野村武司の発言 (内閣委員会)

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○野村参考人 野村でございます。
 自己紹介につきましては、先ほど、肩書が長かったということもありまして、発言要旨の肩書をもって代えさせていただきたいと思います。
 基本的には発言要旨に沿ってお話をさせていただきますが、それ以外に資料を三つほどつけさせていただきました。
 まず初めに、政府及び国会におかれまして、今回、政府及び各党から提出されている法案、違いがあるとはいえ、子供政策に関して、子供権利擁護を中心として、新組織の設置及び基本法の制定に取り組まれていることについて、非常に意義のあるものとして敬意を表したいというふうに考えております。
 さて、その上で、私は、基本法のうち、立憲民主党の法案のみに規定されている子どもの権利擁護委員会、これは、与党又は一般の議論の中では子供コミッショナーという言い方で議論されていたと理解しておりますが、この子供コミッショナーという名称を使って、これについてお話をさせていただきたいと思っております。
 まず、名称についてですけれども、国連子どもの権利委員会は、総括所見などで、インディペンデントモニタリング、そういう言い方をしていますが、この仕組みは、児童の権利条約を批准している国の標準装備になっていて、各国によって名称が異なります。概してヨーロッパ大陸法系ではオンブズマンという言い方をし、英米法系では概してコミッショナーという言い方をしています。近隣のアジア諸国では、国家人権委員会の中の一つのセクションとして子供部門を置いていたりします。立憲民主党案の子どもの権利擁護委員会も同様で、これらは名称の違いであって、国連子どもの権利委員会では、これらを特に区別をしているというわけではありません。
 次に、子供コミッショナーを設置する根拠ということですが、しばしば、児童の権利条約に該当の規定がないという指摘を受けます。しかし、条約を批准した国は、条約四十四条に基づいて、報告審査制度の下に置かれます。五年に一度、国連子どもの権利委員会の審査を受けますが、そこで示された所見、総括所見と言ったりしていますが、誠実に実施することが求められます。
 国連子どもの権利委員会は、このインディペンデントモニタリングの仕組みを、子供の権利を促進し保護するものとして、条約締結国の中核的な義務、コアオブリゲーションズ、そういう位置づけをしています。そして、各国に対して標準装備としてこれを設けることを求めていて、多くの国がこれを設置し、我が国も子どもの権利委員会から一貫してその設置が求められているということについては、御承知のことと思います。
 なお、その数につきましては、発言要旨の三ページに記載させていただきました。
 次に、子供コミッショナーがどういう意義を持つのかということですが、「子どもコミッショナーとは何か」と題する提出資料の一にも書いてありますが、発言要旨にも載っけてあります。
 要するに、一言で言えば、子供の思い、考え、意見を届け、子供の最善の利益を図る、又はそれを促す組織というふうに言っていいかと思います。もう少し平易な言い方をすると、政府からはちゃんとした距離感を保った子供の代弁者ということかと思います。そして、具体的な活動としては、個別救済、それから制度改善、そして広報啓発ということに分けることができると思います。
 我が国の場合に、子供コミッショナーに当たるものが、子供のための相談・救済機関という形で、地方公共団体、とりわけ市区町村で取り組まれています。一九九九年の兵庫県川西市以来、本年四月現在で四十三の自治体で設置されていて、こうした自治体の相談・救済機関の取組をグッドプラクティスとしてまとめたものが提出資料の二になります。たくさんありますので、是非後で御覧いただければと思います。
 国が取り組む場合に、さきに述べた役割のうち、制度改善が重要だと思われますので、その点から一つだけ拾ってみますと、このグッド・プラクティス集の十八ページに西東京市の子ども一一〇番の家の事例があります。御存じのように、地域ごとに名称はいろいろで、西東京市ではピーポくんの家というふうに愛称がついていますが、このステッカーを協力員に家の前に表示してもらうことで、防犯意識を高め、子供が危険を感じたときに逃げ込める、子供の安全を確保する仕組みとして全国的に行われているものです。
