水口真寿美の発言 (厚生労働委員会)

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○水口参考人 事務局長をしております薬害防止のためのNGO、薬害オンブズパースン会議の活動を踏まえ、緊急承認制度について意見を述べさせていただきます。
 基本的な見解は配付いたしました薬害オンブズパースン会議の意見書に記載しておりますが、要点について、本日、お手元のスライドを用意いたしましたので、これを御覧になりながらお聞きいただければと思います。
 私どもの緊急承認制度に関する意見の趣旨は、四点でございます。
 まず初めに申し上げたいのは、緊急事態を想定した新しい制度を創設する必要性自体を否定するものではないということです。しかし、新制度を創設するに先立って、既存の早期承認のための制度の運用の問題点の批判的な総括が必要である、これなくして新制度を創設することには賛成できない、これが意見の第一点目です。
 早期に承認された問題のある医薬品として、イレッサ、ゾフルーザ、ステミラックなどを挙げております。また、最近の例では、アビガンをめぐる問題があります。
 アビガンは、季節性インフルエンザの治療薬として承認申請されましたけれども、有効性を示すことができませんでした。他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果が不十分な将来の新興のインフルエンザ感染症に備える医薬品として、流通に置かないという承認条件の下で、備蓄用として異例の承認が与えられたものです。
 承認当時の審議会では、委員から、季節性のインフルエンザに有効でないものがなぜ病原性の高いインフルエンザに有効なのか不明だとする指摘が相次ぎましたが、部会長が、保留という手も考えていたのですけれども、いつまで保留したらデータが出るか分からない、流通に置くわけではありませんのでと述べて、承認に至ったわけです。
 ところが、御承知のように、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言発令後の記者会見で、首相が、観察研究の枠組みの中で、希望する患者への使用をできる限り拡大すると述べて、厚生労働省もこれに沿った通知を出しました。結果、一万五千人以上に使用されるに至っています。
 しかし、公表されたデータからは、軽症者や六十歳未満の致死率がアビガン投与群の方が高いことが示されております。また、催奇形性のために禁忌とされている妊婦の使用例も出てしまいました。
 一方、新型コロナウイルス感染症に対する有効性については、その証明に重ねて失敗し、本年三月末には治験組入れが中止となりました。投入された税金は、令和二年だけでも、購入費百五十九億、設備費四十億です。こういうことが起きているわけですね。
 そして、関連する問題として、申請中の新型コロナウイルス感染症の治療薬をめぐる問題についても指摘しておきたいと思います。
 この申請薬については、開発した企業の社長が国会議員の先生方へのロビーを行い、これを受けて、大臣の経験者がツイッターで、効果が他を圧倒していますなどと期待を語りました。しかし、プレスリリースには、抗ウイルス効果はあるけれども、症状改善効果において主要評価項目を達成できなかったと明記されているわけです。それでも、企業は条件付早期承認制度を希望して申請し、緊急承認制度も選択肢の一つとする報道もあるといった状況にあります。
 アビガンは早期承認の制度を使ったものではないんですけれども、そういう制度がなくても、通知一本でこういうことが起きるということなんですね。
 アビガンのこのような批判的な総括もないまま、日本発の新薬となると、期待の余り前のめりになる、そういう環境の中で新しい制度が創設されることに危惧を抱かざるを得ない、これが批判的な総括がまず不可欠であると申し上げる次第です。
 私どもの意見の趣旨、第二点目は、承認ではなく使用許可にするべきだということです。EUAは使用許可にしております。
 承認薬は、国によって有効性と安全性を確認したものであるというのが国民の理解です。しかし、新制度において、有効性は推定でしかありません。また、安全性確認は通常の承認と同様に行うと説明されていますけれども、第三相試験の結果を待たずに市場に出すわけですから、安全性確認において限界があるということは明らかだと思います。
 それなのに承認薬とすれば、国民の誤解を生みます。特に、命に関わる緊急事態においては、患者の方々や医療現場に過剰な期待が生まれやすいということは経験的に明らかなのです。現にアビガンでさえ、使ってほしいという患者さんが多くいて、強く求められて医師が断れない事態が生まれたと聞き及んでおります。
 また、日本は、承認薬となると、これを取り消すということは大変ハードルが高いのですね。現に既存の早期承認のための制度において承認取消しとなった医薬品は一つもありません。
 一方、米国のEUAでは、許可を与えた後、オミクロン株の派生型に対しては有効性が低いということが分かったとか、追加で行われた大規模な臨床試験の結果を見るとメリットがリスクを上回るとは言えないといったような理由で、複数の医薬品の使用許可が取り消されています。その中には日本が特例承認した薬も含まれております。
 また、制度的にも、使用許可の方が、緊急事態の期間に限定して、例外的な対応であるということが明確で、理にかなっているのではないかと考える次第です。
