森亮二の発言 (総務委員会)

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○森参考人 御紹介にあずかりました弁護士の森でございます。
 本日は、お時間をいただきまして、ありがとうございました。
 電気通信事業法改正、今回の大きな柱三つのうち、利用者情報の規制についてお話をしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 下のスライド。本日、三点お話ししたいと思っておりまして、一つ目が、改正法の背景でございます。二つ目が、利用者情報規制のうちの一つの大きなものである外部送信のことについてのお話、それから三番目に、今回、利用者情報規制について二重規制ではないかという批判がありましたので、これについてのお話をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 おめくりいただきまして、改正法の背景でございます。
 下のスライド。緑、青、赤となっておりまして、一番、個人的法益、二番、社会的法益、三番、国家的法益というふうになっております。
 一番、個人的法益のところですけれども、利用者情報の規制ということですので、これがプライバシー等の個人的法益に深く関わるものであるということは大変重要なところではございます。ただ、これはやや見えやすい話でございますので、本日は省略をさせていただきまして、二番、社会的法益、三番、国家的法益についてお話をさせていただきたいと思います。二番の上から三つ目、健全な言論環境の確保、三番の一番上、健全な民主主義システムの確保のところでございます。
 利用者情報の問題がなぜ言論環境や民主主義システムに関わってくるのかということでございますけれども、おめくりいただきまして、次のスライドです。
 この問題が一番はっきり表れたのが、ケンブリッジ・アナリティカ事件であろうかと思います。既に御案内のところではございますが、二〇一六年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営を支援し、ブレグジットの国民投票で離脱派を支援したと言われている政治コンサルティング会社でございます。事件のてんまつは、クリストファー・ワイリーという元社員の方の告発で明らかになっております。
 二ポツですけれども、実に八千七百万人分のユーザーの情報をフェイスブック社から取得しております。フェイスブック社、現在社名変更されてメタになっておりますが、当時フェイスブック社ですので、本日はフェイスブックとしてお話をしたいと思います。
 この八千七百万人分のデータベースを利用しまして、心理学やアドテクノロジーなどの手法を使いましてプロファイリングを行って、操作しやすい人たちを選び出して操作したというふうに言われております。
 下のスライドです。CAとは、ケンブリッジ・アナリティカの略でございます。
 どのような誘導をしたのかということを先ほどのワイリーという人の著書から私が要約したものですけれども、フェイスブックから取得したユーザーのデータベースを用いて、まず誘導しやすい人を探し出すわけでございます。どんな人か。神経症で自意識過剰、陰謀論に傾きやすい、衝動的に怒りに流される、そんな人でございます。
 これに対して、ターゲティング広告、コンテンツのレコメンド、そういったことを使った働きかけを行います。
 どんな働きかけかといいますと、具体的には、フェイクグループ、これは同社がつくった人為的なグループですけれども、○○郡愛国者とか、私は愛国者といったもっともらしい名前がついておりますが、そこに誘い込んでいろいろ議論をしまして、エコーチェンバーの効果で集団として先鋭化させるといったことを行ったと言われております。
 エコーチェンバー、御案内のとおりですけれども、同じような傾向を持った人をフォローする、あるいは同じような傾向を持った人の発言をレコメンドされるということで、同じような傾向の人同士でつながって同じようなことを言い合ううちに、音が反響する小部屋のような状況になりまして、更にその傾向を強めてしまう、やがてはほかの意見に耳をかさなくなる、そういった現象であると言われております。
 おめくりいただきまして、次のスライドですけれども、このケンブリッジ・アナリティカの事件ですが、ここから、こういったリスクがあるのではないかというふうに言われているのではないかと思います。
 一つは、元々は選挙、投票に影響を与える目的であったわけですけれども、その中で、その集団の中で議論するあるいは外に情報発信をするときに、対立をあおるような意見、自国民と他国民、あるいは民族の違い、そういった間での対立をあおるような議論がなされてしまいまして、そこで社会の分断を招くということです。
 それから二番目に、選挙に影響を受けるということは、国の在り方に影響されてしまうということであります。
 また三点目、同社の背後に外国、アメリカ以外の国の影があったというふうにも言われておりまして、もしそうだったといたしますと、安全保障上の問題が生じるということでございます。
 こういった弊害が可能になったのは、これが実現されてしまったのは、詳細なユーザーのプロファイリングが可能なフェイスブックのユーザーデータベースがあったからですし、また、そのユーザーデータベースは外部送信によって作られたものと言えるのではないかと思います。外部送信のみによって作られたわけではないかもしれませんけれども、外部送信によって、人の心理に分け入っていくような非常に詳細なものとなったということは言えると思います。外部送信については後ほどちょっと詳しく御説明いたします。
