正木義久の発言 (地方創生及び消費者問題に関する特別委員会)
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○参考人(正木義久君) 日本経済団体連合会、経団連でソーシャル・コミュニケーション本部長を務めております正木でございます。
本日は、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案に対する経団連の考え方を御説明させていただく機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
経団連ソーシャル・コミュニケーション本部でございますが、中西会長着任とともに生まれた部署でございまして、消費者や投資家など、企業を取り巻く様々な方々とのエンゲージメントを結び、ウエルビーイングを実現するということを使命としております。
デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会にも、経団連の会員企業でございますプラットフォームの運営事業者のみならず、そこに出品する販売事業者、さらにはオンラインの取引を利用する消費者にとって望ましいものを目指す観点から、私が経団連を代表して参画して、意見を述べてまいりました。
私からは、本法律案に賛成の立場から、本法案の意義と今後の課題について考え方を述べたいと思います。
本法案の意義は、第一に、オンライン取引を広場で行うものから市場で行うものへ転換させたこと、第二に、まずは事業者をターゲットに規範を形成することを明確にしたこと、第三に、官民協議会を中心としたアジャイル型のソフトローとしたことだと思います。
第一の意義として、取引プラットフォームを広場から市場に転換したと申し上げた趣旨を御説明いたします。
近年、デジタルプラットフォーム取引は急速にその存在感を増しております。事業者や個人を含む様々な主体が様々な商品を販売でき、子供から高齢者までが買手となってボーダーレスかつ簡単に参加できるオンライン取引の場となる取引プラットフォームは不可欠な社会インフラとなってございます。とりわけ今般のコロナ禍においては、感染症の拡大を防止することが求められる中、非接触の巣ごもり消費が急速に拡大しております。
この参加しやすさという特徴はよく広場に例えられてまいりました。様々な方々がオンライン上のプラットフォームに集まって低廉なコストで好きなものを好きなように売り買いするのは、あたかも広場で行われるフリーマーケットのようなものだからです。その意味では、取引プラットフォームは広場の管理者程度の役割を果たすことが求められてきました。
その一方で、悪質な事業者や不慣れな消費者も参加しやすいゆえに、プラットフォーム上における消費者トラブルが増加していることも事実でございます。悪質な事業者は、消費者にとっても、真面目に事業を展開するほかの事業者、そして取引の場を展開するプラットフォームにとっても、排除したい言わば共通の敵でございます。
そこで、多くのプラットフォーム運営事業者は、広場の管理者の役割を超え、利用者が安心して便利に取引できる環境を整備するべく、日々、様々な技術を駆使し、創意工夫の下、対策を進めていると承知しております。昨年八月には、複数の大手運営事業者が共同でオンラインマーケットプレイス協議会を設立いたしまして、各社の自主的な取組状況を開示しているほか、消費者団体や消費者庁、経済産業省などとの意見交換を行うなどしております。
もちろん、証券市場のように、上場するのにも厳しい審査が必要で堅牢なシステムに守られた市場のようにはまだまいりませんけれども、オンラインマーケットプレイス協議会という名称が示すように、広場で行われているフリーマーケットからは一歩進めて、売手、買手が一定のルールの下で安心して取引のできる市場を形成する取組が進んできたと認識しております。
本法案は、こうしたプラットフォーム運営事業者を介在する消費者取引の市場を公に認知し、公正な取引の場として機能を発揮させること、適切なルールの整備を通じて安心して活用できるようにするものであると評価できるかと思います。取引デジタルプラットフォームを広場から市場に変える画期的な法案として歓迎しております。
本法案の第二の意義は、まずは事業者をターゲットに規範を形成することを明確にしたことでございます。
さきに申し上げましたとおり、オンラインの市場は事業者も個人も参加できる場でございます。とはいえ、これまで一個人が売手となることを想定した市場法制は例に乏しく、議論の蓄積もございません。一方、事業者が市場の参加者としてのルールに服する例は数多くございまして、その知識から情報の開示請求権などを制度化するということは妥当かと存じます。
検討会の中でも、個人が売手となる取引を規律できるかについて検討いたしましたけれども、個人に対して事業者を前提としている行政規制を及ぼすのは困難であること、取引当事者のプライバシーの確保が難しいということが課題となりました。これは、取引デジタルプラットフォームを介在するかどうかにかかわらず、慎重な検討の上で扱うべき問題かと存じます。そうした意味でも、個人からではなくて、まずは事業者をターゲットとする規範から着手するのは妥当かと存じます。
