山下一仁の発言 (農林水産委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○山下参考人 山下でございます。よろしくお願いします。
 今日は、こういう機会を設けていただきまして、大変ありがとうございます。先ほど委員長から忌憚のない御意見を言ってくれと言われたので、私も意を強くして、忌憚のない意見を言わせていただきたいと思います。
 私の発言する内容は二つあります。
 一つは、大きく農政の全般についての問題です。この大きく農政の全般の問題がいろいろなところで影響を与える、農地だけじゃなくて、輸出の問題とか、あるいは食料安全保障とか、いろいろなところに影響を与えているので、その話からスタートさせていただきたいというふうに思います。
 まず、資料の一ページ目にありますけれども、農政の目的とは何でしょうか。実は農家所得は、はっきり言って、もう向上されました。これはもう農政の目的として達成されたんです。その後、ただ、食料安全保障とか多面的機能、これは、農政が所得が向上した後に掲げた目標です。
 ところが、それをやるためには、水田を水田として利用するからこそ、多面的機能も発揮できて、農地を確保して食料安全保障が達成できるわけです。ところが、実際やっているのは何かというと、水田を水田として利用しない減反を五十年間も続けているわけです。
 その結果、何が起こったのか。次のページを開けていただきたいと思います。
 その上の方は、米の生産量はこの五十年間で半分以下に下がってしまったということです。こういうことを行っている国が世界にどこにあるんでしょうかということなんです。
 二ページ目の下を見ていただきたいと思います。
 世界の米の生産量は増えています。平均して三・五倍増えています。ところが、日本だけは減少している。これも、日本の財政赤字と同じように、ワニの口なんです。世界は上がっている、日本は下がっている。
 次のページです。
 単収です。空からヘリコプターで、あるいは飛行機で種まきしているカリフォルニア農業の米の単収の方が、日本で田植機で一本一本丁寧にまいている日本の米の単収よりも、何と一・六倍に上がっているわけです。一九六〇年のときは、中国の米の単収は日本の半分でした。もう抜かれました。
 先ほど豊田市の方が説明されましたけれども、実は、私、このデータをトヨタの内山田会長以下のトヨタの技術系の幹部の方に説明したことがあります。そのときに、彼らが一様に驚きました。何と言ったかというと、日本の自動車業界は世界一生産性が高いと思っている、日本の米も同じだと思っていた、ところが、何ですかこれはということなんです。日本は、減反をすることによって、米の品種改良、増産のための品種改良を抑制してきたわけです。それが先ほどのワニの口になっているわけです。
 では、今、食料安全保障とか、食料危機が起こるんじゃないかと言われています。輸入が途絶したとき、どうなるか。必要な米、終戦直後の配給からやると、今、一千四百万トン必要なんです、今の人口からすると、少なくとも。
 ところが、今年、農水省が提示した米の生産目標数量は六百七十五万トンなんです。これは私にとっては物すごくショッキングです。私が農水省に入ったとき、一九七七年、昭和五十二年の米の生産量は千三百十万トンなんです。それがもう半分ぐらいになってしまった。これでどうするのか。ほとんどの国民は飢えます。
 でも、減反を廃止して、今の水田面積全てに米を作付して、単収もアメリカ並みの単収にすれば、一千五百万トン生産できます。一千五百万トンの生産して、どうするか。価格は下がります。国内で七百万トン消費します。残る八百万トンは輸出するんです。
 食料危機が起こったらどうなるのか。輸入も、小麦もトウモロコシも牛肉も輸入できません。そのときには、輸出していた米を食べるんです。ということは、平時のときの輸出というのは、危機のときの食料備蓄の役割を果たすわけです。これは金がかかりません。
 日本は今、政府は、トウモロコシとか小麦とか大麦とか、あるいは米の百万トンの備蓄なんかをやっています。でも、輸出を八百万トンすることによって、危機のときの備蓄の役割を果たす。このとき、一千五百万トン、国内の消費量が七百万トン、米だけで自給率は二一四%になるわけです。これだけで、カロリーベースの五〇%の目標は優に達成できます。でも、何でそれができないんでしょうかということなんです。
 次のページを見ていただきたいと思います。
 農地面積。食料安全保障の基礎は農地です。だから農地改革をやったんです。でも、その農地がどんどんどんどん減少されてきました。今は四百四十万ヘクタールあります。終戦直後、六百万ヘクタールあります。それでも飢餓が生じたわけです。それでも小学校の校庭を芋畑にしたわけです。
 今、危機が起こると何が起こるか。石油も途絶します。肥料も農薬も、農業機械も動かせません。単収は下がります。そうすると、一千万ヘクタール以上必要なんです。そうすると、ゴルフ場をいかにして農地に転換するか、そういうことを、真剣に有事法制を考えておかないと駄目なんです。でも、そんな取組は日本政府のどこにもないわけです。今、危機が起こったら大変なことになるわけです。