 そこに、小学生の二人が、学校に行きたくないけれどもいさせてほしい、学校にも親にも言わないでほしいといってやってきた、そういう事例です。子ども一一〇番の家の協力員の方は大変困惑されて、子供といろいろ話をしながら、結局学校につないだんだけれども、あの対応でよかったんだろうかというふうに悩まれて、こういう困ったことがあったとして相談に来られたという事例です。
 地域ならではのささいな話のようでありますが、敷衍して申し上げると、そこには実は、大人がよかれと思って考える仕組み、つまり、大人が考える最善の利益と、子供が考える仕組みにずれが生じていて、そのずれがある場合に、それがゆえに、例えば子ども一一〇番の家であれば、肝腎なときに子供がそれを利用できず、そのことによって重大な事態、つまり権利侵害が生ずる可能性があるのではないかということで取り上げられた事例です。
 西東京市の場合、まだ結論は出ていないようですけれども、運営側のアンケートでは、当初の目的よりは広く子供の利用を想定して熱心に運営していることがうかがわれる一方で、対応の仕方にばらつきがあるというのも分かっています。
 それよりも、意外であったのは、子供からの意見を聞くワークショップというのをいろいろなところでやったんですけれども、その中で、子ども一一〇番の家の人も知らない人なので行かないであるとか、あるいは、重大なことでないことで行くのは失礼だというような意見があって、想定外の利用どころか、むしろ利用を控える意見が多くあったということです。
 提言はこれからのようですけれども、こういったずれを埋めていくということが制度改善の一つであり、コミッショナーの活動においても参考になるかと思います。グッド・プラクティス集では、ほかにも、先頃文科省からも通知が出されたと思いますが、校則の問題を取り上げた名古屋市の事例などがあり、多種多様です。
 いずれにせよ、権利侵害であるとか勧告であるとか意見表明であるといった厳しい用語が制度上は並びますけれども、実際にはこのように運営されているんだということを知っていただければというふうに思います。
 さて、国の仕組みとしてどのようなことが想定されるかですが、発言要旨の七ページに簡単にまとめておきました。
 これまで述べてきたことに加えて、国連子どもの権利委員会の総括所見、その実施状況のモニタリングは重要であるというふうに思われますし、自治体の子供相談・救済機関と連携をして、国レベルでの改善等を促すこともとても大事だと思われます。
 最後に、少し違う話をさせていただきます。
 我が国は未経験なのか、そういう話なんですけれども、実は私は、現在、内閣府の地方分権改革室にある提案募集検討専門部会というところの構成員をしています。地方分権は、地方分権改革推進法以降、数次にわたって法整備を、法律改正も含めて法整備を重ねてきました。かなり密度の濃い地方分権というところまでいきましたけれども、平成二十六年以降、何をやっているかというと、自治体からの提案を募って、これを、提案募集検討専門部会の専門家が提案を引き取って、地方の立場に立って省庁と折衝し、その成果を、基準の改正、政省令の改正、法改正というものにつなげています。毎年、閣議決定の後、それが行われています。つまり、地方の声を聞いて、地方の立場で省庁と折衝して、地方の仕組みをつくっていく、そういうすばらしい仕組みを我が国は持っているということであります。
 この在り方は、子供コミッショナーと共通するものがあるというふうに常々感じています。もちろん、子供コミッショナーの組織としてちゃんと整えなければいけないというのはそのとおりなんですけれども、子供の声を聞いて、子供の立場から省庁と折衝して、基準を変え、政省令を変え、法律改正を行い、子供の最善の利益を実現していく。同じです。地方分権でできて、子供の権利の分野でできないはずがないというふうに私は思っています。
 もちろん、この部会に所属している中でいつも感じることは、地方分権という論理だけで実現できないこともたくさんあります。子供という観点だけでは実現できないこともあるでしょう。それは子供の分野でももちろん同じです。しかしながら、子供の権利の観点から施策の実施状況をモニターし、子供の意見を代弁する形で子供の権利を地道に促進していく仕組みは不可欠だと考えています。これが子供コミッショナーに当たるというふうに考えています。
 どうぞ御検討いただければと思います。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 野村武司

speaker_id: 8210

日付: 2022-04-28

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会