福田弥夫の発言 (国土交通委員会)

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○福田参考人 よろしいでしょうか。
 御紹介いただきました、自動車損害賠償保障制度を考える会の座長で、日本大学危機管理学部長の福田弥夫でございます。
 この度の自賠法改正に関し、参考人として意見の陳述をさせていただく機会を与えてくださったことにお礼申し上げます。
 参議院でもお話ししましたが、本日は、日本で唯一、財務大臣に、お金を返してくださいと言うことができる会の代表として衆議院にもお招きいただいたかと思います。
 まず、我々の会は、法案賛成で一致しております。
 初めに、平成二十二年に結成された考える会の若干の説明をさせていただきます。
 民主党政権の事業仕分と埋蔵金発掘騒動の中で、交通安全特別会計がその対象となり、交通事故被害者救済事業が大きく後退するのではないかという危惧感から、交通事故被害者を守るために、当時の自賠責保険審議会委員を中心に結成されました。
 資料の一と二を御覧いただきたいと思います。自動車総連や日本自動車会議所、そしてJAFなどのユーザー団体や、被害者団体の代表、学識経験者などがメンバーです。
 平成二十九年からは、特別会計へ繰り戻されていない約六千億円の早期繰戻しを求めて、財務大臣、国土交通大臣などへ働きかけてまいりました。粘り強い活動の結果、平成三十年から繰戻しが実現し、昨年十二月には、大臣間合意で、向こう五年間の繰戻しが約束されております。しかし、元利合計で現在の残高が六千億円を超えており、将来にわたる被害者救済事業の継続実施への影響を心配しております。
 私は、平成十一年から運輸省の自賠責保険制度の在り方を考える大臣懇談会、そして、平成十七年から十年間は自賠責保険審議会、現在は国土交通省の自動車損害賠償保障制度の在り方を考える検討会のメンバーを務め、自賠法の改正に、二十三年、関係しております。
 今回の改正は、平成十三年の改正において積み残しあるいは将来の課題とされた点への対応でございます。
 簡単に平成十三年改正について御説明いたします。
 平成十三年改正前の自賠責保険は、国が六割の再保険を引き受ける形になっておりました。このような仕組みとしたのは、昭和三十年に自賠責保険が創設された当時は、日本の損害保険会社の財政的基盤が十分ではなく、リスクヘッジ及び被害者保護の観点からです。長い間、保険料の六割を国が預かり、保険金の支払いに際しても、その六割を国が払うという形で運用されてきました。四割は民間の保険会社です。
 保険は、保険料が入ってきても、それがすぐに保険金としては出ていきません。その間のタイムラグによって、資金運用による運用益が発生します。もっとも、ノーロス・ノープロフィットの原則の下に運用されており、損害率の検証によって、定期的な保険料の見直しが行われております。
 平成十三年当時、運用利回りが好調であったところから、特別会計へ約二兆円の運用益が滞留しておりました。また、損害保険会社の財政的基盤も昭和三十年当時とは比べ物にならないほど強固となり、再保険制度を維持する必要性が減少したため、平成十三年の改正で再保険制度を廃止することになりました。
 その際、この運用益をどう処理するかが大きな課題となりましたが、最終的に、二兆円を二十分の十一と二十分の九、すなわち、一兆一千億円と九千億円に切り分け、一兆一千億円はユーザー還元を目的として自賠責保険料への充当を行い、残りの九千億円を運用して被害者救済事業に充てることになりました。
 当時の試算では、約九千億円を運用すれば被害者救済事業に必要な資金は確保できると考えられました。一般会計への貸出しの元本残高は約六千三百億円でしたが、平成八年以降、毎年ではないのですが順調に繰り戻されており、短期間で全額繰り戻されるであろうと、心配もしておりませんでした。
 ところが、平成十五年の五百八億円を最後に、我々が働きかけを行った平成三十年まで繰戻しはストップしてしまい、運用によって賄うはずであった被害者救済事業のための原資は切り崩されてまいりました。
 今回の改正で導入される予定の賦課金については、再保険制度を廃止した平成十三年改正に際しての衆議院及び参議院の附帯決議において、社会経済情勢の推移等を踏まえ、施行後五年以内の賦課金導入の可能性の検討と示されております。あれから二十年が経過し、この賦課金を選択する必要が生じたための今回の改正であります。
 自賠責保険について簡単に御説明いたします。
 この保険は、交通事故の加害者の賠償資力を確保することを目的として昭和三十年に制定された強制保険です。
 戦後の経済成長に伴い、モータリゼーションが進むに比例して、交通事故件数は増加し、死者数も増加しました。ところが、自動車保険への加入は任意であったために、加害者が保険に加入していないために十分な賠償能力がなく、泣き寝入りをせざるを得ない被害者が続出して、大きな社会問題となりました。それを解決する手段として、強制保険としての自賠責保険が導入され、被害者に対する基本的な保障を提供することになりました。なお、スタートしたときの保険金の上限は、死亡で三十万円です。