本法案の第三の意義は、官民協議会を中心としたアジャイル型のソフトローとしたことでございます。
デジタルプラットフォームの健全な市場を整備していく上で重要なことは、第一に、プラットフォーム運営事業者の自主的な取組とイノベーションを阻害しないようにすること、第二に、企業がちゅうちょなく消費者保護のための施策を講じられるようにそれを後押しすること、第三に、官民による情報や経験の共有とそれを踏まえた機動的なルールの策定や見直しが行われることだと考えております。
この点、本法案は、国の行政機関、プラットフォーム運営事業者の団体、消費者団体等により構成される官民協議会を設け、悪質な販売業者等への対応を協議し、各主体が取り組むべき事項を協議することとなっております。
例えば、新しい技術を活用した取引方法、約款に当たる取引ルールの定め方、新たな手口で市場を荒らす者に対してどう対処するのかといったことについて意見交換をしたり、機動的なガイドラインの策定をしたりすることが期待されます。
最近の研究開発現場のトレンドは、親会社から下請に一方的に仕様を流して製品化するウオーターフォール型の開発ではなくて、試作品を作ってから試しに使ってみて、その結果を踏まえてまた改良するアジャイル型の開発へと移っております。
市場草創期のデジタルプラットフォームにおいても、関係当事者の創意工夫を生かして変化のスピードの激しいデジタル分野で試行錯誤をしながらルールを形成していくためには、一方的、硬直的なハードローによるのではなくて、アジャイルなソフトローを用いることがぴったりだと思います。
最後に、本法案の今後に残された課題として認識しております論点を三点述べたいと思います。
第一の課題は、本法案第三条によれば、プラットフォーム運営事業者は、販売業者に対して、必要に応じて身元確認のための情報提供を求めることとなっております。また、本法案第五条に位置付けられました販売業者に係る情報の開示請求権が行使されました場合、消費者が不正の目的ではなく一定金額以上の金銭債権の行使を目的としているのかなどをプラットフォーム運営事業者が判断した上で、第三条で確認した身元情報を提供する仕組みとなっております。
プラットフォーム運営事業者が入手する販売業者の身元情報は、中小零細の事業者にとっては開示される情報が個人情報と同等のものになることも想定されますし、また、特に海外の販売業者の場合、どのように真正性を確認すればいいのかといった問題もございます。少なくとも国内の事業者について、どのような確認をすればプラットフォーム事業者としては十分な身元確認をしたと言うことができるか等、公的なインフラの整備、適切なガイドが求められます。
また、プラットフォーム運営事業者が販売事業者の身元情報を提供してよいかどうか迷った際に、意見を求めることのできる行政当局の窓口の整備や判断のためのガイドライン、事例集等の提供といった方策を講じることが必要になってまいります。
第二の課題は、国際的な法執行に向けた環境整備であります。
消費者が開示請求権を活用して販売業者の情報を得たとしても、その所在地が海外ともなりますと、一消費者が求償するのは至難の業でございます。今後増えていく国際的な消費者取引について、海外の消費者行政当局と連携を深めていくということが重要になろうかと思います。
第三の課題は、悪質なレビューの問題でございます。
検討会でも議論され、経団連でも販売業者の方から何とかならないのかと相談の寄せられる問題でございます。検討会でも議論されましたけれども、自社が有利誤認、自社を有利誤認させるやらせレビュー、競合他社等をおとしめるような誹謗中傷などは、事業者にとっても消費者にとっても有害なものでございます。
一方で、本来のレビューには表現の自由が保障されるべきでございますし、また、消費者による建設的な批評によって市場を健全化すると、そういう効果が期待されているものでございます。
検討会でも結論の出なかったところであり、また、取引デジタルプラットフォームの範疇の枠外のオンライン取引全般に係る問題でございますけれども、今後の大きな課題だと認識しております。
終わりに、改めまして、デジタルプラットフォームを介在する消費者取引が健全に発展していくことが重要であることを強調したいと思います。
本法案は、デジタル空間で、販売事業者、運営事業者、消費者の全ての当事者が利便性を享受しつつ、安全、安心な取引ができる市場を形成するための第一歩であると考えております。
具体的な一つ一つの課題の解決には、本法律案に基づき設置される官民協議会や、冒頭御紹介したオンラインマーケットプレイス協議会での議論等を通じまして、日々進化するデジタルプラットフォーム取引の実情に即した解決策が見出されていくことを願っております。このような議論も踏まえまして、主体的に消費者保護の取組を行っているプラットフォームこそが消費者から選ばれ、信頼されていくと考えております。
以上が今回の法案に対する経団連の見解でございます。
御清聴、誠にありがとうございました。