和田一郎の発言 (厚生労働委員会)
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○和田参考人 おはようございます。獨協大学の和田でございます。
専門はデータサイエンス、特に、人口減少社会における公共サービスの在り方について、データサイエンスに基づいて解決する。具体的には、首都直下型地震が発生した際の行政機能が低下した場合における子供と弱者の支援を、データサイエンスを利用した解決、危機管理、意思決定支援などを今研究しております。どうぞよろしくお願いいたします。
今回は、子供の視点から見た児童福祉システムのよりよい改善について、お手元に配付した資料を基に意見を述べさせていただきます。
大きな意見といたしましては、二つございます。
一つ目は、児童の意見聴取等の仕組みの整備についてです。
(一)にあります福祉領域における子供の意思表明支援の現状については、本改正案において、福祉のマクロ、メゾ、ミクロにおいて検討がなされております。注目すべきは、他国では福祉領域では失敗して現在も探索中であるミクロレベル、つまり、子供に直接関わる領域を重点的にしようとしていることでございます。
2になりますが、なぜ福祉領域でミクロレベルをやろうとするのかという疑問です。
直接子供に関わる、意見を聞き出すというのは、高度なスキルと専門性が必要です。また、意見聴取をしても、意見調整は別の機関が行うような仕組みを作成して対応が遅れることにより、裏切られた、諦めたという子供が出る可能性があります。
つまり、子供の意見を聞いた後に迅速に判断できなければ子供の失望感を招いてしまう可能性があるために、諸外国では、司法が直接子供の意見聴取を行い、迅速に支援をしている状況であり、福祉の立ち位置が混迷しているのです。話を聞くだけでしたら心理の人が適切かもしれません。なぜ福祉でやるのかという問いに答えられないのです。
もし、子供の声を聞けたとして、児相や施設に物申す機会を設けるのならば、その介入の根拠を法で明確にする必要があります。何の根拠もない方が家庭に入り、お気持ちをぶつけるだけのアドボカシーは無責任であります。
よって、結論としては、福祉によるミクロ領域では、研究による知見もなく、海外でもうまくいっていない意見表明について我が国で導入しようとするのは、前のめりで非常に危険であります。
そして、本法案にはアドボカシーの定義がありません。どこにも代弁という言葉がない致命的な欠陥があります。定義もなく、誰に対して代弁するのか、その結果どうなるのかというシステムについて書かれていないのです。非常に危険です。
これは、例えば、児相が子供の意向を把握、勘案して決定してきたと言われたら、それでよいという解釈にもつながりかねません。むしろ法文上、見ますと、意見表明は手段であり、関係機関との連絡調整が目的とされています。つまり、代弁という子供の視点がない、非常に不備に見られるところでございます。
次に、二ページ目の(二)、それでも福祉領域のミクロレベルで意見聴取をする場合、つまり、子供の直接介入、子供への聞き取りをする場合になったときの条件を説明いたします。
1の現状ですが、本案の基礎となった子どもの権利擁護に関するワーキングチームの議論を見ますと、次の三点の懸念があります。
一つ目は、KPI、重要業績評価指標の議論がないことです。
政策を検討するに当たり、KPIの議論は必須中の必須ですが、それがないのです。導入した効果、導入の悪影響、特にミクロレベルでは、子供に介入するので、子供への侵襲性がどうしても発生します。子供への人権侵害や不利益が起こった場合の責任体制などの記載がないのです。
こういうことをしますと、子供の視点がなくなるので、政策評価指標が、二〇二三年に三十人意見聴取して、翌年には六十人になって、よかったというような非科学的な評価になってしまうおそれがあります。
次に、二点目です。支援者を養成するプログラムについての科学的な記載がないのです。
現状で、我が国において、子供の視点に沿ったもので、科学的で、標準化されて、効果分析がなされているものはありません。プログラムの利点だけではなく子供への権利侵害を含めて分析するには、数学、統計、データサイエンスを駆使して科学的に行うことが必要なんですけれども、該当領域には存在しません。
標準化も効果も明らかでない、情熱だけの非科学的なプログラムを受けただけで支援員になってしまうおそれだけではなくて、そもそもこの支援員が子供の最善の利益にどう寄与するのかさえ説明できません。
次に、三つ目です。支援者のスキルについて記載がないんです。特定の資格も求めないと書かれています。これは、子供に対して無責任であるとともに、福祉の専門性の否定です。
例を挙げます。ワーキングの資料を見ますと、全ての一時保護所は子供から意見聴取をしているという調査結果になっておりますが、事例調査からは、意見聴取を受けていないという子供の意見も見られます。その大きな理由は子供の解離です。
子供は、不安定な状況の中で、解離などの心理的な状況もあり、日々、時には数時間ごとに意見や態度が変わるのです。また、ゆがんだ関係性を持つ親子を分離した場合などは、敵意もあり、意見も言わない可能性も高いのです。そのような子供たちに対応するには福祉においても高度なスキルが必要ですが、その専門性の記載がないのです。
つまり、前のめりで情熱だけでスキルもなく、学術的根拠もないまま、子供のアドボカシーは話を聞くことであると論点をすり替えて、話を聞けばいいという援助者側の視点になってしまうという、子供の視点の否定になっております。
それでは、2になりますが、どうすればいいのかです。二つ対策を述べます。