 その後の日本の経済発展とモータリゼーションの発展は先生方御存じのことで、日本の経済成長を牽引する産業の一つとして、自動車産業は日本が世界をリードする基幹産業へと大きく成長しました。自動車台数の増加とともに、不可避的に交通事故は発生します。そのため、ある意味で、交通事故の被害者は国の政策の犠牲者ともいうべき存在です。
 ところで、自賠責保険が誕生した頃は、歩行者が被害者というのが中心でした。しかし、車対車の事故が増加し、乗車中に死亡する被害者が増加してきました。いわば走る凶器型の事故から走る棺おけ型の事故への変容です。ここで、自動車ユーザーは、加害者にも被害者にもなるという位置に立つことになります。
 このことが、自動車ユーザーが負担する自賠責保険料を被害者救済事業にも利用することが許される理由です。
 自賠責保険は、単に加害者に対する賠償資力の確保だけではなく、被害者救済事業とセットになった、自動車ユーザーによるいわば自助、共助の仕組みだということです。自賠責保険と被害者救済事業は表裏の関係に立ち、このような自動車保険制度は比較法的に見ても例がなく、世界に誇ることのできる交通事故被害者救済のための制度であります。
 積立金を活用して実施されている自動車事故対策事業は、安定した運用益が確保され始めた昭和四十二年からスタートし、昭和四十八年に、自動車事故対策センター、現在の自動車事故対策機構が設置されてから本格化します。現在の被害者救済対策事業の柱は、重度後遺障害者への支援事業であり、療護施設の設置、運営、介護料の支給、訪問支援などが実施されています。
 私は、今後の自動車事故被害者救済対策のあり方に関する検討会の座長を務めましたが、これは、当時の赤羽国土交通大臣の被害者救済に寄せる強い思いによって設けられました。これまでの対策は、最重度の後遺障害である遷延性意識障害に遭われた方を中心としておりましたが、社会保障制度の変化や介護者の高齢化等を踏まえた、きめの細かい被害者救済対策の在り方について検討を加えました。
 報告書の概要は、一、療護施設の充実、二、リハビリ機会の確保、三、介護者となる家族の高齢化の進展等により介護が困難になった後、いわゆる介護者なき後への備え、四、事故後の支援、五、今後留意すべき事項から成ります。その中でも、私は、介護者なき後への備えが特に最優先課題ではないかと考えております。
 今回の改正は、被害者救済にとって大きな進歩です。それは、賦課金の導入により、これまでは附則として、いわば限りのある積立金を原資として、当分の間、実施するものとされていた被害者救済事業を、本則によって、恒久的に実施することとなり、この制度の安定的かつ継続的な維持が可能となるからです。
 なお、賦課金導入によって安定的な財源は確保することができますが、五点ほど指摘させていただきます。
 まず、繰戻しの問題です。
 先ほど藤田先生も小沢さんも御指摘のとおり、一般会計へ繰り入れられていて、いまだ繰り戻されていない約六千億円は、自動車ユーザーが自助、共助のために支払った自賠責保険料が原資であって、税金ではございません。この法改正の当然の前提として、繰戻しの継続及び早期の返済があると考えております。
 次に、被害者救済事業の効果検証の必要性です。
 被害者救済レベルを下げることは決してあってはなりませんが、医療技術などの進歩によって新たな施策が必要となる一方、必要性や効果の乏しいものも出現することが予想されます。必要性や効果を定期的に検証する仕組みは必要だと考えます。事故件数や死者数は減少していますが、支援を必要とする重度後遺障害者は必ずしも減少しておらず、脊髄損傷、高次脳機能障害、あるいは被害者の遺族など、この制度による支援が必要な方はいまだに増加しております。
 三番目は、賦課金導入に際しては、新たな負担を自動車ユーザーに求めるわけですから、中間とりまとめにも記載があるとおり、負担者である自動車ユーザーの納得感が得られるようにすべきであることは言うまでもなく、自動車ユーザーへの丁寧な説明と広報などによる理解を得る活動が必要だと考えます。
 四番目として、繰戻し額とも連動しますが、賦課金のレベルは、自動車ユーザーに負担感を余り与えることがないレベルであるべきだと考えます。
 五番目として、今回の法改正は令和五年四月一日からの施行となりますが、実際の賦課金額等については、引き続き国土交通省において開催される検討会において議論されることが予定されており、そこで慎重な議論がされることを望むとともに、三点目にお話ししたとおり、負担者となる自動車ユーザーの納得感、理解を得ることが、本制度を真に維持していくには必要だと思います。
 最後に、私と一緒にこの会を立ち上げた桑山雄次さんを紹介いたします。
 桑山さんは、交通事故に遭われた遷延性意識障害の息子さんを二十五年以上も自宅で介護されています。高校教師の職も、介護のために辞めました。桑山さんの最大の心配は、介護者なき後の問題です。これはなかなか結論が出ない問題ですが、そう言っているうちにも時間は経過し、状況は悪化していきます。
 先ほど申し上げましたように、交通事故の被害者は、国の経済的繁栄の犠牲者とも言えます。一刻も早い対応が必要です。時間は余り残されてはいません。
 以上をもちまして、私の意見陳述とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 福田弥夫

speaker_id: 23397

日付: 2022-06-03

院: 衆議院

会議名: 国土交通委員会