 外部送信は、これまではプライバシーの問題として語られておりましたけれども、それのみならず、社会や国の在り方についての問題であるということがこの事件によって明らかになったのではないかというふうに思います。
 下のスライドは、先ほどのものと全く同じでございます。このようなことを前提に、健全な言論環境の確保、それから健全な民主主義システムの確保という立法事実を御覧いただけばいいのではないかというふうに思います。
 おめくりいただきまして、次のスライドでございますが、三番の上から二番目、要人に関する情報の悪用の防止というふうになっております。
 これはどのような事件で明らかになったかといいますと、下のスライドを御覧ください。LINEの個人データ管理不備の問題でございます。
 LINEは非常に多くの国民が利用しているサービスです。先生方のような要人もお使いになっていて、そこで重要なメッセージが外国に見られてしまうということになりますと、プライバシーの問題のみならず安全保障上の問題も生じるということになりますので、当然に適正な取扱いが求められるということでございます。
 このようなことから、おめくりください、次のスライドですけれども、上のところ、赤いところは不適正な取扱いに対する規制ということになります。LINEの問題で明らかになったところでございますが、方向性のところを御覧いただきますと、一番上のところですが、取扱いに関する社内ルールの策定、取扱方針の公表、二ポツですが、統括責任者の選任、そんなことを求めているわけでございます。
 それから下のところ、こちらは外部送信に対する規制、青いところでございますが、外部送信に関しましては、方向性のところを御覧いただきますと、情報を外部送信する際に本人に確認の機会を与えるというような規制を設けるということになっているわけでございます。
 下のスライドは、この上のスライドを私がちょっと分かりやすく強調したものでございますので、お時間のあるときに御覧をいただければと思います。
 おめくりいただきまして、次のスライドは、いよいよ外部送信の御説明ですけれども、下半分に二つ絵がありまして、左側がウェブサイトの外部送信、右側がスマホアプリの外部送信ということになります。本日は、クッキーを使うウェブサイトの外部送信ついて、左側について御説明をしたいと思います。
 おめくりください。
 上のスライドに、クッキーによるウェブ閲覧履歴の追跡というふうにございます。
 クッキー、御案内のとおりでございますが、これは、サーバーがブラウザーを区別、識別するためにブラウザーに割り振るシリアル番号のようなものでございます。一つのサーバーから見た場合、アクセスしてくる全てのブラウザーは、違う識別番号、違うクッキーを持っているということになります。
 本来、もう少し時間をかけて御説明したいところなんですが、下のスライドを御覧ください。こちらで外部送信の御説明をしたいと思います。
 私は毎日、この○×スポーツというスポーツ新聞のウェブサイトを楽しみに見ております。この赤いところに野球の結果とかサッカーの結果が書かれておりまして、白いところ、画像、ここに広告が表示をされております。
 実は、この広告の画像は、その○×スポーツのウェブサイトにあるのではなくて、これは広告事業者のサーバーから取ってきたものでございます。
 広告事業者は、○×スポーツサイトにお願いして、○×スポーツのウェブサイトに、タグと呼ばれる短いプログラムを置かせてもらっています。このタグを私のブラウザーが読み込みますと、このタグに、広告事業者サーバーに行って画像を取ってこいという指示が書いてありまして、私のブラウザーは、その指示を受けて広告事業者サーバーにアクセスをして画像を取ってくる。私は、そのことに気づかずに、あたかも全て○×スポーツのウェブサイトから来たものであるかのように、このピンクのところをその画像と一体的に見ているということでございます。
 私のブラウザーが私の知らないうちにタグの指示を受けて広告事業者サーバーにアクセスするときに、広告事業者サーバーは、私のブラウザーが誰の指図で来たのかということが分かります。○×スポーツのウェブサイトの指図で来たのねということが分かりますので、広告事業者サーバーとしては、私が○×スポーツウェブサイトを見たということが分かるわけでございます。正確に言えば、私のブラウザーが、クッキーナンバー何々のブラウザーが○×スポーツのウェブサイトを見たということが分かるわけでございます。
 このように、私、利用者が知らないうちに広告事業者サーバーによって私の閲覧履歴が取得されることが外部送信でございます。
 おめくりください。
 広告事業者は、○×スポーツだけではなくて、様々なウェブサイトにタグを置いてもらっておりますので、私のブラウザーがこのいろんなウェブサイトにアクセスするごとに、再び広告事業者のサーバーに私のブラウザーはアクセスをしまして、ああ、今度はウェブサイトAの指図で来たんだね、今度はウェブサイトBの指図で来たんだねということで、ウェブの閲覧履歴を蓄積することができます。
