野々山宏の発言 (消費者問題に関する特別委員会)

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○野々山参考人 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会で幹事を務めております野々山でございます。
 今日は、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 日本弁護士連合会では、この消費者契約法につきまして、これまで様々な提言等、あるいは立法に対して取組をしてまいりました。この法案につきましては、お手元の資料にありますが、令和四年二月二十八日に、消費者契約法の改正骨子案に関する会長声明というところで大枠の意見を述べさせていただいております。
 本日、私の意見は、この意見に沿っておりますけれども、これを超えるものがありまして、これは個人的な見解ということで御容赦願いたいというふうに思っております。
 今回示された法案についての率直な感想を述べさせていただきますと、非常に残念であるというふうに思っております。期待されたものから比べると非常に不十分だというふうに考えております。
 まず、何が不十分かと申しますと、第一には、やはり今回の改正の法案に求められてきた社会の要請に十分応えていないという点が挙げられます。
 一つの要請は、超高齢社会における被害の存在であります。
 これまでも度々挙げられておりますけれども、高齢者の自宅売却トラブルというものがあります。資料をつけさせていただいております。
 それから二つ目には、保険金を使った自宅修理トラブルというのがあります。これは、保険金を使って自宅が修理できるということで高額な自宅修理工事を契約するわけですが、結局保険が下りなかったり、あるいは保険が下りても多額の手数料を取る、半額ぐらいを取っていくという事例もあります。そういう中で、結局自己資金を相当数出さなくちゃいけないということになる。これは、よく分からない中で高齢者の方が被害に遭っております。
 それから三つ目には、令和元年に発覚しました生命保険の高齢者に対する不適切販売、経済的な合理性が全く欠けるような契約、あるいは再契約をさせるというものであります。この中では、販売員の人たちは、内輪では顧客をゆるキャラ、半ぼけと呼んでこれを販売していたということであります。
 こういう状況がある中で、超高齢社会における被害の存在をどうカバーしていくかというのが今回の一つのミッションであったわけでありますけれども、これに十分応えていないということがあります。
 それから、二つ目の社会的な要請は、四月一日から施行されております成年年齢引下げに伴う若年者被害の増加であります。
 これは予想されるということで、AVの契約強要の問題がありますけれども、これに限らないわけであります。未熟な中で、影響されやすい年齢の中で、しかも、いろいろな圧力に弱い立場の若年者が望まない契約をするということは十分あるわけであります。そういうものをどうやってカバーし、また、もし契約をしてしまったら、これをどう救済していくかということについてのミッションもあったわけでありますが、これにも十分応えておりません。
 改正法案は、極めて限定した場合にしか対処していないと評価せざるを得ません。高齢者の判断力不足、若年者の未熟な心理状態につけ込んだ勧誘に対する対応としては非常に不十分であるというふうに考えております。
 それから、二つ目の私の残念に思うところでありますが、これは今、河上先生の方からもるるお話をいただきましたけれども、民法の特別法である消費者契約法の隙間を埋めるという包括的な民事ルールとしての役割から離れた法律になりつつあるということであります。
 消費者契約法というのは、民法の特別法と位置づけられております。消費者取引市場の適正化の民事ルールを定めているわけであります。これは、特別法には規定できていないものの隙間を埋めていくルールを定めていくということになっております。行政規制とは異なる、消費者市場の行動指針となるような包括的な民事ルールとして役割を果たすべきであるということであります。
 様々な事業者、様々な消費者があります。様々な取引があるわけでありますが、こういう取引に対する公正なガイドとしての役割、そして、もしこれに対して不当な契約に巻き込まれてしまった場合には、これから救済できる、こういう規定でなくてはならないというふうに考えております。
 ところが、今回の改正案は、極めて限定した要件で限定した場面を断片的に対応しているというふうに感じられます。後追い立法ということになっている。また、この被害自体がどこから出てきているのか、どういう被害事例が実際にあるのかもよく分からないところで法案が出てきているように私は感じられます。
 消費者契約に関する検討会でも、法第四条第三項各号は、事業者の行為態様を個別的、具体的かつ詳細に定めており、文言の拡張的解釈等の柔軟な解釈により救済を図ることに限界があるということで、隙間を埋めるには限界があると。これの脱法的なものがあるということを言って、その限界があると指摘しているわけですが、この指摘した課題についても解決はしているわけではありません。むしろ課題を増幅させる、すなわち、個別の場面を限定したものを増やしていくことによって、課題を増幅させている結果になっております。
