村山裕三の発言 (内閣委員会)

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○村山参考人 同志社大学の村山と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、長きにわたり経済安全保障に関わってきました研究者としての立場から意見を述べさせていただきます。
 レジュメに沿って話をいたします。
 一番目が法案の意義というところなんですけれども、まず、経済安全保障の日本にとっての重要性ということですが、日本は軍事力に制限をかけた通商国家であり、他国が軍事力で考えるところも、経済力、技術力で何ができるかを考えなくてはならないということです。
 これは、言葉で言うのは非常に簡単なんですけれども、実は非常に難しい作業です。といいますのも、ほかの国で、歴史的に見ても、このようなことを行った国というのは余りないんですね。しかし、日本ではこれに取り組まなきゃならない。それに当たって、この法案というのは極めて重要というふうに考えております。
 それは、三つあります。
 一つ目ですけれども、法律による制度化により、経済安全保障に中長期的に取り組める体制が整備されるということです。
 今までも経済安全保障の政策はありました。これはどういうふうにして対応してきたかといいますと、ほとんどが予算措置だけでした。例えば、九・一一テロ後、テロ対策機器の開発をやったんですけれども、これは既存の枠組みの中の予算をつけてやったということなんですよね。ということは、予算がなくなると終わってしまうということなんです。ところが、今回は法律になっていますので、中長期的に経済安全保障に取り組める。これは非常に重要と考えます。
 二つ目が、関係省庁に横串を刺す形で政府が一体として取り組むことが可能になる。
 経済安全保障ですので、経済と安全保障、これはいろいろな分野にまたがるわけです。したがって、こういう形で法律にすると、政府が一体として取り組める体制になるということです。
 三つ目です。日本の経済安全保障政策の全体像は、この法案に加えて、既存の安全保障貿易管理、外資規制、これは外為法ですね、それから国家安全保障戦略における経済安全保障の位置づけを合わせて、総合的に捉える必要があるということです。
 したがって、この法案というのは、まさに経済安全保障政策の途上でありまして、これは何としても国家安全保障戦略につなげていかなきゃならないということです。特に、その国家安全保障戦略においては、防衛産業技術基盤をいかに強化するとか、そういう具体的なことを書き込んでいかないと駄目だと思うんですね。それに行く道筋をつけたのがこの法案というふうに私は考えております。
 二つ目が、国際環境の変化と経済安全保障、今なぜ必要かということです。
 実は、グローバル化の時代には、この種の法律の必要性は低かったんですね。これはどういうことかといいますと、他国を自由貿易の輪の中に入れることが日本の国益に寄与していた。ということは、経済的な相互依存が進めば平和になるという考え方だったんですね。したがって、相互依存が進めば戦争のコストが高くなるから平和になるという、これが支配的な考え方でした。
 ところが、これはトランプ政権の頃から変わってきまして、懸念国に依存することは非常に危険なんじゃないかというふうに考え方の大勢が変わってきたんですね。
 それを踏まえてですけれども、国際環境の変化、米中の覇権競争、ウクライナ、ロシア問題などにより、日本の存在感を高めるためには、自由貿易を守りつつも、適切な技術・経済管理と技術育成を組み合わせ、戦略的不可欠性を高めることが必要な時代になったということです。
 この戦略的不可欠性というのはどういうことかといいますと、他の国から見て決定的に重要と思われる分野における国際的な競争力というふうに考えております。したがって、ここに日本がいないと絶対困るよ、そういう立場に日本が立つことは極めて重要であるというふうに考えております。
 したがって、こういう大きな国際環境の変化があって、この法案の重要性というのが出てきたというふうに私は考えております。
 それで、具体論ですけれども、私の専門である二つの分野についてコメントをさせていただきたいと思います。
 まず、重要技術の開発支援ですけれども、これは、四つの中でも私は一番重要性が高いというふうに考えています。特に、その戦略的不可欠性を確立するためには、これをちゃんと確立しないと駄目だということなんですね。
