は三歳入園時からの、幼児教育無償化フル適用世代以降の順次導入とし、高所得層も利用可能な支援制度を拡大していくことが重要です。
 例えば、日本学生支援機構の二種奨学金の所得制限撤廃は今すぐにでも可能でありましょうし、教育の無償化については虐待等の被害者の若者にも適用することもできるはずです。
 スライドの九に参ります。
 児童手当の廃止につきましては、財務省での議論で、夫婦合算年収九百十万円あるいはそれを下回る中所得層まで将来的には廃止の対象となるのではないかという恐怖喚起を子育て世帯、そして子供を持つことを考えている若者世代にも引き起こした可能性がある点で少子化対策と矛盾します。特に、該当する世帯は人口集住地域である都市部に集中しており、今後の出生可能性がある若い世代に対しての恐怖喚起という点で政策効果に大きな疑問を感じております。
 山田昌弘中央大学教授の指摘されるとおり、日本の若者は思慮深いリスク回避的な行為者であり、奨学金返済や、自分が、パートナーが奨学金返済をしなければならなかったり、子供に将来大学進学がさせたりできないんじゃないかというふうに、家計が苦しくなるようなら、そもそも結婚も出産も選択いたしません。個人の利益だけを考えれば、結婚しない、子供を持たないことが合理的選択になっている日本の政治、社会構造が非婚化、無子化を引き起こしています。
 それでは、スライドの十一に進みながら、このような日本のありようをどのように改善すればよいのか考えてまいりましょう。
 スライドの十一に参ります。
 そもそも我が国の少子化対策の限界は十年以上にわたって専門の研究者から指摘されてきました。増税忌避社会の中で、企業は女性親にも男性親にも賃金、昇進、雇用機会の不利を課し、与野党合意なき政策の迷走の中で、子供が忌避される日本社会を改善できないまま現在に至っています。子供や親に優しく温かい日本への進化がまだできていません。
 なお、山田昌弘教授もメンバーであります財務省財務総合研究所の分析は政府内における少子化対策検証としては現時点で最も的確なものであると私自身は判断しておりますが、官邸、内閣府、あるいは財務省内での横串を刺す能力が十分であれば本次改正のような法案には至らなかったのではないかとも判断いたします。
 こども庁等の議論もにぎやかに報道されておりますが、これを機会に、先進国最少、最弱の官僚、公務員機構を拡充し、適切な政策サイクルを実現いただけると、子供、家族のための政策がすぐに実現されていくはずです。
 スライドの十二に参ります。
 本次改正の混乱は、日本の少子化対策がブレークスルー、進化の前段階に到達したためでもあるというふうに見ることもできます。ここから、更なる支援の切下げなのか、それとも子育て支援が一層充実する優しい日本になっていくのか、固唾をのんで見守っているのが子育て世代や子供を持ちたい若い世代の現状であろうと判断いたします。
 スライドの十三番に参ります。
 後ほど是枝参考人の方から詳しくお話があるのではないかと思いますが、年収八百万円以上の現役世代では、そもそも受益が負担を下回り、その中でも子供を産み育て、日本の現在にも未来にも貢献しています。この層をないがしろにすることは日本の未来を閉ざすことでもあります。
 次のスライドに参ります。
 では、このような子育て世代を冷遇する日本をどのように変えることができるのでしょうか。私が本日示します答えは、少子化対策を子供・家族対策に進化させることです。出生率、出生数の回復を目的とする少子化対策は、私のような子育てする女性にとっては産めよ増やせよ政策であり、長年耳がたこになるほど聞かされており、正直うんざりしている面もございます。また、政府や企業の上から目線、男性目線なのではという批判があることは皆様も御承知のことかと思います。
 それに対し、日本の家族政策の専門家でおられる落合恵美子京都大学教授、衆議院与党参考人の秋田喜代美東大教授も共通して指摘しておられるのは、子供と親、家族の幸せを当事者目線で実現することが、結果として子供たちがこの社会にたくさん生まれてきてくれる近道だということです。
 スライドの十五に参ります。
 子供・家族対策に進化をするということは、本次改正のような切下げ型の政策ではなく、子供給付の総合パッケージ化を実現することでもあります。児童手当、年少扶養控除と教育の無償化を組み合わせつつ、全ての子供を大切にする方向で、必要な財源を与野党で合意形成しながら実現することが必要であり、そうできると私は信じています。政府の取組だけでなく、企業の変容、子ども・子育てに優しい日本の大人への意識、行動変容も必要でしょう。
 スライドの十六に参ります。
 これは、左側が中高所得層の声、右側が低所得層の声になります。所得にかかわらず、日本での子育てはつらく厳しいものになっております。私が本日この場に参っておりますのは、国会の場で声を上げることができない子供や親たちの声を届けるためでもあります。支援が受けられないので離婚を考えている、もやしや雑炊しか食べられない、この声を放置して、子供や親に優しく温かい日本、出生数や出生率が改善する日本になるのでしょうか。
 スライドの十七に参ります。