一つは、事業のKPIを設定して評価し続け、その結果を基に事業を改良させる必要があります。意見表明をした子供としなかった子供の背景、それぞれの予後を比較をして、しっかり分析して、効果を測定する必要があります。
次に、二つ目として、支援員を政策化するには、その育成プログラムを科学的に標準化するとともに、標準化ができるまでは、そちらの表にありますように、それぞれの国家資格のプロの活用が望ましいと考えられます。現状では福祉領域にはそれに該当する資格はなく、そのため、子供家庭福祉士等の議論があったと思うんですけれども、それもなくなったので、やはりこれはそれぞれの領域の国家資格のプロを活用した方がいいと思います。
次に、大きな意見の二つ目です。次のページに行きます。一時保護開始時の判断に関する司法審査の導入についてでございます。
こちらは結論から先に言います。
それは、児童相談所は捜査機関でないため十分なデータが入手できず、リソース不足もあり、一時保護状の作成ができないことが想定されます。よって、司法が主体的に情報収集、アセスメントを行い、子どもの権利条約にのっとった司法審査を行うべきという意見です。
1の現状を見ますと、本改正案からは、裁判所が一時保護状を審査するに当たり、どの程度の証拠を要求するのか不明です。つまり、ガイドラインも何もないのです。そして、もし裁判所が検察に求めるレベルの証拠資料を求めるのならば、それは不可能です。
その理由として、次の2の、子供の意向を聞き取るについての課題を三つ挙げます。
課題一は、児相は十分なデータを所持していないです。
児童相談所は捜査機関ではありません。それを前提として、児童虐待対応は、少ない情報で将来を予測して判断をする最高難度のソーシャルワークです。そもそもデータが少ないというのが前提なのです。
課題二は、一時保護状には空欄が多くなる可能性があるため、裁判所から過度に追加資料が請求されるおそれです。
子供の視点から考えると、解離やトラウマの影響のさなかに、法で想定する七日間で、それらを考慮した一時保護状を作るのは最難関であり、児相の業務圧迫です。そして、少ない情報のため、裁判所から追加資料請求、子供の聞き取りを再び求められる可能性があります。それは、児相の業務圧迫だけではなく、子供の視点からは再被害などの懸念があるため、行うべきではないと考えられます。
課題三は、児相に全て責任を負わせるシステムになる可能性があるです。
司法審査を基に、一時保護は適切でないという判断がなされて、児相が従って家に子供を帰したところ、重大事故が起こった場合などが想定されます。このような場合、児相側の調べが足りないというような言及をせず、あくまでも司法が決定したものであり、司法で主体的に原因分析をして、児相が収集すべき情報はどのようなものか提示していただきたいと思います。
これらの課題の理由として説明いたします。
学術的には、我が国のように、虐待の受付、受理、介入、保護、措置、家庭支援を一つの福祉機関が行うことは適切ではないのです。司法と役割分担しているのです。しかし、現状はそうではないので、児童福祉法で可能な提言をいたします。
次のページ、提言、子どもの権利条約に合った司法関与の実施です。
改正案では、児童相談所の聞き取りだけで司法審査となっています。改正案への提言としては、提案一、裁判所は児童相談所に追加資料を請求しないこと、提案二、司法審査の影響については裁判所が主体的に対応すること、提案三、司法審査の基準は他国の司法アセスメントシステムを参考に作成することを盛り込むことです。
これら提案を実施する対応策として最適なのは、詳細な一時保護の要否条件、つまりガイドラインを司法で作成することでございます。
児相の情報は欠損が多い状態です。しかし、裁判所には膨大なデータがあって、それは福祉と本当に比較にならないほどあるのです。このデータを基に一時保護の要件を作成して、児相の欠損のデータから未来を予測して主体的に判断していただきたいと思います。
児相のデータが足りなくても、なぜ他国は司法が決定できるのか。それは、学術を取り入れて、足りない情報を既存データで浮かび上がらせるアセスメントを行い、子供を救っているのです。よって、他国では、司法が四十八時間とか七十二時間以内に保護の決定ができるんです。
このシステムには副次的効果があります。国連子どもの権利委員会のやり取り議事録からは、我が国は子供に関するデータの収集と分析が足りない、データを政策立案のために活用するよう勧告されていますが、我が国はそれに真摯に回答できない状態が続いています。
本システムによるデータ化を基に、一時保護のアセスメント、つまり、それが一時保護状を含めたガイドラインになりますけれども、これは、子供の人権に対する行為を数値化できることにありまして、政策科学として、国連にも十分説明できる根拠になります。アドボカシーの支援者育成もそうですが、政策をつくるには、科学的なデータがあって、そこから始まるということです。
よって、まとめとしましては、本法案は、児相だけでは子供の意見聴取、代弁ができないということなので、外部から支援員を導入しようとしていると同時に、司法審査では、子供の意見を聞かずに、児相だけの資料で決定しようとする、相反する矛盾があります。さらに、アドボカシーの定義そのものの代弁という言葉が法案にもなく、ただ意見を聞くだけなので、技術も専門性も必要性がないという、福祉の専門性を否定している制度でございます。援助者の前のめりの視点だけで、子供への影響や効果などを検討しないシステムについては、再考を願いたいというのがまとめです。
ありがとうございました。(拍手)