 農地の問題に移らさせていただきたいと思います。
 農地の問題、全体の話なんですけれども、農地の流動化が進まない理由、二つあります。
 一つは、ゾーニングがちゃんとやっていない、転用規制もいいかげんだ。日本の農地法というのは、高度成長時代、日本三大ざる法と言われたんです、三大ざる法の一つ。残念なことに、三大ざる法のうち二つは我が農林省にあったわけです。もう一つは食管法です。でも、食管法はなくなりました。でも、残念ながら農地法はまだ残っているということでございます。
 だから、ゾーニングがちゃんとしていないから、転用期待を持ってしまうわけですね。したがって、貸しておくよりも持っていた方が、いざ転用させてくれといったときに、人が現れたときに転用できるというので、なかなか人に貸さない、こういう状況になるわけですね。
 もう一つは、減反で米価を高くしているので、零細な兼業農家も滞留してしまったということです。農地が出てこないわけですね。
 だから、基本的な問題は、農地が出てこないところに問題があるわけです。ゾーニングしかり、減反政策しかり、農地を出してこないと駄目なんです。
 では、何をやるのか。次のページを見ていただきたいと思います。
 実は、これで私は農林省を辞めたという感じなんですけれども、何を言ったかというと、減反を廃止します、そうすると米価が下がります、兼業農家は農地を出してきます。これに対して、主業農家に限って直接支払いをすれば、主業農家の規模が拡大します、コストが下がります。収益が上がるので、兼業農家に払う地代も上昇するわけです。みんながハッピーになるわけです。
 その下のグラフを見ていただきたいと思います。
 規模が拡大するとコストが下がります。ところが、一ヘクタール未満、一番左の方です、一ヘクタール未満の都府県の平均的な米農家の収益というのはマイナスなんです。だから、マイナスのところを、ゼロ円の米所得に十戸掛けようが、二十戸掛けようが、一万戸掛けようが、ゼロはゼロなわけです。ところが、三十ヘクタール以上の農家に農地を集積すれば、その人だけで一千六百万円近くの所得を稼いでくれるわけです。それを地代としてみんなで分け合った方が農村の活性化になるわけです。
 つまり、構造改革をするということは明るい農村をつくることになるわけです。それが、ちょっと省略しますけれども、次のページで書いているところです。
 これはずっと昔から言っていましたけれども、実は、二〇一一年の三月に、JA、農協が全く同じ主張を、このときだけで、その後は何もないんですけれども、やっているということを御指摘させていただきたいと思います。
 大きな話の最後なんですけれども、農政の総合性が失われたということなんです。
 戦前の日本農業の二つの課題がありました。一つは、零細農業構造の改善です。これは残念ながら今日まで続いています。もう一つは、小作人の解放です。小作人を解放する手段として、もちろん農地改革をやりました。その前に実は農林省は、食管法を利用して、小作人米価を高くして地主米価を低くして、事実上、地主制を解体していたわけです。つまり、食管制度を利用して小作人の解放をやっていたわけです。
 そういう総合性が今の農政にはなくなってしまった。減反は減反、農地は農地、農村振興は農村振興、みんな総合性がないわけです。
 根っこは米価の問題があるわけです。農地を流動化するためにも、米価を下げて、農地を出す必要がある。農村振興のためには、明るい農村にするためには、構造改革が必要だ。輸出促進するためには、当然価格競争力を持たなければならない。それから、食料安全保障のために農地を確保するためには、農地を農地としてフル活用する必要がある。
 それから、高い米価で消費者に迷惑をかけているわけです。三千五百億円の財政負担をして、普通なら、財政負担をして消費者に安く財・サービスを提供するのが普通の政策なんです。ところが、減反政策だけは、三千五百億円の財政負担をして消費者負担を高めている政策なんです。
 今、小麦の価格が上がって大変だと言っていますけれども、とんでもない話なんです。小麦の価格なんて大したことないんじゃないですか、一七%ぐらい上がったって。日本の米というのは、国際価格の二倍も三倍も高い米で、ずっと五十年間、食わせているわけです。だから、今もし消費者対策をやるとすれば、米の減反を即時撤廃するということです。あるいは段階的に緩和していくんです。それが消費者対策です。
 次、農地の話に行きたいと思います。
 実は、柳田国男という、後に民俗学者になる、農林省の私の最初の先輩なんです。柳田国男は何を言ったか。僅か二十八歳のときにすごいことを言っているわけです。規模を拡大して零細分散錯圃を解消するためには、反対者が三分の一なら強制的に交換分合するとか、隣接農家に先買い権を与える、先買い権というのは先に買う権利です。つまり、自分の横の人が農地を売りに出そうとすると、その人の農地を先に、ほかの人に先駆けて買うことができる。そうすると、農地が連担するわけですね。規模を拡大すると同時に、農地を連担する、集約化する。それと同時に、今の農地バンクのような発想も彼はもうちゃんと言っています。
