原英史の発言 (総務委員会)
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○原参考人 おはようございます。原でございます。
政策シンクタンクの運営のほか、政府では、国家戦略特区ワーキンググループの座長代理などを務めております。本日は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
今般の電気通信事業法改正案に関して、更なる課題も含めて、意見を申し上げたいと思います。
まず、第一の柱である情報通信インフラの提供確保に関してです。
ブロードバンドのユニバーサルサービス化、これは推進すべきだと考えます。これまでの社会で、日本中、どこに住んでいる人であっても電話が使えるということが重要でした。これからの社会では、それ以上に、どこに住んでいる人でもインターネットが使えるということが重要になります。教育、医療、仕事、行政サービス、あらゆる場面でインターネットが基盤になります。インターネットがつながっていないので自宅でオンライン診療を受けられないとか、在宅勤務ができないとか、そういったことのない、取り残される人のいない社会にしなければいけないと思います。
一方で、ブロードバンドのユニバーサルサービス化によって全てが解決するわけではありません。これからのデジタル社会を支えるインフラはほかに幾つもあって、戦略的な整備、利活用を進めていく必要があると考えます。
例えば、配付した資料の中で三つほど点を打ってありますけれども、一つ目に、通信と放送に関してです。これまで別の法体系で、それぞれユニバーサルサービスとされてきていました。
放送の分野では、NHKは、放送波をあまねく受信できるようにする義務があり、民放さんは、対象地域内であまねく受信できるよう努める、努力義務が課されているということでした。
通信が電話の時代にはこれらは明らかに別々の話だったわけですが、ブロードバンドをユニバーサルサービスにするということであれば、ブロードバンドを放送にも活用すべきであると考えます。社会全体でインフラの維持、運用を効率化して、放送インフラの維持、更新に要しているコストの低減を更に図っていくことが重要だと思います。
それから、二つ目の点ですけれども、5Gインフラの整備、ビヨンド5G技術の開発などは、これからの国の競争力に直結します。事業者任せではなく、国が戦略性を持って取り組むべきと考えます。
今後、5Gの本格的なサービス拡大に向けては、全国に基地局を整備していく必要があります。事業者ごとではなく共同基地局の整備、それから、送電用の鉄塔とか交通信号などを基地局に利用するといったインフラシェアリングも課題です。また、広い意味でのインフラとして、希少な資源である電波の帯域をいかに確保して、有効に活用していくかということも重要な課題であります。
それからもう一点、デジタル社会では大量の電力を使います。安価に安定した電力を供給するために、送配電インフラの増強、デジタル化も不可欠です。
デジタルの問題とそれからエネルギーの問題、これは所管している省庁も別々で、扱われている委員会も別々で、別の話のように捉えられがちですが、これらを一体的に整備しないとデジタル社会は機能しません。
それから、自動運転やドローンの活用拡大とか、さらに、空飛ぶ車とか、そういった普及に向けて、陸や空における新たなデジタル交通インフラの整備も課題になっていくと思います。海底ケーブル、データセンターなども課題です。
それから、資料では書き落としましたが、衛星コンステレーションによる通信網の確保、これもとても重要な課題だと思います。
先ほど、大橋参考人からも、ウクライナ情勢を踏まえて、強靱な通信ネットワークが重要であるという御指摘があって、これも全くそのとおりだと思います。現在、ウクライナにおいて何が通信元になっているかというと、スターリンクの通信網が国民の生活、それから国防も支えているわけです。これは安全保障の観点でも、大規模災害に備える観点でも、国で迅速に進めるべき課題なのではないかと考えます。
こうしたインフラについて、通信は総務省、エネルギーは経産省、交通は国交省といった縦割りではなくて、整合性を持って最適な設計を行う、これが重要だと思います。総合的なデジタルインフラの戦略を策定することが必要です。縦割りを打破するために、せっかくデジタル庁が設けられたわけでありますから、デジタル庁で担うべき課題ではないかと思います。