 私の友人の前田晃平さんという三十代のお父さんからの御著作も是非紹介させてください。日本のパパは先進国で突出して育児も家事もできていません。先進国で一番の制度が日本にあるにもかかわらずです。日本政府は私たち現役世代に対する投資をひたすらけちってきましたと当事者のお父さん自身が嘆いておられます。子育て自己責任論をなくし、支え合い、子育て投資をし、成長する日本への改善策も示しております。
 女性にとりましても、出産前後から子育て期は心身共に本当につらい時期であり、必要なのはお金の支援だけではありません。特に、リーダー層の日本の男性方には意識や行動を変容いただき、男女の子育て当事者、子育てや結婚を考える若者の政策決定参画や、政府DXを通じた迅速な当事者ニーズの把握や政策改善が政策の精度を上げるための必須の条件であると考えます。
 スライドの十八に進みます。
 子供・家族政策について必要な財源の例はこちらにまとめました。重要なのは、二〇一二年、教育の無償化実現の基盤となった税と社会保障の一体改革と同様に、子供・家族対策に必要な財源について与野党合意をいただくことです。それこそが、与野党にかかわらず、日本の未来そのものである子供に責任を負う国会議員の果たすべきお務めなのではないでしょうか。
 それでは、ここからは子供の貧困対策について申し述べます。スライドの二十にお進みください。
 平成三十一年、子どもの貧困対策法改正におきましては、参議院の内閣委員会でも非常に有益な議論と可決をいただき、大変ありがとうございました。改めてお礼を申し上げます。
 一方で、改善課題もございます。スライドの二十一に参ります。
 教育の支援につきましてはかなり前進いたしましたが、入学時、進学時の支援の切れ目の改善については引き続き取り組む必要がございます。
 スライドの二十二番に参ります。
 教育の前に、衣食住、ライフライン支援、また保護者の孤立や就労上の子育て罰の早急な改善も必要です。
 スライドの二十三に進みます。
 こちらの方は、子供の乳幼児期から成人期までの切れ目のない支援を図式化したものになります。奥山参考人が先ほどおっしゃられましたように、多機能型の支援が乳幼児期から子供が育ち社会で活躍するまで伴走し、プッシュをしながらですね、プッシュ型の支援につなげながら進められることが望ましいというふうに考えます。それが優しく温かい日本社会への転換を支える政策にもなります。
 スライドの二十四に参ります。
 我が国における子供の貧困対策として今すぐ実現すべきことをリスト化いたしました。児童扶養手当の二人親困窮世帯適用、児童手当の低所得世帯の高校生への延長は急がれます。そして、先ほども申し上げましたが、教育の支援では、受験時の切れ目の支援を、既に国は動き始めておりますが、自治体でも拡充いただきますよう、こちらにいらっしゃいます与野党の議員の皆様にもどうぞよろしくお願い申し上げます。何度も申し上げますが、困窮世帯の親、特に女性親への就労支援や賃金差別も改善が必要です。
 次のスライドに参ります。
 衣食住、電気、ガス、水道や、医療に事欠く子供たちが日本には一、二割程度おります。このような子供たちがゼロになれば、我が国の貧困対策は一定のゴールを実現できたことになります。そのためには、二十六ページに参りますが、一人親、二人親も包摂する子供の貧困対策が必要になります。世帯類型にとらわれない支援が必要です。
 スライドの二十七に進ませていただきます。
 近年の分析で明らかになっているのが、貧困層の中でも特に厳しいディーププア層と呼ばれる人々の存在です。簡単に計算しますと、我が国に十五万世帯のディーププア層が存在します。これらの世帯は必ずしも生活保護を受けられているわけではなく、どのような生活実態であり、どのような支援が必要なのか、解明と政策の充実が最も急がれる人々になります。
 スライドの二十八に参ります。
 子供・家族対策と同様に、当事者の声や参画を大切にした意思決定が必要となります。
 スライドの二十九番に参ります。
 なぜそのようなことを申し上げるかと申しますと、大人だけでは子供たちの実態は十分に酌み取れないということでございます。
 それでは、最後のスライド、三十に参らせていただきたいと思います。
 最後に申し上げたいのは、子供、若者や親の当事者参画とともに、政府DXの推進は、子供、保護者のニーズ把握やプッシュ型支援などの迅速な支援を支えます。子育てサポートのオンライン化も可能になるでしょう。ただし、国、地方共にデータサイエンティストは余りに不足しており、中央政府内ですら横串が刺さっていません。原因は予算と人員の不足にあります。子供の貧困対策の担当もこのコロナの中で一名減員になっており、大変体制が心配されるところでございます。新省庁の議論はとても重要なことですので、是非、与野党挙げて、子供・家族対策とそれに必要な予算額、公務員数の確保をいただくこともお急ぎください。
 最後に、これらの子供たち、それから親たち、家族の対策のために必要な予算と人員の確保を改めて強くお願いし、意見陳述を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 末冨芳

speaker_id: 830

日付: 2021-05-18

院: 参議院

会議名: 内閣委員会