 それを徹底的に、その考え方に近いものを徹底的にやったのがフランス農政です。
 一九六〇年、同じ頃に基本法を作りました。そのときにやったのは、ゾーニングの徹底と、対象農家を主業農家に限定するという政策です。それと併せて、SAFERという農業公社をつくりました。SAFERにあって日本の農地保有合理化法人とか農地バンクにないもの、それが先買い権なわけです。
 農地を売る人が出てくる、そうすると、その情報は全部SAFERに集まります。SAFERが買うか買わないかを判断します。先に買うことができるわけです。それで集積して、担い手に移す。こういうことができたわけです。
 次のスライドをお願いしたいと思います。
 結局、本当にやるべき農地改革は何ですか。
 養父市の特区を認める際に、荒廃したら自治体が買い戻すという特約を、条件をつけさせたわけですね。荒廃したら駄目だというのは、別に株式会社だけの話じゃないわけです。農家もやります。そうすると、荒廃したら、農家であれ株式会社であれ、荒廃させた人から収益還元価格で政府が買い取って、それを農地バンクを通じて担い手に配分する、こういう政策がなぜ取れないのか。
 それから、中間管理機構に先買い権を与えるべきだというふうに思います。これが、日本が農地管理事業団法案からいろいろやってきたんだけれどもなかなか流動化が進まなかった、フランスは流動化が進んだ大きな違いだと思います。
 最後に、そこに、下にありますように、ゾーニングを徹底した上で、フランスには農地法なんかないんです。確固たるPOSというゾーニング制度があります。ゾーニングさえしっかりすれば、農地は守れるんです。農地法なんて要らないんです。
 実は、農地法というのは、農林省は作るのに反対だったわけです。ところが、マッカーサーと池田勇人が、あれは防共政策のために必要なんだというので作らせたのが農地法なんです。もう防共政策の意味はなくなっています。もうソ連はなくなっています。もう農地法はやめてゾーニングをしっかりやる、これが最も重要な農地の改革だと思います。
 次に、先ほど参考人の方も言われましたように、下限面積の撤廃です。いいかげんな制度になっていますから、今更、下限面積を撤廃しても意味はないということもあるんですけれども、ただ、一団の農地の中に、あるところだけが、小さなところだけが転用されたり荒廃したり、そういうことが起こると、全体の農地に波及するという効果があります。したがって、先ほど言ったように、政府が買い入れて、その場合は、買い入れて譲り渡すということが必要だと思います。
 最後に、次のページだけを説明させてください。
 農村活性化法が審議されるということです。でも、我々は基本的なことを忘れています。人がいないと農村は活性化しません。地域は活性化しません。
 日本の農村振興は物すごくうまくいったんです。中国の今最高の内政問題は、三農問題と言われるものです。農村部の一人当たりの所得が都市部の一人当たりの所得の三分の一以下だということなんです。これが中国の最大の内政問題です。
 私、数年前に、中国の国務院に行って講演しました。そのときに彼らが言ったのは、日本には三農問題がない、どうやって日本は地域振興をやったんだと。それは、農村に工業を導入して、それで所得格差を埋めたんだと言ったら、それはすばらしい、我々も日本の政策を勉強したいというのが彼らのリアクションだったんです。
 ところが、今はその手法が使えません。なぜならば、製造業はGDPの二割以下になっているということなんです。GDPの中心になっているのはサービス産業なんです。
 サービス産業の特徴というのは、生産と消費が同時期に同じ場所で行われているんです。だから、フランスのポール・ボキューズのレストランに、食事をしようとしたら、フランスのリヨンに行かないと駄目なわけです。つまり、サービス産業の振興というのは人口集積と結びついているわけですね。
 それを今の農村地域の中でどうやるのか。農村は、一人の方が、広大な面積を耕作して、コストが下がって、収益が上がります。そうすると、農村地域という大きな地域の中で、人口を集積する地域、それから、ある程度規模の大きい、担い手による農業を行う地域、それを総合的にやるような地域政策が必要だ、そういうふうな政策に転換する必要があるんじゃないかなというふうに思います。
 以上、勝手なことを言いましたけれども、これで私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 120805007X01020220413_006

発言者: 山下一仁

speaker_id: 31525

日付: 2022-04-13

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会