 それで、どういう順番になるかといいますと、まず、シンクタンクによる重要技術の特定があります。それから、その次に、協議会における技術シーズとニーズのマッチングですね。それから三番目が、経済安保重要技術育成プログラムによる予算措置。それから、社会実装、これは政府と民間の開発スパイラル、これは後で説明しますけれども、こういう流れの構築が必要というふうに考えております。
 実は、今若干混乱しているのは、順番が逆になってしまったんですね。最初にこの経済安保重要技術育成プログラムというのが出てきて、二千五百億だとか、それを五千億にするとかいう話が出てきましたよね。これはもう動いております。それで、今回の法案によって、協議会を設立するということが出てきました。それにプラス、シンクタンクをつくる。これは、完成するのは二、三年後ということですので、先になります。
 実は、一番最初に置かなきゃいけないのはシンクタンクなんですけれども、これはもう逆転しているということなんですよね。だから、何よりも早くシンクタンクを設立して、こういう流れを早くつくらなきゃならないということです。
 それで、もう一点重要なのが、政府と民間の開発スパイラルということです。
 これは、お金をつけて政府のニーズに合った技術を開発するだけではなくて、それを民間企業はマーケットに出して、それを製品化するということなんですね。製品化することによって、それがマーケットに回ります。それが、よりよい技術になるわけですね。そういうよりよい技術を更に政府が調達できるような形にするということで、政府と民間の間でスパイラルを回すということです。そうすることによって、これは経済にとってもいいし安全保障にとってもいい、そういう両立ができる、こういうスキームをつくるべきというふうに考えています。
 これは十分可能ですので、早くこういう体制に持っていってほしいというのが、この重要技術の開発支援ということです。
 二番目の重要物資の安定供給ということなんですけれども、これも非常に重要です。重要ですけれども、多くの部分は民間企業が、事業継続計画、BCPの一環として対処しているということなんですね。だから、これは企業がずっとやっているし、企業にはサプライチェーンの専門家もいるわけですよね。その中で、なぜ政府がここに関与するかということをはっきりさせなきゃならない。だから、民間だけでは十分ではない部分が当然あります。それは一体どういう分野でなぜなのかというのを、しっかりこれから考えていかなきゃならないかと思います。
 これは今の法案とはちょっと関係は薄いんですけれども、例えば防衛分野。これは国家安全保障戦略を策定するときには考えなきゃならないと思うんですけれども、例えば防衛分野は、装備品のサプライチェーンの中で、非常に重要な部分で懸念国に依存しているものがある。それで、何か起こったときに、その懸念国からの供給が止まってしまう。ということは、装備品が造れなくなってしまうわけですね。こういう場合を防ぐためには、絶対政府が関与しなきゃならないということですね。これがまず出発点としてあるんですけれども、それはどの辺りまで一体政府は関与すべきかというのをしっかりと考えていかなきゃならないというふうに思っております。
 いずれにしても、経済安全保障というのは、細部において経済的利害と安全保障的利害をいかにバランスさせるかというのが要諦になります。それで、場合によっては、できればこれを両立させるという形に持っていくということですね。先ほど言いました技術開発体制というのは、そういうことができる分野です。
 だから、こういう形で細部においていろいろな知恵を絞っていかなきゃならないというのが、この経済安全保障の特徴です。もちろん、その大戦略というのも大切かも分からないんですけれども、細部でしっかりと、経済と安全保障を見据えて、本当に専門家がここでバランスを取るようにしていくというのが、この経済安全保障の重要な部分というふうに考えております。
 いずれにしても、私は、この法案は極めて重要というふうに思っております。特に、経済力を安全保障のために使うというのが、こういう発想が今まで日本になかったわけですよね。これが実現することによって、日本の安全保障政策の一つの転換点になる、そういう重要な法案というふうに私は考えております。
 以上です。(拍手)

発言情報

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発言者: 村山裕三

speaker_id: 10917

日付: 2022-03-31

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会