福井次矢の発言 (厚生労働委員会)
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○福井参考人 おはようございます。東京医科大学茨城医療センターの福井と申します。
本日は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する考え方を御説明し、意見を述べさせていただく機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
私は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の会長としまして、昨年末に緊急承認制度の方向性に関する取りまとめを行いました。また、現在、東京医科大学茨城医療センターの病院長といたしまして、新型コロナウイルス感染症への対応等に日々従事しております。
ここでは、本改正案に賛成の立場から、主に三点、緊急承認制度の必要性と基本的考え方、緊急承認制度の運用基準、そして電子処方箋についての考え方等を申し上げたいと思います。
まず、緊急承認制度の必要性と基本的考え方についてでございます。
緊急時の薬事承認の在り方につきましては、昨年十一月から三回にわたり制度部会を開催し、医療関係者や製薬企業、学会、薬害関係団体の方々など、様々なステークホルダーの委員から御意見を伺い、緊急時の薬事承認制度の方向性について取りまとめを行いました。
導入するに当たって、基本的な考え方といたしましては、国民の生命と安全を守る観点から、緊急時におけるリスクとベネフィットを比較考量した上で、我が国の薬事承認について制度的観点から検討を行う必要があること。米国やEUでは緊急時において医薬品の供給を許容する制度が存在することなどに照らし合わせて、我が国においても緊急時の薬事承認制度を整備していく必要があると考えられること。他方、緊急時であったとしましても、安全性は通常の薬事承認と同等の水準で確認することを前提とした上で、有効性については、緊急時に時間的余裕がなく、多数の患者さんを対象とした十分なエビデンスが得られる検証的臨床試験ではなく、例えば、探索的な臨床試験成績等によって、推定される有効性に比して安全性が許容可能であり、医薬品、医療機器等としての使用価値が認められる場合には、承認を可能とすることが考えられます。以上のような整理を行っております。
今回の新型コロナウイルス感染症に関しましては、私自身、医療現場から見ておりましても、国民一人一人が医学的に合理的な予防的行動を取り、ワクチン接種、治療薬の開発と臨床導入が徐々に進み、重症化や死亡率は明らかに低下してまいりました。しかし、収束にはもうしばらくの時間が必要と思われます。今後ともこのような有事がいつ起こるか分からない状況下で、将来への備えとして、本改正法の速やかな成立、施行をお願いいたします。
次に、緊急承認制度の運用基準について申し上げます。
本改正法では、安全性は確認し、有効性は推定で承認可能としております。この確認と推定の考え方についても制度部会で議論がございました。薬機法では、申請に係る効能又は効果を有すると推定されるものであることを有効性の推定といい、申請に係る効能又は効果が、有効性の推定に比して著しく有害な作用を有することにより医薬品等として使用価値がないと推定されるものでないことを安全性の確認といっております。
審査プロセスでは、何よりも、透明性、公平性、国民への十分な情報開示が不可欠であります。本制度の考え方について、患者を含めて医療現場に分かりやすく伝えていくことが必要だという指摘も制度部会で何度もなされました。その際、そもそも、医療上の対応方法、治療やワクチンなどについては科学的に安全性が一〇〇%確認されるということはあり得ないということも含めまして、丁寧に説明していく必要があると思います。すなわち、リスクコミュニケーションを含めまして、幅広い周知広報をお願いできればと思います。
次に、電子処方箋についてでございます。
私が病院長を務めております東京医科大学茨城医療センターでは、急性期医療から慢性期医療までをカバーし、とりわけ大学附属病院としての高度な専門医療の提供を基軸としております。一方で、少子高齢化を背景に人口が減り始めたこの地域での医療提供の在り方、特に地域包括ケアへの関わりや総合診療の提供、研修の在り方は、重要かつ喫緊の課題となっております。
私は、こういった課題の解決にはデジタル技術の活用が不可欠ではないかと考えております。コロナ禍により、オンライン診療、服薬指導の導入など、デジタル化のトレンドは更に加速しています。現在、政府で取り組んでおりますマイナンバーカードの保険証利用や電子処方箋システムの構築といったデータヘルス改革は望ましい方向と考えております。
特に、電子処方箋につきましては、処方、調剤情報のリアルタイムでの情報共有、医師と薬剤師間のコミュニケーションの促進、重複投与等の抑制、データ入力の省力化といった、患者、医療機関、薬剤、それぞれにとってメリットがある仕組みであります。できるだけ多くの医療機関、薬局に導入されることで、その効果が高まり、確実になると思います。
来年一月運用開始に向けて、政府におかれましても、丁寧な周知広報やシステム改修支援など、御支援いただきたいと考えております。
最後に、医療データ連携について意見を申し述べさせていただきます。
今回のコロナ禍において、医療データ連携の必要性について語られることが増えたように感じます。私が座長を務めた制度部会においても、ワクチンの市販後安全対策について、自治体の予防接種データベースとなぜひもづけができていないのか、デジタル技術により、もっときめ細やかなフォローアップができるのではないかといった指摘もありました。
政府におかれましては、緊急承認制度の創設等様々な機会を活用して、リアルワールドデータの更なる活用について取り組んでいただくようお願いいたします。
英国では、国主導で医療情報の標準化や連携が進んでおり、病院や一般医といった多くの医療機関での情報連携が可能となっております。米国でも、VSDというワクチンのモニタリングシステムがありまして、CDCと全米にある九つのマネージドケア組織のネットワークで九百八十万人の国民をカバーして、ワクチンの接種歴や医療機関の受診歴等に関する電子情報を集約して、ワクチンの接種者と非接種者における有害事象の発生率を比較することが可能となっております。
他方、日本は、世界の中でも比較的、個々の病院での電子カルテ導入が行われましたが、その標準化や横の連携は大きく遅れており、情報共有が困難な要因となっております。将来的には、電子カルテ情報がマイナンバーカードを通じて関係者間で情報共有できるような仕組みができれば、本人同意を前提として様々な用途活用ができるようになり、日本の医療サービスの向上、創薬イノベーションの強化、患者の安全性強化につながるものと考えております。
以上でございます。今回の改正法案に対する私の認識でございます。
御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)