 広告事業者サーバーは、下のスライドを御覧いただきますと、このような形で、識別番号何々、クッキーの番号何々のブラウザーはこのようなウェブサイトにアクセスしてきたということを知ることができるわけでございます。そうしますと、ハワイ旅行に関心を持っている、フィットネスに関心を持っているということで、そういった人向けの広告を出すことができるということになります。
 おめくりいただきまして、これと全く同じ仕組みで、フェイスブックも、いいねボタンによってウェブの閲覧履歴を収集したわけでございます。この収集した閲覧履歴によって、先ほどお話ししましたケンブリッジ・アナリティカによる詳細なプロファイリングが可能になりました。
 ここではシンプルにハワイ旅行とフィットネスというふうにいたしましたけれども、様々なウェブサイトの閲覧履歴を取得することができますので、陰謀論に弱いとか怒りに流されるといった、そういった細かい、人情の機微に分け入った分析ができるということになります。
 下のスライドを御覧ください。これは、リクナビによる閲覧履歴の収集。リクナビの問題に関しても、同じようなことが行われたというふうに思っております。
 リクルートは就活サイトを中心にタグを置いていたかと思いますので、おめくりください、次のスライドのように、就活生がどの就活サイトを専ら見ていたのか、外資系の就活サイトを専ら見ていたということであれば、外資系への就職を希望しているのねということが分かるということでございます。
 このような外部送信、もちろん、プライバシー上も問題がありますし、先ほどお話ししましたような社会、国家の問題ということもありますので、これまでにも取組が行われてまいりました。
 おめくりください。
 これまでの取組ということで、一番上ですけれども、スマートフォンプライバシーイニシアティブ。総務省は、二〇一二年から、スマホのアプリによる外部送信につきまして、どのような情報を誰に送信しているのかということを明示するように、その透明化を図るように、ガイドラインを作って取り組んでいたということでございます。
 一つ飛ばしまして、一番下。やはり総務省ですけれども、プラットフォームサービスに関する研究会というところで、今度は、スマホアプリではなく、ウェブサイトの方の外部送信についても検討してきたということでございます。
 最後に、今回、利用者情報の規制について、二重規制であるという批判がありましたので、こちらについてお話をしたいと思います。
 おめくりください。
 まず、二重規制という批判がいま一つよく分からないというところがございます。一般論として、一つの対象事項に二つ以上の法律がそれぞれの法目的で適用されるということは普通に生じることでございまして、必ずしも悪いことではないということです。
 下のスライドですが、今回の御批判は、電気通信事業法ではなくて個人情報保護法でやるべきだというようなことであったかと思いますが、電気通信事業法の目的は、通信サービス利用者の保護と、通信の信頼確保ということにあります。
 先ほど大橋先生のお話にもありましたが、元々、通信、これらの目的のために、上の青いところ、通話やメールについては、これは通信の秘密によって守られていたわけでございます。こういったものが筒抜けにならないということは電気通信事業法の中心的な課題であり、通信の秘密のルールによって守られておりました。
 しかし、利用状況の変化によって、皆さん、通話やメールばかりするわけではなく、ウェブサイトを見る、アプリを利用する、こういったことが中心になったわけでございます。ところが、ウェブサイトは、外部送信によって閲覧履歴を第三者に把握されてしまう。アプリも、外部送信によってアプリに関する情報が外に出ていってしまう。これではいけないだろうということで、これについて、通信の秘密と同じように保護すべきではないかということが今回の規制の目的でございまして、これは電気通信事業法のど真ん中の課題ではないかというふうに考えております。
 おめくりください。
 逆に、個人情報保護法から見た場合にも、個人情報保護法は、他の法律による個人情報の規制を想定しているわけでございます。これは制定時の附帯決議なんですけれども、赤いところを読ませていただきます。「特に次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。」「医療、金融・信用、情報通信等、国民から高いレベルでの個人情報の保護が求められている分野について、」「個別法を早急に検討する」。
 個人情報保護法は、様々な個人情報、その中には重要なものもそうでないものもありますが、それを広く薄く規制する法律です。したがいまして、特に重要なもの、特別な性格のあるものについては、それは、それぞれの分野における法律において規制されることを当然に想定しているということでございます。
 下のスライドを御覧ください。
 歴史的経緯といたしましても、先ほど申し上げましたように、アプリの外部送信については、スマートフォンプライバシーイニシアティブで二〇一二年から、十年前から総務省が自主的な取組を促進してきたところでございます。
 また、総務省のプラットフォームサービスに関する研究会では、ウェブサイトの外部送信について、二〇一八年頃から検討してきたものでございますので、これを個人情報保護法でやるべきだという御批判は当たらないのかなというふうに考えております。
 以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 森亮二

speaker_id: 1795

日付: 2022-04-28

院: 衆議院

会議名: 総務委員会