それから、第二に、安全、安心で信頼できる通信サービス、ネットワークの確保についてです。
まず、今後の課題として、規制体系の整理、見直しが必要と考えます。
今般の改正案を見ますと、実質的に個人情報保護法と重なる部分は多いという印象を受けます。これは先ほど森参考人から、二重規制ではないんだという御説明があって、これも全くそのとおりなんですね。電気通信事業の利用者保護と個人情報保護というのは目的が違っていて、重ならない部分があります。
これも全くそのとおりなんですが、一方で、この規制の中身として、求められている規制は、今回の法案でいうと、情報取扱規程の策定とか方針の公表、統括責任者の設置。個人情報保護法の下でこれまで求められてきたことと相当程度重なるというように思います。電気通信事業法と個人情報保護法の関係が不明確になってきているのではないかと思います。
これは、この電気通信の分野に限らず、経済社会の実態と規制体系とがずれてきてしまっている、この一つの表れではないかと思います。
デジタル化の推進に伴って、産業や経済社会の構造が垂直統合型からレイヤー型に転換してきました。一方で、国の規制体系は、かつての垂直統合型の社会に即した形で、縦割り規制、いわゆる業法と呼ばれる規制体系が多くの領域で取られています。縦割りの産業ごとに、事業者が縦割りの所管省庁から許認可や監督を受けて、そこの下でやっている限りは、消費者保護とか安全確保とかもろもろの問題が生じないという構造です。行政組織もそれに合わせて縦割りで構成されてきました。
この規制体系と経済社会の実態が多くの分野でずれてきていると思います。例えば、金融の分野ではフィンテック、それから、輸送の分野であればライドシェアとか、旧来の縦割り構造にはまらない新しいビジネスが生まれてきています。そして、旧来の規制体系の下ではこれが認められないとか、そういった様々な問題が生じてきている。
これは、日本だけではなくて世界中で起きていることです。規制体系のずれをいかに迅速に実態に合わせて修正していけるかということが、その国での新しい産業の創出やイノベーションの明暗を分けているということだろうと思います。
電気通信事業法の話に戻りますと、ここもやはり経済社会の実態とのずれが生じているように思います。
かつては、電気通信設備を用いる電気通信事業、これはごく一部の特殊な事業だったわけです。これを業法という形で規律をしていたというのが元々の電気通信事業法だと思います。しかし、現時点では、ありとあらゆると言っていいんでしょうか、多くのサービスが電気通信設備を用いてなされるわけです。これをもう業法という枠組みで捉えようとすること自体に無理が生じている、それが今回の改正案によって顕在化しているように思います。
むしろ、横断的な規制として、利用者の保護とか、信頼できるデータ利用の確保とか、競争環境の確保といった目的ごとに、どういった規制が最適なのか、これは個人情報保護法や独禁法などの既にある横断的な規制との関係も含めて、規制体系を再設計していくということが今後の課題なのではないかと考えます。
こうした規制体系の見直し、これはその先の行政組織の再設計も含み、様々な分野にまたがる課題です。これも、せっかくデジタル庁を設けられたわけですから、ここで進められることを期待しております。
それから、括弧二、二点目です。当面の規制運用として、透明性を高めて、業法にありがちな恣意的、裁量的な運用をなくすことが課題だと思います。
ありとあらゆるサービスが電気通信設備を用いてなされるようになったということに伴って、規制対象になる事業者の範囲は極めて分かりづらくなっているように思います。
総務省さんが四月に電気通信事業参入マニュアルガイドブックというのを公表されました。明確化していこうという努力は多とするのですが、残念ながら、これを見てもなお分かりづらいように思います。
これを見ていきますと、例えば、オンラインの会計クラウドサービスなんかは電気通信事業に当たるとされるわけです。これは登録や届出の対象ではありませんが、一定の規律の対象になります。