 消費者契約法の本来の役割である業法等の空白や間隙を埋め、取引当事者の行動指針となる包括的な民事ルールに向けた検討を直ちにしていくべきであります。柔軟な要件による受皿規定、損害賠償請求制度の導入、勧誘時に限定されない適用場面の検討など、考えるべきことはたくさんあるというふうに考えております。
 それから、三つ目の私の残念に思うところは、消費者契約に関する検討会報告書が求めた提案内容の多くが実現していないということであります。
 不当勧誘の規定として提案されておりました、困惑類型の脱法防止規定、消費者の心理状態に着目した規定、消費者の判断力に着目した規定という、三つの取消権が全て抜け落ちております。また、提案された不当条項規定や消費者の立証責任軽減措置の多くが抜け落ちております。私は幾つかの法改正に関与してきましたけれども、ここまで検討会、調査会の報告書の内容が抜け落ちているということは経験がありません。今回初めてであります。
 報告書があたかも両論併記であったことが抜け落ちた原因かのように言われておりますけれども、報告書の各論点の記載を見ていただきますと、「考えられる対応」という形で方向性が記載されております。そこを読めば、まず合意された結論が記載されているわけであります。なお書きとして結論がまとまるまでの出された意見が記載されており、両論併記でありません。これは検討の場ですから、様々な意見が出るのは当たり前であります。その当たり前の意見があるのに対して両論併記だと、それを記載したら両論併記だと評価するのは誤りであるというふうに私は思っております。
 多くの有識者の皆さんによる多大な労力と時間が費やされております。この検討会の内容がないがしろにされることは、その存在意義が問われるというふうに思っております。
 今後の法改正につきましても禍根を残すことになるというふうに思っております。検討会、調査会の結論を尊重した改正がされるべきでありますし、そうでないと、検討会、調査会の存在意義というものがないというふうに感じるほどであります。
 今回の検討会の結論で抜け落ちた論点、また、平成三十年の改正の専門委員会の方で積み残しの論点がありますけれども、そういう論点について速やかに検討して実現を図るべきだというふうに思っております。
 今回の国会の消費者契約法改正の審議に私として求めたいことが三点あります。
 一つは、改正案で実現されていない検討会の提言の中で、「消費者の判断力に着目した規定」というものがあります。これは、先ほど言った社会要請の中で極めて重要な内容であります。今からでも、今回の改正で是非実現をしていただきたいというふうに思っております。
 判断力不足につけ込む深刻な被害は日々生じております。検討会でもかなり詰めた議論をして、具体的な内容の方向性としてまとめております。是非この内容で実現をしていただきたいというふうに思っております。
 二つ目は、消費者契約法の、民法の特別法としての民事ルールにふさわしい内容を含んだ消費者契約法の抜本的改正の検討を直ちに始めるようにしていただきたい、そのことを附則に定めてもらいたいということであります。
 三つ目は、消費者契約に関する検討会及び平成三十年改正の際の専門調査会で示された論点の検討と実現をしかるべきときに図るように促していただきたいということであります。
 以上が、消費者契約法の改正のものであります。
 最後に、消費者裁判手続特例法の改正に関する私の意見を述べさせていただきます。
 消費者裁判手続特例法に関する検討会がありまして、その報告書が出されておりますが、今回の改正案は、その内容をほぼ踏まえております。より活用できる改正になるということで、これは早期に実現をしていただきたいというふうに思っております。
 ただ、個人的には、この消費者裁判手続特例法についても、日弁連としても様々な取組をしていますが、その中でも特に二点、今後の課題として是非考えていただきたいことがあります。
 一つは、第一段階で敗訴した、責任があると認められた事業者に広告、広告というのは消費者の方に知らせる内容ですね、それからあと通知費用とか、あるいは送金費用等の諸費用を負担していただきたい、そういう内容にしていただきたい。本来自分がやらなくてはいけない返済作業を消費者団体がやるわけですから、費用は負担していただきたいということであります。
 二つ目は、少額事件に対するオプトアウト制度、すなわち、包括的に消費者団体が代表して訴訟をして、嫌な人が抜けるという制度、これは、少額事件においてはそういう制度の検討を速やかに行うことを是非お願いをしたいと思います。
 以上が私の意見であります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 野々山宏

speaker_id: 32549

日付: 2022-04-12

院: 衆議院

会議名: 消費者問題に関する特別委員会