 私どもの意見の第三点目は、仮に、使用許可ではなく承認を与えるという緊急承認制度、これを採用するとした場合に、現在の法案についての具体的な意見ということで申し上げます。意見は四点ございますけれども、本日はこのうちの二点のみ説明させていただきます。
 最初は、適用要件の明確化です。これには二つあり、一つは緊急事態についてです。
 厚生科学審議会では、米国EUAと同様、パンデミックとか原発事故、テロの緊急事態を想定した制度であるとして審議をしてきました。しかし、条文は、特例承認と同じで、非常に抽象的です。有効性について推定のみで承認を与えるという極めて重大な例外的制度ですから、緊急事態という危機的な出来事において適用がされるのだということを明確にするため、どのような場合かを具体的に例示し、より適用要件を明確にするべきであると考えております。
 適用要件の二点目、明確化の二点目は、代替性をめぐる問題です。
 法律案には、「当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと。」とありますけれども、この解釈について、厚生労働省は、他の複数の医薬品が承認されている状況において、治療の選択肢を拡大し、より安定的な供給に資する場合ならば適用が可能である、このように説明しています。
 確かに、既に承認薬があっても、供給が絶対的に不足している場合とか、禁忌とされる特定の集団があるといったような場合などは、適用が可能とすべき場合があり得ると思います。
 しかし、治療の選択肢の拡大、より安定的供給という言葉が独り歩きすると、不適切な拡大適用を招くおそれがあるということが気になります。具体的にどういう場合が想定されているのか、この法文の解釈について法案の審議の過程で明らかにしていただきたいと考えております。
 次に、期限内に行う正式承認に求める資料の件です。これは非常に重要な論点です。
 現行法では、十四条三項で臨床試験の試験成績を求めています。これに対して改正法では、これを試験成績ではなく、使用成績と規定するとしています。
 厚生労働省は、通常承認と同様に第三相臨床試験の結果の提出を求めるけれども、例外としてリアルワールドデータの提出を認める場合があるとしております。しかし、リアルワールドデータは、安全性確保のための探索的なシグナル検出ですとか、安全性確保のために適切に利用すれば非常に有用ですけれども、正式承認のための有効性の検証において臨床試験に代わるものではないと考えております。
 期限内の資料提出を経て正式承認されれば、その効果は通常承認と同じです。したがって、第三相試験の結果の提出を求めるべきです。そうでなければ、本当に有効な医薬品なのかどうか不明なまま承認薬として市販され続けるということになります。
 厚生労働省は、例外的にリアルワールドデータの提出を認める場合としてパンデミックが急速に収束して臨床試験の実施が困難な場合を想定しているようですけれども、パンデミックの収束は例外的対応の必要性をむしろ失わせるものであり、それがなぜ特別扱いが必要であるのかということが不明であります。
 医薬品は、一度市販されてしまうと、もうプラセボ対照の試験を組むことは倫理的に難しく、真の有効性を評価することが困難となります。リアルワールドデータであれば市販後であっても有効性が評価できるというものではないと考えております。緊急承認制度では、緊急承認申請の時点で第三相の臨床試験が走っていることが結果として求められていくことになると考えております。
 最後が、安全対策と救済制度の適用についてです。
 緊急承認制度は、知見の集積、有効性の検証などが不十分なまま承認を与える制度ですから、市販後安全対策と救済の適用も、それにふさわしい対応が必要であると考えます。
 この点で、やはり知見の集積が不十分なまま特例承認した新型コロナウイルスワクチンが問題を提起しております。
 新型コロナウイルスワクチンについては、審議会において死亡報告の九九%以上が情報不足により評価不能とされ、安全対策に生かされず、救済制度においても死亡例の救済事例はありません。
 情報不足というのは、当初、患者の状態についての情報が不足しているのかというふうに理解していたんですが、しかし、そうではなくて、経過が分かっていて、解剖されていても情報不足なんですね。つまり、その解剖した結果とワクチンの関連性について判断するための知見の集積がない、そういうことを情報不足といい、それによって因果関係評価が不能である、このように言っているわけです。
 知見の集積がないことを織り込み済みのこととして、それを前提として承認を与えたのに、安全対策や救済では知見の集積がないことを理由に棚上げしてしまうというのはバランスを欠いた対応であると考えております。
 厚生労働省は、安全対策にも集団の傾向として生かしているとか、救済制度は因果関係が否定できないものも救済していると説明していますが、これは実態の運用とは乖離した説明であると思います。
 緊急時の制度をどのように設計していくのか、バランスのよい制度を設計するというのは大変難しいことではありますけれども、どのような制度設計をする場合においても、透明性の確保、これが制度への信頼の基礎として不可欠であるということを最後に申し添えて、私の意見陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 水口真寿美

speaker_id: 11523

日付: 2022-04-12

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会