一方で、リアルの店舗を持っている、例えば銀行サービスに関してネットバンキングを導入する場合には、これは単に電気通信を手段として利用しているだけなので、電気通信事業に当たらないということになっているわけですね。そうだとすると、ネット専業で金融サービスをやっているところはどうなるのか、その境目はどこになるのか。少なくとも、私が見ている限りではよく分からないわけです。
これは、最終的には規制体系の見直しによって解決すべき課題なのかもしれませんが、少なくとも、当面の運用において、できるだけ明確化を図っていくことが課題だと思います。
それから、括弧の三のところです。三点目に、実効的な利用者保護規制を行うことが必要だと思います。
今般の改正案では、利用者に関する情報の外部送信について、利用者への通知又は公表などを求めています。しかし、この種の通知や同意は、現実には形骸化しているのではないかと思います。
様々なオンラインサービス、私も利用するたびに、情報取扱規程などを見てクリックしろと言われるわけですが、私自身は、正直なところ、ほとんど読んでいないです。ここにいらっしゃる皆さんはどうか分かりませんが、多くの方々が中身を確認していないのではないでしょうか。
こうした通知や同意取得、多くの場面で法令上求められていますが、結局のところ、行政や立法府の方々からすると、消費者保護のルールをちゃんと設けましたという形式を取っている。事業者の方からすると、通知や同意取得をちゃんとやりましたという形式は整っている。形式は整っているんですが、肝腎の消費者保護が置き去りにされているように感じます。より実効性を高める方策を検討すべきではないかと思います。
例えば、一案として申し上げれば、デジタルの技術的な仕組みを組み合わせれば、標準的なルールとは違う部分を分かりやすく、何か浮かび上がって明示するようにするとか、そういった通知や同意取得をもっと理解を容易にする、本当に利用者保護につながるようにするという余地があるのではないかと思います。今後の課題として更に御検討いただければと思います。
それから、配付資料では二枚目ですが、三点目、電気通信市場の公正な競争環境の整備に関してです。
今回の法案にあるMVNOへの卸料金の適正化などは、これは進めるべきことだと思います。
一方で、電気通信事業の公正な競争環境の観点では、まだ残された課題が多いと思います。
根本的には、電電公社民営化から四十年近くを経て、いまだにNTTは半官半民の組織であるという点、これはもう残された大きな課題の一つだと思います。
NTTは今もなお、NTT法に基づいて、総務大臣から事業計画の認可を受けて、様々な監督を受けるという企業です。そうした企業が、世界の情報通信市場で、熾烈なグローバル競争の中で本当に戦っていけるのか。こうした状態は、NTTとそれから競合事業者の方々双方にとって、市場において自由なビジネスを発展していくことの阻害になっているのではないかというように思います。そろそろNTT法を廃止して、NTTを完全民営化すべきではないかと考えます。
その際に、外資の取扱いは課題です。これは、むしろ横断的な規制として外資規制を入れたらよいと思います。
現行制度では、通信分野について、NTTのみNTT法に基づいて外資規制が課されています。電話回線が社会の基盤だった時代にはこれは妥当なルール設定だったのだと思いますが、ブロードバンドがユニバーサルサービス化されるという中で、NTTにだけ外資規制がかかっているということにむしろ違和感があります。経済安全保障の観点で必要な領域を対象に、実効的な外資規制を横断的に設定すべきではないかと考えます。
同時に、競争政策の強化、これも更に徹底していく必要があります。
ボトルネック設備や事業のドミナント性に応じた競争環境の確保は引き続き課題です。これは本来、独禁法を中心とした競争政策が担うべき領域であり、長年議論され続けている課題ですが、公取の機能強化なども更に進めるべきだと思います。
それから、競争政策として、国内では力の強いNTTと競合事業者との競争確保という視点もありますが、でも一方で、より強大なGAFAによる競争阻害の問題もあります。独禁法の運用強化、それから新しいルールの設定により対応していく必要があると思います。
以上、今回の改正案に伴って、更なる課題も顕在化してきていると思います。こうした課題にも是非お取り組みいただければと思います。
誠にありがとうございました。(拍手)